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◇260 小鳥を無事返しました

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 アキラとベルは大樹の真下で待っていた。
 心地の良い陽射しを受け、木漏れ日の中に居た。
 良い風も吹いていた。木の葉が舞い、全身が気持ち良かった。

「暖かい……」
「そうね」

 二人して木陰に入り、大樹に背中を預けていた。
 モンスターたちも近づいてきて頭を撫でた。

「そろそろかな?」
「そろそろよ。雷斬のスピードを舐めちゃダメね」

 ベルが答えると、遠くからビリビリと激しい音を立てた。
 ズドン! と、稲妻が落ちたような音がした途端、モンスターたちが警戒した。

「来た!」

 アキラたちは立ち上がった。
 モンスターたちがアキラたちの真後ろに隠れると、青白い電気の線が一瞬走った。
 視界に捉えることは難しかった。けれど空気を震わせ、頬を静電気が掠めた。

 ジューン!

 目の前で急ブレーキを掛けた。
 雷斬が【雷鳴イカズチ】を解いたようで、地面が少し焦げて抉れていた。

「お待たせしました皆さん。こちらが預かってきたものです」

 雷斬が取り出したのは青いハンカチだった。
 白い花の刺繍がされていて可愛らしかった。

「こんなものでよろしかったでしょうか?」
「ありがとう。それじゃあ早速……」

 ピー! と音が鳴った。
 インベントリからアイテムを取り出したアキラは口に気の笛を咥えていた。

「アキラ、何やってるのよ?」
「バードコールだよ。これで鳥たちと会話するんだ!」
「そ、そんなものがあったのね」

 前にピーコから貰ったものだった。
 大量に作り過ぎて余っていたらしく、手元には後二十個ほど残っていた。

「後はこの青いハンカチを……おーい、こっちこっち!」

 青いハンカチと刺繍が見えるようにして振り回した。
 ピーピーとバードコールを吹きながら、青いカナリアを呼び寄せる。
 キョロキョロと鳥たちが反応し、アキラのことを見ていた。
 穴の中で身を潜んでいる青いカナリアも、アキラのことを見た。けれど、手元の青いハンカチに見覚えがあるのか、ゆっくり出てきて近づいた。

「おっ、来た来た! これってハンカチに反応してる?」
「そうみたいですね。ですがコレは……」
「ハンカチ要らなかったわね」

 雷斬とベルはカナリアがやって来るのを待った。
 するとアキラも下にゆっくりと飛んできた。

「おっと!」

 カナリアはアキラの腕に止まった。
 その視線は青いハンカチを見ているようで、しっかりと飼い主の持ち物を覚えていた。

「やったねみんな。まさかこんなに上手く行くとは思ってなかったよ」
「確信があった顔してたわよね?」
「バードコールを持ってたから。でもそれだと全員寄って来ちゃうから」
「それでハンカチだったのね」
「うん。鳥は目が良いからね」

 鳥は目が良い。なんと四色見えるらしい。
 アキラはそれだけを頼りに何となくでやってみた。
 決め手はバードコールだったけど、無事に連れ戻すことができて良かった。

「後は逃げられないように……」

 足に麻縄を結んだ。これでいくら飛んでも逃げられる事はなかった。
 アキラたちは早速少女の元に戻ることにした。
 だけどその前にやることがあった。

「みんなごめんね。私たち帰るから!」

 アキラは一人大樹に向かって叫んだ。
 モンスターたちは睨みつけることはなく、アキラたちを不思議そうに見ていた。
 ここでは無駄な争いは無いのだ。


 噴水広場に戻って来ると、少女がベンチに座っていた。
 落ち込んでいる表情が遠目からでも分かった。

 鳥かごを傍に置いていた。
 中には何も入っておらず、首をぐったりさせていた。

「あっ、お姉ちゃんたち!」
「大丈夫?」
「う、うん。それよりリーちゃんは?」
「ちょっと待ってね。はい、この子だよね?」

 アキラはりーちゃんと呼ばれた青いカナリアを手渡した。
 足には麻縄が付いていたが、かごの中に入れる際に麻縄を外した。

「りーちゃん!」
「もう逃がさないでね。その子、多分人慣れしているから私たちが居ても逃げなかったよ」

 このカナリアはずっと飼い主が来ることを待っていた。
 何となくアキラにはそんな風に見えた。
 少女はカナリアを大事そうにかご事ギュッと抱き寄せた。

「お姉ちゃんたち、ありがとう!」
「ううん。でも大切な家族なんだから放しちゃダメだよ」
「うん!」

 少女は大きく頷いた。
 如何やら納得してくれたみたいで安心し、同時にクエストも達成することができた。

「これでクエストも終わりだね」
「うん。この後はギルドホームで適当に過ごそうか」

 アキラはそう提案し、少女の下から去ろうとした。
 しかし少女はアキラたちを呼び止めた。

「待ってお姉ちゃんたち!」

 少女に呼び止められて足を止めた。
 すると少女は星型の飾りを手渡した。色味は鉋を掛けたばかりの木の色で、もっぱら木製だった。
 如何してこんなものを持っているのかと、素直に疑問に思ったが、星の真ん中が空洞になっていたので意味があるのかと思った。

「如何したの?」
「コレあげる」
「えっ?」
「お姉ちゃんたちにお礼」

 そんなもの必要なかった。
 しかし少女はアキラたちの手に押し込むと、そのまま鳥かごを持って何処かに行ってしまった。
 アキラの手の中には謎の星が握られていた。
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