VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇263 Nightの誘いと星

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 ギルドホームの中にはアキラとフェルノ、それからNightの三人が居た。
 久しぶりにNightにあった気がしたが、いつも通り文庫本を読んでいた。

 アキラはアキラでぬいぐるみを作っていた。
 この間ソウラから貰ったキットを開け、暇な時間に作っていた。
 今作っているのは意外かもしれないけれど、ドラゴンの形をしていた。
 もちろん四足歩行タイプの竜だった。

「うわぁ、アキラこういう作業器用だよね」
「ありがとう」
「そうだな」

 アキラは手先は細かい方だった。
 可愛い絵を描いたりぬいぐるみを作ったりと可愛い趣味もあった。

「アキラって漫画とか描いたらいいんじゃない?」
「あははありがと。でも今はこっちでいいかな」

 布に針を通して白いドラゴンを作っていた。
 モフモフとフワフワな生地で、中にはたっぷり綿が詰まっていた。
 そんなアキラとフェルノの会話を流し目しながら、唐突にNightは口にした。

「そうだ。お前達、今度の二十三日は空いているか?」
「「二十三日? 何でそんな微妙な日なの?」

 突然すぎてツッコミを入れてしまった。
 Nightは表情を歪めたが、聞いてきたのはNightなので悪いのはNightだ。

「二十四日と二十五日はイベントがあるもんね。前日は何かあるの?」
「いいや何もない」
「何も無いんだ。……それじゃあ何で?」
「前に行っていただろ。私の家に来てみたいと」
「う、うん」

 そう言えばそんなことを軽く言っていた。
 アキラとフェルノは思い出すと、文庫本をNightはパタンと閉じた。

「やっと作業が終わったんだ。二人とも私の家に来るか?」
「「……えっ?」」

 アキラとフェルノは瞬きをして首を捻った。
 まるで鳩が豆鉄砲を食らったようで、Nightがジト目になった。

「何だその顔は。別に嫌ならいいんだぞ」
「「もちろん行くよ!」」

 二人揃って了承した。
 そもそもの話、その日は予定などは特になく暇だった。

「そうか。……それなら午後からな」
「午後から? 何かあるの」
「午前中は最終調整だ。βテストは済んでいるが……色々あるんだ」

 Nightの話と絶妙に噛み合っていなかった。
 一体何があるのか、βテストとは一体とアキラは首を捻った。
 けれどフェルノは何となく想像していた。
 ポンと手を叩き、一人だけ納得していた。

「フェルノ何か分かったの?」
「ちょっとだけね。でもNight、そんなことしてたんだ」
「私の意思じゃない」
「意思じゃないって……逆に凄くない?」
「そんなことはない」

 Nightは謙遜していた。
 しかしフェルノはNightが絶対に嫌うであろう激しいスキンシップを取った。
 身体に抱きつくも、Nightは無表情のままおもちゃになった。

「あれ? 振り払わないんだ」
「そうだな」
「慣れたんだよきっと。私たちと一緒にいるもんねー」

 Nightは「ふん」と鼻を鳴らした。
 本人は嬉しくないのかと思うかもしれないが、アキラは顔色から「恥ずかしいんだね」と口にしてしまった。
 ムキになって睨みつけられたが、照れ隠しが可愛くてアキラは笑みを浮かべた。

「ま、まあいい。とりあえず伝えたからな……アレは何だ?」

 Nightは話しをすり替えた。
 恥ずかしさを紛らわすために無理やりだったのが余計に可愛かった。
 視線の先には雷斬たちと一緒に頑張ったクエストの報酬と砂浜で手に入れた宝石が棚の上に置かれていた。

「私がログインしていない間に手に入れたのか」
「うん。でも何に使ったらいいか分からないからそこに置いてるんだ」

 頬杖を突きながら説明すると椅子から腰を上げ、棚に取りに行った。
 星型の積み木と紅い宝石を手に取ると、絶妙な親和性に気が付いた。

「これハマるな」
「紅い宝石? そうだよね。ちょっとハマりそうだよね」
「試してみたのか?」
「うん。でもダメだったんだ」

 アキラはNightに言った。
 実際真ん中に穴が開いていたので、円柱形状を利用すればハメ込められる気がしたのだ。
 けれど試したのだが——

「本当だな。上手くハマらない」
「でしょ! もうちょっとなのにピッタリにならないんだ」

 円柱は確かに片側から入った。
 けれどもう片側が隙間を生んでしまい、星型の積み木を作ることができなかった。

「片側にも何かアイテムがあるのか?」
「分かんない。もしかしたらあったのかもしれないけど……」

 波に半分だけ流されてしまった。その可能性もちょっぴりあった。
 今頃沖を流されている頃だろうと遠い目をしてしまった。
 Nightも半ば諦めムードで「仕方ないな」と口にした。

「それはそうとさー。今度クリスマスライブがあるよね」
「急だな」
「うん。突飛な話題の方が嫌なことも吹き飛ぶでしょ?」

 確かにそうだった。
 そもそもクリスマスには予定があるのでライブなんて関係ないと分かり切っていた。

「今を時めく若手アイドルなんだけどテレビにはほとんど出ないんだよー」
「凄い人たちなんだね。テレビ何て一番注目が行くのに」
「それでも人気を確立してるのって、相当努力してるんだよねー。多分」
「そうだな。と、そろそろ街に行くか」

 Nightは自分から話しを切った。
 それからギルドホームを出ると、三人は揃ってクエストを探した。
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