VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
320 / 599

◇318 隕石を見せてくれるらしい

しおりを挟む
「ま、マイナーですか?」
「ええ。それ以外にも知られていないこともありますね。私もいつもここに居るわけではないので、誰も居ないのにいつも綺麗な不気味な神社。近寄りがたい雰囲気が立ち込めていると思われてしまっている節もあります。それに隕石を本当に祀っているのか、その事実すらあやふやに定義されていますからね。それらが重なって複雑めいた結果、現状に居た堪れませんよ」

 降美槍はまた悲しそうな顔をする。
 明輝たちもフォローをしようとしたが、何処から手を突っ込んだらいいのか分からず迷ってしまう。
 そのせいでレスポンスが遅れてしまい、言葉の修正が難しくなってしまった。

「ごめんなさい。返す言葉が見つからなくて。私は信じますよ! みんなは?」
「私も私も! その方が面白いもんねー」
「私もです。初耳でしたが、聞いていてワクワクしました」
「GAMEをやっているからね。そのせいもあるんじゃない?」

 蒼伊以外は素早く返答した。だけど肝心の蒼伊だけは無言のまま。
 何を考えているのか、顎に指を置いたままだんまりで、明輝は話かけようとする。
 けれどその前に降美槍が蒼伊に話しかけ、言わんとしていることをキッパリ当ててしまった。

「流石に信じられませんか? 冷静な人ですね」
「実物を見るまでそれが真実とは限らない」
「シュレディンガーの猫ということですね。分かります」
「そういう事だ」

 降美槍は蒼伊の感情を読み取ってしまう。
 明輝たちからしてみても本当に隕石があったら見てみたい気持ちでいっぱいだ。
 だけどそんなこと簡単にできない。だってこの神社の本殿にあって、神様として祀られている。そんなもの、何かしらの非常事態か神事でしか一般公開されないのが通例だった。

「見たいですか?」
「み、見たいです。あっ!」

 その表情を読み取られてしまった。
 明輝は誘われるまま答えてしまい、言った後に失礼だと気が付く。
 だけど降美槍はあえて言わせたような表情と口調をしており、明輝がじゃなくても嵌められるのは時間の問題だった。

「正直な人は嫌いじゃありませんよ。とは言っても少しの嘘はスパイスになってくれるらしいですが」
「誰の言葉ですか?」
「私の友達の言葉を借りただけです。それよりそんな正直な皆さんには特別に見せてあげても良いですよ」
「「本当ですか!」」

 明輝と蒼伊は突き動かされるように前のめりになり声を上げた。
 蒼伊は興味津々だったが、明輝もオーバーなリアクションに自分でも意外に思った。
 何故か心の臓が激しく高鳴り、このチャンスを逃すなと訴えかけてくる。

「息ピッタリですね」
「「あっ……」」

 明輝と蒼伊は顔を見合わせた。何だかとっても恥ずかしくなったけど、お互い顔を一瞬逸らした程度で、すぐさま降美槍に目を向ける。
 降美槍は「良い表情です」と嬉しそうに唱えると、コホンと咳払いを一つ。

「斬禍がここに初めて連れて来てくれたお友達ですからね。特別サービスはしてあげますよ。新年ですからね」

 ニコッと降美槍は笑みを浮かべる。
 すっごく貴重な体験を前にして、明輝たちは興奮が冷めない。

「私、隕石なんて見るの初めてだよ!」
「私も私も! 隕石ってさ、確か滅茶苦茶高いんだよねー」

 よくミステリーや鑑定系のテレビ番組でも隕石はもの凄く高値で紹介されている。
 だけど大抵が偽物で、いつも残念な結果で終わってしまう。
 けれど今回は本物なので、ワクワクしていた。

「それでは付いて来てください」」

 降美槍は草鞋を脱ぐと、拝殿の階段に足を乗せた。
 それに続き、今度は扉を開くと中には鏡が一枚置かれている。
 けれど降美槍は鏡には一切目を向けることなく、奥の壁へと進んだ。ただの壁のようで、扉らしきものは何もない。

「降美槍さん?」
「付いて来てください。もちろん靴は脱いでくださいね」

 急かされてしまった。降美槍は木の壁の前で立ち止まり、明輝たちが来るのを待つ。
 明輝たちもそれぞれ靴を脱ぎ、拝殿へと上がった。
 ギシギシと木の床が軋む音が響き、降美槍の下へと向かう。

「降美槍さん。ただの壁ですよ?」
「そうですね。一見するとただの壁です」

 含みのある言い回しに明輝たちはピンと来た。
 壁が回転するとか、動くとか、そんな仕掛けが施されている。
 だけどそんなものをわざわざ神社の拝殿に付けなくても良いのではと思ったが、古典的な方法だからこその味があった。

「なるほど。仕掛け扉を設置することで、防犯効果を高めているのか」
「そうらしいですね。この壁は叩いても壊せないようになっています。おまけに扉らしきものは何も無いので、隕石を盗もうにも盗めないように細工されているんですよ」

 確かに扉も無いんじゃ盗めない。
 考えられているなと思いつつ、如何やって入るのか非常に気になった。
 
 すると降美槍は壁の一部を触った。
 その部分を押し込み、つま先で壁を蹴る。
 あまりにも杜撰な行いを見た明輝たちだったが、まさかこれで開くとは思わなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...