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◇336 早速釣りを始めよう
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アキラたちは一分ほど脳がフリーズしてしまった。
まるで試されているかのような不思議な感覚に苛まれ、何処か胸がしみじみと感じた。
何か忘れている感情を呼び起こすようなそんな独特な感性で、アキラたちは不思議とその空間に溶け込んでしまいそうになった……が、アキラは素早く意識を切り替えた。
『意識を保たないと飲まれますよ』
おまけに声も聞こえてきた。
頭の中じゃなくて胸の内側から説教をされたみたいだったけれど、そのおかげでアキラは「はっ!」となった。
「はっ、み、みんな!」
アキラはNightの肩を擦った。
すると全員フリーズ状態から解放され、「はっ!?」と困惑した顔を浮かべた。
「な、何があった?」
「分からないけど……もしかしたら見惚れてたのかも」
「見惚れていた? 私が? ……不思議だな」
何処となく全員の表情が軽かった。
何を試されて、何をされたのかは全く分からなかったけれど、早速アキラたちは目的を果たすためにインベントリを操作する。
ここに来たのは観光でもない。イベント達成のため、釣りをしにやって来た。
本分を忘れてはいけないと、全員竹製の釣り竿を片手に持つ。
「それじゃあみんなやってみよっか」
「そうだねー。何処で釣れるかは分からないけど、とりあえず一列になって投げてみようよー。こんな感じにさー」
早速フェルノは始めていた。真っ先に釣り糸を水面に垂らし、ポチャンと軽い音が聴こえた。
それに倣って同じところじゃダメだと思い、アキラたちは少しずつ距離を取った。
互いの釣り糸が絡まらない位置取りを徹底し、「それ!」と掛け声に合わせて釣り糸を垂らした。
「どんな魚が釣れるかな?」
「さあな。少なくとも魚とは限らないだろ」
「あっ、そっか。ごめんごめん」
確かにそうだった。てっきり龍の髭って名前だから、髭の生えた魚かなとアキラは早とちりをしていた。
だけど別に魚だけとは限らない。水棲昆虫とかは止めて欲しいけど、ここはファンタジー世界なので、常識に囚われてはいけないのだ。
「でもここからは待つ時間だよね? ちょっと退屈だなー」
「あはは。でも釣りってそういうものでしょ?」
「よく釣りは待つのも醍醐味と言われるな」
「でもさー、何も釣れないとつまんなくない?」
「それは……そういう日もあるってことで諦めるしかない」
Nightはフェルノを宥めた。
私たちは釣をしにやってきているんだ。少しは焦らず騒がず、揺れる水面の様に落ち着いた心で対応しよう。もしかしたらそんな人たちへ向けたメッセージなのでは? とアキラは物語の締めの言葉的に口に出していた。
「いや、そこまでは考えていないだろ、大体今の現代社会はそこまで生き急いではいない。数十年前に比べればかなり改善されている」
「そこまで強く言わなくても……」
何故かNightに真っ向否定されてしまった。
アキラは不服そう……ではなく驚いてしまって、一旦釣り竿を上げた。
針には何もついていない。餌を一応つけてはいるけれど、練り物だったせいで水に溶けてしまった。もう一回付け直すことにして、再度釣り糸を垂らして挑戦した。
ポチャン!
水面が揺れて、小さな波紋を作る。
けれど何も起きることはなかった。
「やっぱり何も起きないね。もしかしてここじゃないのかな?」
「その可能性は濃厚だな。クロユリ曰く、龍の髭を入手できる釣りスポットはこの広い池の中で一ヵ所だけ。しかもいつそのタイミングに巡り合えるかも分からない……相当な鬼畜しようと言っても差し支えないな」
何だか“無理”の方に天秤が傾き始めた。
これは良くないと思い、アキラはNightを励ました。
「そ、そんなことないよ。私たちは五人も居るんだよ!」
「そうだよー。五人も居たら誰か一人くらいは……アキラ、竿が引いてるよー」
「ええっ!?」
アキラは気が付くと、確かに竿が引いていた。
しかもちょっと重たい。これは大物の予感。
アキラは慎重に指先に力を加え、足腰を使って一気に釣り上げる。
「せーのっ!」
アキラは魚を釣り上げた。もしかしたら初日で龍の髭GETかな? と思ったのも束の間、釣り針に食い付いていたのは一匹の鯉だった。
しかもモンスター判定もなく、ただの鯉のようだ。
「えーっと、龍の髭は……」
「無いだろ」
「うっ……それじゃあ意味ないね。逃がしてあげよう」
アキラは鯉を釣り針から外した。
ゆっくりと池の中に戻すと、鯉は優雅に泳いで行ってしまった。
「さてと、気を取り直してもう一回やってみよっか」
「そうですね。少なくとも何か釣れることは分かったので頑張ってみましょうか」
「トライ&エラーってことか……まあ妥当だな」
アキラたちは釣り竿を振った。
ポチャンと釣り糸が池の水に浸されて、水面に波紋を浮かべ直した。
「今度こそ釣れるかなー?」
「さあな」
Nightは淡白な反応でアキラに返した。
いつも通りだなーと思いつつも、アキラは「釣れるよ、きっと」と励ましつつ言葉を重ねた。
まるで試されているかのような不思議な感覚に苛まれ、何処か胸がしみじみと感じた。
何か忘れている感情を呼び起こすようなそんな独特な感性で、アキラたちは不思議とその空間に溶け込んでしまいそうになった……が、アキラは素早く意識を切り替えた。
『意識を保たないと飲まれますよ』
おまけに声も聞こえてきた。
頭の中じゃなくて胸の内側から説教をされたみたいだったけれど、そのおかげでアキラは「はっ!」となった。
「はっ、み、みんな!」
アキラはNightの肩を擦った。
すると全員フリーズ状態から解放され、「はっ!?」と困惑した顔を浮かべた。
「な、何があった?」
「分からないけど……もしかしたら見惚れてたのかも」
「見惚れていた? 私が? ……不思議だな」
何処となく全員の表情が軽かった。
何を試されて、何をされたのかは全く分からなかったけれど、早速アキラたちは目的を果たすためにインベントリを操作する。
ここに来たのは観光でもない。イベント達成のため、釣りをしにやって来た。
本分を忘れてはいけないと、全員竹製の釣り竿を片手に持つ。
「それじゃあみんなやってみよっか」
「そうだねー。何処で釣れるかは分からないけど、とりあえず一列になって投げてみようよー。こんな感じにさー」
早速フェルノは始めていた。真っ先に釣り糸を水面に垂らし、ポチャンと軽い音が聴こえた。
それに倣って同じところじゃダメだと思い、アキラたちは少しずつ距離を取った。
互いの釣り糸が絡まらない位置取りを徹底し、「それ!」と掛け声に合わせて釣り糸を垂らした。
「どんな魚が釣れるかな?」
「さあな。少なくとも魚とは限らないだろ」
「あっ、そっか。ごめんごめん」
確かにそうだった。てっきり龍の髭って名前だから、髭の生えた魚かなとアキラは早とちりをしていた。
だけど別に魚だけとは限らない。水棲昆虫とかは止めて欲しいけど、ここはファンタジー世界なので、常識に囚われてはいけないのだ。
「でもここからは待つ時間だよね? ちょっと退屈だなー」
「あはは。でも釣りってそういうものでしょ?」
「よく釣りは待つのも醍醐味と言われるな」
「でもさー、何も釣れないとつまんなくない?」
「それは……そういう日もあるってことで諦めるしかない」
Nightはフェルノを宥めた。
私たちは釣をしにやってきているんだ。少しは焦らず騒がず、揺れる水面の様に落ち着いた心で対応しよう。もしかしたらそんな人たちへ向けたメッセージなのでは? とアキラは物語の締めの言葉的に口に出していた。
「いや、そこまでは考えていないだろ、大体今の現代社会はそこまで生き急いではいない。数十年前に比べればかなり改善されている」
「そこまで強く言わなくても……」
何故かNightに真っ向否定されてしまった。
アキラは不服そう……ではなく驚いてしまって、一旦釣り竿を上げた。
針には何もついていない。餌を一応つけてはいるけれど、練り物だったせいで水に溶けてしまった。もう一回付け直すことにして、再度釣り糸を垂らして挑戦した。
ポチャン!
水面が揺れて、小さな波紋を作る。
けれど何も起きることはなかった。
「やっぱり何も起きないね。もしかしてここじゃないのかな?」
「その可能性は濃厚だな。クロユリ曰く、龍の髭を入手できる釣りスポットはこの広い池の中で一ヵ所だけ。しかもいつそのタイミングに巡り合えるかも分からない……相当な鬼畜しようと言っても差し支えないな」
何だか“無理”の方に天秤が傾き始めた。
これは良くないと思い、アキラはNightを励ました。
「そ、そんなことないよ。私たちは五人も居るんだよ!」
「そうだよー。五人も居たら誰か一人くらいは……アキラ、竿が引いてるよー」
「ええっ!?」
アキラは気が付くと、確かに竿が引いていた。
しかもちょっと重たい。これは大物の予感。
アキラは慎重に指先に力を加え、足腰を使って一気に釣り上げる。
「せーのっ!」
アキラは魚を釣り上げた。もしかしたら初日で龍の髭GETかな? と思ったのも束の間、釣り針に食い付いていたのは一匹の鯉だった。
しかもモンスター判定もなく、ただの鯉のようだ。
「えーっと、龍の髭は……」
「無いだろ」
「うっ……それじゃあ意味ないね。逃がしてあげよう」
アキラは鯉を釣り針から外した。
ゆっくりと池の中に戻すと、鯉は優雅に泳いで行ってしまった。
「さてと、気を取り直してもう一回やってみよっか」
「そうですね。少なくとも何か釣れることは分かったので頑張ってみましょうか」
「トライ&エラーってことか……まあ妥当だな」
アキラたちは釣り竿を振った。
ポチャンと釣り糸が池の水に浸されて、水面に波紋を浮かべ直した。
「今度こそ釣れるかなー?」
「さあな」
Nightは淡白な反応でアキラに返した。
いつも通りだなーと思いつつも、アキラは「釣れるよ、きっと」と励ましつつ言葉を重ねた。
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