VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
336 / 599

◇334 助けてください、妖帖の雅さん

しおりを挟む
「それで私たちの所に来たのね」
「はい」

 アキラは堂々と答えた。クロユリは呆れるわけではないものの、何か思うところがあるのか頬に手を当てていた。

 アキラたちはNightの予測から、龍の髭の在処をモミジヤ周辺に絞った。
 理由は単純で、モミジヤは現実世界における日本の近畿地方。特に奈良県や京都府をモチーフにしている節があり、その情景が色濃い。
 だから龍の髭と言う何処となく古典的な雰囲気を思わせる名称に薄望みを掛けたのだ。

「まさかそんなことで私たちの所に来るなんて思わなかったわ。でも継ぎ接ぎの皆さんらしいですね」

 クロユリは困っていた。
 まさかそんなことで急に来られるとは思っていなかったようで、頭の中で話を整理した。

「とりあえず事情は把握しました。皆さんも・・・・龍の髭を追い求めているんですね」
「皆さんも?」
「ええ。そこまで参加しているギルドは多くないですが、このイベントを楽しんでいる人達も多少は居ます。私たちもその一つでした」

 クロユリは含みを持たせて答えた。
 如何やら少し前までは頑張っていたみたいだけど、今は参加していないようで、何故かと悟った。答えはとても簡単で、クロユリたちは既にイベントをこなしてしまった。

「私たちのギルドは既に龍の髭を入手していますよ」
「「「ええっ!?」」」

 まさか情報を求めてやってきたら、既に達成しているとは思わなかった。
 これは飛んで火にいる夏の虫。とまではいかないにせよ、情報を教えて貰うチャンスと思い、アキラはクロユリに尋ねた。
 しかしクロユリは口をつぐんだまま教えてくれなかった。

「クロユリさん、龍の髭って何ですか?」
「さあ、何でしょうね?」
「……クロユリさん? 揶揄っていますよね。見せてください!」
「……それはできませんね。本物は自分達で入手して、自分達で管理するべきですよ」

 クロユリは意地悪をした。アキラたちは表情を歪めるが、Nightは原因を探った。
 アキラも気を取り直してクロユリの表情を窺うも、何だか訳ありそうなのは判った。 だけど何が原因なのか、そこまでは特定できないが、Nightの「なるほどな」の一言が全てを解決してくれた。

「期間終了までは龍の髭の正体を明かしてはならない」
「そんなルールがあるの!」
「公言した場合はペナルティとして一定期間ログインの制限を行う……か」

 とんでもないルールが設けられていた。
 アキラたちは全員「嘘っ!?」と驚いて固まってしまったが、如何やら真実のようで「はい」とクロユリは頷く。
 これは思った以上に手強くて深い。胸の奥がざわついて、アキラたちは震えた。

「とは言えそれだけ意味のある物ということは確定した」
「だけどまさかそんなルールがあるなんて思わなかったねー」
「今回のイベントが特殊なんですよ」

 クロユリはようやく口を開いた。
 また相手を誑かして手の内を悟らせないようにする魂胆ではないみたいで安心したが、逆にそれほどまでのことをする龍の髭に付いてアキラは知りたいと思った。
 だからこそ正体を聞くなんて野暮な真似はしない。欲しいのは如何やって入手するかだ。それさえ分かれば後は自力で頑張る。
 もうここまで来たのに引き返すなんてしない。固い信念で尋ねると、クロユリの唇が警戒に言葉を紡いだ。

「方法は至って単純ですよ」
「単純?」
「はい。方法は釣り一択です」

 クロユリは淡々と呟いた。
 アキラたちは言葉の意味を深掘ろうとしたが、如何やらそのままのことのようで首を捻った。まさかここに来て普通に釣りとは誰も想像していなかった。

「何が釣れるかは教えてあげられませんが、場所と方法は教えられますよ」
「教えても良いんですか? 釣ってことは魚系になるんじゃ……」
「ソレを知るのは自分の目で見てからですよ。とりあえず、場所はモミジヤの東にある巨大な湿地帯の中にある池、方法は釣りです」

 クロユリはアキラたちに説明してくれた。
 如何やらこの街の人たちはNightの予想通り龍の髭に関する情報を知っている。
 それもそのはず街の掲示板に突然張り出されたらしく、底に書いてあったことを事細かに教えてくれた。

 話を聞いているだけではまだピンと来なかった。
 とは言え大変なことくらいは一瞬で想像できてしまい、アキラたちは根気がいると全員の中で意思伝達ができた。

「大変そうなイベントだね」
「しかも情報が薄いな。もっと詳しく何が有効か分かればよかったが……」
「そう上手くはいかないね。しっかりできているよー」

 困り顔を浮かべるアキラたち。それを見兼ねてか、クロユリはアドバイスをしてくれた。

「一つアドバイスをしてあげますよ」
「アドバイス?」
「龍の髭を入手できる釣りスポットは時間毎に変化しますよ。同じ場所で連続して来るパターンもあるそうなので、全員で固まるのは控えた方が良いですよ」

 これはかなり有用なアドバイスだった。
 アキラたちはクロユリに感謝すると、早速湿地帯に行くことにした。
 多分今日一日じゃ終わらない。何となくそんな気がした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...