VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇296 初雪のプレゼント

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「とりあえず、これで一段落だな」

 Nightがそりの背もたれにもたれ掛かった。
 幸いにも時間はぎりぎり間に合ったようで、先程の光をきっかけにクリスマスイヴからクリスマスへと移った。

 正直何も実感はなかった。
 いつものことながらギリギリまで大詰め状態なので、アキラたちは休む間が無かった。

 そのため反動が出てしまった。
 トレンドディアたちの引く空飛ぶそりの中でグデーンと力を失っていた。

「とりあえず全員お疲れ様―」
「お疲れー」

 アキラが声を掛けると、フェルノだけが腕を上げて反応した。
 全員くたびれているようで、覇気が無くなっていた。
 それ感知したトレントディアたちは優雅に街の上空を高く飛び、人目が気にならない距離までやって来ると、ゆっくりと回り出した。

「あ、あれ下りないんだ?」

 そりは全く下りる気配が無かった。
 そのことにいち早く気が付いたアキラはトレントディアをチラッと見た。
 完全に話を聞いておらず、むしろ意図したいことがあるように見えた。

「何があるんだろ?」

 アキラが気になって上半身を持ち上げた。
 するとグワッと風の圧を顔全体に受けてしまった。

「な、何コレ?」

 明らかに先程よりも高度が上がっていた。
 何事かと思ったアキラはそりの上から周りを見回した。
 漆黒に近い夜が広がり、空には薄っすらと月明かりが差し込んでいた。
 とても幻想的で、冬らしい寒々とした感覚が頬を突き刺した。

「さ、寒い!」

 冷気を纏った刃が全身をチクチク刺した。
 如何してこんなところに連れて来られたのか、アキラは体を抱き寄せて考えていると、空からポロポロと白い何かが降って来た。

「えっ? これってもしかして……雪?」

 手を出したアキラは白いポロポロと降るものの正体が判った。
 如何やら雪が降っているようで、アキラの体温に触れるとすぐに溶けて無くなってしまった。
 もの凄くリアルに再現されていて、アキラはびっくりした。

「こ、こうしちゃいられないよ! みんな起きて!」

 アキラはこの体験を全員で共有しようとした。
 早速くたびれてグデーンとしていた四人を叩き起こし、寝ぼけた眼を擦らせた。

「な、何だ?」
「何があったのさー、アキラー」

 Nightたちは顔を上げた。
 何があったのかと問うたのだが、すぐに自分の目で判断できた。

「雪か?」

 Nightがぽつりと呟くと、フェルノも子供の様に気が付いた。
 跳ねようとしたがそりの中なので、はしゃぐにはしゃぎきれなかった。

「うわぁ、凄い凄い! 雪だよみんな。今年初めての雪だよ!」
「いや、雪山に行っただろ」

 Nightは素早く水を差した。
 雪山に行ったので、確かに雪を見るのは初めてではなかった。

 けれどGAMEの中で降り始めた雪を見るのは初めてだった。
 これは初雪と言っても過言ではなかった。

「綺麗ですね。しかも冷たいです」
「でも風も強いわね。高度どれだけ取っているのかしらね?」

 確かに高度は高かった。
 雪が降り始めたので一瞬意識の外側へと追いやったのだが、そりの中から下を見て見ると、街の灯りが小さく見えた。

「ドローンとか衛星カメラでしか見たことないよ」
「確かに実際のものだとそうだな。とは言えここはGAMEだ」
「うわぁ、冷めること言うねー」
「悪かったな。だが別に冷ますつもりはないぞ。逆に貴重だ」

 確かに空飛ぶそりに乗る経験何て普通有り得ない。
 そこから見らえる景色は飛行機などで見るような景色とはまた違って見えた。
 きっとそう言うことが言いたいのだろうが、正直飛行機などに乗った経験あまり無いので、アキラたちはピンと来なかった。

 そんな微妙な空気を切り替えようと、Nightは話をすり替えた。
 上の方をずっと見ながら、ゆっくりと降る雪の粒を見やった。

「にしても少ないな」
「話をすり替えた!?」

 アキラがツッコミを入れた。
 しかしいつものことなので、誰も何も言わなかった。

「でも確かに。ホワイトクリスマスなら、もう少し降って欲しいよね」

 ここに来て不満を吐いた。
 確かにアキラたちの言う通り、あまりにも雪の量が少なかった。

 これだと地上には届かないし、むしろ積もることが無かった。
 それぐらい薄っすらとした少ない量で、今しか味わえなかった。

「ってことはもしかして!」

 アキラはトレントディアたちを見た。
 トレントディアたちは雪など興味は無いのか、ずっと停滞していた。
 つまちは空の上で停まってくれていた。これが何を意味しているのか、アキラにも伝わった。いいや、アキラにはいち早く伝わった。

「そっか。そうだったんだ」
「何か分かったのか?」
「うん。きっとトレントディアたちが私たちをここに連れて来てくれたんだよ。地上だと見られない景色を目の当たりにできる喜びって言うのかな?」

 トレントディアたちの意思を汲み取ると、アキラは雪を見せて上げたかったのではと解釈した。
 地上だとこの雪の量だとすぐに溶けて見られない。

 だけど高いところなら降り始めた初雪を拝めると、トレントディアたちなりにプレゼントを用意してくれたのではと勝手に思った。
 その話を聞き、全員ほっこりした気分になった。
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