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◇328 蒼伊は何を買ったの?
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「計二千五百六十円になります」
「はい」
明輝は財布の中からお金を取り出してようやく商品を購入する。
ここまで長かった。とっても長く感じた。レジは三つもあるのにどれも同じくらい人が並んでいて、しかも蒸し暑い。感覚は取っていたのにこんなことになるなんて、明輝は無事に買えたのはいいけれど、まさかこんなにとは……GAMEの中よりもキツかった。
「何だろう、ここ最近で一番疲れたよ」
「お疲れー明輝。無事買えて良かったねー」
「うん。後コレ貰った」
「おっ、限定デカール。しかも私のとはちょっと違うね」
正直これが何なのかよく分かっていなかった。
だけど烈火の反応から結構良いものを手に入れたようで、「うーん、そうなの?」と微妙な反応をしてしまった。
だけどこれ以上話が広がる気配が無く、合いの手も無いのでキョロキョロ見回す。
「そう言えば蒼伊は?」
「蒼伊は上の階に行ったよ」
「上の階? 上の階って確か……」
烈火は階段を凝視する。
隣の壁に何階と書かれたプレートが貼ってあり、その下にはここが何メインに据えている回なのか箇条書きで書いてあった。
そこから案内図を見て、上の階を確認する。明輝と烈火が蒼伊が何処に行ったのか捜していると、急に後ろから声を掛けられた。
「呼んだか」
明輝と烈火は「うわぁ!」と驚いた。
振り返ってみると、蒼伊が紙袋を手にして突っ立っていた。
「そんなに驚く必要も無いだろ」
「あ、蒼伊……いつからそこに居たの?」
「今だ。それで何だ? 私を捜していたのか?」
「う、うん。何処の階に行ったのかなって……その紙袋は?」
明輝は蒼伊に手に持っている紙袋が気になった。
ずっしりと重厚感があって、底の方が盛り上がっていた。
「中に入っているのは塗料と液体樹脂だ」
「塗料と液体樹脂? 何に使うの?」
「塗料はプラモデルを塗るためだが液体樹脂は3Dプリンター用だな。丁度切らしていたから新しいものを買っておきたかったんだ」
「そ、そうなんだ……あれ?」
別に蒼伊がわざわざ買わなくてもよがらが用意しているのでは? と元も子もないことを思ってしまう。だけどそれをわざわざ言う必要は全く無いので、明輝は押し黙ることにした。
それよりも気になるのは量と種類だ。同じような色の塗料の瓶がたくさん入っていて、そんなに色を変えるのかな?
「馬鹿みたいに塗料を買っているなと思っただろ」
「そ、そんな酷いことは思ってないよ。ただ、こんなに塗料って使うのかなって」
「一度に使うわけが無いだろ。それに塗料は普通に使うと濃すぎたり薄すぎたりして自分の狙っている色と異なることも多い。自分で色配分を調整するためにも同系統の塗料を買い込んでいて損はない」
「ほ、本格的だ」
明輝は言葉を失う。本格的にのめり込んでいる人によっては当たり前のことだとしても、浅いところでプカプカしているような明輝からしてみれば、遠くて深いなと思ってしまう。
「おい、ドン引きするな」
「ど、ドン引きなんてしてないよ! それより塗料ってそんなに種類があるんだね」
明輝は珊瑚から貰った塗料の瓶を取り出した。
烈火と蒼伊は気になったのか、「それは何だ?」と尋ねる。
明輝もよく分かっていないので蒼伊に手渡すと、「はっ!?」と驚かれてしまった。何かおかしなことでもあるのかな?
「如何したの、蒼伊?」
「明輝。如何してコレをお前が持っているんだ」
「如何してって言われても……貰っただけだよ?」
「貰った? ……そんなはずないだろ」
「そんなはずあるんだけど……」
何故か蒼伊は信じてくれない。如何してかなと思った明輝は直接尋ねる。
すると蒼伊はこう言った。
「このサフェーサーはまだ発売されていない商品だぞ。しかも限定品。それをお前が持っているのはおかしいだろ」
「そ、そうなんだ……まだ発売されてなかったんだね。結構良いものを貰っちゃったみたい」
珊瑚はそんな良いものをくれたんだと、明輝はちょっとだけ嬉しいのとは裏腹にこれは本気で取り組まないと怒られちゃうと思った。
一人で納得している明輝をよそに、首を捻る蒼伊だったが烈火に耳打ちされて全てを察した。
「なるほど、そんなことがあったのか」
「うん。明輝ってこういう事にも運良いよねー。しかも限定品のサフェーサーを貰っちゃって、コレはガチで作んないとね」
「うっ……やっぱりそう言う展開になる?」
「当たり前だよ。早く作らないとって……その前にやることがあったね」
烈火は目の色を変えた。
「待ってましたと」とばかりに拳をギュッと作り、紙袋の紐部分を強く握る。
けれどその空気に乗り切れていない人が一人居た。
明輝は首を捻り、烈火の視線の先を注視する。
「烈火、やることって何?」
明輝はおかしな質問をした。烈火は「嘘でしょ?」と言いたそうな表情を浮かべる。完全にドン引きされた後で、明輝は何が何だか分からない。
だけどその間もずっと聴こえてくる音があった。
カランカラーンとベルが鳴らされ、お店の中いっぱいに響き渡っていた。
「はい」
明輝は財布の中からお金を取り出してようやく商品を購入する。
ここまで長かった。とっても長く感じた。レジは三つもあるのにどれも同じくらい人が並んでいて、しかも蒸し暑い。感覚は取っていたのにこんなことになるなんて、明輝は無事に買えたのはいいけれど、まさかこんなにとは……GAMEの中よりもキツかった。
「何だろう、ここ最近で一番疲れたよ」
「お疲れー明輝。無事買えて良かったねー」
「うん。後コレ貰った」
「おっ、限定デカール。しかも私のとはちょっと違うね」
正直これが何なのかよく分かっていなかった。
だけど烈火の反応から結構良いものを手に入れたようで、「うーん、そうなの?」と微妙な反応をしてしまった。
だけどこれ以上話が広がる気配が無く、合いの手も無いのでキョロキョロ見回す。
「そう言えば蒼伊は?」
「蒼伊は上の階に行ったよ」
「上の階? 上の階って確か……」
烈火は階段を凝視する。
隣の壁に何階と書かれたプレートが貼ってあり、その下にはここが何メインに据えている回なのか箇条書きで書いてあった。
そこから案内図を見て、上の階を確認する。明輝と烈火が蒼伊が何処に行ったのか捜していると、急に後ろから声を掛けられた。
「呼んだか」
明輝と烈火は「うわぁ!」と驚いた。
振り返ってみると、蒼伊が紙袋を手にして突っ立っていた。
「そんなに驚く必要も無いだろ」
「あ、蒼伊……いつからそこに居たの?」
「今だ。それで何だ? 私を捜していたのか?」
「う、うん。何処の階に行ったのかなって……その紙袋は?」
明輝は蒼伊に手に持っている紙袋が気になった。
ずっしりと重厚感があって、底の方が盛り上がっていた。
「中に入っているのは塗料と液体樹脂だ」
「塗料と液体樹脂? 何に使うの?」
「塗料はプラモデルを塗るためだが液体樹脂は3Dプリンター用だな。丁度切らしていたから新しいものを買っておきたかったんだ」
「そ、そうなんだ……あれ?」
別に蒼伊がわざわざ買わなくてもよがらが用意しているのでは? と元も子もないことを思ってしまう。だけどそれをわざわざ言う必要は全く無いので、明輝は押し黙ることにした。
それよりも気になるのは量と種類だ。同じような色の塗料の瓶がたくさん入っていて、そんなに色を変えるのかな?
「馬鹿みたいに塗料を買っているなと思っただろ」
「そ、そんな酷いことは思ってないよ。ただ、こんなに塗料って使うのかなって」
「一度に使うわけが無いだろ。それに塗料は普通に使うと濃すぎたり薄すぎたりして自分の狙っている色と異なることも多い。自分で色配分を調整するためにも同系統の塗料を買い込んでいて損はない」
「ほ、本格的だ」
明輝は言葉を失う。本格的にのめり込んでいる人によっては当たり前のことだとしても、浅いところでプカプカしているような明輝からしてみれば、遠くて深いなと思ってしまう。
「おい、ドン引きするな」
「ど、ドン引きなんてしてないよ! それより塗料ってそんなに種類があるんだね」
明輝は珊瑚から貰った塗料の瓶を取り出した。
烈火と蒼伊は気になったのか、「それは何だ?」と尋ねる。
明輝もよく分かっていないので蒼伊に手渡すと、「はっ!?」と驚かれてしまった。何かおかしなことでもあるのかな?
「如何したの、蒼伊?」
「明輝。如何してコレをお前が持っているんだ」
「如何してって言われても……貰っただけだよ?」
「貰った? ……そんなはずないだろ」
「そんなはずあるんだけど……」
何故か蒼伊は信じてくれない。如何してかなと思った明輝は直接尋ねる。
すると蒼伊はこう言った。
「このサフェーサーはまだ発売されていない商品だぞ。しかも限定品。それをお前が持っているのはおかしいだろ」
「そ、そうなんだ……まだ発売されてなかったんだね。結構良いものを貰っちゃったみたい」
珊瑚はそんな良いものをくれたんだと、明輝はちょっとだけ嬉しいのとは裏腹にこれは本気で取り組まないと怒られちゃうと思った。
一人で納得している明輝をよそに、首を捻る蒼伊だったが烈火に耳打ちされて全てを察した。
「なるほど、そんなことがあったのか」
「うん。明輝ってこういう事にも運良いよねー。しかも限定品のサフェーサーを貰っちゃって、コレはガチで作んないとね」
「うっ……やっぱりそう言う展開になる?」
「当たり前だよ。早く作らないとって……その前にやることがあったね」
烈火は目の色を変えた。
「待ってましたと」とばかりに拳をギュッと作り、紙袋の紐部分を強く握る。
けれどその空気に乗り切れていない人が一人居た。
明輝は首を捻り、烈火の視線の先を注視する。
「烈火、やることって何?」
明輝はおかしな質問をした。烈火は「嘘でしょ?」と言いたそうな表情を浮かべる。完全にドン引きされた後で、明輝は何が何だか分からない。
だけどその間もずっと聴こえてくる音があった。
カランカラーンとベルが鳴らされ、お店の中いっぱいに響き渡っていた。
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