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◇318 隕石を見せてくれるらしい
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「ま、マイナーですか?」
「ええ。それ以外にも知られていないこともありますね。私もいつもここに居るわけではないので、誰も居ないのにいつも綺麗な不気味な神社。近寄りがたい雰囲気が立ち込めていると思われてしまっている節もあります。それに隕石を本当に祀っているのか、その事実すらあやふやに定義されていますからね。それらが重なって複雑めいた結果、現状に居た堪れませんよ」
降美槍はまた悲しそうな顔をする。
明輝たちもフォローをしようとしたが、何処から手を突っ込んだらいいのか分からず迷ってしまう。
そのせいでレスポンスが遅れてしまい、言葉の修正が難しくなってしまった。
「ごめんなさい。返す言葉が見つからなくて。私は信じますよ! みんなは?」
「私も私も! その方が面白いもんねー」
「私もです。初耳でしたが、聞いていてワクワクしました」
「GAMEをやっているからね。そのせいもあるんじゃない?」
蒼伊以外は素早く返答した。だけど肝心の蒼伊だけは無言のまま。
何を考えているのか、顎に指を置いたままだんまりで、明輝は話かけようとする。
けれどその前に降美槍が蒼伊に話しかけ、言わんとしていることをキッパリ当ててしまった。
「流石に信じられませんか? 冷静な人ですね」
「実物を見るまでそれが真実とは限らない」
「シュレディンガーの猫ということですね。分かります」
「そういう事だ」
降美槍は蒼伊の感情を読み取ってしまう。
明輝たちからしてみても本当に隕石があったら見てみたい気持ちでいっぱいだ。
だけどそんなこと簡単にできない。だってこの神社の本殿にあって、神様として祀られている。そんなもの、何かしらの非常事態か神事でしか一般公開されないのが通例だった。
「見たいですか?」
「み、見たいです。あっ!」
その表情を読み取られてしまった。
明輝は誘われるまま答えてしまい、言った後に失礼だと気が付く。
だけど降美槍はあえて言わせたような表情と口調をしており、明輝がじゃなくても嵌められるのは時間の問題だった。
「正直な人は嫌いじゃありませんよ。とは言っても少しの嘘はスパイスになってくれるらしいですが」
「誰の言葉ですか?」
「私の友達の言葉を借りただけです。それよりそんな正直な皆さんには特別に見せてあげても良いですよ」
「「本当ですか!」」
明輝と蒼伊は突き動かされるように前のめりになり声を上げた。
蒼伊は興味津々だったが、明輝もオーバーなリアクションに自分でも意外に思った。
何故か心の臓が激しく高鳴り、このチャンスを逃すなと訴えかけてくる。
「息ピッタリですね」
「「あっ……」」
明輝と蒼伊は顔を見合わせた。何だかとっても恥ずかしくなったけど、お互い顔を一瞬逸らした程度で、すぐさま降美槍に目を向ける。
降美槍は「良い表情です」と嬉しそうに唱えると、コホンと咳払いを一つ。
「斬禍がここに初めて連れて来てくれたお友達ですからね。特別サービスはしてあげますよ。新年ですからね」
ニコッと降美槍は笑みを浮かべる。
すっごく貴重な体験を前にして、明輝たちは興奮が冷めない。
「私、隕石なんて見るの初めてだよ!」
「私も私も! 隕石ってさ、確か滅茶苦茶高いんだよねー」
よくミステリーや鑑定系のテレビ番組でも隕石はもの凄く高値で紹介されている。
だけど大抵が偽物で、いつも残念な結果で終わってしまう。
けれど今回は本物なので、ワクワクしていた。
「それでは付いて来てください」」
降美槍は草鞋を脱ぐと、拝殿の階段に足を乗せた。
それに続き、今度は扉を開くと中には鏡が一枚置かれている。
けれど降美槍は鏡には一切目を向けることなく、奥の壁へと進んだ。ただの壁のようで、扉らしきものは何もない。
「降美槍さん?」
「付いて来てください。もちろん靴は脱いでくださいね」
急かされてしまった。降美槍は木の壁の前で立ち止まり、明輝たちが来るのを待つ。
明輝たちもそれぞれ靴を脱ぎ、拝殿へと上がった。
ギシギシと木の床が軋む音が響き、降美槍の下へと向かう。
「降美槍さん。ただの壁ですよ?」
「そうですね。一見するとただの壁です」
含みのある言い回しに明輝たちはピンと来た。
壁が回転するとか、動くとか、そんな仕掛けが施されている。
だけどそんなものをわざわざ神社の拝殿に付けなくても良いのではと思ったが、古典的な方法だからこその味があった。
「なるほど。仕掛け扉を設置することで、防犯効果を高めているのか」
「そうらしいですね。この壁は叩いても壊せないようになっています。おまけに扉らしきものは何も無いので、隕石を盗もうにも盗めないように細工されているんですよ」
確かに扉も無いんじゃ盗めない。
考えられているなと思いつつ、如何やって入るのか非常に気になった。
すると降美槍は壁の一部を触った。
その部分を押し込み、つま先で壁を蹴る。
あまりにも杜撰な行いを見た明輝たちだったが、まさかこれで開くとは思わなかった。
「ええ。それ以外にも知られていないこともありますね。私もいつもここに居るわけではないので、誰も居ないのにいつも綺麗な不気味な神社。近寄りがたい雰囲気が立ち込めていると思われてしまっている節もあります。それに隕石を本当に祀っているのか、その事実すらあやふやに定義されていますからね。それらが重なって複雑めいた結果、現状に居た堪れませんよ」
降美槍はまた悲しそうな顔をする。
明輝たちもフォローをしようとしたが、何処から手を突っ込んだらいいのか分からず迷ってしまう。
そのせいでレスポンスが遅れてしまい、言葉の修正が難しくなってしまった。
「ごめんなさい。返す言葉が見つからなくて。私は信じますよ! みんなは?」
「私も私も! その方が面白いもんねー」
「私もです。初耳でしたが、聞いていてワクワクしました」
「GAMEをやっているからね。そのせいもあるんじゃない?」
蒼伊以外は素早く返答した。だけど肝心の蒼伊だけは無言のまま。
何を考えているのか、顎に指を置いたままだんまりで、明輝は話かけようとする。
けれどその前に降美槍が蒼伊に話しかけ、言わんとしていることをキッパリ当ててしまった。
「流石に信じられませんか? 冷静な人ですね」
「実物を見るまでそれが真実とは限らない」
「シュレディンガーの猫ということですね。分かります」
「そういう事だ」
降美槍は蒼伊の感情を読み取ってしまう。
明輝たちからしてみても本当に隕石があったら見てみたい気持ちでいっぱいだ。
だけどそんなこと簡単にできない。だってこの神社の本殿にあって、神様として祀られている。そんなもの、何かしらの非常事態か神事でしか一般公開されないのが通例だった。
「見たいですか?」
「み、見たいです。あっ!」
その表情を読み取られてしまった。
明輝は誘われるまま答えてしまい、言った後に失礼だと気が付く。
だけど降美槍はあえて言わせたような表情と口調をしており、明輝がじゃなくても嵌められるのは時間の問題だった。
「正直な人は嫌いじゃありませんよ。とは言っても少しの嘘はスパイスになってくれるらしいですが」
「誰の言葉ですか?」
「私の友達の言葉を借りただけです。それよりそんな正直な皆さんには特別に見せてあげても良いですよ」
「「本当ですか!」」
明輝と蒼伊は突き動かされるように前のめりになり声を上げた。
蒼伊は興味津々だったが、明輝もオーバーなリアクションに自分でも意外に思った。
何故か心の臓が激しく高鳴り、このチャンスを逃すなと訴えかけてくる。
「息ピッタリですね」
「「あっ……」」
明輝と蒼伊は顔を見合わせた。何だかとっても恥ずかしくなったけど、お互い顔を一瞬逸らした程度で、すぐさま降美槍に目を向ける。
降美槍は「良い表情です」と嬉しそうに唱えると、コホンと咳払いを一つ。
「斬禍がここに初めて連れて来てくれたお友達ですからね。特別サービスはしてあげますよ。新年ですからね」
ニコッと降美槍は笑みを浮かべる。
すっごく貴重な体験を前にして、明輝たちは興奮が冷めない。
「私、隕石なんて見るの初めてだよ!」
「私も私も! 隕石ってさ、確か滅茶苦茶高いんだよねー」
よくミステリーや鑑定系のテレビ番組でも隕石はもの凄く高値で紹介されている。
だけど大抵が偽物で、いつも残念な結果で終わってしまう。
けれど今回は本物なので、ワクワクしていた。
「それでは付いて来てください」」
降美槍は草鞋を脱ぐと、拝殿の階段に足を乗せた。
それに続き、今度は扉を開くと中には鏡が一枚置かれている。
けれど降美槍は鏡には一切目を向けることなく、奥の壁へと進んだ。ただの壁のようで、扉らしきものは何もない。
「降美槍さん?」
「付いて来てください。もちろん靴は脱いでくださいね」
急かされてしまった。降美槍は木の壁の前で立ち止まり、明輝たちが来るのを待つ。
明輝たちもそれぞれ靴を脱ぎ、拝殿へと上がった。
ギシギシと木の床が軋む音が響き、降美槍の下へと向かう。
「降美槍さん。ただの壁ですよ?」
「そうですね。一見するとただの壁です」
含みのある言い回しに明輝たちはピンと来た。
壁が回転するとか、動くとか、そんな仕掛けが施されている。
だけどそんなものをわざわざ神社の拝殿に付けなくても良いのではと思ったが、古典的な方法だからこその味があった。
「なるほど。仕掛け扉を設置することで、防犯効果を高めているのか」
「そうらしいですね。この壁は叩いても壊せないようになっています。おまけに扉らしきものは何も無いので、隕石を盗もうにも盗めないように細工されているんですよ」
確かに扉も無いんじゃ盗めない。
考えられているなと思いつつ、如何やって入るのか非常に気になった。
すると降美槍は壁の一部を触った。
その部分を押し込み、つま先で壁を蹴る。
あまりにも杜撰な行いを見た明輝たちだったが、まさかこれで開くとは思わなかった。
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