290 / 570
◇288 気が付けば時間が無い
しおりを挟む
何が起きたのか、アキラ本人には分からなかった。
突然【半液状化】が解除され、人間状態で地面に投げ出されたのだ。
「うわぁ! い、痛くない?」
地面に激突したはずなのに全く痛くなかった。
これもスライムになっていたおかげだと分かるのだが、何故に突然解除されたのかは、アキラにはピンと来ていなかった。
「ど、如何して……えっ?」
アキラは首を捻っていた。
するとNightが声を掛けた。
「如何したも無いだろ。【半液状化】で地面に叩きつけられてバウンドしたんだ」
「バウンド? そんなのしてないよ」
アキラの記憶には全くなかった。
しかしNightは真顔で答えた。
「いいやしていたぞ」
「そんな、それじゃあ私が覚えていないのって……」
「多分仕様だな。もともとスライム状態だとあまり目が良くない。しかも弾力のあるスライムボディだと衝撃も吸収してしまうからな。昭が覚えていないのは、飛び跳ねた面が地面に向かってだったから視界に入らなかったんだろ」
「そ、それは……うーん、難しい」
それで納得しろと言われても難しかった。
しかしNightだけではなく、フェルノまで同じことを口走った。
「でも凄く跳ねたね、スーパーボールみたいだったよ」
「何だろう、全然嬉しくない」
とは言いつつも、そのおかげで助かったのだ。
初めて手に入れたスキルが度々助けてくれるので嬉しかった。
「それはそうと、ようやく倒せたな」
「そうね。結構大変だったわね」
クリスマスボアは手強かった。
流石は季節イベント限定モンスターと思えるほどで、アキラたちも相当苦戦を強いられた。
やっぱり大きいモンスターは強い。
HPが高いので何度ダメージを与えてもキリが無かった。
「とは言えようやく手に入れられたな」
「そうだね。この赤い宝石、早速嵌め込めるかやってよっか!」
インベントリから先程手に入れた赤い宝石と、星型のアイテムを取り出した。
中途半端な形で窪みが出来ていて、アキラは雷斬が必死の思いで手に入れてくれた宝石を当てはめた。
カチャッ!
ピッタリ嵌ってくれた。
これでようやく完成したと思い、一安心するアキラとフェルノだったが、Nightは訝しい表情を浮かべていた。
「いいやまだだな」
「まだ? 何言ってるのさー、もう完成でしょー」
「これ以上何もできないわよ?」
「色味が足りない。それにお前は見せてくれたな」
「見せたって何を?」
変な意味じゃない気がした。
それだけしか分からず、アキラたちは首を捻る。
しかしNightはアキラに言った。
「釉薬の入った小瓶。アレを塗ってようやく完成だろ」
「釉薬? やっぱり関係あるのかな?」
「如何だろう? 疑ったりはしないけど、関係ないんじゃないかなー?」
アキラとフェルノが互いに目配せし合った。
流石に釉薬は違うのではないかと、今になって思い始めたのだ。
しかしNightは確信していた。
その証拠に小瓶を取り出すと、早速蓋を外した。
「ほら、見て見ろ」
「見て見ろって言われても……あれ?」
「星のマークがあるね」
フェルノが呟いた。
釉薬の入った小瓶の蓋の裏には、星のマークが描かれていた。
これを偶然と捉えるのは簡単な話だ。
しかしNightはここまでのイベントやクエストの繋がりを鑑みて、意味があると睨んでいた。
「と言うことは、この釉薬は……」
「おそらく運営が用意していたものだろうな。幾つ同系統の報酬が設定されたクエストがあったかは知らない。だが、偶然にも……いや意図的にランダムなプレイヤーに達成するように仕組まれていたとしか……そうなると如何して私たちが選ばれたんだ? これも偶然なのか、いいやもしも意図的だとすると大勢のプレイヤーに疎まれてしまうからな……難しい話だ」
「何言ってるの?」
Nightが完全に一人の世界に飛び込んでしまった。
こうなったら引っ張り出すしかないので、アキラはNightの肩を揺すった。
「おーい、Nightさーん! 早く戻ってきてー!」
顎に手を当てて考え込んでいた。
しかしアキラに思いっきり揺すられ、脳がぐわんぐわんになった。
「聞こえてる。聞こえているから止めろ」
「何だ、それなら早く言ってよ」
アキラはNightに言われて揺するのを止めた。
それから話を頭の中で勝手にまとめた。
「ふぅ。まあいい。とりあえずこれで手に入ったな」
「それじゃあ釉薬塗ってみよっか」
「もう塗ってる」
Nightがいつの間にか釉薬を塗り終わっていた。
すると木目に沿って釉薬が溶け込み、少し眩くなった。
「ちょっと輝いてる?」
「地味だな」
「地味だねー」
こんなに頑張ったのに変化の起伏が薄かった。
蟀谷をポリポリと掻きながら、如何したものかと色々考えた。
特にNightは時間を気にしていた。
「問題はここからだな」
「ここから? これ以上面倒なことが待っているの?」
ベルがげんなりしていた。
するとNightが核心を突いた。
「いいや、面倒と言うよりも……時間が足りないんだ」
「「「はいっ!?」」」
本当に時間が押していた。
このままじゃ間に合わないと悟った。
突然【半液状化】が解除され、人間状態で地面に投げ出されたのだ。
「うわぁ! い、痛くない?」
地面に激突したはずなのに全く痛くなかった。
これもスライムになっていたおかげだと分かるのだが、何故に突然解除されたのかは、アキラにはピンと来ていなかった。
「ど、如何して……えっ?」
アキラは首を捻っていた。
するとNightが声を掛けた。
「如何したも無いだろ。【半液状化】で地面に叩きつけられてバウンドしたんだ」
「バウンド? そんなのしてないよ」
アキラの記憶には全くなかった。
しかしNightは真顔で答えた。
「いいやしていたぞ」
「そんな、それじゃあ私が覚えていないのって……」
「多分仕様だな。もともとスライム状態だとあまり目が良くない。しかも弾力のあるスライムボディだと衝撃も吸収してしまうからな。昭が覚えていないのは、飛び跳ねた面が地面に向かってだったから視界に入らなかったんだろ」
「そ、それは……うーん、難しい」
それで納得しろと言われても難しかった。
しかしNightだけではなく、フェルノまで同じことを口走った。
「でも凄く跳ねたね、スーパーボールみたいだったよ」
「何だろう、全然嬉しくない」
とは言いつつも、そのおかげで助かったのだ。
初めて手に入れたスキルが度々助けてくれるので嬉しかった。
「それはそうと、ようやく倒せたな」
「そうね。結構大変だったわね」
クリスマスボアは手強かった。
流石は季節イベント限定モンスターと思えるほどで、アキラたちも相当苦戦を強いられた。
やっぱり大きいモンスターは強い。
HPが高いので何度ダメージを与えてもキリが無かった。
「とは言えようやく手に入れられたな」
「そうだね。この赤い宝石、早速嵌め込めるかやってよっか!」
インベントリから先程手に入れた赤い宝石と、星型のアイテムを取り出した。
中途半端な形で窪みが出来ていて、アキラは雷斬が必死の思いで手に入れてくれた宝石を当てはめた。
カチャッ!
ピッタリ嵌ってくれた。
これでようやく完成したと思い、一安心するアキラとフェルノだったが、Nightは訝しい表情を浮かべていた。
「いいやまだだな」
「まだ? 何言ってるのさー、もう完成でしょー」
「これ以上何もできないわよ?」
「色味が足りない。それにお前は見せてくれたな」
「見せたって何を?」
変な意味じゃない気がした。
それだけしか分からず、アキラたちは首を捻る。
しかしNightはアキラに言った。
「釉薬の入った小瓶。アレを塗ってようやく完成だろ」
「釉薬? やっぱり関係あるのかな?」
「如何だろう? 疑ったりはしないけど、関係ないんじゃないかなー?」
アキラとフェルノが互いに目配せし合った。
流石に釉薬は違うのではないかと、今になって思い始めたのだ。
しかしNightは確信していた。
その証拠に小瓶を取り出すと、早速蓋を外した。
「ほら、見て見ろ」
「見て見ろって言われても……あれ?」
「星のマークがあるね」
フェルノが呟いた。
釉薬の入った小瓶の蓋の裏には、星のマークが描かれていた。
これを偶然と捉えるのは簡単な話だ。
しかしNightはここまでのイベントやクエストの繋がりを鑑みて、意味があると睨んでいた。
「と言うことは、この釉薬は……」
「おそらく運営が用意していたものだろうな。幾つ同系統の報酬が設定されたクエストがあったかは知らない。だが、偶然にも……いや意図的にランダムなプレイヤーに達成するように仕組まれていたとしか……そうなると如何して私たちが選ばれたんだ? これも偶然なのか、いいやもしも意図的だとすると大勢のプレイヤーに疎まれてしまうからな……難しい話だ」
「何言ってるの?」
Nightが完全に一人の世界に飛び込んでしまった。
こうなったら引っ張り出すしかないので、アキラはNightの肩を揺すった。
「おーい、Nightさーん! 早く戻ってきてー!」
顎に手を当てて考え込んでいた。
しかしアキラに思いっきり揺すられ、脳がぐわんぐわんになった。
「聞こえてる。聞こえているから止めろ」
「何だ、それなら早く言ってよ」
アキラはNightに言われて揺するのを止めた。
それから話を頭の中で勝手にまとめた。
「ふぅ。まあいい。とりあえずこれで手に入ったな」
「それじゃあ釉薬塗ってみよっか」
「もう塗ってる」
Nightがいつの間にか釉薬を塗り終わっていた。
すると木目に沿って釉薬が溶け込み、少し眩くなった。
「ちょっと輝いてる?」
「地味だな」
「地味だねー」
こんなに頑張ったのに変化の起伏が薄かった。
蟀谷をポリポリと掻きながら、如何したものかと色々考えた。
特にNightは時間を気にしていた。
「問題はここからだな」
「ここから? これ以上面倒なことが待っているの?」
ベルがげんなりしていた。
するとNightが核心を突いた。
「いいや、面倒と言うよりも……時間が足りないんだ」
「「「はいっ!?」」」
本当に時間が押していた。
このままじゃ間に合わないと悟った。
0
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる