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◇245 もみの木を見つけよう
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ログインしてみると、早速動きがあったらしい。
ソウラから連絡を受けたアキラたちはスタットにやって来た。
すると驚いたことに、一夜にして装飾が増えていた。
しかももみの木を置くための煉瓦造りの鉢まである。
NPCたちがせっせと組み立てているので、多分運営が用意したものを運営プレイヤーが率先して、NPCたちを率いて設置したらしい。
「凄いね。まさかこんなに盛り上がっているなんて」
「ネット民の反応的にも色々あったが、結局肯定派に飲まれたらしいな」
Nightはそう言いながら、周りを見回した。
プレイヤーもNPCたちも準備に励んでいる。
みんな生き生きしていて、何やら屋台の準備も進めていた。
「凄くいい雰囲気だね」
「だけどさ、この空気に乗れない人もいるよね? ほら、苦手な人とか」
「当然いるだろうな。一見すると少数派になる」
逆にこの状況でこの空気の乗らないのは少数派だ。
「一見するとなの?」
「ああ。一応私たちもその一つになるんだが、それなりに有名なプレイヤーやギルドはそれだけで一つの発言権になる。お前たちは気にしていないが、私たちの活躍はどちらにしてもプレイヤーたちの話題の的だ」
Nightの言っていることをアキラたちはあまり理解していない。
そもそも聞いていないので、右から左に流れていた。
しかしNightだけはちゃんと知っている。
継ぎ接ぎの絆はそれなりに知名度がある。
特にアキラはキメラさんと呼ばれているのだ。
「ほら、行って来いキメラさん」
「えっ? キメラさんって、そう言えばそんな仇名あったね」
「イベントに参加するんだぞ。もみの木を探しに」
「う、うん。みんなも手伝ってくれるかな?」
アキラはフェルノたちの顔を見比べた。
誰も否定する気はないらしく、いつものこととばかりに達観している。
「もっちろん良いよー。っていうかさー、そのために来たんだもん」
「そうですね。私も協力します」
「そうと決まれば早く行くわよ。それでNight、もみの木は何処にあるの?」
「それならここから北西にある森にもみの木が群生している。恐らく大半のプレイヤーはそこにいるはずだ」
Nightの推理は正しかった。
アキラもソウラから貰った情報によると、如何やらプレイヤーたちが一部集結しているらしい。
ここで少しでも手伝っておけば、後が楽になる。
Nightはそう考えたので、今回のことを提案したのだ。
「それで行くのか?」
「もちろん。そのために教えてくれたんでしょ?」
「まあな。ここで一つ成果を立てれば、後のイベントも楽になる」
本音を言ったNightは早速先導を切るようにして踵を返した。
くるりと振り返り、黒いマントがたゆたう。
オッドアイの瞳がギラリと光り、先を行く。
「あっ、待ってよ。みんな行こ」
これもいつも通りだと思った。
アキラはNightの隣に立ち、その横にフェルノが付く。
雷斬とベルは後ろから見守るようにして傍により、揃って森を目指した。
今回の森はたくさんのもみの木が自生していた。
完全に群生林のようで、自然の脅威を感じる。
歩き難いのはいつものことだけど、今回はたくさんのプレイヤーもいた。
それに釣られるようにモンスターの数も多く、探索班と戦闘班に分かれて立ちまわっていた。
「おりゃぁ!」
「おいおい、こんなところにもスライムがいるのかよ」
男達が二人文句を吐きながらも戦っていた。
その奥では少女たちが互いに身を寄せ合い、モンスターと相立つ。
「後ろは任せたわよ!」
「任せて。このくらい、私のスキルで蹴散らす」
ワンドを使ってスキルを発動。
風が巻き上がり、モンスターをもみの木に叩きつけた。
ガサゴソと音を立てるとともに、もみの木の樹皮が捲れる。
無事に倒せたことに安堵する少女たちとは対照的で、傍で探索をしていた眼鏡をかけた青年は苦言を呈する。
「ちょっと君たち、あまり叩きつけないでくれるかな?」
「はぁ?」
「もみの木が痛むだろう。もう少し周りを見てくれる?」
何だか口論になりそうだった。
武器も持っていて、戦闘が許可されているエリアなので、もしかしたらと思いアキラと雷斬は止めに入ろうとした。
けれどNightとベルがそれぞれ止める。
首を横に振って「関わるな」と口にした。
二人は迷ったが、もう一人の少女が間に入っていたので大丈夫そうだ。
「いちいち構っていても疲れるだけだろ」
「そうだよー。それに人が居たら口論だって起こるでしょ?」
「全部止めててもお節介よ。馬鹿な真似はしない方が良いわ」
三人は消極的で、完全に無駄なやり取りに関わろうとしない。
フェルノぐらいは味方になってくれるとこ対していたアキラだが、「まあ、確かに?」とここは少し流されることにする。
アキラたちも探索と戦闘を兼ねてもう少し奥に行ってみることにした。
すると一際大きなもみの木が目に留まる。
「見てよ、アレ! すっごく大きいよ」
「本当だな。アレぐらいのサイズ感ならクリスマスツリーには大きすぎるだろ」
「それじゃあ隣の?」
「まあそれがベターだろうな。しかも意思統一が今の言葉で出来上がったらしい」
振り返ってみると、プレイヤーたちも気が付いたらしい。
一瞬で気が付くNightもそうだが、何気ない発言で空気を変えられるアキラも凄いとベルは少し引き気味に讃えた。
「やっぱり凄いわね」
「そうですね。でもベル、私たちも横に並び立ちましょう」
何か意味深に呟き、ベルは雷斬に手を取られアキラたちの隣に並び立つ。
これこそが継ぎ接ぎの絆の絆だった。
ソウラから連絡を受けたアキラたちはスタットにやって来た。
すると驚いたことに、一夜にして装飾が増えていた。
しかももみの木を置くための煉瓦造りの鉢まである。
NPCたちがせっせと組み立てているので、多分運営が用意したものを運営プレイヤーが率先して、NPCたちを率いて設置したらしい。
「凄いね。まさかこんなに盛り上がっているなんて」
「ネット民の反応的にも色々あったが、結局肯定派に飲まれたらしいな」
Nightはそう言いながら、周りを見回した。
プレイヤーもNPCたちも準備に励んでいる。
みんな生き生きしていて、何やら屋台の準備も進めていた。
「凄くいい雰囲気だね」
「だけどさ、この空気に乗れない人もいるよね? ほら、苦手な人とか」
「当然いるだろうな。一見すると少数派になる」
逆にこの状況でこの空気の乗らないのは少数派だ。
「一見するとなの?」
「ああ。一応私たちもその一つになるんだが、それなりに有名なプレイヤーやギルドはそれだけで一つの発言権になる。お前たちは気にしていないが、私たちの活躍はどちらにしてもプレイヤーたちの話題の的だ」
Nightの言っていることをアキラたちはあまり理解していない。
そもそも聞いていないので、右から左に流れていた。
しかしNightだけはちゃんと知っている。
継ぎ接ぎの絆はそれなりに知名度がある。
特にアキラはキメラさんと呼ばれているのだ。
「ほら、行って来いキメラさん」
「えっ? キメラさんって、そう言えばそんな仇名あったね」
「イベントに参加するんだぞ。もみの木を探しに」
「う、うん。みんなも手伝ってくれるかな?」
アキラはフェルノたちの顔を見比べた。
誰も否定する気はないらしく、いつものこととばかりに達観している。
「もっちろん良いよー。っていうかさー、そのために来たんだもん」
「そうですね。私も協力します」
「そうと決まれば早く行くわよ。それでNight、もみの木は何処にあるの?」
「それならここから北西にある森にもみの木が群生している。恐らく大半のプレイヤーはそこにいるはずだ」
Nightの推理は正しかった。
アキラもソウラから貰った情報によると、如何やらプレイヤーたちが一部集結しているらしい。
ここで少しでも手伝っておけば、後が楽になる。
Nightはそう考えたので、今回のことを提案したのだ。
「それで行くのか?」
「もちろん。そのために教えてくれたんでしょ?」
「まあな。ここで一つ成果を立てれば、後のイベントも楽になる」
本音を言ったNightは早速先導を切るようにして踵を返した。
くるりと振り返り、黒いマントがたゆたう。
オッドアイの瞳がギラリと光り、先を行く。
「あっ、待ってよ。みんな行こ」
これもいつも通りだと思った。
アキラはNightの隣に立ち、その横にフェルノが付く。
雷斬とベルは後ろから見守るようにして傍により、揃って森を目指した。
今回の森はたくさんのもみの木が自生していた。
完全に群生林のようで、自然の脅威を感じる。
歩き難いのはいつものことだけど、今回はたくさんのプレイヤーもいた。
それに釣られるようにモンスターの数も多く、探索班と戦闘班に分かれて立ちまわっていた。
「おりゃぁ!」
「おいおい、こんなところにもスライムがいるのかよ」
男達が二人文句を吐きながらも戦っていた。
その奥では少女たちが互いに身を寄せ合い、モンスターと相立つ。
「後ろは任せたわよ!」
「任せて。このくらい、私のスキルで蹴散らす」
ワンドを使ってスキルを発動。
風が巻き上がり、モンスターをもみの木に叩きつけた。
ガサゴソと音を立てるとともに、もみの木の樹皮が捲れる。
無事に倒せたことに安堵する少女たちとは対照的で、傍で探索をしていた眼鏡をかけた青年は苦言を呈する。
「ちょっと君たち、あまり叩きつけないでくれるかな?」
「はぁ?」
「もみの木が痛むだろう。もう少し周りを見てくれる?」
何だか口論になりそうだった。
武器も持っていて、戦闘が許可されているエリアなので、もしかしたらと思いアキラと雷斬は止めに入ろうとした。
けれどNightとベルがそれぞれ止める。
首を横に振って「関わるな」と口にした。
二人は迷ったが、もう一人の少女が間に入っていたので大丈夫そうだ。
「いちいち構っていても疲れるだけだろ」
「そうだよー。それに人が居たら口論だって起こるでしょ?」
「全部止めててもお節介よ。馬鹿な真似はしない方が良いわ」
三人は消極的で、完全に無駄なやり取りに関わろうとしない。
フェルノぐらいは味方になってくれるとこ対していたアキラだが、「まあ、確かに?」とここは少し流されることにする。
アキラたちも探索と戦闘を兼ねてもう少し奥に行ってみることにした。
すると一際大きなもみの木が目に留まる。
「見てよ、アレ! すっごく大きいよ」
「本当だな。アレぐらいのサイズ感ならクリスマスツリーには大きすぎるだろ」
「それじゃあ隣の?」
「まあそれがベターだろうな。しかも意思統一が今の言葉で出来上がったらしい」
振り返ってみると、プレイヤーたちも気が付いたらしい。
一瞬で気が付くNightもそうだが、何気ない発言で空気を変えられるアキラも凄いとベルは少し引き気味に讃えた。
「やっぱり凄いわね」
「そうですね。でもベル、私たちも横に並び立ちましょう」
何か意味深に呟き、ベルは雷斬に手を取られアキラたちの隣に並び立つ。
これこそが継ぎ接ぎの絆の絆だった。
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