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◇266 双子の少女たち2
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明輝は瞬きをしてしまった。
勢い余って聞いたのだが、如何やら思っていたものとは違っていた。
お互いに間が空いた。
だけど明輝の方から「えっーっと、あれ?」と首を捻った。
少女たちも瞬きをしていた。
沈黙およそ三十秒経った頃、ようやく口にした。
「もしかして的外れだった?」
「はい」
「ちょっと羽衣。いくら完全に的を射てなかったからってそんな言い方は可哀そうでしょ? ごめんねお姉さん」
「鬼都もでしょ?」
「ほえっ?」
鬼都と呼ばれたボブカットの少女は分かっていなかった。
とは言え、あえて分かっていないふりをしていたことをは羽衣は気が付いていた。
さらには明輝も気が付いていた。
顔色を窺いながら「なるほどね」とくぐもった声を出した。
「もしかして何かあるのかな? 例えば……イベント的な」
「「如何して分かったの!」」
「急に如何したの? って、何で食い気味なの?」
羽衣と鬼都は明輝に詰め寄った。
とは言え明輝が分かった理由は至極単純だった。
「だって足下が」
「足下?」
「何かおかしいかな?」
「包帯巻いてるでしょ? この時期学生の大会はないし、プロならこんなところまで来て悩んだりしないでしょ?」
「お姉さん、それは偏見だよ。人間誰しも落ち込む生き物だよ」
「はい、引っかかった」
明輝は人差し指を突きつけた。
鬼都は目を見開き固まってしまった。
「そんなの分かってるよ。でも自分から否定したってことは違うってことだよね。こういうテクニック蒼伊から学んでおいて良かったよ」
ここまでは全部明輝の筋書き通りだった。
蒼伊から教えて貰ったテクニックを活かして相手から情報を貰う。
あまり好きではなかったが、塞ぎ込んでいる人の口から言葉を吐き出して貰うにはこのくらいしか手段が無かった。完全に初対面なので強行突破で押し通した。
「あ、あはは……あははははっ! お姉さんってほんと面白いね」
「失礼だよ」
「だってこんな人今まで会ったことなかったでしょ? うーん、そうだ。お姉さん、私達の悩み聞いて貰ってもいいかな?」
「鬼都流石にそれは……」
「もちろんいいよ。私は何もできないけどね」
明輝は白々しいくらい何もできなかった。
だけど話を聞くだけならできるので、二人の話を聞いてみた。
「えっとね、明日と明後日私たち大きなイベントがあるんだ」
「イベント? 何かに出るの?」
「うん。でもね、ちょっぴり不安何だ。ほんと逃げ出しちゃいたいくらい、泡になっちゃいたいくらい。ねっ、羽衣」
「うん。積み重ねてきたものは間違いないけど、まさかここまで来るなんて……自信無いよ」
羽衣は影を落としていた。
そんな彼女の背中を優しく鬼都はさすっていた。
「いつもは羽衣ももっと冷静で落ち込まないんだけどね。流石に明日は緊張するんだ。失敗が怖いからね」
「そんなのみんなそうだよ。ちょっとも不安を抱かない人はいないし、失敗を恐れるのが人間でしょ?」
明輝はストレートに返した。
本当に間髪入れずで、鬼都と羽衣は飲まれてしまいそうだった。
「失敗が怖いのは悪いことじゃないよ」
「そうかな?」
「当たり前だよ。失敗したくないのは誰だって同じ。だからねどっちかのパターンがあるんだ」
「「どっちか?」」
鬼都と羽衣は首を捻った。
何故か明輝の話をずっと聞いていて、不思議な魅力を感じていた。
「一つ目は私の友達がいるんだけど、その子みたいの全部やる。当たって砕けろ精神で、とにかく突っ走る!」
「それじゃあ失敗続きだよ!」
「うん。だから時々空回りするんだよ」
これは烈火だ。
持ち前の身体能力を活かしたパワー&テクニックで解決しようとするけれど、それが大抵意味を成さなかった。
「もう一つはこっちも私の友達でいるんだけど、最短距離で突っ走る」
「最短距離?」
「するべきことだけして、面倒なことや嫌なこと、最初からできないと割り切ったことは誰に何を言われても絶対にしない。ちょっと面倒だけど、やることはやってくれるよ」
「自分の力量が判っている人しかできない」
これは蒼伊だ。
冷静沈着な性格と頭脳を併せ持っているので、できることの最善を尽くしてくれた。
「どっちもアレだね。悪くないけど、悪い気がするよ」
「どっちなの?」
「分からない。でもお姉さんは如何してるの?」
「私? 私はね……やりたいことをして、やりたくないことはしない。かな? そもそも考えない」
明輝は意識の切り替えがもの凄く早かった。
基本的にしたいことだけに目を向けてしたくないことは疎かになった。
だけどいつの間にか片鱗を掴んでいて、ちょっと変な子だった。
「凄い人。私じゃ真似できない」
「ごめんね。でもね、人によって如何したかは違うでしょ? 今の社会、やりたいをしている人はいっぱいいるでしょ? 数十年前と違って、世の中も便利になったんだから。その中で不安を抱いたり失敗を恐れるのは人間として素晴らしいことだと私は思うな……あっ、ごめんね。変なこと言っちゃった」
明輝はあわあわし始めた。
突然口が動きてしまい、訳が分からなかったかもしれないと悟った。
少女たちはポカンとしていた。
しかし何処か緊張が解けた気がした。
今のは今の社会を縮図として言っただけだった。
数十年前と違うは、明輝の母親の専売特許だった。
勢い余って聞いたのだが、如何やら思っていたものとは違っていた。
お互いに間が空いた。
だけど明輝の方から「えっーっと、あれ?」と首を捻った。
少女たちも瞬きをしていた。
沈黙およそ三十秒経った頃、ようやく口にした。
「もしかして的外れだった?」
「はい」
「ちょっと羽衣。いくら完全に的を射てなかったからってそんな言い方は可哀そうでしょ? ごめんねお姉さん」
「鬼都もでしょ?」
「ほえっ?」
鬼都と呼ばれたボブカットの少女は分かっていなかった。
とは言え、あえて分かっていないふりをしていたことをは羽衣は気が付いていた。
さらには明輝も気が付いていた。
顔色を窺いながら「なるほどね」とくぐもった声を出した。
「もしかして何かあるのかな? 例えば……イベント的な」
「「如何して分かったの!」」
「急に如何したの? って、何で食い気味なの?」
羽衣と鬼都は明輝に詰め寄った。
とは言え明輝が分かった理由は至極単純だった。
「だって足下が」
「足下?」
「何かおかしいかな?」
「包帯巻いてるでしょ? この時期学生の大会はないし、プロならこんなところまで来て悩んだりしないでしょ?」
「お姉さん、それは偏見だよ。人間誰しも落ち込む生き物だよ」
「はい、引っかかった」
明輝は人差し指を突きつけた。
鬼都は目を見開き固まってしまった。
「そんなの分かってるよ。でも自分から否定したってことは違うってことだよね。こういうテクニック蒼伊から学んでおいて良かったよ」
ここまでは全部明輝の筋書き通りだった。
蒼伊から教えて貰ったテクニックを活かして相手から情報を貰う。
あまり好きではなかったが、塞ぎ込んでいる人の口から言葉を吐き出して貰うにはこのくらいしか手段が無かった。完全に初対面なので強行突破で押し通した。
「あ、あはは……あははははっ! お姉さんってほんと面白いね」
「失礼だよ」
「だってこんな人今まで会ったことなかったでしょ? うーん、そうだ。お姉さん、私達の悩み聞いて貰ってもいいかな?」
「鬼都流石にそれは……」
「もちろんいいよ。私は何もできないけどね」
明輝は白々しいくらい何もできなかった。
だけど話を聞くだけならできるので、二人の話を聞いてみた。
「えっとね、明日と明後日私たち大きなイベントがあるんだ」
「イベント? 何かに出るの?」
「うん。でもね、ちょっぴり不安何だ。ほんと逃げ出しちゃいたいくらい、泡になっちゃいたいくらい。ねっ、羽衣」
「うん。積み重ねてきたものは間違いないけど、まさかここまで来るなんて……自信無いよ」
羽衣は影を落としていた。
そんな彼女の背中を優しく鬼都はさすっていた。
「いつもは羽衣ももっと冷静で落ち込まないんだけどね。流石に明日は緊張するんだ。失敗が怖いからね」
「そんなのみんなそうだよ。ちょっとも不安を抱かない人はいないし、失敗を恐れるのが人間でしょ?」
明輝はストレートに返した。
本当に間髪入れずで、鬼都と羽衣は飲まれてしまいそうだった。
「失敗が怖いのは悪いことじゃないよ」
「そうかな?」
「当たり前だよ。失敗したくないのは誰だって同じ。だからねどっちかのパターンがあるんだ」
「「どっちか?」」
鬼都と羽衣は首を捻った。
何故か明輝の話をずっと聞いていて、不思議な魅力を感じていた。
「一つ目は私の友達がいるんだけど、その子みたいの全部やる。当たって砕けろ精神で、とにかく突っ走る!」
「それじゃあ失敗続きだよ!」
「うん。だから時々空回りするんだよ」
これは烈火だ。
持ち前の身体能力を活かしたパワー&テクニックで解決しようとするけれど、それが大抵意味を成さなかった。
「もう一つはこっちも私の友達でいるんだけど、最短距離で突っ走る」
「最短距離?」
「するべきことだけして、面倒なことや嫌なこと、最初からできないと割り切ったことは誰に何を言われても絶対にしない。ちょっと面倒だけど、やることはやってくれるよ」
「自分の力量が判っている人しかできない」
これは蒼伊だ。
冷静沈着な性格と頭脳を併せ持っているので、できることの最善を尽くしてくれた。
「どっちもアレだね。悪くないけど、悪い気がするよ」
「どっちなの?」
「分からない。でもお姉さんは如何してるの?」
「私? 私はね……やりたいことをして、やりたくないことはしない。かな? そもそも考えない」
明輝は意識の切り替えがもの凄く早かった。
基本的にしたいことだけに目を向けてしたくないことは疎かになった。
だけどいつの間にか片鱗を掴んでいて、ちょっと変な子だった。
「凄い人。私じゃ真似できない」
「ごめんね。でもね、人によって如何したかは違うでしょ? 今の社会、やりたいをしている人はいっぱいいるでしょ? 数十年前と違って、世の中も便利になったんだから。その中で不安を抱いたり失敗を恐れるのは人間として素晴らしいことだと私は思うな……あっ、ごめんね。変なこと言っちゃった」
明輝はあわあわし始めた。
突然口が動きてしまい、訳が分からなかったかもしれないと悟った。
少女たちはポカンとしていた。
しかし何処か緊張が解けた気がした。
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