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◇324 地下一階から四階まで!?
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オープン時間になった。それと同時に列が一斉に前進する。
明輝は突然の動きにびっくりするものの、後ろから押し倒されないようにゆっくり進んだ。
慌てず騒がずがモットーで、みんな整理券を以って入っているので、特に込み合いになったり蹴落とし合いになることもなく、順調にお店の中に入った。周りの建物と同じくらい大きなビルで、外観のラッピングもパステル系のピンクとブルーの二色で構成されている。看板も大きくて凄く目立った。
「うわぁ寒い……って思ったら暑い……」
お店の中に入るとエアコンが冷房になっていた。
なのにたくさん人が流れ込んできて、みんな分厚いコートやセーターを重ね着しているせいか、熱気が相まってそこまで迫苦もないはずの建物が一瞬にして蒸し暑くなる。
明輝はくらくらはしなかった。だけどあまりの人混みの多さに流されそうになる。
何とか烈火と蒼伊を捜したけれど、まずは蒼伊の方が不安だ。
真後ろにいたはずの蒼伊の姿が遠くにあり、階段を上っていく。
烈火はと言うと他のお客さんと一緒に群れを成していた。
完全に興味の無い枠に押し込まれ、明輝は悩みながらも行動に移る。
「せっかく来たんだから何か見よう」
買う気が無いのに見ても良いのかな?
明輝はちょっと悩んだけれど、あえて意識を切り替えてスルッとプラモデルの並んでいる棚へと移った。
たくさんのショーケースには既に完成されたプラモデルが並んでいて、色々なメーカー、色々な大きさのキット? が飾られていた。きっと何かの再現何だろうけど、この手の界隈には興味もないし明るくもない明輝はポカーンと眺めていた。
「カッコいい」
とは言え明輝にも少年の心は流石に宿っていた。
普通にカッコいいものや可愛いものが好きな精神は誰もが平等に持っていて、明輝にもあくまで普通レベルではあるが、その感性は残されている。
その結果、少しだけ膝を折って飾ってある商品に目を奪われてしまった。
「何で白いロボットにはみんな翼が生えているんだろ?」
初歩の初歩みたいなことを口走る。
しかし周りに居る人たちには聞かれていない上に、ショーケースをガン見しているのは明輝だけなので誰も答えてくれないし、変な目で見る客もいなかった。
「まあ、そうだよね」と一人ポツポツ答える明輝。
そんな中、明輝の隣に誰か立った。ショーケースに反射して顔が映り込むと、唇が微かに動く。
「それがウィング系の特徴だからだよ」
「えっ?」
まるで明輝の質問に答えてくれたみたいだ。
チラッと視線を右に向けると、そこに居たのは髪の色をパステル系のピンクとブルースのツートンカラーに染めて白くて細いリボンで結んだ少女だった。
年齢的には同年代くらい。多分、一つか二つの差しかない。
薄い唇にピンク系のリップを塗り、ラフな格好で参上した。
「えっと……そうなの?」
「うん。鋼翼戦記イカロス・ウィングは今も続くウィングシリーズの一作目で、当時はクオリティを上げるために様々な試行錯誤を繰り返し、難しい設定を淹れないようにしながらそれでいておもちゃやプラモデルの販促も担うために頭を悩ませていたみたいなの。その結果生まれたのがこの二翼の翼で、展開することでまた違った見え方をするポージングを追求したのが発端何だよ」
「へ、へぇー」
明輝は押し寄せる並みの勢いのように、どたどたと情報が流れ込む。
すると少女はショーケースに飾ってあるロボットの一つを指さした。
「ほら見て、この二機。スペリオン・ウィングとライバル機のイグジッド・クロウの最終決戦の描写を細かく再現してる」
「そ、そうなの?」
「そうだよ。この辺の背景の再現細かいでしょ?」
少女が指を指している辺りを明輝も注視する。
宇宙ゴミだと思うけど、一つ一つが細かく色分けされていた。
そのおかげで光を下手に当てなくても陰影が付いていて、目の前のロボットが映えている。手の込み方はそれだけじゃなくて、ボロボロと溶けている部分も過熱して溶かしていて、細い線が千切れた配線みたいになっていた。
明輝は「うわぁ、凄い」と単調な感想しか出なかったけど、それでも匠の腕だと一発で理解できた。
「こんなの作れるんだ。凄い……」
「でしょー。でもね、目の前の機体も見てよ。特に足下、分かるかな?」
「足下? あれ、影が付いてる!?」
光は上から当たっていた。
なのに影はちゃんと後ろの太陽に当たった方向に伸びていて、このショーケースが光を透過させないことを物語る。それじゃあ如何して? と首を捻る明輝はあることに気が付く。
「もしかして影も作ってるの?」
「正解!」
流石にレベルが違った。
明輝は詳しく解説して貰ってようやく気が付くことができたけど、このロボットを作った人は相当手の込んだ職人さんだと思い知らされる。
「こんなのが作れる人は天才だよ。きっとプラモデルを作るのが好き何だよね」
「そ、そう? うーん、……多分ね」
少女はたどたどしく答える。
明輝は首を捻ってしまうが、再びショーケースへと視線が移り、もう少しこの世界観に浸ることにした。
明輝は突然の動きにびっくりするものの、後ろから押し倒されないようにゆっくり進んだ。
慌てず騒がずがモットーで、みんな整理券を以って入っているので、特に込み合いになったり蹴落とし合いになることもなく、順調にお店の中に入った。周りの建物と同じくらい大きなビルで、外観のラッピングもパステル系のピンクとブルーの二色で構成されている。看板も大きくて凄く目立った。
「うわぁ寒い……って思ったら暑い……」
お店の中に入るとエアコンが冷房になっていた。
なのにたくさん人が流れ込んできて、みんな分厚いコートやセーターを重ね着しているせいか、熱気が相まってそこまで迫苦もないはずの建物が一瞬にして蒸し暑くなる。
明輝はくらくらはしなかった。だけどあまりの人混みの多さに流されそうになる。
何とか烈火と蒼伊を捜したけれど、まずは蒼伊の方が不安だ。
真後ろにいたはずの蒼伊の姿が遠くにあり、階段を上っていく。
烈火はと言うと他のお客さんと一緒に群れを成していた。
完全に興味の無い枠に押し込まれ、明輝は悩みながらも行動に移る。
「せっかく来たんだから何か見よう」
買う気が無いのに見ても良いのかな?
明輝はちょっと悩んだけれど、あえて意識を切り替えてスルッとプラモデルの並んでいる棚へと移った。
たくさんのショーケースには既に完成されたプラモデルが並んでいて、色々なメーカー、色々な大きさのキット? が飾られていた。きっと何かの再現何だろうけど、この手の界隈には興味もないし明るくもない明輝はポカーンと眺めていた。
「カッコいい」
とは言え明輝にも少年の心は流石に宿っていた。
普通にカッコいいものや可愛いものが好きな精神は誰もが平等に持っていて、明輝にもあくまで普通レベルではあるが、その感性は残されている。
その結果、少しだけ膝を折って飾ってある商品に目を奪われてしまった。
「何で白いロボットにはみんな翼が生えているんだろ?」
初歩の初歩みたいなことを口走る。
しかし周りに居る人たちには聞かれていない上に、ショーケースをガン見しているのは明輝だけなので誰も答えてくれないし、変な目で見る客もいなかった。
「まあ、そうだよね」と一人ポツポツ答える明輝。
そんな中、明輝の隣に誰か立った。ショーケースに反射して顔が映り込むと、唇が微かに動く。
「それがウィング系の特徴だからだよ」
「えっ?」
まるで明輝の質問に答えてくれたみたいだ。
チラッと視線を右に向けると、そこに居たのは髪の色をパステル系のピンクとブルースのツートンカラーに染めて白くて細いリボンで結んだ少女だった。
年齢的には同年代くらい。多分、一つか二つの差しかない。
薄い唇にピンク系のリップを塗り、ラフな格好で参上した。
「えっと……そうなの?」
「うん。鋼翼戦記イカロス・ウィングは今も続くウィングシリーズの一作目で、当時はクオリティを上げるために様々な試行錯誤を繰り返し、難しい設定を淹れないようにしながらそれでいておもちゃやプラモデルの販促も担うために頭を悩ませていたみたいなの。その結果生まれたのがこの二翼の翼で、展開することでまた違った見え方をするポージングを追求したのが発端何だよ」
「へ、へぇー」
明輝は押し寄せる並みの勢いのように、どたどたと情報が流れ込む。
すると少女はショーケースに飾ってあるロボットの一つを指さした。
「ほら見て、この二機。スペリオン・ウィングとライバル機のイグジッド・クロウの最終決戦の描写を細かく再現してる」
「そ、そうなの?」
「そうだよ。この辺の背景の再現細かいでしょ?」
少女が指を指している辺りを明輝も注視する。
宇宙ゴミだと思うけど、一つ一つが細かく色分けされていた。
そのおかげで光を下手に当てなくても陰影が付いていて、目の前のロボットが映えている。手の込み方はそれだけじゃなくて、ボロボロと溶けている部分も過熱して溶かしていて、細い線が千切れた配線みたいになっていた。
明輝は「うわぁ、凄い」と単調な感想しか出なかったけど、それでも匠の腕だと一発で理解できた。
「こんなの作れるんだ。凄い……」
「でしょー。でもね、目の前の機体も見てよ。特に足下、分かるかな?」
「足下? あれ、影が付いてる!?」
光は上から当たっていた。
なのに影はちゃんと後ろの太陽に当たった方向に伸びていて、このショーケースが光を透過させないことを物語る。それじゃあ如何して? と首を捻る明輝はあることに気が付く。
「もしかして影も作ってるの?」
「正解!」
流石にレベルが違った。
明輝は詳しく解説して貰ってようやく気が付くことができたけど、このロボットを作った人は相当手の込んだ職人さんだと思い知らされる。
「こんなのが作れる人は天才だよ。きっとプラモデルを作るのが好き何だよね」
「そ、そう? うーん、……多分ね」
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明輝は首を捻ってしまうが、再びショーケースへと視線が移り、もう少しこの世界観に浸ることにした。
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