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◇284 額の赤い宝石を手に入れた
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クリスマスボアは苛立ちを抑えられなかった。
その間にアキラが戻って来ると、いよいよ反撃を開始した。
「良し、一気に決めるぞ」
「おお、何かヒーローっぽい!」
「どんな感想だ。とにかく、奴の注意を逸らしているうちに額の宝石だけを奪い取る。それさえ手に入れれば最悪倒せなくてもいい。良いな」
Nightの指示は合理的だった。
最小限の戦闘で今できる最高のパフォーマンスを得ようと画策していた。
「とにかくスピード勝負だ。雷斬かフェルノ、どっちか行って来い」
「そんな無茶なぁー」
「フェルノがそんなことを言うのか?」
「もちろん行けるけどさ、倒さないのはつまんなくない? だって倒せそうだよ?」
フェルノは違うベクトルの話をしていた。
目的を見失っているようで見失っていなかった。
結果が通過点でしかないらしく、ムスッとしていた。
「それは後回しだ。とにかく頼んだぞ」
「分かりました。それでは私が行きます。フェルノさん、ベル、援護をお願いしますね」
雷斬は刀を構えた。
腰を低く落として、居合の構えと共に利き足を下げた。
如何やら走るための体勢に入ったようで、ベルが弓を構えた。
「いつでもどうぞ」
「では……【雷鳴】!」
雷斬の体を青い稲妻が纏わり付いた。
その瞬間、ベルの構えた弓と矢が呼応して激しく震え出した。
「な、何をするのかな?」
「分からない。だが入ったな」
ベルは既に狙いを済ましていた。
空気が震える感触がクリスマスボアの青い毛にも伝わり、静電気でビリビリと震えた。
流石に気になったらしく振り向くと、ベルは矢を放った。
「こっちを見たのが貴方の最後よ」
ベルの決め台詞と共に、雷斬は走り出した。
周りをフェルノの炎が壁を作り、一本道のコースを作り出した。
これで迷いなく最大加速ができた。
「雷斬! どうせなら額に一発入れちゃって!」
「その必要は無いわよ」
ベルがそんなことを言い出した。
先に弦を震わせた矢は炎の熱波を受けても尚真っ直ぐに正確に飛んでいた。
ただ一直線に、風の抵抗などを読み切ったベルの前では狙いを変えることすら不可能に近かった。
グサリ!
「ブォォォォォォォォォォン! ウォンウォーン!」
ベルの放った矢は正確に射抜いた。
クリスマスボアの右目を奪うと、あまりの痛みと絶望感に暴れ狂った。
「グロい!」
「今はそれで良いのよ。これでもう、クリスマスボアは雷斬を追うことはできないわね」
ベルがそう言うのには根拠があった。
炎のコースが雷斬の姿を覆い隠して、ただでさえ雷の速度を有していた雷斬の体を陽炎で表現した。
雷斬の残像が幾つにもなって分裂した。
しかしその全ては虚像で掴むことはできなかった。
まさしく陽炎のコンビネーションだ。
「す、凄い。全然見えない!」
「見えているけど見えないのよ。陽炎が認識を削いでいるの」
「考えたな。だから雷……炎を揺らめかせているのか」
Nightも面白いと表現した。
アキラは雷斬たちのコンビネーションに目を奪われてしまった。
とてもカッコよかった。
雷斬は刀を抜くと、炎を刀身に宿した。
「炎と雷です。流石に受けてくださいね」
雷斬は草鞋で地面を蹴った。
するとクリスマスボアの鼻先に足を掛け、その勢いで額を狙った。
爛々と赤く輝く宝石が煌めていた。
埋め込まれているようで削ぎ落すしかないと思ったが、雷斬の刀身の先がちょこんと触れると簡単に外れてしまった。
「おっと!」
あまりに簡単に外れてしまったので、雷斬も驚いてしまった。
すぐさま手を伸ばして、炎の中に落ちる前に回収した。
「手に入りましたね。これで……うわぁ!」
クリスマスボアが暴れ出した。
ワイヤーが絡みついた牙を地面に擦り合わせて摩擦で無理やり引き千切った。
あまりの強引な行動に、足を掛けていた雷斬の体勢が傾き始めた。
「くっ! 仕方がありませんね……」
雷斬は目的のものが手に入ったので、一旦攻撃の手を止めた。
まずは離脱することを考え、急いで額を蹴って飛んだ。
「はぁっ!」
利き足に重心を置き、思い切り蹴っ飛ばした。
すると雷斬の体が宙に浮き、そのままの流れで【雷鳴】を発動させた。
雷が雷斬の体を覆う瞬間、クリスマスボアの牙が反旗を翻した。
「しまった!」
「雷斬!」
ベルが叫んだ。
雷斬の体を白い牙が貫きそうになったのだ。
しかし一歩早く動く影があった。
アキラは【月跳】と発動させ、雷斬の体を抱きかかえた。
「雷斬、大丈夫?」
「アキラさん? は、はい……ありがとうございます」
「良いよ。危険な状態の友達を見過ごせるわけないでしょ?」
アキラは当たり前のことを伝えた。
しかしそれが当たり前ではないことは誰もが周知していた。
けれど雷斬は堂々と口にしたアキラに感激した。目を見開いたまま一瞬固まると、「はい」と薄っすら涙を浮かべていた。
「えっ、何で泣いてるの!?」
「何ででしょうね?」
泣きそうな顔を浮かべていた。珍しい表情が見られたアキラは驚いてしまったが、嬉しくて仕方なかった。
その間にアキラが戻って来ると、いよいよ反撃を開始した。
「良し、一気に決めるぞ」
「おお、何かヒーローっぽい!」
「どんな感想だ。とにかく、奴の注意を逸らしているうちに額の宝石だけを奪い取る。それさえ手に入れれば最悪倒せなくてもいい。良いな」
Nightの指示は合理的だった。
最小限の戦闘で今できる最高のパフォーマンスを得ようと画策していた。
「とにかくスピード勝負だ。雷斬かフェルノ、どっちか行って来い」
「そんな無茶なぁー」
「フェルノがそんなことを言うのか?」
「もちろん行けるけどさ、倒さないのはつまんなくない? だって倒せそうだよ?」
フェルノは違うベクトルの話をしていた。
目的を見失っているようで見失っていなかった。
結果が通過点でしかないらしく、ムスッとしていた。
「それは後回しだ。とにかく頼んだぞ」
「分かりました。それでは私が行きます。フェルノさん、ベル、援護をお願いしますね」
雷斬は刀を構えた。
腰を低く落として、居合の構えと共に利き足を下げた。
如何やら走るための体勢に入ったようで、ベルが弓を構えた。
「いつでもどうぞ」
「では……【雷鳴】!」
雷斬の体を青い稲妻が纏わり付いた。
その瞬間、ベルの構えた弓と矢が呼応して激しく震え出した。
「な、何をするのかな?」
「分からない。だが入ったな」
ベルは既に狙いを済ましていた。
空気が震える感触がクリスマスボアの青い毛にも伝わり、静電気でビリビリと震えた。
流石に気になったらしく振り向くと、ベルは矢を放った。
「こっちを見たのが貴方の最後よ」
ベルの決め台詞と共に、雷斬は走り出した。
周りをフェルノの炎が壁を作り、一本道のコースを作り出した。
これで迷いなく最大加速ができた。
「雷斬! どうせなら額に一発入れちゃって!」
「その必要は無いわよ」
ベルがそんなことを言い出した。
先に弦を震わせた矢は炎の熱波を受けても尚真っ直ぐに正確に飛んでいた。
ただ一直線に、風の抵抗などを読み切ったベルの前では狙いを変えることすら不可能に近かった。
グサリ!
「ブォォォォォォォォォォン! ウォンウォーン!」
ベルの放った矢は正確に射抜いた。
クリスマスボアの右目を奪うと、あまりの痛みと絶望感に暴れ狂った。
「グロい!」
「今はそれで良いのよ。これでもう、クリスマスボアは雷斬を追うことはできないわね」
ベルがそう言うのには根拠があった。
炎のコースが雷斬の姿を覆い隠して、ただでさえ雷の速度を有していた雷斬の体を陽炎で表現した。
雷斬の残像が幾つにもなって分裂した。
しかしその全ては虚像で掴むことはできなかった。
まさしく陽炎のコンビネーションだ。
「す、凄い。全然見えない!」
「見えているけど見えないのよ。陽炎が認識を削いでいるの」
「考えたな。だから雷……炎を揺らめかせているのか」
Nightも面白いと表現した。
アキラは雷斬たちのコンビネーションに目を奪われてしまった。
とてもカッコよかった。
雷斬は刀を抜くと、炎を刀身に宿した。
「炎と雷です。流石に受けてくださいね」
雷斬は草鞋で地面を蹴った。
するとクリスマスボアの鼻先に足を掛け、その勢いで額を狙った。
爛々と赤く輝く宝石が煌めていた。
埋め込まれているようで削ぎ落すしかないと思ったが、雷斬の刀身の先がちょこんと触れると簡単に外れてしまった。
「おっと!」
あまりに簡単に外れてしまったので、雷斬も驚いてしまった。
すぐさま手を伸ばして、炎の中に落ちる前に回収した。
「手に入りましたね。これで……うわぁ!」
クリスマスボアが暴れ出した。
ワイヤーが絡みついた牙を地面に擦り合わせて摩擦で無理やり引き千切った。
あまりの強引な行動に、足を掛けていた雷斬の体勢が傾き始めた。
「くっ! 仕方がありませんね……」
雷斬は目的のものが手に入ったので、一旦攻撃の手を止めた。
まずは離脱することを考え、急いで額を蹴って飛んだ。
「はぁっ!」
利き足に重心を置き、思い切り蹴っ飛ばした。
すると雷斬の体が宙に浮き、そのままの流れで【雷鳴】を発動させた。
雷が雷斬の体を覆う瞬間、クリスマスボアの牙が反旗を翻した。
「しまった!」
「雷斬!」
ベルが叫んだ。
雷斬の体を白い牙が貫きそうになったのだ。
しかし一歩早く動く影があった。
アキラは【月跳】と発動させ、雷斬の体を抱きかかえた。
「雷斬、大丈夫?」
「アキラさん? は、はい……ありがとうございます」
「良いよ。危険な状態の友達を見過ごせるわけないでしょ?」
アキラは当たり前のことを伝えた。
しかしそれが当たり前ではないことは誰もが周知していた。
けれど雷斬は堂々と口にしたアキラに感激した。目を見開いたまま一瞬固まると、「はい」と薄っすら涙を浮かべていた。
「えっ、何で泣いてるの!?」
「何ででしょうね?」
泣きそうな顔を浮かべていた。珍しい表情が見られたアキラは驚いてしまったが、嬉しくて仕方なかった。
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