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◇329 大当たりを引いてしまった?

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 明輝は烈火に尋ねる。
 視線の先でさっきから鳴り続けているベルの正体が気になって仕方ない。

「今日のメインイベントだよ」
「メインイベント?」
「ガラポンだよ! ガラポン!」
「ガラポン?」
「回転式抽選機による抽選会だな」

 蒼伊が凄くかたっ苦しい名前で説明してくれた。
 さっきから聞こえて来るガラガラと言う音はガラポンを回す音で、ベルの甲高く心地良い音は何かが当たった音のようだ。

「ちなみに何が当たるの?」
「限定のプラモやデカール、塗料の瓶などが当たるな。他にもクリアファイルやラバーコースター、マグカップなどだな」
「へ、へぇー。ちなみに挑戦回数とか決まっているの?」
「一人一回だけだよ」
「確立渋いね。そんなの狙ったものなんてほとんどの確率で出ないよ!」

 流石に渋すぎる確率。よっぽど商品が少ないのか、逆に商品が多すぎるのか、確率が絞られ過ぎていて当たる気がしない。
 流石の明輝でもげんなりした表情を浮かべてしまったけれど、蒼伊に肩をポンと叩かれた。

「お前も回すんだぞ」
「えっ、私も回すの?」
「当たり前だろ。入場券が引換券になっているんだ。一人でも回さなかったら余ってしまうだろ」
「そ、そう言うものだけど……ラストは?」
「そんなものはない。とにかく回しに行くぞ」

 明輝に興味は一切なかった。
 だけど烈火と蒼伊に急かされる形で前に押し出される。
 目の前にはたくさんの人が並んでいて、男女問わず入り乱れていた。

「うっ……さっきよりも人が多い」
「明輝って別に人混み大丈夫派でしょ?」
「私は大丈夫だけど、まさかこんなに人が並んでいる何て思わなかったよ」
「今時のプラモデル人気ってエグいんだよ? これくらい普通だってー!」

 烈火の普通が明輝の普通には理解できなかった。
 だけど意識を切り替えることで同調し、「そ、そうだね!」とテンションを上げた。

「だけどなんでみんな天を仰いでいるの?」

 明輝の視界には両手を合わせて天を仰ぐ男性や息を荒くしている女性がいた。
 みんな何がそんなに欲しいのか、そこまで明輝はオタクでも本気でもない一般人なので一人熱が冷めた様子で映る。

「今回の特賞がね、百分の一スケールの限定カラーのプラモなんだよ」
「へぇー」
「しかも人気作って言われているゼロノス・ウィングのプラモなんて、ファンにはたまらないでしょ?
「そう言う烈火はファンなの?」
「私は普通だよ。アニメを観るのは好きだけど、作っている時無心になれるのが好きなんだー」

 確かに烈火は普段からテンションが高い。
 だけど何かに集中すると途端にスイッチが入って冷静沈着になる。
 今みたいに無駄に熱が入っている状態が一番面倒で、明輝も対応に困ってしまう。

「そっか。ところで、さっきから叫び声が……」

 明輝が烈火の肩から向こう側を覗き込む。
 すると男の人が大絶叫している姿があった。多分外れたんだろうけど、もの凄い項垂れようでマグカップを貰っている。可哀そうだなと明輝は思ってしまったが、気にしたら負けだと思い意識を切り替えて振り切る。

「あっ、もうすぐだよ」
「そうだな。烈火、お前が先に回せ。後に確立を持って来い」
「あー、それ私を踏み台にしているでしょ?」
「当たり前だ」

 烈火はちょっと怒っていた。だけど蒼伊は完全無視でいなしてしまう。
 何だかここだけ見るとGAMEの中と同じだなーと明輝は黄昏た。

「もう、絶対引いてあげるからねー」
「はいはい。頑張れ」

 烈火はムッとした表情を浮かべる。だけど気合がみなぎっていて、自分の番になった瞬間、右手に全力を注いだ。

「整理券を見せてください」
「はい」
「……確認しました。ゆっくり回してくださいね」

 店員の女性がパチンと整理券に穴を開けた。アレが確認の証明になるみたいでちょっとだけ懐古的だった。

「ふぅ……そりゃぁ!」

 烈火は天を仰いだ。よっぽど欲しいみたいで、グルグルと抽選機を回す。
 ガラガラと音が鳴り、中のカラフルな玉が転がった。
 回転が弱まる。レバーから指を離すと、白い玉が出てきた。烈火は絶望的な顔をし、ベルがカランカラーンと鳴り響く。

「大当たり、限定デカールをプレゼント!」
「うおっ……ま、まあいっか」

 烈火は諦めた様子だ。列から離れ景品を受け取る最中、蒼伊が「ドンマイ」と声を掛けた。
 煽らないで上げて欲しいと思いつつ、明輝も一歩前に詰める。
 一体何色が辺りなのかさっぱりな中、次は蒼伊の番。蒼伊も整理券を渡すとゆっくり力なく回す。すると緑色の玉が出てくる。今度は何を貰えるのかな?

「大当たり、限定塗料をプレゼント!」
「四等か。まあぼちぼちだな」

 蒼伊も列から外れた。ちょっとだけ嬉しそうなので、プラモが欲しかったわけではなさそうだ。
 列から離れた蒼伊。烈火は「ドンマーイ」と声を掛けるが全く響いていなかった。心の傷の差が少ないから仕方ない。

「次の方どうぞ」
「あっ、はい」
「整理券を見せてください」
「わ、分かりました。はい」

 明輝の番になった。整理券を差し出しパチンと穴を開けて貰う。
 抽選機のレバーに指をそっと掛けると普通に、何の期待も抱くことはなく回した。

(まあ何が出ても私には関係無いんだけどね……あはは、気楽でいいよ)

 明輝は抽選機をグルグル回す。中身がガラガラと音を立て、玉が出て来るのを待つ。
 何色が出ても関係ない。そう思った明輝が出した色は……

「あっ、出た」

 他の色には無い輝きを秘めていた。金色の光沢感のある玉がレザー質の下敷きが敷かれた箱の中に乗り存在感を放つのだった。
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