VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
275 / 599

◇274 ホールケーキが出て来た

しおりを挟む
 明輝は蒼伊の指示の下、様々なチェックをさせられた。
 まさかこんなことになるとは思っていなかったが、意外に楽しかった。

「おっ、急な戦闘!?
「マウスをクリックしろ」
「えっ!? 周囲を確認しても……」
「違う。スクロールするんじゃなくてクリックして攻撃するんだ。WASDとShiftで走れるから、距離を取って近づいてきたところにアクションが表示されるからカウンターを決めろ。数字の1234にはアクションが設定されているはずだ。デフォルトで良いからやってみろ」
「わ、分かんないけど……とりあえずこれで良いのかな? あっ、倒せた」
「早くない!?」

 烈火がベッドから起き上がった。
 しかしディスプレイには勝利シーンが流れていた。

 別にズルをしたわけではなかった。
 普通にプログラムしていたAIの行動で一番甘い動きが連続しただけだ。
 そのせいで本来序盤では苦戦するはずの相手が回復アイテムで倒されてしまった。

「蒼伊、この辺りってもう少し強くても良いんじゃないかな?」
「お前の運が良すぎるんだ。本当はもっと苦戦するんだぞ!」
「そうなの?」
「そうだ。お前が異常だ」

 普通に罵声を浴びせられた。
 しかし明輝は全く傷付かなかった。
 心が常人よりも強かった。だからこそ精神のパラメータがGAME内で一番高いのだ。

「ま、まあいいといて……次だ次」
「はーい。って、言いたいけど烈火変わって」
「OK。前作、全然作からそこそこやっている既プレイの私がさっさと高速でボスを倒しちゃうぞ!」

 烈火は張り切っていた。
 キーボードのキーに丁寧に指を置くと、早速遊び始めた。
 慣れた動きでスタスタと進めている間、明輝は部屋の中で暇そうにしている飼い猫と遊ぶことにした。

「サファイア。遊ぼっか」
「ニャー」

 明輝は蒼伊の部屋から遊び道具を探した。
 適当に猫じゃらしを見つけると、目の前で左右に揺らしてみた。

「ほらほらーうわぁ!」

 キョロキョロと視線を左右に振っていた。
 それから飼い猫のサファイアは明輝に飛び掛かって来た。

「あはは。猫可愛いなー」

 明輝は笑っていた。
 するとスマホが勝手に鳴り出した。

「ん?」

 スマホをポケットから取り出した。
 するとVRドライブに接続していたアドレスから掛かってきた。
 如何してこのタイミングなのかと思ったが、完全に文字化けしていた。

「また文字化け?」
「文字化け? 設定を見直したら如何だ?」

 不意に蒼伊が振り返った。
 烈火にGAMEを任せると、明輝の下にやってきて、サファイアに足下をカリカリされていた。

「貸してみろ」
「う、うん……はい」
「ん。何だコレ、設定しても直らないぞ?」

 蒼伊にスマホを私、文字化けが直るように設定して貰った。
 しかし全く直らなかったので不思議に思われてしまった。

「直らないの?」
「悪いな。少し待ってくれ」

 蒼伊はそれから格闘を始めた。
 しかし何度やってもダメで首を捻ってしまった。

「無理だな。何故だ……」
「蒼伊でも分からないのに、私に分かるはずないでしょ?

 明輝はもっともなことを言った。
 蒼伊の悩みの種が増えてしまったが、スマホを返して貰った。

「ちなみに文字化けは何って書いてあったの?」
「そんなの知るか」

 文字化けは元々読めないから文字化けだ。
 しかし明輝はスマホを受け取り、そこに書いてあった文字を読んでみた。

「えーっと、うわぁ読めない。でも何だろう……嫉妬かな?」
「如何してそう思うんだ?」
「何となくかな?」
「根拠無しか。お前らしいな」

 明輝は褒められたのか分からなかった。
 とは言え一応喜んでおくことにした。

「蒼伊、とりあえずボスまで来たよ? コレって中ボスだよね?」
「あっ、ああ。そうだな」
「もう、ちゃんと教えてよねー。PC版はほとんどやったことないから。私がやっているの家庭用の奴だから、せめてゲームパッドでやらせてよー」
「適当に引き出しの中に入っているから使ったらいいぞ。えーっと確かこの辺に……」

 蒼伊が烈火の下に戻った。
 机の引き出しを開けるとUSB端子の付いたゲームパッドが入っていたが、烈火は目を奪われた。

「マジで!? これコラボ限定品だよね!」
「そうだな」
「何で箱に入っているの!? もったいないよ。しかも潰れているさー」
「必要ないからだ。それに私が買ったわけでも無い」

 蒼伊は何故か烈火と口論になっていた。
 そんな中、急にコンコンと扉が叩かれた。

「蒼伊様、少々よろしいでしょうか?」
「何だ」
「ケーキを持って参りました。皆様でお食べになってください」
「そうか。悪いな」
「いいえ。私が好きでやったことでございますので。差し支えなければよろしいのですが」

 蒼伊が顎で合図をした。
 手が空いている明輝は扉を開け、ケーキを受け取ろうとすると、よがらの手には特大サイズのホールケーキがあった。

「ありがとうございます、よがらさん。まさかホールケーキだったんですね」
「明輝様。何か問題がございましたか?」
「全然です。むしろありがとうございます!」

 明輝は笑顔で喜んだ。
 よがらはホッと一息つくと、あっという間に三等分にしてしまうのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

処理中です...