VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
300 / 591

◇298 プレゼントが無い?

しおりを挟む
「とりあえず一旦信じる方向で行くしかないか」
「そうじゃそうじゃ。考える方が無駄じゃよ。ふぉっふぉっふぉっ!」

 疑われていたものの、プレゼントの強硬手段で無理やりNightを信じ込ませた。
 むしろNightが折れたと言っても良いのだが、とりあえずこれで話がまとまりそうで安心した。

「それじゃあ続きお願いしますね」

 雷斬が場の空気を取り持った。一旦崩れた話を再び乗せ直し、サンタクロース風のNPC改めサンタクロースは「うむ」と頷いた。
 それから開口一番に言われたのは改めての感謝の言葉だった。

「お嬢ちゃんたちありがとう。本当に助かった。おかげでこの街……いいや世界から光が消えなくて良かったと、心底ホッとしておるんじゃ。本当に、本当に感謝してもしきれんのじゃ」

 いくらNPCから出されたクエストだったとはいえ、こんなに頭を下げられたら気が引けた。
 おまけに腰から九十度に折れていて、お腹のお肉がつっかえさえなければもっとアキラたちの気持ちが圧迫されていたと思った。ちょっとコミカルな要素があってくれて、胸を撫で下ろした。

「そんないいですよ! 私たちもあのままどんよりとした穢れの空気が蔓延していたらと思うと……ううっ、ゾッとする」
「そうだねー。あのまま過ごしてたら本気でヤバかったかも」

 星を完成させずにクリスマスイベントをする恐ろしさが身に染みて分かった。
 それと同時にこの世界では協力することがとても大事だと発覚した。
 まさしくunionが動かす鍵だと実感した。

「って、何ポエム的なこと思っているんだろ」
「如何したのー、アキラ? ぶつぶつ独り言なんて」
「ごめんね。えーっと、それでこれで良かったんですよね?」
「もちろんじゃ。いいや、それ以上と言ってもいいのかのう。何せこれほどの輝きは想定しておらんかったからの。で、誰が置いたんじゃ?」
「えーっと、私です」

 アキラは尋ねられたので手を挙げた。
 するとサンタクロースは「お嬢ちゃんが……そうかそうか。やはり強い力を持っておるの」と、何に対してかは分からないけど、アキラは褒められた。正直喜び方が分からなかったから、「あっ、ありがとうございます」と中途半端な表情を浮かべた。

「それはそうと、これでクエストは完了よね? それじゃあそろそろ街に行かない? クリスマスの喧騒ももう少しで終わっちゃうでしょ?」

 ベルがそんなことを言った。
 確かにいつまでもこんな街外れで固まっていてもつまらなかった。
 アキラは「そうだね」と相槌を打ち、サンタクロースに頭を下げた。

「それじゃあ私たちはこの辺りで。それじゃあみんな行こう!」

 アキラを先頭にして街へと戻ろうとした。
 しかしサンタクロースはアキラたちを呼び止めた。

「ちょっと待ちなさい、お嬢ちゃんたち」
「は、はい?」

 アキラたちは立ち止まった。
 するとサンタクロースは白くて大きな袋の中から大きめの箱や、細長い箱、小さな箱と次々取り出した。
 全部で四つの箱を見せると、一人一人手渡しで配った。アキラ以外・・・・・

「あ、あれ?」

 完全にはぶられてしまった。
 普通に酷いと思ったアキラだったが、サンタクロースは全く気にせず、アキラ以外の四人にプレゼントを渡して満足そうだった。

「今回のお礼じゃ。是非受け取ってくれんかのう」
「もう受取っているんだが……なるほど、確かに伝承の中のサンタクロースだ」
「そうだねー。でもさー、何でアキラには無いのかな? 仲間外れって後で尾を引くからダメなんだよ?」

 フェルノの目が変わった。サンタクロースに厳しく訴えかけた。
 さらに雷斬たちも抗議してくれた。

「そうですね。アキラさんにだけ何も無しと言うのはおかしな話です」
「これって完全にいじめよね? 星を置いたのはアキラなのにね」
「そうだな。もしもこのことが露見すれば、例え意思を持ったNPCであろうが株価が急落して、少なくとも二度とこの世界で存続できなくなるぞ? 運営だってそのくらいの対応はするだろ」

 完全に詰め寄っていた。
 サンタクロースもNightたちの圧に気圧されていた。

「うっ、何じゃ全員寄ってたかって」
「「「悪いのはお前だ!」」」

 凄いことになっていた。事態の中心にいるはずのアキラが完全に蚊帳の外にされていた。
 アキラが折れれば全て丸く収まるのだが、話に入る隙すら無かった。

「わ、儂だってのう、プレゼントを与えるくらいはできる。じゃが、既にお嬢ちゃんは星の祝福を受けておるじゃろう」
「えっ?」

 アキラは何のことを言っているのか、普通に理解できなかった。
 だけどサンタクロースは続けた。

「お嬢ちゃんの腕に付けたリング。それは何よりも凄まじい奇跡と星の祝福を与えるものじゃ。それに見合うプレゼントなど、儂にはとてもじゃないが用意できんのじゃ!」

 アキラはそう言われて自分の左腕を見た。
 そこにはベツレヘムの腕輪が輝いていて、しっとりとした質感で腕に納まっていた。
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

処理中です...