VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇316 龍星神社の神主さん

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 流星降美槍ながれほしふみやはとても丁寧な人の印象が強かった。
 だけど気配の殺し方が斬禍以上に上手く、圧倒的に高いポテンシャルを持った武人だと痛感した。

 しかし本人にその意思は無い様に見えた。
 あくまでも普段通り平然と過ごしている様子だった。

「流星降美槍さん。カッコいい名前ですね」
「ありがとうございます。私も自分の名前を気に入っているんですよ」
「何だか槍を使いそうだな」
「勿論です。降美槍姉さんは槍の名手として有名な方ですから。高校、大学時代には槍の大会で全国優勝したほどですから」
「す、凄い!」

 だけど槍の大会って何? と明輝は口には出せないが思ってしまった。
 しかしながら降美槍さんは嬉しそうで、「斬禍、私のことを囃さないでください。照れてしまいます」と頬を赤らめていた。

「何だか可愛い人だね」
「そうだねー。謙遜しているって言うのかな? ちょっと斬禍と違うって言うか、褒められ慣れしてないって言うか……」
「降美槍さんは昔から自分が褒められることになれていないからね」

 合いの手を入れてくれたのは鈴来だった。
 斬禍の親友だから従姉である降美矢との交流も少なからずあった。

「鈴来さん、それは内緒にしてください」
「ごめんなさい。でも相変わらずなんですね」
「はは。相変わらずですよ。鈴来さんは少し変わりましたね。一人で居る時間よりも誰かと一緒に居る時間を大切にしているように見えます」
「なっ!?」

 鈴来は的を射抜かれてしまった。
 まるで心を見透かしたみたいに、奥底に隠していた感情を貫かれた。
 弓の名手が槍の名手に心を突かれた瞬間だった。

「降美槍さん! それは内緒にしてよね」
「すみません。でもお返しですよ」
「もうっ!」

 こんな鈴来を見たのは始めてだった。
 頬だけではなく耳の先まで赤くなっていて、とっても可愛かった。

「鈴来、私達のことをそんな風に……」
「最初はあんなに群れることが嫌いで口調も変えてたのにね」
「全くだな」
「蒼伊にだけは言われたくないわよ!」

 何故か蒼伊に反発していた。しかし蒼伊は昔からこうなので首を捻ってしまった。
 だけど明輝は二人の顔色から感情を読み取っていた。
 どっちも胸の奥底に隠している感情をツンツンされて恥ずかしそうだった。

「貴女も感情の読み取りが上手いんですね」
「あっ……昔からちょっと得意なんです」
「もしかしたら私以上かもしれませんよ」
「そ、そう何ですか? えっと、降美槍さんはこの神社の神主さん何ですよね?」
「そうですよ。この他に誰も居ない静かな神社の神主兼巫女をしている者です」

 自分で皮肉を言わないで欲しかった。
 その後の返しが詰まってしまい、明輝は何と返したらいいのか分からなくなった。

「気にしなくても大丈夫ですよ。私は気にしませんから」
「そ、それじゃあその……降美槍さんは如何してこの神社の神主さんをすることになったんですか?」
「……さ、最初に気になることがそれですか?」

 如何やら思っていたものと違ったようで目を丸くしていた。
 しかし困り顔をみせたのはほんの一瞬で、すぐさま質問に答えてくれた。

「答えられる質問にはお答えしますね。私がこの神社の神主をすることになったのは、偶然のような運命だと思います」
「偶然のような運命? それは必然とは呼ばないのか?」
「必然……そう確信を追うにはまだ早いと思いますよ」

 謙遜が過ぎるというかはっきりとはしなかった。
 蒼伊は表情を訝しめたものの、降美槍は神社の拝殿を見ながら話し始めた。

「見てください、あの立派な龍の彫。偉大ではありませんか?」
「確かにカッコいいわよね」
「私も竜にはちょっとだけあるから何となく分かるよ」

 鈴来と烈火が嬉しそうに返答した。
 確かに誰が見ても目を見張るような出来に、心が躍り出すのも無理はなかった。

「それにこの空気です。山の中腹にあるので空気がとても澄んでいます」
「確かにそうだな。おまけに人も居ない」
「蒼伊、それだけは言っちゃダメだよ」
「お前の方が失礼だぞ」

 自分で言ってから明輝も気が付いた。
 しかし降美槍は怒っている様子はなく、「確かにそうですよ」と納得していた。
 気分を害されていないので、明輝は安心して胸を撫で下ろした。

「それに何より、この神社の本殿には……」
「何かあるんですか?」

 急に空気が変わった。不思議な“重さ”を感じたのだ。
 降美槍の口調もそうだが、神社全体に特殊なフィールドが形成されたような感覚に明輝たちは陥った。もしかしたら気分の問題かもしれないが、はっきりと全身を包み込むような嫌ではない違和感を感じ取っていた。

「皆さんは如何してこの神社が龍星神社と呼ばれているかご存じですか?」
「えーっと。やっぱり龍を祀っているからですか?」
「いいえ。この神社にはもっと深く、もっと私に所縁のある物が祀られているんです。とは言え祀るなど烏滸がましく、むしろ奉納と呼んだ方が良いかもしれませんね」

 降美槍は訂正をすると、この神社の名前の所以を教えてくれるのだった。
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