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◇323 こんなに並ぶ何て思わなかった
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一月三日。三が日最終日。
外は元日よりも寒くて、空模様は少し悪いが、今日は雨が降る予報は出ていなかった。
風は強くないものの、全身を貫くような寒気が走る。もしかして風邪でも引くのかな? 明輝は鼻をムズムズさせていた。
「大丈夫明輝? 風邪引かないでよ」
「風邪は引かないと思うけど……寒いね」
「そうだねー。寒いねー」
「……烈火はそうかもね。ねっ、蒼伊」
「……そうだな」
明輝はジト目になり、烈火から後ろの蒼伊に視線を向ける。
すると蒼伊も若干寒いのか単調な返事をする。
それを受けた明輝は自分の周りに居る人たちをチラッと見た。
たくさんの人が一列になって並んでいる。前にも後にも凄い数だ。
どうしてこんなに集まるんだろうと、やっぱり都会だから? かなと勝手な推理をしてみた。
「まさかこんなに人が並んでる何て……もう二時間経つよ?」
「普通だ。大きな同人誌即売会になると、入場時間前にスタンバイしている常連もいるんだぞ」
「……その口調、行ったことがあるんだよね?」
「当たり前だ。とは言え、人混みが凄まじくて長時間滞在はできなかったがな」
蒼伊は苦い思い出を思い出し、表情を歪める。
明輝は触れない方向で話を進めると、とりあえず何でこんなに並んでいるのか気になった。
「これってみんなおんなじお店なんだよね? 如何してこんなに長時間並んでいるのかな?」
「新しいプラモ専門店ができたからだよ!」
「それは分かってるけど、凄い人だね。何かあるの?」
「オープンセール大体こうだろ」
蒼伊は淡々と口にする。
もともと今の日本人は長時間待つことには別に慣れているので苦に思わない人が多い。特に興味のある人は尚更だ。
だけど興味がほとんど無い人にとってはつまらない以外の何物でもない。
現にプラモデルにほぼ興味の無い明輝にとって、西東京に新しくできたこの行列の根本に当たるプラモ専門店にミリも興味を抱けなかった。
「プラモデルが好きな人はたくさんいるみたいだけど……やっぱり東京だからかな?」
「そうだな。東京は昔から人が多い。とは言え、今の時代地方も地方とは呼べないくらい発展している場所が多いからな。一概に東京だけが多い訳じゃない」
蒼伊は知識と兼ね合わせて説明してくれる。
だけどこれだけ人が集まっているのは何か意味があるはずだ。
そこで明輝が並ぶことになった原因の張本人、烈火に今日のイベント? 的なものを尋ねる。するとカチッとスイッチが入ったのか、にこにこ笑顔で教えてくれる。
「んふふ。そっか明輝は知らないんだよねー」
「う、うん。ってその言い方だと蒼伊は知っているの?」
「まあな。私もそれを目当てで来た」
「そ、そうだったんだ……あれ? それじゃあ私ってただの人数のかさまし要員?」
明輝は気が付かなくても良いことに気が付く。
ちょっとだけ気を落としたが、暇だったので別に良いと意識を切り替える。
「ごめんね明輝」
「いいよ。それより目当てのプラモって何?」
明輝はもう一度聞いてみる。するとスマホを取り出した烈火が検索した物を明輝に見せる。
何かなと思いスマホの画面に食い付くと、プラモのパッケージが表示されていた。
男性が好きそうな、ちょっとゴツくてカッコ良い、巨大な翼を展開した人型ロボットだった。
「えーっと、何コレ?」
「何って、今放送中のSFアニメの主人公機。それの新規デカールと翼のエフェクトパーツを追加したパールホワイトカラーの百分の一スケールプラモデルだって。初回生産限定盤は抽選でお一人様一つまでだからね。しかもこの地域だとここだけ! ねー、凄いよねー」
烈火は楽しそうに話してくれる。
だけど明輝にはあまり伝わらず、烈火の止めどない熱量だけが波のように襲い掛かる。
「そ、そう何だ。へぇー」
「へぇーって、明輝もアニメは観るでしょ?」
「み、観るけど……私はSF系より緩い日常系とか異世界スローライフものの方が好きかな? SFも観ないわけじゃないけど……ちなみにコレ何ってシリーズなの?」
「これはね。二十五年続いている傑作SFアニメ、鋼翼戦記イカロス・ウィングだよ」
「鋼翼戦記……あっ、聞いたことある! 確か二、三年に一回新作テレビアニメシリーズが展開されているっていう」
「そうそう。ほら、ファーストシリーズは中学の時に全話観たでしょ?」
今になって思い出した。中学の夏休み、全五十話もあるSFアニメを一週間かけてちょこちょこ観ていた。
かなりクオリティが高くて、難しい設定がチラホラ出て来たけど、あれはなかなか面白かったかも? と明輝は納得する。
「そっかー。あのシリーズ何だね」
「そうそう。だから明輝も興味出て来たでしょ?」
「えっ? ……別にそんなにだよ」
「あっ……まあ明輝らしいね」
何だか癪に障った……訳じゃないけれど、明輝は「うーん」と唸り声を上げる。
そうこうしているうちに列は少しだけ前に進み、もう少しで開店するようだ。
外は元日よりも寒くて、空模様は少し悪いが、今日は雨が降る予報は出ていなかった。
風は強くないものの、全身を貫くような寒気が走る。もしかして風邪でも引くのかな? 明輝は鼻をムズムズさせていた。
「大丈夫明輝? 風邪引かないでよ」
「風邪は引かないと思うけど……寒いね」
「そうだねー。寒いねー」
「……烈火はそうかもね。ねっ、蒼伊」
「……そうだな」
明輝はジト目になり、烈火から後ろの蒼伊に視線を向ける。
すると蒼伊も若干寒いのか単調な返事をする。
それを受けた明輝は自分の周りに居る人たちをチラッと見た。
たくさんの人が一列になって並んでいる。前にも後にも凄い数だ。
どうしてこんなに集まるんだろうと、やっぱり都会だから? かなと勝手な推理をしてみた。
「まさかこんなに人が並んでる何て……もう二時間経つよ?」
「普通だ。大きな同人誌即売会になると、入場時間前にスタンバイしている常連もいるんだぞ」
「……その口調、行ったことがあるんだよね?」
「当たり前だ。とは言え、人混みが凄まじくて長時間滞在はできなかったがな」
蒼伊は苦い思い出を思い出し、表情を歪める。
明輝は触れない方向で話を進めると、とりあえず何でこんなに並んでいるのか気になった。
「これってみんなおんなじお店なんだよね? 如何してこんなに長時間並んでいるのかな?」
「新しいプラモ専門店ができたからだよ!」
「それは分かってるけど、凄い人だね。何かあるの?」
「オープンセール大体こうだろ」
蒼伊は淡々と口にする。
もともと今の日本人は長時間待つことには別に慣れているので苦に思わない人が多い。特に興味のある人は尚更だ。
だけど興味がほとんど無い人にとってはつまらない以外の何物でもない。
現にプラモデルにほぼ興味の無い明輝にとって、西東京に新しくできたこの行列の根本に当たるプラモ専門店にミリも興味を抱けなかった。
「プラモデルが好きな人はたくさんいるみたいだけど……やっぱり東京だからかな?」
「そうだな。東京は昔から人が多い。とは言え、今の時代地方も地方とは呼べないくらい発展している場所が多いからな。一概に東京だけが多い訳じゃない」
蒼伊は知識と兼ね合わせて説明してくれる。
だけどこれだけ人が集まっているのは何か意味があるはずだ。
そこで明輝が並ぶことになった原因の張本人、烈火に今日のイベント? 的なものを尋ねる。するとカチッとスイッチが入ったのか、にこにこ笑顔で教えてくれる。
「んふふ。そっか明輝は知らないんだよねー」
「う、うん。ってその言い方だと蒼伊は知っているの?」
「まあな。私もそれを目当てで来た」
「そ、そうだったんだ……あれ? それじゃあ私ってただの人数のかさまし要員?」
明輝は気が付かなくても良いことに気が付く。
ちょっとだけ気を落としたが、暇だったので別に良いと意識を切り替える。
「ごめんね明輝」
「いいよ。それより目当てのプラモって何?」
明輝はもう一度聞いてみる。するとスマホを取り出した烈火が検索した物を明輝に見せる。
何かなと思いスマホの画面に食い付くと、プラモのパッケージが表示されていた。
男性が好きそうな、ちょっとゴツくてカッコ良い、巨大な翼を展開した人型ロボットだった。
「えーっと、何コレ?」
「何って、今放送中のSFアニメの主人公機。それの新規デカールと翼のエフェクトパーツを追加したパールホワイトカラーの百分の一スケールプラモデルだって。初回生産限定盤は抽選でお一人様一つまでだからね。しかもこの地域だとここだけ! ねー、凄いよねー」
烈火は楽しそうに話してくれる。
だけど明輝にはあまり伝わらず、烈火の止めどない熱量だけが波のように襲い掛かる。
「そ、そう何だ。へぇー」
「へぇーって、明輝もアニメは観るでしょ?」
「み、観るけど……私はSF系より緩い日常系とか異世界スローライフものの方が好きかな? SFも観ないわけじゃないけど……ちなみにコレ何ってシリーズなの?」
「これはね。二十五年続いている傑作SFアニメ、鋼翼戦記イカロス・ウィングだよ」
「鋼翼戦記……あっ、聞いたことある! 確か二、三年に一回新作テレビアニメシリーズが展開されているっていう」
「そうそう。ほら、ファーストシリーズは中学の時に全話観たでしょ?」
今になって思い出した。中学の夏休み、全五十話もあるSFアニメを一週間かけてちょこちょこ観ていた。
かなりクオリティが高くて、難しい設定がチラホラ出て来たけど、あれはなかなか面白かったかも? と明輝は納得する。
「そっかー。あのシリーズ何だね」
「そうそう。だから明輝も興味出て来たでしょ?」
「えっ? ……別にそんなにだよ」
「あっ……まあ明輝らしいね」
何だか癪に障った……訳じゃないけれど、明輝は「うーん」と唸り声を上げる。
そうこうしているうちに列は少しだけ前に進み、もう少しで開店するようだ。
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