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◇298 プレゼントが無い?

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「とりあえず一旦信じる方向で行くしかないか」
「そうじゃそうじゃ。考える方が無駄じゃよ。ふぉっふぉっふぉっ!」

 疑われていたものの、プレゼントの強硬手段で無理やりNightを信じ込ませた。
 むしろNightが折れたと言っても良いのだが、とりあえずこれで話がまとまりそうで安心した。

「それじゃあ続きお願いしますね」

 雷斬が場の空気を取り持った。一旦崩れた話を再び乗せ直し、サンタクロース風のNPC改めサンタクロースは「うむ」と頷いた。
 それから開口一番に言われたのは改めての感謝の言葉だった。

「お嬢ちゃんたちありがとう。本当に助かった。おかげでこの街……いいや世界から光が消えなくて良かったと、心底ホッとしておるんじゃ。本当に、本当に感謝してもしきれんのじゃ」

 いくらNPCから出されたクエストだったとはいえ、こんなに頭を下げられたら気が引けた。
 おまけに腰から九十度に折れていて、お腹のお肉がつっかえさえなければもっとアキラたちの気持ちが圧迫されていたと思った。ちょっとコミカルな要素があってくれて、胸を撫で下ろした。

「そんないいですよ! 私たちもあのままどんよりとした穢れの空気が蔓延していたらと思うと……ううっ、ゾッとする」
「そうだねー。あのまま過ごしてたら本気でヤバかったかも」

 星を完成させずにクリスマスイベントをする恐ろしさが身に染みて分かった。
 それと同時にこの世界では協力することがとても大事だと発覚した。
 まさしくunionが動かす鍵だと実感した。

「って、何ポエム的なこと思っているんだろ」
「如何したのー、アキラ? ぶつぶつ独り言なんて」
「ごめんね。えーっと、それでこれで良かったんですよね?」
「もちろんじゃ。いいや、それ以上と言ってもいいのかのう。何せこれほどの輝きは想定しておらんかったからの。で、誰が置いたんじゃ?」
「えーっと、私です」

 アキラは尋ねられたので手を挙げた。
 するとサンタクロースは「お嬢ちゃんが……そうかそうか。やはり強い力を持っておるの」と、何に対してかは分からないけど、アキラは褒められた。正直喜び方が分からなかったから、「あっ、ありがとうございます」と中途半端な表情を浮かべた。

「それはそうと、これでクエストは完了よね? それじゃあそろそろ街に行かない? クリスマスの喧騒ももう少しで終わっちゃうでしょ?」

 ベルがそんなことを言った。
 確かにいつまでもこんな街外れで固まっていてもつまらなかった。
 アキラは「そうだね」と相槌を打ち、サンタクロースに頭を下げた。

「それじゃあ私たちはこの辺りで。それじゃあみんな行こう!」

 アキラを先頭にして街へと戻ろうとした。
 しかしサンタクロースはアキラたちを呼び止めた。

「ちょっと待ちなさい、お嬢ちゃんたち」
「は、はい?」

 アキラたちは立ち止まった。
 するとサンタクロースは白くて大きな袋の中から大きめの箱や、細長い箱、小さな箱と次々取り出した。
 全部で四つの箱を見せると、一人一人手渡しで配った。アキラ以外・・・・・

「あ、あれ?」

 完全にはぶられてしまった。
 普通に酷いと思ったアキラだったが、サンタクロースは全く気にせず、アキラ以外の四人にプレゼントを渡して満足そうだった。

「今回のお礼じゃ。是非受け取ってくれんかのう」
「もう受取っているんだが……なるほど、確かに伝承の中のサンタクロースだ」
「そうだねー。でもさー、何でアキラには無いのかな? 仲間外れって後で尾を引くからダメなんだよ?」

 フェルノの目が変わった。サンタクロースに厳しく訴えかけた。
 さらに雷斬たちも抗議してくれた。

「そうですね。アキラさんにだけ何も無しと言うのはおかしな話です」
「これって完全にいじめよね? 星を置いたのはアキラなのにね」
「そうだな。もしもこのことが露見すれば、例え意思を持ったNPCであろうが株価が急落して、少なくとも二度とこの世界で存続できなくなるぞ? 運営だってそのくらいの対応はするだろ」

 完全に詰め寄っていた。
 サンタクロースもNightたちの圧に気圧されていた。

「うっ、何じゃ全員寄ってたかって」
「「「悪いのはお前だ!」」」

 凄いことになっていた。事態の中心にいるはずのアキラが完全に蚊帳の外にされていた。
 アキラが折れれば全て丸く収まるのだが、話に入る隙すら無かった。

「わ、儂だってのう、プレゼントを与えるくらいはできる。じゃが、既にお嬢ちゃんは星の祝福を受けておるじゃろう」
「えっ?」

 アキラは何のことを言っているのか、普通に理解できなかった。
 だけどサンタクロースは続けた。

「お嬢ちゃんの腕に付けたリング。それは何よりも凄まじい奇跡と星の祝福を与えるものじゃ。それに見合うプレゼントなど、儂にはとてもじゃないが用意できんのじゃ!」

 アキラはそう言われて自分の左腕を見た。
 そこにはベツレヘムの腕輪が輝いていて、しっとりとした質感で腕に納まっていた。
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