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◇294 クリスマスの贈り物

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 アキラは釉薬の塗られた星をクリスマスのてっぺんに置こうとした。
 とは言え、如何やって置けばいいのか分からなかった。

「コレ如何やって置けばいいの?」
「そう言えば底面が穴が空いてないもんね」

 今更だがフェルノに言われて気が付いた。
 とは言え置いてみるしかないので、アキラはそっと手を伸ばして星をツリーのてっぺんに置いてみた。

 カクン!

 案の定、真っ直ぐは置けなかった。
 正直微妙な形になってしまったが、とりあえずこれで十分だった。

「こ、これで良いのかな?」
「良いんじゃないのー? とりあえずさー、何も起きないのが気になるなー」

 フェルノの言う通り、何も起きなかった。
 もしかしたらちゃんと真っ直ぐ置かないと置いた判定にはならないのかと思った。

 けれど悩んでも仕方なかった。
 それならもう一度置き直そうとした瞬間、急に眩い輝きを放った。

「「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」

 星が急に眩く輝き始めた。
 至近距離で光を浴びてしまい、アキラたちは目を瞑ると、仄かな温もりを肌と心で感じ取った。

「あ、あれ?」
「眩しいだけだな。痛みも錯乱も無しか……これがベツレヘムの星の効果と言う訳か」

 Nightはあまりにも淡白な反応だった。
 しかし確かに先程までの穢れや澱みの重さは感じなくなった。
 もしかしたらジワジワと効果が出ているのかもしれなかった。

「温かいですね」
「本当ね。こんなに気持ちの良い光とは思わなかったわ」

 雷斬とベルも安らかな表情を浮かべた。
 如何やらスキルによるダメージが完全に抜けたようで、むしろ以前よりも調子が良さそうだった。

「二人も無事で良かったよ」
「お騒がせしてすみません」
「大丈夫だよー。それよりもさー、街の様子はどんな感じなん?」
「こんな感じだな」

 そりの上から真下を見下ろした。
 するとたくさんの人たちが先程までは一斉に視線を向けていたはずが、今度はそりではなく、クリスマスツリーへと集中していた。

 ポカポカとした温もりを光と共に全身に浴びていた。
 そのおかげか街全体の穢れが徐々に浄化され、何となくだけど雰囲気が良さそうだった。

「これなら下りても問題なさそうだな」
「そうだね。でも私たちもラッキーだよね」
「ラッキー? そうだな」

 Nightはアキラの言葉の意図を汲んだ。
 これだけの至近距離で誰よりも温もりを浴びることができたので、心も体もより一層強くなった気がした。

「不思議な感覚だよね」
「そうだな。もしかしたらコレを運営は求めていたのかもしれないぞ」
「如何言うことですか?」

 雷斬はNightに尋ねた。
 するとNightは仮説を立てて話した。

「これはあくまでも私個人の意見でしかないが、この輝きはある種の達成感を表していると思う」
「「達成感?」」
「この場合は高揚感。即ち、楽しいと思う気持ちだ。人間の鬱的なエネルギーは有意義ではないストレスから生じる。心で感じるエネルギーは脳で一度処理された感情のエネルギーだ。だったらその鬱憤を高揚感で祓ってしまえばいい。そこまで考えているのかは知らないが、もしくはその先かもしれないが、おそらくそんな考えのもと生まれたものだろうな」
「「「……」」」

 Nightの渾身の説明に対して、誰も頷くことはなかった。
 あまりに話が個人の見解かつ、小難しかった。
 そんな脳波とか精神とか、概念的な目に見えないものをアキラたちが瞬間的に理解できる訳が無いのだ。

「如何したんだ?」
「いや、ちょっと難しい話かなーって」
「つまり何が言いたかったの?」

 アキラは首を捻り、フェルノは分かりやすくを要求した。
 そこでNightはたった一言で説明した。もちろん短文だった。

「辛いと楽しいで相殺した。以上だ」

 急に簡単になった。
 するとアキラたち全員の顔が納得した様子になった。

「「「なるほど」」」
「ハモらなくてもいい。とは言え、気になりはするな」
「何が気になるの?」
「これだけのことができる開発元だ」

 Nightは訝しい目をして、眉根を寄せた。
 とは言え気にしても仕方ないので今はスルーした。
 それよりもアキラとフェルノは気になることがあったのだ。

「それよりさ、やっぱり曲がっているの気になるよねー?」
「うん。私が置いたけど、変な形で置かれているもんね」

 クリスマスツリーのてっぺんの星が、真っ直ぐではなく曲がっていた。
 如何しても気になってしまい、トレントディアたちに頼んで近づいて貰った。

「アキラ、届きそう?」
「う、うん。ちょっと待ってねー」

 アキラは手を伸ばした。フェルノが後ろから抑えていた。
 しかし手を伸ばすものの届きそうにないので、せめて指先だけでもと近づけた。
 すると——

「うわぁ!」
「ま、眩しい」

 急に星が光り出した。
 あまりにも眩しすぎて目を瞑ってしまいそうだったが、すぐに発光は止んだ。
 代わりに星の輝きに乗って何かが飛んできたのをアキラは見逃さなかった。
 クルクルと回転しながら、光の球体がアキラの手の中にすっぽり納まった。
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