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◇277 Deep Skyクリスマス店
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ピーコは虚無な顔をしていたが、アキラたちを見つけると少しだけ笑みを浮かべた。
いつもは工房に籠っているはずが、こうして久々に顔色を見ると何だか懐かしい気分になった。
「いつも素材の提供ありがとう。おかげで色んな道具が作れている。本当に助かっている」
ピーコはけみーと似た口調だった。
しかしより淡々としていて機械的だった。
今日は目が死んでいるので余計に機械感が伝わってきた。
「大丈夫ですか、ピーコさん?」
「大丈夫。大丈夫だと思いたい。だから気にしないで欲しい。気にされると心が傷付く」
「連呼すると余計に傷口を抉るぞ」
「そうは言っても喋らないと心が保たないから……」
ピーコの格好はとにかく詰め込まれていた。
サンタクロースのような赤ずきんのようにも見える赤い格好に、頭からはトナカイの角を模したカチューシャを付けていた。
おまけに背中には木の板を背負い、手にはバスケットをもる徹底ぶりだ。
足元もフワフワでモコモコなブーツを履いていた。
一言で言えばキャラの渋滞だった。
こんな格好、誰が見ても目を惹いてしまうはずで、ピーコは一躍注目の的になっていた。
「帰りたい」
「本音を言っちゃダメですよ。それより背中のソレは何ですか?」
ピーコに質問すると、背中に背負っていた板を見せてくれた。
如何やら看板のようで、『Deep Skyクリスマス店』と書かれていた。
「本当に宣伝目的だったんですね。いつもは隠れ家的な感じなのに」
「クリスマスは特別らしい」
「特別なんだ」
「いいや、この手の商戦は今時何処でもどんな時期にでも取って付けたようにしたがるものだ」
Nightはうんざりしていた。
ピーコも絶望的な雰囲気を醸し出しつつ、目が死んでいて虚無の中に閉じ籠っていた。
「それより如何してこんなところに居るの?」
「Nightが気分を悪くしちゃって」
「悪いな」
アキラに言われてすぐさまNightは謝った。
別に謝ることでもないのだが、ピーコはそれを聞くと「大丈夫?」と機械的な喋り方をした。
「今は問題ない。とりあえず、フェルノと合流しないといけないな」
「そうだよね。でも何処に行ったか分からないし、メッセージでやり取りをしてもこの人だかりだと見つかる気がしないんだよね」
「それなら私と一緒に捜して回る?」
「「えっ!?」」
ピーコの提案はもの凄くありがたかった。
確かに二人で捜すよりも三人の方が見つかりやすいに決まっていた。
しかしNightは危惧していた。
ピーコは自分と同じ目に遭わせようとしていた。
それもそうだ。一人で、恥ずかしい格好をして歩くよりも普通の格好をして歩いている人の方が恥ずかしさは倍になった。
人間の心理を付いているとはいえ、流石に今は乗るしかなかった。
「仕方ないか」
「そうと決まれば一旦戻る」
ピーコはソウラの元に一旦戻ることにした。
アキラたちもお付となり、付いて回るのだが少し恥ずかしかった。しかし二人は気にしないのだった。
ピーコはもの凄く目立っていた。
道の真ん中を堂々と歩いていると、周囲からの“ヤバいものを見た”感が強まった。
「凄いですよピーコさん! 周りの人が避けていきますよ!」
「そう」
「これなら熱気を受ける心配もないな」
「かも」
「……大丈夫ですか?」
「問題無い」
ピーコはどんどん口数が減っていた。
いつもの機械のような超高速口調が何処へやら、電池切れ寸前になっていた。
アキラたちが煽るようにおだてたのだが、意味がなかった。
むしろ逆効果のようで、どんどん暗いオーラが放出されていた。
「マズいぞ。如何する?」
「如何することもできないよ。あっ、そうだ!」
アキラは良いことを思い付いた。
ピーコの好きなステージに自分たちから上がるのだ。
「ピーコさん、最近工房はどんな感じですか? 何か面白い物はできましたか?」
「聞いてくれるの!」
急にピーコの顔色が変わった。
目がキラキラしていて覇気があった。
「は、はい……凄い熱量ですね」
「聞いてくれて嬉しい。でもね、聞いて損しないものはできてる。Nightみたいに何でもかんでも作れるわけじゃないけど、私が作りたかったものがたくさんできた。ほとんど木製の品だけど、例えばこんなお皿とか」
ピーコは木製の品を作ることが専門だ。
たまに金属を混ぜたりもするが、今回見せてくれたのは普通にお皿だった。
木のお皿で、表面を光沢のある釉薬で加工されていた。
「ピーコさん、コレは?」
「水を垂らしてみて。そうすれば面白いことになるから」
ピーコの期待を煽るような言い分に水筒から水を垂らしてみた。
すると釉薬と木の木目の間に水が入り込み、別の模様を映し出した。
お皿の中に金魚が泳ぎ始めたのだ。
「えっ!?」
「なるほど。面白いな」
アキラとNightは目を奪われた。
ピーコも自信作のようで満面の笑みを浮かべていた。
その表情には先程までのどんよりムードは無かった。
如何やらアキラたちの息抜き作戦は成功したようで、ホッと胸を撫で下ろしていた。
だけど本当に凄いものを見せて貰った。
アキラたちの驚く反応に周りに人が集まり、ピーコの皿を見て感動する人が続出した。
如何やら宣伝も上手く行ったようだ。
一石二鳥で安心した。
いつもは工房に籠っているはずが、こうして久々に顔色を見ると何だか懐かしい気分になった。
「いつも素材の提供ありがとう。おかげで色んな道具が作れている。本当に助かっている」
ピーコはけみーと似た口調だった。
しかしより淡々としていて機械的だった。
今日は目が死んでいるので余計に機械感が伝わってきた。
「大丈夫ですか、ピーコさん?」
「大丈夫。大丈夫だと思いたい。だから気にしないで欲しい。気にされると心が傷付く」
「連呼すると余計に傷口を抉るぞ」
「そうは言っても喋らないと心が保たないから……」
ピーコの格好はとにかく詰め込まれていた。
サンタクロースのような赤ずきんのようにも見える赤い格好に、頭からはトナカイの角を模したカチューシャを付けていた。
おまけに背中には木の板を背負い、手にはバスケットをもる徹底ぶりだ。
足元もフワフワでモコモコなブーツを履いていた。
一言で言えばキャラの渋滞だった。
こんな格好、誰が見ても目を惹いてしまうはずで、ピーコは一躍注目の的になっていた。
「帰りたい」
「本音を言っちゃダメですよ。それより背中のソレは何ですか?」
ピーコに質問すると、背中に背負っていた板を見せてくれた。
如何やら看板のようで、『Deep Skyクリスマス店』と書かれていた。
「本当に宣伝目的だったんですね。いつもは隠れ家的な感じなのに」
「クリスマスは特別らしい」
「特別なんだ」
「いいや、この手の商戦は今時何処でもどんな時期にでも取って付けたようにしたがるものだ」
Nightはうんざりしていた。
ピーコも絶望的な雰囲気を醸し出しつつ、目が死んでいて虚無の中に閉じ籠っていた。
「それより如何してこんなところに居るの?」
「Nightが気分を悪くしちゃって」
「悪いな」
アキラに言われてすぐさまNightは謝った。
別に謝ることでもないのだが、ピーコはそれを聞くと「大丈夫?」と機械的な喋り方をした。
「今は問題ない。とりあえず、フェルノと合流しないといけないな」
「そうだよね。でも何処に行ったか分からないし、メッセージでやり取りをしてもこの人だかりだと見つかる気がしないんだよね」
「それなら私と一緒に捜して回る?」
「「えっ!?」」
ピーコの提案はもの凄くありがたかった。
確かに二人で捜すよりも三人の方が見つかりやすいに決まっていた。
しかしNightは危惧していた。
ピーコは自分と同じ目に遭わせようとしていた。
それもそうだ。一人で、恥ずかしい格好をして歩くよりも普通の格好をして歩いている人の方が恥ずかしさは倍になった。
人間の心理を付いているとはいえ、流石に今は乗るしかなかった。
「仕方ないか」
「そうと決まれば一旦戻る」
ピーコはソウラの元に一旦戻ることにした。
アキラたちもお付となり、付いて回るのだが少し恥ずかしかった。しかし二人は気にしないのだった。
ピーコはもの凄く目立っていた。
道の真ん中を堂々と歩いていると、周囲からの“ヤバいものを見た”感が強まった。
「凄いですよピーコさん! 周りの人が避けていきますよ!」
「そう」
「これなら熱気を受ける心配もないな」
「かも」
「……大丈夫ですか?」
「問題無い」
ピーコはどんどん口数が減っていた。
いつもの機械のような超高速口調が何処へやら、電池切れ寸前になっていた。
アキラたちが煽るようにおだてたのだが、意味がなかった。
むしろ逆効果のようで、どんどん暗いオーラが放出されていた。
「マズいぞ。如何する?」
「如何することもできないよ。あっ、そうだ!」
アキラは良いことを思い付いた。
ピーコの好きなステージに自分たちから上がるのだ。
「ピーコさん、最近工房はどんな感じですか? 何か面白い物はできましたか?」
「聞いてくれるの!」
急にピーコの顔色が変わった。
目がキラキラしていて覇気があった。
「は、はい……凄い熱量ですね」
「聞いてくれて嬉しい。でもね、聞いて損しないものはできてる。Nightみたいに何でもかんでも作れるわけじゃないけど、私が作りたかったものがたくさんできた。ほとんど木製の品だけど、例えばこんなお皿とか」
ピーコは木製の品を作ることが専門だ。
たまに金属を混ぜたりもするが、今回見せてくれたのは普通にお皿だった。
木のお皿で、表面を光沢のある釉薬で加工されていた。
「ピーコさん、コレは?」
「水を垂らしてみて。そうすれば面白いことになるから」
ピーコの期待を煽るような言い分に水筒から水を垂らしてみた。
すると釉薬と木の木目の間に水が入り込み、別の模様を映し出した。
お皿の中に金魚が泳ぎ始めたのだ。
「えっ!?」
「なるほど。面白いな」
アキラとNightは目を奪われた。
ピーコも自信作のようで満面の笑みを浮かべていた。
その表情には先程までのどんよりムードは無かった。
如何やらアキラたちの息抜き作戦は成功したようで、ホッと胸を撫で下ろしていた。
だけど本当に凄いものを見せて貰った。
アキラたちの驚く反応に周りに人が集まり、ピーコの皿を見て感動する人が続出した。
如何やら宣伝も上手く行ったようだ。
一石二鳥で安心した。
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