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◇246 モンスターが大量

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「【キメラハント】:【灰爪】!」
「【吸炎竜化】!」

 アキラとフェルノはお互いにスキルを発動し、襲って来るモンスターを叩いた。
 飛び跳ねるスライムが弾けて消えた。

 後ろでは他のプレイヤーがゴブリンと戦闘をしている。
 フェルノはすかさず炎を纏った拳でゴブリンを倒した。

「助かったぜ」
「どうもどうもー。っと、後ろ居るよ?」
「何っ!?」

 大剣を持った男は後ろに現れた狼を真っ二つにした。
 それから左右から走って来る別の狼も、アキラとフェルノの見事なコンビネーションで倒される。

 一瞬で光の粒子に変わり、アキラたちの経験値に変わった。

「ねえ、さっきからモンスターの数が多くない?」
「大量にスポーンするし、倒してもすぐにリポップするし。コレってウェーブ制じゃないよね? 大量発生だよねー」

 フェルノは疲れている様子は無く、飄々としていた。
 周りにプレイヤー達は強力なモンスターが出てこないので、何とか食らいついているが、いかんせん数が多くて困惑している。
 完全に運営の悪意を感じた。

「お前らよくやるな」
「これぐらい慣れてるからねー」
「慣れてる? まさか毎回これだけの相手を……」
「違いますよ。私たちは強い相手と戦っているから、自然と数の有利不利もある程度は覆せるようになった……のかな?」
「かもねー」

 アキラとフェルノは質問を疑問で返した。
 すると質問した大剣男は首を捻る。

「お、おうそうか。って、お前たち継ぎ接パッチワークぎの絆・フレンズか!」
「はい、そうですよ」

 大剣男は納得した。
 その間もアキラとフェルノは戦い続けていると、男の叫び声を聞いた。

「だから、掘るなんて無理な話しだろ!」

 アキラとフェルノの視線が声に引きつけられた。
 隙を見て襲って来る狼のモンスターも見事に返り討ちしてケアしながら、白熱している論争に感服した。

「凄いね。盛り上がっているみたいだよ」
「うーん、Nightは上手くやってくれるかな?」

 現状もみの木を運ぶ手段は二つしかない。
 一つはもみの木を切ってしまうこと。そうして運び、終わったら板材にしてしまおう作戦のプレイヤーが三割。
 もう一つは切らずに掘って運ぼう派閥。その方が再利用もできるし、自然にも優しい。
 Nightは後者として議論に参加しているが、なかなか丸め込めないようだ。

「ベル、状況はどんな感じ?」

 木の上に登って敵の警戒と議論の様子を盗聴し、アキラたちに知らせた。
 如何やらもみの木を掘ることもそうだが、運ぶ方法も考える必要があるらしい。

「運搬方法は丸太を使って運ぶみたいね。コロってそういうことでしょ?」

 重たいものを楽に運ぶための方法としてよく用いられる。
 それならもみの木も傷付けなくて済みそうだと、アキラもホッとした。

 だけどもみの木を切り倒してほしくない。
 だって切り倒したら立てる時に苦労するとNightは読んでいた。
 そのため、何とかして根っこを残したいらしい。

「上手く行くかな?」
「大丈夫ですよ。Nightさんはいつもどうにかしてくれる方ですから」

 雷斬がもの凄いスピードでモンスターたちを薙ぎ払っていく。
 これこそ目にも止まらぬ早業で、次々モンスターが消滅した。

「相変わらず【雷鳴イカズチ】は便利だよね。体力は大丈夫そう? 身体は問題ない?」
「大丈夫ですよ。直角にしか移動できないことが難点ですが、私も鍛えていますから。それとNightさんは自分の思った方に事を進ませる方ですよ。きっと大丈夫だと信じて居ましょう」

 雷斬に励まされ、アキラたちもNightの活躍を期待した。
 するとNightのか細い声が聞こえる。
 だけどはっきりしていて、とてつもない圧を感じた。

「問題ない。どのみちここに居る全員がイベントを望んでいるんだ。根っこがないクリスマスツリーなど、結局どうやって土の中に埋める気なんだ!」

 もっともなことを言われてそれ以降声が聞こえなくなる。
 次に声が聞こえて来た時には、荒々しかった男の言い分がNightに飲まれてしまった後だった。

「しゃあないか。わかったよ、お前に従ってやる」

 ベルはその光景の一部始終をしっかりと目で見ていた。
 誇らしそうに腕組をするNightとその周りではたった一言の圧と確信だけで空気を一変させた。
 全員を納得させるとともに、圧倒的なリーダーシップを発揮させた。

「凄いわね、Night。侮れないわ」

 そんなNightすら黙らせてしまうアキラはどれだけ凄いのか。
 ベルは地上にいるNightとアキラを交互に見た。
 「よくわからないわ」と口にした瞬間、ベルは嫌なものを見つけてしまった。
 強烈な威圧感と強者の迫力を感じるモンスターが近づいていた。

「みんな気を付けて。ちょっと強そうなモンスターが近づいているわ!」

 ベルが叫ぶとアキラたちは「いつも通りだね」と納得する。
 しかしその周りは怯えてしまい、「何処から来るんだ」とキョロキョロし出す。

 心構えの差が生じてしまうと、突然叫び声が聞こえた。
 お腹から声が溢れるように森の中に響き渡った。

「ぶごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 耳をつんざく叫び声にアキラたちは咄嗟に耳を塞いだ。
 集まっていたプレイヤーたちは武器を手放してしまい目の前に現れたソレを目撃する。
 そこにいたのは茶色い毛を持つ大柄のモンスター。
 体長五メートル前後の猪だった。
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