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◇228 VS氷牙4
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フェルノが氷の牙を握りしめ、アイスシェードンを逃げられなくした。
ギシギシと軋む音を立て、アイスシェードンは目障りに思い、脱出を試みている。
しかしフェルノから逃げることはできず、ましてや牙が折れるわけでもなかった。
「どおどお。そんなに放してほしい?」
フェルノは安全な位置取りで牙を折ろうと試みている。
けれどアイスシェードンの最大の特徴である鋭くて長い氷の牙はまるでびくともしなかった。
そのためフェルノは作戦を変える。
アキラとNightの位置関係を把握すると、にやりと笑みを浮かべる。
「アキラ、Night。2人とも準備して」
「何をするの?」
「もちろんこの牙をへし折るんだよ。ただ私が抑え込んでいるとね、炎がまともにだ冴えないの。だから一瞬だけ時間を作るから、全力で機動力を削いでほしいんだ」
フェルノからの要望は勝利への最短距離の一つだった。
もちろん誰も嫌がる様子はない。
アキラとNightがいつでも仕掛けられるように準備を終えるのを待ってから、フェルノはアイスシェードンの牙をフッと放した。
「よっと」
急に力が反転した。
拮抗し合っていた力の押し合いをフェルノが力を抜いたことで、アイスシェードンだけが後ろに吹き飛ぶ。
体が宙に浮き、体勢が若干くの字に折れている。
一瞬の思考停止。流石にモンスターでも理解できないようで、攻撃して来る様子はない。
けれどフェルノ本人には攻撃する気が満々で、両手を解放された瞬間に、右アッパーで顎を破壊した。
「そりゃぁ!」
バコーン! と硬いものが砕けるような鈍い音がした。
アイスシェードンは突然の攻撃に目を見開き、我に返って前脚で引っ掻こうとする。
「させないよ!」
「当たり前だ。このチャンスを逃すか」
アキラはアイスシェードンの左脇腹に右ストレートを叩き込んだ。
【甲蟲】で武装した拳はしっかりと芯を貫いたようで、アイスシェードンは口から唾液を吐き出す。
けれど休ませる気がないNightは間髪入れずに十字架状の剣を振り下ろした。
自分の身の丈とほぼ同じ長さの剣がアイスシェードンを襲う。
「グガァゥ!」
「その程度の威嚇で怯むと思うなよ」
スキルでもないただの威嚇にNightはまるで怯まない。
十字架状の剣がアイスシェードンの頭蓋骨を粉砕しようとした瞬間、体を捻り何とかかわす。
だけどかわすのが精一杯だったらしく、アイスシェードンは自分の吐いた唾液に滑って転んだ。
「グガァァァァァァァァァァ!」
「いくら叫んでも無駄だよ。このままその牙をへし折って、攻撃力と戦意を大幅ダウンしちゃうよー」
「こ、怖いこと言ってる」
フェルノは竜化した拳をかち合わせた。
炎が火花を散らして広がり、ボワッとアイスシェードンを威圧する。
「あれ? 威圧しているのに、全然ビビってくれない」
「如何やらまだ自分に勝機があるみたいだな。となると、気を付けるべきは……」
Nightが不穏な言葉を口にする。
アキラもまだ終わりじゃないと思いつつも、フェルノの側で待機した。
けれどNightの嫌な予感が当たってしまう。
アイスシェードンが今度は威圧に負けないぐらい吠えだした。
「グラウァァァァァァァァァァ! ガウッ!」
その瞬間、アイスシェードンの尻尾が上がった。
しかもただ上がるのではなく、吠えると同時に青白い毛がどんどん凍り付いていく。
まるで鋭い氷の槍のようで、フェルノ目掛けて突いた。
「ちょっと、そんな技もあるの!」
フェルノはギリギリで避けると、アイスシェードンの連続尻尾突きをかわし続ける。
空気を震わせ、氷を纏った尻尾が襲う中、フェルノも下がりっぱなしではない。
「もう、いい加減にして欲しいなー。そりゃぁ!」
思いっきり右ストレートを打ち込んだ。
炎が微かに出ていて、氷を溶かそうとしている。
拳が擦れた瞬間、氷の破片が飛び散った。
「氷の破片で攻撃してくれるんだ。結構面白いことしてくるねー」
「楽しんでいる場合か。真面目にやれ、フェルノ」
「はいはい。それじゃあ……えっ?」
「あ、アイスシェードンの体に砕けた氷の破片が纏わりついてる?」
アキラは首を捻った。
フェルノの動きが止まり、アイスシェードンを見やると、尻尾の槍を破壊され砕けた氷の破片が青白い体毛に纏わりついていた。
一体何の意味があるのか。
単純に防御力を上げた訳ではなく、アイスシェードンは四肢を氷の床に固定すると、ジリジリと喉を鳴らす。
足下から氷が自分の体を伝い、纏わりついていた氷の破片を強化する。
槍状にしていた尻尾を失った代わりに、今度は全身に鋭い剣鎧を纏ったらしい。
「よ、鎧なんてズルって!」
「ズルいなんてものじゃない。これは……」
Nightが氷の床に手を添えた。
アイスシェードンが右後ろ脚を使って加速を付けていた。
如何やら突っ込んで来るみたいで、アキラとフェルノも構えるが、アイスシェードンが飛び出す3秒前にNightが叫ぶ。
「2人とも、私の後ろに来い!」
「「えっ!?」」
2人は一瞬理解が追い付かなかった。
アイスシェードンが凄まじい速さで体当たりして来て、破裂音のような空気を振動させる音が響くだけだった。
「まるで鉄砲玉だな」
「あ、危なかった。Nightが防御してなかったら」
けれどアイスシェードンの渾身の体当たりは2人を仕留めるには至らなかった。
無駄な突進で終わったものの、アキラたちはアイスシェードンの多様な技の数々に恐れを抱いた。
ギシギシと軋む音を立て、アイスシェードンは目障りに思い、脱出を試みている。
しかしフェルノから逃げることはできず、ましてや牙が折れるわけでもなかった。
「どおどお。そんなに放してほしい?」
フェルノは安全な位置取りで牙を折ろうと試みている。
けれどアイスシェードンの最大の特徴である鋭くて長い氷の牙はまるでびくともしなかった。
そのためフェルノは作戦を変える。
アキラとNightの位置関係を把握すると、にやりと笑みを浮かべる。
「アキラ、Night。2人とも準備して」
「何をするの?」
「もちろんこの牙をへし折るんだよ。ただ私が抑え込んでいるとね、炎がまともにだ冴えないの。だから一瞬だけ時間を作るから、全力で機動力を削いでほしいんだ」
フェルノからの要望は勝利への最短距離の一つだった。
もちろん誰も嫌がる様子はない。
アキラとNightがいつでも仕掛けられるように準備を終えるのを待ってから、フェルノはアイスシェードンの牙をフッと放した。
「よっと」
急に力が反転した。
拮抗し合っていた力の押し合いをフェルノが力を抜いたことで、アイスシェードンだけが後ろに吹き飛ぶ。
体が宙に浮き、体勢が若干くの字に折れている。
一瞬の思考停止。流石にモンスターでも理解できないようで、攻撃して来る様子はない。
けれどフェルノ本人には攻撃する気が満々で、両手を解放された瞬間に、右アッパーで顎を破壊した。
「そりゃぁ!」
バコーン! と硬いものが砕けるような鈍い音がした。
アイスシェードンは突然の攻撃に目を見開き、我に返って前脚で引っ掻こうとする。
「させないよ!」
「当たり前だ。このチャンスを逃すか」
アキラはアイスシェードンの左脇腹に右ストレートを叩き込んだ。
【甲蟲】で武装した拳はしっかりと芯を貫いたようで、アイスシェードンは口から唾液を吐き出す。
けれど休ませる気がないNightは間髪入れずに十字架状の剣を振り下ろした。
自分の身の丈とほぼ同じ長さの剣がアイスシェードンを襲う。
「グガァゥ!」
「その程度の威嚇で怯むと思うなよ」
スキルでもないただの威嚇にNightはまるで怯まない。
十字架状の剣がアイスシェードンの頭蓋骨を粉砕しようとした瞬間、体を捻り何とかかわす。
だけどかわすのが精一杯だったらしく、アイスシェードンは自分の吐いた唾液に滑って転んだ。
「グガァァァァァァァァァァ!」
「いくら叫んでも無駄だよ。このままその牙をへし折って、攻撃力と戦意を大幅ダウンしちゃうよー」
「こ、怖いこと言ってる」
フェルノは竜化した拳をかち合わせた。
炎が火花を散らして広がり、ボワッとアイスシェードンを威圧する。
「あれ? 威圧しているのに、全然ビビってくれない」
「如何やらまだ自分に勝機があるみたいだな。となると、気を付けるべきは……」
Nightが不穏な言葉を口にする。
アキラもまだ終わりじゃないと思いつつも、フェルノの側で待機した。
けれどNightの嫌な予感が当たってしまう。
アイスシェードンが今度は威圧に負けないぐらい吠えだした。
「グラウァァァァァァァァァァ! ガウッ!」
その瞬間、アイスシェードンの尻尾が上がった。
しかもただ上がるのではなく、吠えると同時に青白い毛がどんどん凍り付いていく。
まるで鋭い氷の槍のようで、フェルノ目掛けて突いた。
「ちょっと、そんな技もあるの!」
フェルノはギリギリで避けると、アイスシェードンの連続尻尾突きをかわし続ける。
空気を震わせ、氷を纏った尻尾が襲う中、フェルノも下がりっぱなしではない。
「もう、いい加減にして欲しいなー。そりゃぁ!」
思いっきり右ストレートを打ち込んだ。
炎が微かに出ていて、氷を溶かそうとしている。
拳が擦れた瞬間、氷の破片が飛び散った。
「氷の破片で攻撃してくれるんだ。結構面白いことしてくるねー」
「楽しんでいる場合か。真面目にやれ、フェルノ」
「はいはい。それじゃあ……えっ?」
「あ、アイスシェードンの体に砕けた氷の破片が纏わりついてる?」
アキラは首を捻った。
フェルノの動きが止まり、アイスシェードンを見やると、尻尾の槍を破壊され砕けた氷の破片が青白い体毛に纏わりついていた。
一体何の意味があるのか。
単純に防御力を上げた訳ではなく、アイスシェードンは四肢を氷の床に固定すると、ジリジリと喉を鳴らす。
足下から氷が自分の体を伝い、纏わりついていた氷の破片を強化する。
槍状にしていた尻尾を失った代わりに、今度は全身に鋭い剣鎧を纏ったらしい。
「よ、鎧なんてズルって!」
「ズルいなんてものじゃない。これは……」
Nightが氷の床に手を添えた。
アイスシェードンが右後ろ脚を使って加速を付けていた。
如何やら突っ込んで来るみたいで、アキラとフェルノも構えるが、アイスシェードンが飛び出す3秒前にNightが叫ぶ。
「2人とも、私の後ろに来い!」
「「えっ!?」」
2人は一瞬理解が追い付かなかった。
アイスシェードンが凄まじい速さで体当たりして来て、破裂音のような空気を振動させる音が響くだけだった。
「まるで鉄砲玉だな」
「あ、危なかった。Nightが防御してなかったら」
けれどアイスシェードンの渾身の体当たりは2人を仕留めるには至らなかった。
無駄な突進で終わったものの、アキラたちはアイスシェードンの多様な技の数々に恐れを抱いた。
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