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◇241 聖夜祭があるらしいよ
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12月もいよいよ二週目に入った。
この時期になると随分と寒くなり、暖房が欠かせなくなる。
教室では明輝と烈火がくだらない雑談をかわしていた。
なんてことない話だったが、急に舵を切った烈火は明輝に面白い話をした。
「そうだ明輝。そろそろアレの時期だよね?」
「アレって……ああ、クリスマス」
「そうクリスマス。商店街の方でも準備しているよね」
「毎年この時期だよね、クリスマスツリーの飾り付け」
この街ではこの時期になると駅前広場に大きなクリスマスツリーが立つ。
それに合わせて飾り付けが行われ、街全体でクリスマスムードが漂い始める。
もちろん色めくような相手などさらさらいない明輝たちにとってはそれ以上でもそれ以下でもなかったが、同時に商店街の方でも商戦が開始される。
「今年は絶対に予約するぞー!」
「あはは、またケーキ? それともチキン?」
明輝は毎年のことだと思い、軽く流した。
しかし烈火の言い分は違った。
「ううん。クリスマス限定カラーのキットだよ。毎年予約抽選に外れてさー」
「ああ、またアレだ」
「そっちか!」と明輝は完全に不意を突かれた。
そう言えば毎年予約抽選しているみたいだけど外れていて、残念そうな顔をしている。
正直に言えば一体何のプラモデルなのかは知らない。
けれど烈火の家にはトレーニング器具やたくさんのゲーム機、プラモが飾ってあるのでその何かだろうと、明輝は考えないことにした。
「でもクリスマスってことは、CUの方でもあるのかな?」
「多分あるでしょ? だってクリスマスだよ。今時その話題に乗らない日本のゲーム産業はないでしょ?」
烈火は真面目なことを言った。
確かにそうだと思いつつ、日本人の古今東西のイベント好きに感服した。
ギルドホームにやって来ると、今朝の出来事をアキラはみんなの前で話した。
すると真っ先に相槌を打ってくれたのは雷斬だ。
「確かにクリスマスのイベントごとはありそうですね。ですがこちらではあまり飾り付けはされていないようでしたが?」
「もしかしたらないのかもしれないわね。ほら、いくら日本人がイベントごとが好きで、このGAMEの開発元が日本の企業だとしてもよ。そんな当たり前のことをするとは思えないわね」
「毎回変わったイベントするもんねー」
しかしベルやフェルノは少しだけ否定的なことを口にする。
とは言えフェルノ自身は楽しければそれでいいので、今朝言っていたことと違うっている。
もちろん空気を合わせただけなので、アキラも少しだけ空気を合わせた。
「可能性は全然あるよね」
「毎回変わったイベントか。確かに挑戦的かつ実験的なイベントが多かったな」
とは言え今年はそこまでイベントは多くなかった。
だからプレイヤーの多くはここでパァーっと気持ちの良いイベントを待っているかも。
アキラはそんな風に考えつつ、Nightに尋ねた。
「ちなみに正解はどっちなの?」
「私を答案用紙みたいに言うな」
「ごめんごめん。でもNightなら何か知っているかなーって」
いつものことだがNightは振られた質問を数秒間考える。
この間に記憶を遡って呼び起こしているのだ。
つまりローディング中……からの答えが出たのか、「あっ!」と低めの声を上げた。
「そう言えばさっきコレを貰ったな」
Nightはポケットからキーホルダーを取り出す。
トナカイの引くそりに乗るサンタさんが可愛らしくデフォルメされていた。
しかしアキラは首を捻る。
如何してNightが持っているんだろう。Nightは性格的にもこういうものを自分から買うことはない。
「もしかして買ったの?」
「買うわけがないだろ。少し用があったからスタットの方に行っただけだ。そうしたら明らかに運営の誰かがログインしていると思われるプレイヤーがコレを配っていた」
色々な情報が一言の中に詰め込まれていた。
Night曰く、このキーホルダーは街中でポケットティッシュを配るみたいに配られていたらしく、プレイヤーやNPCと誰彼問わず無限に渡していたそうだ。
「何か異物がないか調べてはみたがそんな様子もない。単なるイベント公布用のアイテムだな」
「それじゃあこれからクリスマスイベントがあるの?」
「それはわからないが、聖夜祭。つまるところのクリスマス的なイベントはこの世界でも一つの文化として取り込んでいるんだろうな。そうでなければNPCたちが「そろそろかー」など言わない」
たしかにそれは確定的だ。
そう思ったアキラはふと気になることを尋ねた。
「でも良くわかったね。配っているのが運営だって」
「それは簡単な話しで、少し頭を使えば見えてくる」
「と言いますと?」
「プレイヤーでこんなものを無限に配れるのは運営しかいないだろ」
至極真っ当なことを言われてしまった。
もう少し特別感のある答えを期待していたアキラたちからすればショックだったが、それもそうだと納得するまで、そう時間はかからなかった。
「まあ何はともあれだ。今年最後のイベントにはなるだろうな」
「えっ? 最後なんだ」
「当たり前だ。こんな大きなイベントは他にないだろ」
年越しイベントはないのかな?
アキラはあって欲しいと思うだけだった。
この時期になると随分と寒くなり、暖房が欠かせなくなる。
教室では明輝と烈火がくだらない雑談をかわしていた。
なんてことない話だったが、急に舵を切った烈火は明輝に面白い話をした。
「そうだ明輝。そろそろアレの時期だよね?」
「アレって……ああ、クリスマス」
「そうクリスマス。商店街の方でも準備しているよね」
「毎年この時期だよね、クリスマスツリーの飾り付け」
この街ではこの時期になると駅前広場に大きなクリスマスツリーが立つ。
それに合わせて飾り付けが行われ、街全体でクリスマスムードが漂い始める。
もちろん色めくような相手などさらさらいない明輝たちにとってはそれ以上でもそれ以下でもなかったが、同時に商店街の方でも商戦が開始される。
「今年は絶対に予約するぞー!」
「あはは、またケーキ? それともチキン?」
明輝は毎年のことだと思い、軽く流した。
しかし烈火の言い分は違った。
「ううん。クリスマス限定カラーのキットだよ。毎年予約抽選に外れてさー」
「ああ、またアレだ」
「そっちか!」と明輝は完全に不意を突かれた。
そう言えば毎年予約抽選しているみたいだけど外れていて、残念そうな顔をしている。
正直に言えば一体何のプラモデルなのかは知らない。
けれど烈火の家にはトレーニング器具やたくさんのゲーム機、プラモが飾ってあるのでその何かだろうと、明輝は考えないことにした。
「でもクリスマスってことは、CUの方でもあるのかな?」
「多分あるでしょ? だってクリスマスだよ。今時その話題に乗らない日本のゲーム産業はないでしょ?」
烈火は真面目なことを言った。
確かにそうだと思いつつ、日本人の古今東西のイベント好きに感服した。
ギルドホームにやって来ると、今朝の出来事をアキラはみんなの前で話した。
すると真っ先に相槌を打ってくれたのは雷斬だ。
「確かにクリスマスのイベントごとはありそうですね。ですがこちらではあまり飾り付けはされていないようでしたが?」
「もしかしたらないのかもしれないわね。ほら、いくら日本人がイベントごとが好きで、このGAMEの開発元が日本の企業だとしてもよ。そんな当たり前のことをするとは思えないわね」
「毎回変わったイベントするもんねー」
しかしベルやフェルノは少しだけ否定的なことを口にする。
とは言えフェルノ自身は楽しければそれでいいので、今朝言っていたことと違うっている。
もちろん空気を合わせただけなので、アキラも少しだけ空気を合わせた。
「可能性は全然あるよね」
「毎回変わったイベントか。確かに挑戦的かつ実験的なイベントが多かったな」
とは言え今年はそこまでイベントは多くなかった。
だからプレイヤーの多くはここでパァーっと気持ちの良いイベントを待っているかも。
アキラはそんな風に考えつつ、Nightに尋ねた。
「ちなみに正解はどっちなの?」
「私を答案用紙みたいに言うな」
「ごめんごめん。でもNightなら何か知っているかなーって」
いつものことだがNightは振られた質問を数秒間考える。
この間に記憶を遡って呼び起こしているのだ。
つまりローディング中……からの答えが出たのか、「あっ!」と低めの声を上げた。
「そう言えばさっきコレを貰ったな」
Nightはポケットからキーホルダーを取り出す。
トナカイの引くそりに乗るサンタさんが可愛らしくデフォルメされていた。
しかしアキラは首を捻る。
如何してNightが持っているんだろう。Nightは性格的にもこういうものを自分から買うことはない。
「もしかして買ったの?」
「買うわけがないだろ。少し用があったからスタットの方に行っただけだ。そうしたら明らかに運営の誰かがログインしていると思われるプレイヤーがコレを配っていた」
色々な情報が一言の中に詰め込まれていた。
Night曰く、このキーホルダーは街中でポケットティッシュを配るみたいに配られていたらしく、プレイヤーやNPCと誰彼問わず無限に渡していたそうだ。
「何か異物がないか調べてはみたがそんな様子もない。単なるイベント公布用のアイテムだな」
「それじゃあこれからクリスマスイベントがあるの?」
「それはわからないが、聖夜祭。つまるところのクリスマス的なイベントはこの世界でも一つの文化として取り込んでいるんだろうな。そうでなければNPCたちが「そろそろかー」など言わない」
たしかにそれは確定的だ。
そう思ったアキラはふと気になることを尋ねた。
「でも良くわかったね。配っているのが運営だって」
「それは簡単な話しで、少し頭を使えば見えてくる」
「と言いますと?」
「プレイヤーでこんなものを無限に配れるのは運営しかいないだろ」
至極真っ当なことを言われてしまった。
もう少し特別感のある答えを期待していたアキラたちからすればショックだったが、それもそうだと納得するまで、そう時間はかからなかった。
「まあ何はともあれだ。今年最後のイベントにはなるだろうな」
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