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◇254 トレントディアの贈り物
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アキラは散々舐められるNightを見て面白いと思っていた。
フェルノもクスクスと笑みを浮かべていた。
その間、Nightは目が死んでいて全てを諦めた様子だ。
「あはは、Nightどんな気持ち?」
「……無だ」
「でも良かったね。すっごくなついて貰ってるよ!」
「……おかげさまでな」
Nightは怒るでも悲しむでも笑うでもなく、今の自分を単純に無で表現していた。
アキラとフェルノも流石に可哀そうだと感じたのか、何とか助けてあげる。
「そろそろ助けよっか」
「そうだね。ほーらほら、こっちだよぉー」
フェルノは落ちていた葉っぱを使って視線を誘導する。
その間にアキラがダラーンとなったNightを手繰り寄せた。
Nightは「やっとか」と淡々としていた。
「うわぁ、臭い」
「あれだけ舐められたからな。お前もだろ」
「うっ、確かにほっぺたが臭うかも……」
アキラとNightは似た者同士だった。
フェルノはそんな二人を焼くわけもなく、「そんなことよりさー」と話を変えた。
「早く柴を刈ろうよ」
「そうは言ってもな。何処に落ちているのかも分からないぞ」
「そんなのこの辺を探せば落ちてるんじゃない? ほら、さっきもトレントディアの牡鹿が居たでしょ?」
確かにアキラたちははっきりと見つけた。
頭には立派な角が生えていた。間違いなくこの子とは違う個体で性別は雄だった。
あれだけ立派な角は牡鹿じゃないとありえないからだ。
「それじゃあ私たちは行くね。他のプレイヤーに見つからないようにね」
アキラたちは雌鹿から離れようとした。
しかし何処からか視線を感じ、動けなくなってしまった。アキラ以外は——
「「うっ!」」
「如何したの二人とも?」
アキラは突然動かなくなった二人を心配した。
よく見ると、首筋から嫌な汗が滲み出ていて、体がピクピクしている。
いわゆる鳥肌ってやつだ。
「凄い鳥肌。ねえ二人とも……えっ!?」
「やっぱりアイツか」
Nightは眉根を寄せた。
アキラの視線の先には最初見つけたトレントディアも牡鹿が居て、二人のことを睨んでいた。
そのせいでNightとフェルノは動けないらしく、モンスターが持つ強烈な威圧感怯まされていた。
「でも如何して私だけ動けてるの?」
「アキラ。お前はこのGAMEで最も精神力のパラメータが高いプレイヤーだぞ。精神力は基本的には意味がないが、プレイヤー同士の戦闘や精神に直接関与する攻撃にめっぽう強いんだ。私たちもそれなりに精神力は鍛えているはずなんだが……」
「体が動かないよー」
フェルノが珍しく嘆いた。
トレントディアは動けない二人を狙い、角を突き出して後脚で地面を蹴っていた。
砂埃が舞い、完全に攻撃の構えだった。
「くっ、硬直時間が長いな」
「アキラ、何とかして!」
「何とかって、そんな急に言われても……」
フェルノはアキラに助けを求めた。
しかしアキラもこんなことになるとは思ってもみなかったので、何をしたらいいのか分からなかった。
困惑している間にトレントディアの牡鹿が動けない二人に突進を仕掛けた。
アキラは何とかしようと【甲蟲】を使ってガードを固めて、間に飛び出した。
「本当は戦いたくないんだけど……」
アキラは本心から戦いたくなかった。
綺麗な宝玉が生る角がキラキラして眩しく、アキラは目を瞑った。
その瞬間、トレントディアが高らかに泣いた。
「ピィー!!」
耳がキンキンした。今のはトレントディアの鳴き声だったが、目の前の牡鹿じゃない。
牝鹿の鳴き声を聞き、牡鹿はアキラたちを目の前にして立ち止まった。
危うく体当たりを食らうところだったので、アキラはホッと一息ついた。
「良かったー」
「全くだ」
「あはは、やっと動けるよー」
Nightとフェルノも自由になっていた。
如何やら硬直時間が経ったのか、体が慣れて動けるようになったらしい。
「それにしても如何して止まったのかなー?」
「もしかしてこの子のおかげかな?」
アキラは助けた牝のトレントディアを見つめた。
如何やら夫婦のようで、牡鹿が拾って来た食べ物を分け与えていた。
「何だか仲良いね」
「そうだな。これで疑問も解けた。如何してあのトレントディアが駆け回っていたのか。子の牝鹿のために食べ物を探していたらしい」
「それじゃあ私たち悪いことしちゃったかもね。角が欲しかったとはいえ、追いかけちゃって」
「いいや。そんなこともないらしいぞ」
反省するアキラだったが、Nightは否定した。
トレントディアの夫婦が何やら話し込んでいる。何を言っているのかは分からないけれど、どうやら敵意がないことを伝えてくれたらしい。
「ピィー!」
牡鹿が傍まで寄って来た。
アキラたちは警戒を一応したが、牡鹿は頭を下げる。感謝してくれているようで、アキラたちは目を丸くした。
「あ、ああいいよいいよ。お互い様でしょ?」
アキラは困惑したが、何とか話を合わせた。
すると牡鹿は首を下げ、アキラのジャケットの袖を噛んだ。
手を前に出せってことのようで、アキラが手を前に出すと、角を揺すって何か落とした。
ポトッ!
「おっと。これってトレントディアの角に生えてた宝玉?」
「良かったなアキラ。如何やらお礼らしいぞ」
「お礼?」
動物が人間に感謝することがあると聞いたことがある。
それがモンスターにもあるのなら、アキラたちは牝鹿を助けお礼に綺麗な赤い宝玉を貰った。
何に使えばいいのか分からないけれど、アキラは「ありがとう」と笑みを浮かべて感謝した。
フェルノもクスクスと笑みを浮かべていた。
その間、Nightは目が死んでいて全てを諦めた様子だ。
「あはは、Nightどんな気持ち?」
「……無だ」
「でも良かったね。すっごくなついて貰ってるよ!」
「……おかげさまでな」
Nightは怒るでも悲しむでも笑うでもなく、今の自分を単純に無で表現していた。
アキラとフェルノも流石に可哀そうだと感じたのか、何とか助けてあげる。
「そろそろ助けよっか」
「そうだね。ほーらほら、こっちだよぉー」
フェルノは落ちていた葉っぱを使って視線を誘導する。
その間にアキラがダラーンとなったNightを手繰り寄せた。
Nightは「やっとか」と淡々としていた。
「うわぁ、臭い」
「あれだけ舐められたからな。お前もだろ」
「うっ、確かにほっぺたが臭うかも……」
アキラとNightは似た者同士だった。
フェルノはそんな二人を焼くわけもなく、「そんなことよりさー」と話を変えた。
「早く柴を刈ろうよ」
「そうは言ってもな。何処に落ちているのかも分からないぞ」
「そんなのこの辺を探せば落ちてるんじゃない? ほら、さっきもトレントディアの牡鹿が居たでしょ?」
確かにアキラたちははっきりと見つけた。
頭には立派な角が生えていた。間違いなくこの子とは違う個体で性別は雄だった。
あれだけ立派な角は牡鹿じゃないとありえないからだ。
「それじゃあ私たちは行くね。他のプレイヤーに見つからないようにね」
アキラたちは雌鹿から離れようとした。
しかし何処からか視線を感じ、動けなくなってしまった。アキラ以外は——
「「うっ!」」
「如何したの二人とも?」
アキラは突然動かなくなった二人を心配した。
よく見ると、首筋から嫌な汗が滲み出ていて、体がピクピクしている。
いわゆる鳥肌ってやつだ。
「凄い鳥肌。ねえ二人とも……えっ!?」
「やっぱりアイツか」
Nightは眉根を寄せた。
アキラの視線の先には最初見つけたトレントディアも牡鹿が居て、二人のことを睨んでいた。
そのせいでNightとフェルノは動けないらしく、モンスターが持つ強烈な威圧感怯まされていた。
「でも如何して私だけ動けてるの?」
「アキラ。お前はこのGAMEで最も精神力のパラメータが高いプレイヤーだぞ。精神力は基本的には意味がないが、プレイヤー同士の戦闘や精神に直接関与する攻撃にめっぽう強いんだ。私たちもそれなりに精神力は鍛えているはずなんだが……」
「体が動かないよー」
フェルノが珍しく嘆いた。
トレントディアは動けない二人を狙い、角を突き出して後脚で地面を蹴っていた。
砂埃が舞い、完全に攻撃の構えだった。
「くっ、硬直時間が長いな」
「アキラ、何とかして!」
「何とかって、そんな急に言われても……」
フェルノはアキラに助けを求めた。
しかしアキラもこんなことになるとは思ってもみなかったので、何をしたらいいのか分からなかった。
困惑している間にトレントディアの牡鹿が動けない二人に突進を仕掛けた。
アキラは何とかしようと【甲蟲】を使ってガードを固めて、間に飛び出した。
「本当は戦いたくないんだけど……」
アキラは本心から戦いたくなかった。
綺麗な宝玉が生る角がキラキラして眩しく、アキラは目を瞑った。
その瞬間、トレントディアが高らかに泣いた。
「ピィー!!」
耳がキンキンした。今のはトレントディアの鳴き声だったが、目の前の牡鹿じゃない。
牝鹿の鳴き声を聞き、牡鹿はアキラたちを目の前にして立ち止まった。
危うく体当たりを食らうところだったので、アキラはホッと一息ついた。
「良かったー」
「全くだ」
「あはは、やっと動けるよー」
Nightとフェルノも自由になっていた。
如何やら硬直時間が経ったのか、体が慣れて動けるようになったらしい。
「それにしても如何して止まったのかなー?」
「もしかしてこの子のおかげかな?」
アキラは助けた牝のトレントディアを見つめた。
如何やら夫婦のようで、牡鹿が拾って来た食べ物を分け与えていた。
「何だか仲良いね」
「そうだな。これで疑問も解けた。如何してあのトレントディアが駆け回っていたのか。子の牝鹿のために食べ物を探していたらしい」
「それじゃあ私たち悪いことしちゃったかもね。角が欲しかったとはいえ、追いかけちゃって」
「いいや。そんなこともないらしいぞ」
反省するアキラだったが、Nightは否定した。
トレントディアの夫婦が何やら話し込んでいる。何を言っているのかは分からないけれど、どうやら敵意がないことを伝えてくれたらしい。
「ピィー!」
牡鹿が傍まで寄って来た。
アキラたちは警戒を一応したが、牡鹿は頭を下げる。感謝してくれているようで、アキラたちは目を丸くした。
「あ、ああいいよいいよ。お互い様でしょ?」
アキラは困惑したが、何とか話を合わせた。
すると牡鹿は首を下げ、アキラのジャケットの袖を噛んだ。
手を前に出せってことのようで、アキラが手を前に出すと、角を揺すって何か落とした。
ポトッ!
「おっと。これってトレントディアの角に生えてた宝玉?」
「良かったなアキラ。如何やらお礼らしいぞ」
「お礼?」
動物が人間に感謝することがあると聞いたことがある。
それがモンスターにもあるのなら、アキラたちは牝鹿を助けお礼に綺麗な赤い宝玉を貰った。
何に使えばいいのか分からないけれど、アキラは「ありがとう」と笑みを浮かべて感謝した。
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