VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇310 新年最初の文字化けさん

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 カーテン越しに差し込む陽射しで明輝は目が覚めた。
 普通の人にとっては全く快調とはいかない睡眠時間だけど、明輝の目は一瞬寝ぼけた様子になるだけで、すぐにいつも通りの目に戻った。十分熟睡できた証拠だ。

「ふはぁー、よく眠ったね。そして快調!」

 明輝は腕を伸ばした。
 枕元に置かれた時計を見てみると、時刻は朝も八時だった。
 寝たのが結局三時だったので、五時間はかなり眠れたと思った。

「えーっと、確か待ち合わせが十時だよね?」

 まだまだ時間には余裕があった。
 だけど早く起きたのなら早く起きたなりに過ごすのも悪くなかった。

「あっ、そうだ! スマホを見てみよっと。凄い人……ここって有名な神社だよね。参拝する人ってこんなにいるんだ」

 スマホを手に取り早速ニュースは飛び込んできた。
 驚くのと同時に行かなくて良かったと心の奥で叫んだ。
 するとメッセージの欄に数字が付いていることに気が付いた。
 SNSアプリを開くと、烈火から写真とメッセージが送られていた。

[よっす明輝。明けましておめでと~]

[今年も撮って来たから送っとくね~]

 貼り付けられていた写真は烈火が撮ったものだった。
 山を登った烈火が毎年送ってくれるもので、新年最初の日の出を捉えたものだった。
 赤々として活力が貰えた。

「うわぁ、すっごく綺麗。今年の御来光も燦々としてるね」

 明輝はうっとりしてしまった。
 ちょっと難しい言葉を使ってでもこの気持ちを表現したかった。
 それからスマホを触ると、烈火にお礼のメッセージを送った。

[ありがと。すっごく綺麗だよ]

 これだけだと感謝を伝えただけだった。
 けれど明輝は次へと先手を打っていた。

[だけど待ち合わせには遅れないでね]

 余計かもしれないが、烈火は寝落ちする可能性もあった。
 そうなったら家まで迎えに行かないといけないので、そうなって欲しくなかった。
 だから前もってメッセージを送っておいたのだ。

「これで良し。今年はみんなで行くんだから、ちゃんと来てくれないと困るよ」

 明輝は如何なるか非常に不安がよぎった。
 けれどいちいち気にしていても仕方が無いので、これ以上は考えないことにした。
 多分来てくれるはず。明輝はいつもの烈火のパターンを思い返した。

「それじゃあご飯でも食べよっかな。確か昨日の残り物が冷蔵庫にあったはず……ん?」

 スマホを持ったままキッチンに向かおうとした。
 すると急にドライブにメッセージが入る音がした。
 視線を釘づけにされ、明輝は首を捻った。

「こんな時間から誰だろ。もしかして斬禍かベルからかな?」

 明輝はドライブを手に取った。
 するとおかしなことに誰とは言えない相手からメッセージが届いていた。
 そう、差出人が不明で怖かった。

「ちょっと待ってよ。まさかこっちに迷惑メールが届くことってあるの?」

 今時そんな遅れがちなものが来るとは考えづらかった。
 とは言え一応開いてみないと内容が分からなかった。
 明輝は興味本位でメッセージを開いてみた。
 するとそこには文字化けした文字列が大量に並んでいた。

[ofu iqmf ■$yq9う うウ90フrddクじょくぇ0%‘いqd。 yる0d9ウイ
 Hdy19rピ@」ru0238rt gy02inqhr  /-/jqorur9u32エウ0927t386t1オj pリオ「14p 
 開 獅手、お目出頭。子歳もyoロしくお値害 升]

明輝は誰からかと思った。
毎回のことながら、今回も大量の文字化けだった。
 だけどこの文字化けの中に、ちゃんと言葉が混じっていた。
 脳内変換して、口に出していた。

「えーっと、多分最後だよね。最後だけ、最後だけ……あけましておめでとう? かな」

 何となく最後の方はそうやって読むことができた。
 とは言え確証などは最初からなく、何となく頭の中で変換しただけだった。

 とは言え一度見えてしまったものを人間の目や脳はそれを文章として認識してしまうことが多かった。
 そのため、明輝の目では既に[あけましておめでとう]だけが入っていた。

(流石に変身しても良いよね?)

 ここで躊躇するのが普通の人だった。
 けれど明輝はドライブに手を添えていた。

「えっと、誰かは分からないけど……あけましておめでとうっと」

 ドライブを使ってメッセージを送った。
 今までも似たようなことはあったが、そのどれからも悪意は感じられなかった。
 実害を被ったこともないので、多分知り合いの誰かだと無理にでも納得していた。

 メッセージを返信した。
 しかしそれ以降は何も返ってくることはなかった。

「もしかして満足しちゃったのかな? こっちからは打ち難いし、良いよね?」

 流石に明輝でもこれ以上は踏み込めなかった。
 なのでドライブをそっとベッドの上に戻した。

「さてと、お腹空いたから何か食べようかな。確か昨日は蕎麦だったから……天ぷらうどんにしよっと」

 明輝は冷蔵庫にかき揚げの残りはが入っていることを思い出した。
 キッチンへと向かい、きちんと朝食を摂るのだった。
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