VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
316 / 590

◇314 龍星神社には誰もいない?

しおりを挟む
 明輝たちはとにかくひたすら歩いた。
 道中では蒼伊はほとんど無口で、烈火だけがとにかく喋っていた。

「それでさ綺麗だったんだぁー」
「そう何ですね。確かに新年のご来光と言うものは特別なものです。私も来年は見てみたいですね」
「だけどここからじゃ駅から海に行くか、山を登るしかないわよ?」
「そうですね。鈴来は来年如何しますか?」
「私はパス。明輝は?」
「うーん。私は前に一回登ったよね。疲れたけど、とっても綺麗だった」
「蒼伊は?」
「私は絶対パスだ」

 などと楽しく会話が弾んでいた。
 整備の行き届いた平坦な道を進み、人通りも少なくなってくるころだった。
 大声で話をしながら、少し上り坂を進むと、ついに目的の龍星山に辿り着いた。

「龍星山……ここだね」

 山の麓には石柱が立っていた。
 そこには龍星山と彫り込まれていて、ここが目的地だと一発で理解できた。

「それで如何するんだ?」
「如何するって?」
「この山を登るのか? この軽装備で」

 一応全員寒さ対策の防寒装備だった。
 とは言え山に登ることを想定しているわけではなく、全くと言っていいほどまともに登れる格好ではなかった。

 それは流石に斬禍も気が付いてはいた。
 現に誘った斬禍格好が単なる防寒対策なので、山登りをする気はないようだ。

「山は登りませんよ。上には行きますが」
「登らないのか、良かった。……上には行くだと?」
「はい。こちらに来てください」

 斬禍の案内で登山道の入り口から離れた。
 反対側に回り込むようにぐるりと少しだけ歩くと、そこに見えたのは石を積まれてできた階段だった。
 丁寧に手すりまで設置されていて、石階段には滑り止めも施されていた。
 明らかに軽装備でも登れるようにはなっていたが、それなりに急な階段だった。

「階段だね。しかも人為的に最近できたみたいな」
「そうですね。この階段は新調したもので、できたのは一昨年です」
「一昨年? そう言えばこの辺りで工事をしている記事を見かけたな。私には関係ないのでスルーしていたが」

 蒼伊はとんでもない記憶力の持ち主で、一度見たものは忘れない程だった。
 明輝と烈火の記憶の欠片にもない薄い記事でも、一度取り込んでしまえばデータの様に検索できた。

「流石ですね蒼伊さん」
「褒めなくてもいい。それよりこの階段を上るのか」
「はい。この階段を上ることで、龍星神社に辿り着くことはできます。私も一年に一度しか参拝していないので、勝手が変わっていなければ確かなはずですよ。現に昨日見に来ましたから安心してください」

 明輝の家に着た後、その足でここにやって来ていた。
 だけど上ってはいないようで、口元がにやけていた。

「斬禍にとっては思い入れがある神社何だね」
「はい。というよりも身内の一人がこの神社の神主兼巫女なんです」
「「神主で巫女さんなの!?」」

 かなりのパワーワードだった。
 明輝も烈火も驚いてしまったが、鈴来は話を聞くと「あー」と何かに気が付いた様子だ。

「そう言えば言ってたわね。最近見かけないから何をしているのかと思ってたけど、そういうこと」
「はい。この時期は一年を通しては忙しいですからね」
「まあそうよね。稼ぎ時? なのよね」

 鈴来は少し黒い話をした。もちろん現実的ではあった。
 そんなツッコミは要らないので明輝も完全スルーすると、いつまでもこうしている暇は無いので階段の一段目に足を掛けた。
 すると不思議な感覚が全員の脳を刺激して、全身が身震いした。もちろん良い意味だ。

「な、何!?」
「分かんない。斬禍、今のって何?」
「分かりません。……おかしいですね」

 斬禍も不思議に思っていた。
 昨日見に来た時は階段は上らず、目の前にして確認し帰ったから分からないようだ。

「全身がスキャンされたみたいだったな」
「もしかしてこの階段の石に特殊な効果があるのかな?」
「可能性は無くはないが……私の見立てだと、この特殊な力が秘められているとは思わないがな」

 蒼伊の見立てではこの石階段ではないようだ。
 だったら一体何がと思ってしまったが、とりあえずこの急階段を上ってみるしかなかった。

「……とりあえず、上りましょうか」
「そうね。何で私たち一段目でこんなに盛り上がっているのかしらね」

 それを言ったらお終いだと、明輝は思ってしまった。
 完全に馬鹿の集まりみたいになっていたので、何だか恥ずかしくなってしまった。



「三、二、一……はい到着!」

 烈火が楽しそうに片足でステップを踏んでいた。
 明輝たちはその後ろを続き、先を行った烈火が見ている景色を目の当たりにした。
 とは言っても、特に荒らされているわけでもなかった。

「ここが龍星神社か」
「はい。ここが龍星神社です。相変わらず変わっていませんね。何だか懐かしいです」
「懐かしいって、毎年来ているじゃない」
「それもそうですね」

 鈴来のツッコミに斬禍は真面目に答えた。
 確かに綺麗な所で、空気も澄んでいた。
 山の中腹ぐらいにあるから当たり前かもしれないけれど、新年最初の日なのに他の参拝客が・・・・・・誰もいない・・・・・のは寂しすぎてしまった。
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 1

あなたにおすすめの小説

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

絶世のディプロマット

一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。 レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。 レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。 ※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

処理中です...