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◇339 一回気分転換1
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今日も水神池で釣りをする。最初はそう思っていた。
だけどここ数日全然で、少しだけ気分に影が落ちていた。
それをいち早く気が付いたアキラは仲間たちに声を掛ける。
「ねえみんな、森に行ってアルミラージを狩ろうよ!」
アキラはギルドから依頼を取って来ていた。
今回の依頼はアルミラージを狩って持ち帰ること。数は一匹で良いらしく、比較的簡単そうだった。報酬自体はかなり少ないけれど、そんなことは如何だっていい。
とにかく今はこのどんよりとした空気を脱却することが目的なのだ。
「ダメかな?」
「ダメじゃないよー」
真っ先に頷いてくれたのはフェルノだった。本当は昨日のことが悔しいはずなのにそれすら振り切ってくれた。本当に優しい親友だ。
アキラはその気持ちに感謝すると、残りのメンバーも同意してくれた。みんなここまでの不甲斐なさを気にしていたらしく、早速気分転換も兼ねてアルミラージ狩りに向かった。
「……のは良いんだけど、全然居ないね」
「そうだな。まさかここまで見つけられないとは思わなかった」
Nightも予想していなかった。
アルミラージと言うウサギのモンスターはかなりメジャーなはずだ。
なのに森にやって来たものの一羽も見つからない。もしかして草原の方が良かったのかな? と首を捻ったが、木の上に登っていたベルが何かを捉える。
「見つけたわよ!」
ベルが叫んだ。アキラたちの視線が一斉にベルへと集まると、Nightは素早く尋ねる。
「色は?」
「色? えーっと、白みたいね。頭には金色の角が生えているわ」
「金色の角だと!? それはかなり貴重なタイプだ。ベル、正確な場所は捉えたか」
「捉えているわよ。こっちを警戒しているみたいだけど……」
GAEMの中では普通の生物とモンスターがいる。
モンスターに限った話になるけれど、普通の生物よりも身体的能力も生命維持能力も高い。故にウサギの特徴である聴覚もより一層鋭くなっていて、簡単には近づけなかった。だって近づいたら逃げちゃうから、とアキラは当たり前のことを念頭に置いた。
「警戒されているんですね。それでは私が……」
「ダメだ」
Nightは雷斬の出鼻を素早く砕いた。
雷斬も首を捻ってキョトンとしていた。刀の柄に指を掛けるも、種族スキルを使わせてもらえなかった。
「如何してですか?」
「如何しても何も無いだろ。目の前を見てみろ」
Nightの視線は雷斬の目の前へと向いていたので、アキラたちの視線も注がれた。
そこには鬱蒼とした木々は生い茂っていた。
しかも丸太が倒れていて道を塞ぎ、さらには蔦が絡みついているので足を引っかけそうで危ない。完全に通れないように封鎖されていて、通るのは至難の業だった。
「【雷鳴】を使って強行突破しようとしたんだろ。無理な話だ。確かに雷を纏えば通れるかもしれないが、全て絡みつくのは必至。そうなればいくら雷の速度で移動できたとしてもアルミラージを捕まえることはできない」
「うっ……ですが!」
「ですが、私のスピードだったら気が付かれる前にアルミラージとの距離を詰めることだってできます。とでも言いたいんだろうが、この距離でアルミラージは私たちを警戒している。そうだな、ベル」
「ええ。耳がピクピク動いているわ」
「とのことだ。つまり雷なんて轟音を鳴らしてみろ、一瞬で気が付かれて近づく前に穴でも掘って逃げられるぞ。分かったな?」
「……はい」
完全にNightは雷斬のやろうとしていたことを推し量り、丸め込んで封じ込めてしまった。
アキラはその手腕に感嘆とさせられたが、それだと雷斬が可哀そうで仕方ない。
「元気出してよ雷斬」
「いいえ。確かにNightさんの言う通りですよね。私も少し考えれば分かることでした」
「雷斬……」
雷斬は種族スキルを使うのを止めた。
それから目の前の木々をジッと見つめ、「はっ」と息を吐いた。溜息にもならないレベルで、アキラはこれから如何しようか考える。
「すみません皆さん。軽率な判断でした」
「気にしないでいいよ。それより考えよ。とは言え、とりあえず回り道をして追いかけよっか」
「そうだな。ベル、まだアルミラージは居るか?」
「一応ね。こっちを警戒しているのは変わらないけど……うーん、ここから弦を引き絞れば射れるかしらね?」
ベルが弓を構えた。銀の矢がアルミラージを見つめるものの、流石に木々が重なり合っていてアルミラージに届く頃には威力が殺される。
結局無駄になるだけじゃなく、多分余計警戒させて逃げられるのがオチだ。
ここは仕方ないと思い、アキラがパンと手を叩いた。
「とりあえず回り道をして追いかけよ。大丈夫、ゆっくり捕まえればいいからね」
アキラは笑みを浮かべていた。ピリ付いていた空気が少しだけ解ける。
目の前の木々を避け回り道をすることに決め、とりあえずアルミラージの姿を全員の視界に納めること。それだけを最初の目標にして、全員揃って反対側に回り込むことにした。
だけどここ数日全然で、少しだけ気分に影が落ちていた。
それをいち早く気が付いたアキラは仲間たちに声を掛ける。
「ねえみんな、森に行ってアルミラージを狩ろうよ!」
アキラはギルドから依頼を取って来ていた。
今回の依頼はアルミラージを狩って持ち帰ること。数は一匹で良いらしく、比較的簡単そうだった。報酬自体はかなり少ないけれど、そんなことは如何だっていい。
とにかく今はこのどんよりとした空気を脱却することが目的なのだ。
「ダメかな?」
「ダメじゃないよー」
真っ先に頷いてくれたのはフェルノだった。本当は昨日のことが悔しいはずなのにそれすら振り切ってくれた。本当に優しい親友だ。
アキラはその気持ちに感謝すると、残りのメンバーも同意してくれた。みんなここまでの不甲斐なさを気にしていたらしく、早速気分転換も兼ねてアルミラージ狩りに向かった。
「……のは良いんだけど、全然居ないね」
「そうだな。まさかここまで見つけられないとは思わなかった」
Nightも予想していなかった。
アルミラージと言うウサギのモンスターはかなりメジャーなはずだ。
なのに森にやって来たものの一羽も見つからない。もしかして草原の方が良かったのかな? と首を捻ったが、木の上に登っていたベルが何かを捉える。
「見つけたわよ!」
ベルが叫んだ。アキラたちの視線が一斉にベルへと集まると、Nightは素早く尋ねる。
「色は?」
「色? えーっと、白みたいね。頭には金色の角が生えているわ」
「金色の角だと!? それはかなり貴重なタイプだ。ベル、正確な場所は捉えたか」
「捉えているわよ。こっちを警戒しているみたいだけど……」
GAEMの中では普通の生物とモンスターがいる。
モンスターに限った話になるけれど、普通の生物よりも身体的能力も生命維持能力も高い。故にウサギの特徴である聴覚もより一層鋭くなっていて、簡単には近づけなかった。だって近づいたら逃げちゃうから、とアキラは当たり前のことを念頭に置いた。
「警戒されているんですね。それでは私が……」
「ダメだ」
Nightは雷斬の出鼻を素早く砕いた。
雷斬も首を捻ってキョトンとしていた。刀の柄に指を掛けるも、種族スキルを使わせてもらえなかった。
「如何してですか?」
「如何しても何も無いだろ。目の前を見てみろ」
Nightの視線は雷斬の目の前へと向いていたので、アキラたちの視線も注がれた。
そこには鬱蒼とした木々は生い茂っていた。
しかも丸太が倒れていて道を塞ぎ、さらには蔦が絡みついているので足を引っかけそうで危ない。完全に通れないように封鎖されていて、通るのは至難の業だった。
「【雷鳴】を使って強行突破しようとしたんだろ。無理な話だ。確かに雷を纏えば通れるかもしれないが、全て絡みつくのは必至。そうなればいくら雷の速度で移動できたとしてもアルミラージを捕まえることはできない」
「うっ……ですが!」
「ですが、私のスピードだったら気が付かれる前にアルミラージとの距離を詰めることだってできます。とでも言いたいんだろうが、この距離でアルミラージは私たちを警戒している。そうだな、ベル」
「ええ。耳がピクピク動いているわ」
「とのことだ。つまり雷なんて轟音を鳴らしてみろ、一瞬で気が付かれて近づく前に穴でも掘って逃げられるぞ。分かったな?」
「……はい」
完全にNightは雷斬のやろうとしていたことを推し量り、丸め込んで封じ込めてしまった。
アキラはその手腕に感嘆とさせられたが、それだと雷斬が可哀そうで仕方ない。
「元気出してよ雷斬」
「いいえ。確かにNightさんの言う通りですよね。私も少し考えれば分かることでした」
「雷斬……」
雷斬は種族スキルを使うのを止めた。
それから目の前の木々をジッと見つめ、「はっ」と息を吐いた。溜息にもならないレベルで、アキラはこれから如何しようか考える。
「すみません皆さん。軽率な判断でした」
「気にしないでいいよ。それより考えよ。とは言え、とりあえず回り道をして追いかけよっか」
「そうだな。ベル、まだアルミラージは居るか?」
「一応ね。こっちを警戒しているのは変わらないけど……うーん、ここから弦を引き絞れば射れるかしらね?」
ベルが弓を構えた。銀の矢がアルミラージを見つめるものの、流石に木々が重なり合っていてアルミラージに届く頃には威力が殺される。
結局無駄になるだけじゃなく、多分余計警戒させて逃げられるのがオチだ。
ここは仕方ないと思い、アキラがパンと手を叩いた。
「とりあえず回り道をして追いかけよ。大丈夫、ゆっくり捕まえればいいからね」
アキラは笑みを浮かべていた。ピリ付いていた空気が少しだけ解ける。
目の前の木々を避け回り道をすることに決め、とりあえずアルミラージの姿を全員の視界に納めること。それだけを最初の目標にして、全員揃って反対側に回り込むことにした。
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