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◇275 イヴの集い(一年目)

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 シャンシャンシャーン!
 シャンシャンシャーン!
 シャンシャンシャンシャシャーン!

 ログインしてみると、いつもとは違う雰囲気だった。
 しかもBGMが流れているようで、GAMEオリジナルに編曲されたクリスマスらしい曲だった。

「凄い。凄い凄い凄い!」
「はしゃぐな。馬鹿みたいだ」

 興奮しているアキラをNightは咎めた。
 アキラの興奮はフェルノにも伝わっていた。
 頭の上ではいつものように腕を組んでいたが、キラキラと輝いている街並みに目を奪われてしまっていた。

「まあいいじゃんかー」
「フェルノ……仲間が居て良かったー」

 アキラは感激していた。
 フェルノだけではないが、雷斬もベルもきっと同じ気持ちだろうと推測した。

 今回のイベントは初めてのクリスマスイベントだから準備が大変だった。
 何もかもを用意しないといけないのでこうして無事に開催できたことに強烈な達成感を抱いた。
 その感動に比べればと、フェルノはちょっとだけ意地悪を言ってみた。

「そうそう。最近ログインして無かったNightさんには分からないんだよねー」

 フェルノは鋭い目でNightを見た。
 完全に煽っていたが、それを踏まえてアキラはふと思い出した。
 話に乗った方が面白いと思ったのだ。

「そう言えばNight」
「何だ?」
「今日は居るんだね」

 アキラもここ最近ログインしていなかったNightを煽った。
 すると腰に手を当てて自信満々だった。

「ああ。アキラとフェルノのおかげでデバッグも終わったからな。今まで通りのんびりできる。助かった」

 普通に感謝されてしまった。
 アキラとフェルノは瞬きをして顔を見合わせると、何故か体を震わせた。

「う、うわぁ……こうやってNightが突然感謝すると違和感が……」
「そ、そうだね。しかも自分から意図した満面の笑みが逆に不気味……いや、これはこれで逆に有り?」
「お前たち、私を何だと思っているんだ」

 Nightはいつも通りに戻った。
 鋭い目付きでアキラたちを睨みつけると、怒るのも億劫になったのか、先に行ってしまった。

「もういい。行くぞ」
「「何処に?」」

 Nightは転びそうになった。
 今日は気分が良いのか、アクションが少しオーバーだった。
 心の余裕が自分のアバターにも反映されていた。

「雷斬とベルと待ち合わせしているだろ」
「それはそうだけど……」

 アキラとフェルノは固まってしまった。
 それもそのはずで、元気なNightはいつもと違って新鮮だった。

「とりあえずは集合場所まで行くぞ。三十分も前に前のりしている私たちが悪いからな」
「それはそうだけど……多分気にしないと思うよ?」
「それじゃあ何だ。久しぶりにストレスの無くなった私がそんなに不自然か?」
「それも違うよ。ただね……まさか反対側に出るとは……」
「この先を突っ切るの勇気いるよね」

 フェルノが代弁してくれた。
 目の前にはたくさんの人だかりができていて、ギルドの裏口から出てきたことを後悔していた。


 如何してこんなことになったのか、それはアキラたちが先にログインしていたからだ。
 今から三十分前にログインした際、ギルド会館の外はたくさんの人だかりができていた。

「うわぁ、凄い人だね!」

 アキラはあまりの人の多さに目を奪われてしまった。
 ギルド会館から一歩足を踏み出そうものなら、人混みの中に飲み込まれてしまうんじゃないかと思ってしまった。

「それじゃあ早速……」
「待った待った。そのまま突き進んだら大変なことになっちゃうでしょー」

 フェルノに首根っこを掴まれてしまった。
 アキラは危うく人の中に溶けそうになったところを助けて貰った。

「うわぁ、急に如何したの?」
「急にじゃなくってさ、流石にこの中を突っ切るのは無理でしょ?」
「そうだな。このまま闇雲に人の中に溶けられれば合流は難しくなる」

 Nightの言うことはもっともだった。
 とは言え雷斬たちとの合流地点は、噴水広場の方だ。

 こことは距離が離れていた。
 今から勝手な都合でギルド会館集合とは言い難い上に、ギルド会館にはたくさんの人が集まっていた。

 ここに集まればより一層自由に動けなくなりそうだ。 
そこでNightは提案した。

「仕方ない。一旦裏口から出るぞ」
「「裏口?」」
「ああ。このギルド会館の裏口から反対側に出て、まだ少しは空いていそうな路地を抜けて広場に向かう。それが妥当だろ」

 Nightはアキラたちに提案した。
 とても良い案だとアキラたちも納得して裏口から外に出た。

 すると確かに人は少なかった。
 空いている狭い路地を通り、大通りに出たは良いが、ここからが本当の問題だった。

「まあここまでは予定通りだが……」
「クリスマスイベントって凄いね。ハロウィンイベントが今年はあまり盛り上がらなかったからかな?」
「可能性はあるねー。でもさ、流石にこれはやりすぎじゃないのー?」

 大通りにはたくさんのお店が並んでいた。
 そこにはサンタやトナカイの格好をした人達が多く居た。

 如何やらハロウィンの弊害がここに来て出てきてしまった。
 圧倒的な盛り上がりを見せるのは良いのだが、このままだと合流はまず難しかった。

「仕方ないな。反対側に出たのは私たちの責任だ」
「責任問題なのかな?」
「とりあえず雷斬たちとの合流は後回しだな。メッセージを送って」

 Nightは半分諦めてしまっていた。
 如何やら別行動で楽しむことになりそうだ。
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