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◇361 水神の護符

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 アキラたちはギルドホームへと戻って来た。
 ここはとある島。
 海の上に浮かんでいて、広大な森や火山、謎の石板、それから青い海、色んなものがハチャメチャに固まっている。

 そこにポツンと建てられているのがこのギルドホーム。
 二階建てになっていて、中にはピーコックから買い取った家具が置かれている。
 正直前衛的なものもあり、アキラたちには価値が分からないものも多いけれど、カラフルなそれぞれのイメージカラーに合った椅子は気に入っていた。

「何処に置こうか??」
「神棚があればそこに置いたのですが……」

 正直、和ではなく洋をイメージしている建築物のため、神棚などは設置していない。
 アキラたちはせっかくに手に入れた龍の髭二つを手に、飾る場所に困る。

「もう、ここしかないかなー?」

 フェルノは視線の先を見つめていた。
 そこにあるのは食器棚。まさかの食器棚の中に飾ろうとしていた。

「流石にダメだよフェルノ。罰当たりだって起こられちゃうよ!」

 主に雷斬とアクアドラゴンご本人から。
 実際、雷斬も「それは流石に……」と圧を掛けていた。

 しかしアキラの呼びかけにフェルノも「流石にしないよー」と笑って答える。
 とは言え最適な場所はそうない。何処に設置するか迷っている間に、Nightは何か作業をしていた。

「【ライフ・オブ・メイク】」
「Night、何を作っているの?」

 アキラは気になってNightに尋ねてみた。
 すると木製の台の様なものが完成していて、壁に取り付けられそうになっていた。

「よし、完成だな」
「Night、それはなに? もしかして神棚?」
「そんなわけが無いだろ。ここに置いておく。適当に落ちても安全な場所に固定してだな」

 Nightは完成した台を持ってリビングの中を見回す。
 良さそうな場所が無いので、隣の部屋に移る。
 そこはほとんど使っていない部屋で、ここなら大丈夫だと悟った。

「よし、この辺に設置するぞ」
「ちょっと可愛そうだね」
「そうですね。この部屋はあまり使用していないので、失礼かと思います」
「それを気にしていたら先には進めないぞ。それにここなら扉を開けて置けばリビングとも繋がる。問題は無いだろ」

 おまけにNightの作った台は軽くて丈夫。
 当たっても怪我はしないようになっていた。
 しかも取り外しも簡単で、壁にも跡が残らない優れもの。
 これなら必要に応じて適宜移動が可能なので、とりあえず飲み込むことにして、台を天井付近の壁に設置する。

「せーのっ!」

 Nightは椅子に乗り、爪先を立てて台を設置しようとする。
 しかしフラフラして危なかったので、アキラは心配になり体を抑える。

「危ないよNight」

 ガタガタと椅子が揺れた。
 見兼ねて雷斬の肩をポンとベルが叩くと、「雷斬が設置すればいいでしょ?」と一番背の高い人を指名する。

「そうですね。Nightさん、私が代わりに設置します。指示をください」
「そうか。それなら天井付近の壁。少し距離を開けて置いて、空間を作ってくれ」
「分かりました。この辺りですか?」
「その辺でいい。台の木片に付いている金具を回してくれ。ゴム製になっているから安全だ」
「本当ですね。これなら壁にも跡が残りませんね。よいしょ、これで良いですね。おお!」

 しっかりと壁に台が固定されていた。
 アキラたちは妙な達成感を感じたので、丁度良く雷斬に龍の髭が入ったお札を手渡す。

「雷斬、コレも代わりに置いておいて」
「分かりました。この辺りで良いでしょうか?」

 雷斬はお札を置いた。
 雷斬が作ってくれたものなのでかなり格好がいい。
 こう見るだけで見栄えも何だか変わって来ると思った矢先、不思議な感覚が襲って来た。

 グワン!

 アキラたちはお札を置いて瞬間、不思議なウェーブを感じ取った。
 別に目に見えるわけではなく、何となく頭の中にイメージが叩き込まれる感覚だ。

 清く澄み切った水が一気に全身を取り巻く。
 逃げる暇もない。抗う術もない。
 だけどその必要なんて全くないほど心地よく、アキラたちは全員水の中に居る感覚に襲われた。

「今のって……もしかして、龍の髭の効果?」
「そうだとすれば本当にアクアドラゴンなのかもしれないな」
「アクアドラゴンの龍の髭。結構凄いものを手に入れちゃったね、アキラ!」
「うん。アクアドラゴンには感謝しないとね」
「うーん。うん」

 フェルノは少し寂しそうにする。
 何かあるのかと、アキラは声を掛けてみた。

「フェルノ、如何したの? もしかして、お腹でも痛いの?」
「そうじゃなくてさー。なんか、霞むなーって思って」
「霞むって?」
「今のってアクアドラゴンの龍の髭の効果でしょ? 私が持って帰ってきて龍の髭とは一体……」

 フェルノが遠い目をしてしまった。
 アキラは親友として何とか元の目に戻そうと励ます。
 肩をポンと叩いて、「大丈夫だよ!」と声を掛けていた。

「だってさ、アクアドラゴン自体が例外の外に居る存在でしょ? 例外の例外はもう関係ないよ。逸脱した強さ? っているのがあるものでしょ?」
「そんなものかなー? うーん、まあ考えても仕方ないか」

 フェルノは自力で這いあがった。
 あまり深い溝に落ちなくて良かったと、全員が安堵していた。

「まあ、イベントの成果はぼちぼちだな」
「それは良いけど、今度は私の言うことをもっと信じてよね!」
「それは場合に寄るな。私は利己的だから」

 Nightは黄昏ていた。
 しかしアキラはちょっとだけ反発すると、Nightが笑みを浮かべて答える姿を見て、もう如何でも良くなった。
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