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◇352 勝利の証を贈ろう
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アクアドラゴンは負けを認めた。
それは至って簡単だ。アクアドラゴンはアキラの精神力に触れて、その想いを直に受け取ったからだ。
(ここは……はっ!)
アクアドラゴンは精神の中で目を開けた。
そこは自分だけの世界。自分だけのパーソナルスペースで、本体は自分しかないはずだ。
本来はだ。
(誰ですか、貴女は?)
アクアドラゴンのパーソナルスペースは水の中だった。
一面が透き通る透明度の極めて高い水で覆われ、上部には太陽光を遮断して乱反射した光が膜を作り、下部は漆黒の闇が覆う。いわゆる光が届かなために、格別した深海が生まれていた。
にもかかわらずだ。アクアドラゴンの視線の先には、無限の宇宙が続いていた。
本来こんな世界は存在しない。
無限の宇宙の中。その中には一匹の龍の尻尾が浮かび、虹色の塊が浮いていた。
これは一体何なのか……アクアドラゴンは分からない物を目の前にしているにもかかわらず、長い首を伸ばして触れようとしていた。
(私のことを受け入れようとするこの光は、宇宙は……一体、何故。何故に私を引き付けるのですか!)
アクアドラゴンは気になって仕方がない。
触れて良いのか悪いのか。そんなものは一切なく、きっと私のことを受け入れてくれると確信を持っていた。
(触れたい……如何しても触れてみたい)
アクアドラゴンの鼻先が宇宙に触れた。
すると目の前に龍を携えた一人の少女が浮かび上がる。
そこに居たのはアキラで、優しく手を伸ばす。
何も口にすることはなく、アクアドラゴンのことを包み込もうとしていた。
(そうですか……だから、貴女も……)
アクアドラゴンはアキラを守るように渦を巻く龍の姿を見つけた。
白く気高き龍が目の前に居る。
アキラのことを守るように背後におり、アクアドラゴンは納得した。
(無限の宇宙……はぁ、そんな精神力には敵わないですね)
アクアドラゴンは違う意味でメンタルアウトさせられてしまった。
そんな感覚がアクアドラゴンを襲い、もう一度目を閉じた。
◇
「はっ!?」
アクアドラゴンは目を開いた。
眩しい太陽の陽射しが直射に瞳孔に降り注がれ、咄嗟に目を閉じて対応する。
それでも眩しいのは変わりなく、苦い表情を浮かべてしまった。
すると心配する声を耳にする。
「大丈夫?」
アクアドラゴンは反応した。
依然としてぶっきらぼうな態度は変らず、負けを認めたにもかかわらず、その威厳を必死に保つ。
「ええ、心配されなくてもこのくらい問題ありませんよ」
アクアドラゴンはゆっくり目を開ける。
目の前には心配した様子のアキラがいて、両腕両足には龍の靄を纏っていた。
「そうですか……やはりその力は」
「ん?」
アキラはよく分かっていなかった。
アクアドラゴンもはっきりとは教えず、自分の中で納得すると、「はぁ」と息を吐く。
「私は負けてしまったようですね。残念です」
「ざ、残念なの?」
「こんな人間に負ける何て……想像もしていませんでしたよ。はぁ、水神池の守り神である私が、幻獣であるはずの私が……負けるなんて、面目ないですね」
「そんなことないと思うけど……」
アキラにはアクアドラゴンの気持ちを理解しようとすることはできても、完全に理解することはできない。
アクアドラゴンはこの池の主。つまりはボスで、ボスが負けるということは、それだけで信用と信頼を失うことを意味していた。
アクアドラゴンにはそれが耐えがたく、牙を剥き出しにして感じる。無力感を。
「貴女に何が分かるんです?」
「何も分からないよ。だって私、人からの期待とかで頑張ろうとかしてないもん」
アキラはアクアドラゴンに答える。
今まで、期待されることはあっても、その期待に応えたいとは思った。
けれど期待を裏切ったらとか、面目ないと一切思ったことがない。だって期待されているのって、信じて貰えてるってことだから。アキラはそう意識を書き換える。
「それに、ほら!」
アキラは人差し指をピンとする。
水神池の水面。ここまで連れて来てくれたアクアドラゴンの眷属の鯉が跳ねていた。
アクアドラゴンのことを慰めているのか、アキラにはそう見える。
気にしたらダメ。そう言いたいらしい。
「ふん……如何やら私の完全敗北と言うことですね」
アクアドラゴンは自分の負けを完全に認める。
それからアキラへと顔をグッと近づけると、瞳孔を睨む。
「嘘偽りはない……みたいですね。そうですか、そうですか」
「だから私、龍の髭って言うアイテムは欲しいだけで、アクアドラゴンの髭が欲しいわけじゃ……うわぁ!」
ザブーン!
池から水飛沫が上がる。
アキラは突然すぎて全身が余計にびしょ濡れになってしまい、ポタポタと滴る。
意味が分らない。そんな中、アキラはアクアドラゴンの声を聴く。
「良いでしょう。それでは勝利に証を贈るとしよう」
完全に上から目線。
だけどアキラは気にせず、目の前から忽然と姿を消したアクアドラゴンを待つのだった。
それは至って簡単だ。アクアドラゴンはアキラの精神力に触れて、その想いを直に受け取ったからだ。
(ここは……はっ!)
アクアドラゴンは精神の中で目を開けた。
そこは自分だけの世界。自分だけのパーソナルスペースで、本体は自分しかないはずだ。
本来はだ。
(誰ですか、貴女は?)
アクアドラゴンのパーソナルスペースは水の中だった。
一面が透き通る透明度の極めて高い水で覆われ、上部には太陽光を遮断して乱反射した光が膜を作り、下部は漆黒の闇が覆う。いわゆる光が届かなために、格別した深海が生まれていた。
にもかかわらずだ。アクアドラゴンの視線の先には、無限の宇宙が続いていた。
本来こんな世界は存在しない。
無限の宇宙の中。その中には一匹の龍の尻尾が浮かび、虹色の塊が浮いていた。
これは一体何なのか……アクアドラゴンは分からない物を目の前にしているにもかかわらず、長い首を伸ばして触れようとしていた。
(私のことを受け入れようとするこの光は、宇宙は……一体、何故。何故に私を引き付けるのですか!)
アクアドラゴンは気になって仕方がない。
触れて良いのか悪いのか。そんなものは一切なく、きっと私のことを受け入れてくれると確信を持っていた。
(触れたい……如何しても触れてみたい)
アクアドラゴンの鼻先が宇宙に触れた。
すると目の前に龍を携えた一人の少女が浮かび上がる。
そこに居たのはアキラで、優しく手を伸ばす。
何も口にすることはなく、アクアドラゴンのことを包み込もうとしていた。
(そうですか……だから、貴女も……)
アクアドラゴンはアキラを守るように渦を巻く龍の姿を見つけた。
白く気高き龍が目の前に居る。
アキラのことを守るように背後におり、アクアドラゴンは納得した。
(無限の宇宙……はぁ、そんな精神力には敵わないですね)
アクアドラゴンは違う意味でメンタルアウトさせられてしまった。
そんな感覚がアクアドラゴンを襲い、もう一度目を閉じた。
◇
「はっ!?」
アクアドラゴンは目を開いた。
眩しい太陽の陽射しが直射に瞳孔に降り注がれ、咄嗟に目を閉じて対応する。
それでも眩しいのは変わりなく、苦い表情を浮かべてしまった。
すると心配する声を耳にする。
「大丈夫?」
アクアドラゴンは反応した。
依然としてぶっきらぼうな態度は変らず、負けを認めたにもかかわらず、その威厳を必死に保つ。
「ええ、心配されなくてもこのくらい問題ありませんよ」
アクアドラゴンはゆっくり目を開ける。
目の前には心配した様子のアキラがいて、両腕両足には龍の靄を纏っていた。
「そうですか……やはりその力は」
「ん?」
アキラはよく分かっていなかった。
アクアドラゴンもはっきりとは教えず、自分の中で納得すると、「はぁ」と息を吐く。
「私は負けてしまったようですね。残念です」
「ざ、残念なの?」
「こんな人間に負ける何て……想像もしていませんでしたよ。はぁ、水神池の守り神である私が、幻獣であるはずの私が……負けるなんて、面目ないですね」
「そんなことないと思うけど……」
アキラにはアクアドラゴンの気持ちを理解しようとすることはできても、完全に理解することはできない。
アクアドラゴンはこの池の主。つまりはボスで、ボスが負けるということは、それだけで信用と信頼を失うことを意味していた。
アクアドラゴンにはそれが耐えがたく、牙を剥き出しにして感じる。無力感を。
「貴女に何が分かるんです?」
「何も分からないよ。だって私、人からの期待とかで頑張ろうとかしてないもん」
アキラはアクアドラゴンに答える。
今まで、期待されることはあっても、その期待に応えたいとは思った。
けれど期待を裏切ったらとか、面目ないと一切思ったことがない。だって期待されているのって、信じて貰えてるってことだから。アキラはそう意識を書き換える。
「それに、ほら!」
アキラは人差し指をピンとする。
水神池の水面。ここまで連れて来てくれたアクアドラゴンの眷属の鯉が跳ねていた。
アクアドラゴンのことを慰めているのか、アキラにはそう見える。
気にしたらダメ。そう言いたいらしい。
「ふん……如何やら私の完全敗北と言うことですね」
アクアドラゴンは自分の負けを完全に認める。
それからアキラへと顔をグッと近づけると、瞳孔を睨む。
「嘘偽りはない……みたいですね。そうですか、そうですか」
「だから私、龍の髭って言うアイテムは欲しいだけで、アクアドラゴンの髭が欲しいわけじゃ……うわぁ!」
ザブーン!
池から水飛沫が上がる。
アキラは突然すぎて全身が余計にびしょ濡れになってしまい、ポタポタと滴る。
意味が分らない。そんな中、アキラはアクアドラゴンの声を聴く。
「良いでしょう。それでは勝利に証を贈るとしよう」
完全に上から目線。
だけどアキラは気にせず、目の前から忽然と姿を消したアクアドラゴンを待つのだった。
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