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◇320 宇宙の狭間に立って
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明輝たちは指先を隕石に触れていた。
それぞれ異なる感触を感じる。ザラザラしたり、プニプニしたり、硬くて押し返せなかったり、全員が不思議な感触を体験する。
「凄いな。これが隕石か」
「何だか面白いね。でも隕石ってもっと堅いイメージがあったけど?」
「この隕石は普通ではないようですね。如何普通ではないかと問われれば難しいですが、普通ではありません」
「まあ訳分かんないわよね」
それぞれぺちゃくちゃ語る。一方で明輝は黙ったまま。
指先が隕石に触れたまま瞳孔すら動かず、瞬きもしていなかった。
「明輝?」
烈火が声を掛けた。しかし耳に入らない。
肩を揺すって見ても明輝に烈火の声が届くことはない。これは異常だと思い、烈火は耳元で悪いとは思いつつも心配の余り「明輝!」と叫んでいた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
明輝は不思議な所にいた。
頭がいつもよりもクリアで、全身の感覚が研ぎ澄まされていた。
だけど視覚情報がおかしかった。聴覚情報も変だった。
何も見えない訳じゃないけれど、暗闇の中に光の点が無数に広がる。
音が何も聞こえない訳じゃないけれど、蒼伊や烈火の声はさっぱりだった。
「ここは何処?」
明輝は瞬きをしてしまった。足が地に着いているはずなのに何故か底が無い様に錯覚する。ここは何処? 一体何が起こったの? 明輝は困惑の海に飛び込んでいた。
「誰か居ないの! ねえ、誰か!」
明輝は大きな声を上げていた。
しかし何も返ってこない。声が反響することもなく、何処までも透き通って消えていく。
流石の明輝も全身が震え出し、怖くなってきた。だけどその度に意識を切り替える。
「もしかしてコレが隕石の効果? 不思議すぎるよ!」
明輝は何かに気が付いた。
ここが隕石の見せた幻想的な世界だとすれ場確かに面白いしファンタジーだ。スピリチュアルを通り越し、GAMEの世界の情景を現実世界に持ち出したような、そんな感覚をキャッチすると、明輝のクリアな頭に雑音にも及ばない優しい声が聞こえた。
「聞こえていますか?」
「えっ!?」
明輝は顔を上げた。目の前には誰も居ない。だけど振り返ってみると、そこに何かいた。
影のようになっているけれど、意識を集中して目を凝らせばその姿は段々と見知ってはいない姿に変貌する。
「もしかして龍?」
何処かで見覚えがある気がした。
度々明輝の意識の中に出て来る龍の姿をしていた。
けれど今日は何処か違う。GAMEの中では一回だけその姿を見たけれど、あの時は触れそうだった。だけど今日は触れる感じではなく、蜃気楼のような尊い存在に感じる。
「あの時の龍だよね?」
「リュー? それが私の名前ですか?」
「いや違うけど……えっ、もしかして別固体なの!?」
そんなとんでも確立が果たしてあるのか。明輝は一人でボケとツッコミをした気分になるも、龍は明輝に優しく語りかける。
何だか名前が欲しそうな様子で、ジッと目を凝らして首を近づけた。
目の前に龍の頭があり、怖いと思うよりも先に手が伸ばせそうで興奮した。
「ほとんど初見だけど、何で現実に居るの?」
「ここは貴女のパーソナルスペースですよ。私は貴女のパーソナルスペースの片隅から貴女に声を掛けているんです、明輝」
「しかもアキラ呼びじゃない……って私は本名で遊んでるんだった。うーん、ここに居ると私が私じゃないみたい……」
「いいえ、ここは貴女自身の世界です。この無限に広がる宇宙こそが、明輝本来の世界。幾重にも変化し進化する。まさに貴女の意識の切り替えを拡張し体現したような世界ですね」
「そ、そうなのかな?」
明輝は説き伏せられてしまった。
だけど頭を抱えるのは当然で、むしろ頭が痛い。
「えっと、霊龍は如何してここに居るの?」
「あちらの世界から引き上げたのは貴女ですよ明輝。私は構いませんが、今まで一方通行でしたからね」
「一方通行? もしかしてあの文字化けのメッセージって!」
「電磁波に言葉を乗せるのが大変でした」
霊龍はよっぽど明輝と話したかったようだ。
気が付いてあげれなかった明輝は「ごめんね」と謝るも、霊龍は「いいえ、大丈夫です」と優しくしてくれた。
「現にこうして話ができているんです。私は明輝と話ができて嬉しいです」
「そうなの?」
「はい。もう私は、貴女の一部ですから。明輝が嬉しくなれば私も嬉しく、明輝が悲しくなれば私も悲しい」
一心同体とはまさにこのこと。【ユニゾンハート】は心さえも共有する。
明輝は瞬きをしてしまうと、霊龍の頭が明輝にすり寄っていた。
「もう時間ですね」
「時間?」
「はい。外の世界で皆さんが明輝のことを心配しています」
ってことは現実で私がどんな状況なの?
明輝は不安になると同時に急いで戻らないとと思う。
「ここで見たことのほとんどは記憶に残らないかもしれません」
「えっ!?」
「でも私はいつでもそばにいます。暇な時にでも、【ユニゾンハート】:【ファーストコール】を使ってみてください」
霊龍の姿が遠くなる。
その姿は蜃気楼のように消え始め、揺らめく陽炎になる。
もう手を伸ばすこともできない。だけど消えていく最中、意識の変革で一瞬だけ霊龍の姿が優しい女の人に見えてしまう明輝だった。何とも不思議な体験だった。
それぞれ異なる感触を感じる。ザラザラしたり、プニプニしたり、硬くて押し返せなかったり、全員が不思議な感触を体験する。
「凄いな。これが隕石か」
「何だか面白いね。でも隕石ってもっと堅いイメージがあったけど?」
「この隕石は普通ではないようですね。如何普通ではないかと問われれば難しいですが、普通ではありません」
「まあ訳分かんないわよね」
それぞれぺちゃくちゃ語る。一方で明輝は黙ったまま。
指先が隕石に触れたまま瞳孔すら動かず、瞬きもしていなかった。
「明輝?」
烈火が声を掛けた。しかし耳に入らない。
肩を揺すって見ても明輝に烈火の声が届くことはない。これは異常だと思い、烈火は耳元で悪いとは思いつつも心配の余り「明輝!」と叫んでいた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
明輝は不思議な所にいた。
頭がいつもよりもクリアで、全身の感覚が研ぎ澄まされていた。
だけど視覚情報がおかしかった。聴覚情報も変だった。
何も見えない訳じゃないけれど、暗闇の中に光の点が無数に広がる。
音が何も聞こえない訳じゃないけれど、蒼伊や烈火の声はさっぱりだった。
「ここは何処?」
明輝は瞬きをしてしまった。足が地に着いているはずなのに何故か底が無い様に錯覚する。ここは何処? 一体何が起こったの? 明輝は困惑の海に飛び込んでいた。
「誰か居ないの! ねえ、誰か!」
明輝は大きな声を上げていた。
しかし何も返ってこない。声が反響することもなく、何処までも透き通って消えていく。
流石の明輝も全身が震え出し、怖くなってきた。だけどその度に意識を切り替える。
「もしかしてコレが隕石の効果? 不思議すぎるよ!」
明輝は何かに気が付いた。
ここが隕石の見せた幻想的な世界だとすれ場確かに面白いしファンタジーだ。スピリチュアルを通り越し、GAMEの世界の情景を現実世界に持ち出したような、そんな感覚をキャッチすると、明輝のクリアな頭に雑音にも及ばない優しい声が聞こえた。
「聞こえていますか?」
「えっ!?」
明輝は顔を上げた。目の前には誰も居ない。だけど振り返ってみると、そこに何かいた。
影のようになっているけれど、意識を集中して目を凝らせばその姿は段々と見知ってはいない姿に変貌する。
「もしかして龍?」
何処かで見覚えがある気がした。
度々明輝の意識の中に出て来る龍の姿をしていた。
けれど今日は何処か違う。GAMEの中では一回だけその姿を見たけれど、あの時は触れそうだった。だけど今日は触れる感じではなく、蜃気楼のような尊い存在に感じる。
「あの時の龍だよね?」
「リュー? それが私の名前ですか?」
「いや違うけど……えっ、もしかして別固体なの!?」
そんなとんでも確立が果たしてあるのか。明輝は一人でボケとツッコミをした気分になるも、龍は明輝に優しく語りかける。
何だか名前が欲しそうな様子で、ジッと目を凝らして首を近づけた。
目の前に龍の頭があり、怖いと思うよりも先に手が伸ばせそうで興奮した。
「ほとんど初見だけど、何で現実に居るの?」
「ここは貴女のパーソナルスペースですよ。私は貴女のパーソナルスペースの片隅から貴女に声を掛けているんです、明輝」
「しかもアキラ呼びじゃない……って私は本名で遊んでるんだった。うーん、ここに居ると私が私じゃないみたい……」
「いいえ、ここは貴女自身の世界です。この無限に広がる宇宙こそが、明輝本来の世界。幾重にも変化し進化する。まさに貴女の意識の切り替えを拡張し体現したような世界ですね」
「そ、そうなのかな?」
明輝は説き伏せられてしまった。
だけど頭を抱えるのは当然で、むしろ頭が痛い。
「えっと、霊龍は如何してここに居るの?」
「あちらの世界から引き上げたのは貴女ですよ明輝。私は構いませんが、今まで一方通行でしたからね」
「一方通行? もしかしてあの文字化けのメッセージって!」
「電磁波に言葉を乗せるのが大変でした」
霊龍はよっぽど明輝と話したかったようだ。
気が付いてあげれなかった明輝は「ごめんね」と謝るも、霊龍は「いいえ、大丈夫です」と優しくしてくれた。
「現にこうして話ができているんです。私は明輝と話ができて嬉しいです」
「そうなの?」
「はい。もう私は、貴女の一部ですから。明輝が嬉しくなれば私も嬉しく、明輝が悲しくなれば私も悲しい」
一心同体とはまさにこのこと。【ユニゾンハート】は心さえも共有する。
明輝は瞬きをしてしまうと、霊龍の頭が明輝にすり寄っていた。
「もう時間ですね」
「時間?」
「はい。外の世界で皆さんが明輝のことを心配しています」
ってことは現実で私がどんな状況なの?
明輝は不安になると同時に急いで戻らないとと思う。
「ここで見たことのほとんどは記憶に残らないかもしれません」
「えっ!?」
「でも私はいつでもそばにいます。暇な時にでも、【ユニゾンハート】:【ファーストコール】を使ってみてください」
霊龍の姿が遠くなる。
その姿は蜃気楼のように消え始め、揺らめく陽炎になる。
もう手を伸ばすこともできない。だけど消えていく最中、意識の変革で一瞬だけ霊龍の姿が優しい女の人に見えてしまう明輝だった。何とも不思議な体験だった。
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