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◇225 VS氷牙1

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 気が付けば12月3日。
 いよいよ最終日だ。

 アキラたち継ぎ接ぎの絆のメンバーの一部はまだイベントを駆け上がろうとしていた。
 残念ながら1位までは流石に厳しそうで、2位にはけみー&マンティが、4位には雷斬&ベルが付けている。
 二組とも凄いと思ったのは一瞬で、アキラとフェルノもまだ負けてないと気合十分だった。

「よし、それじゃあ行くぞ」
「「おー!」」

 Nightの掛け声で満月山の裏手から目の前の雪山を見上げた。
 アキラたちは声を合わせて統一感を出すと、早速雪山に足を踏み入れた。


 雪山に入ると普通に寒かった。
 Nightが用意してくれたコートやマフラー、厚底のブーツを履き全身を寒さから守ってくれている。

 山の天気は変わりやすいとは言うけれど、空模様はまだ青空。
 今のうちに全力で目的地に辿り着かないと大変なことになる。

「それにしても寒いね」
「寒い言うな。余計寒くなる」
「だって寒いんだもん。フェルノは温かそうでいいよね」
「いいでしょー。こういう時にファイアドレイクって有りだよねー」

 アキラとNightはいくら防寒着を着込んでいるとはいえ、雪山何て来たことがなく、普通に寒い思いをしていた。
 これで天候が悪化したら体中の感覚が無くなって、まともに歩けなくなるだろう。
 それがわかっていたので、足早になっていたが、悠々としているフェルノは全身をスキルで温めていた。

「【炎熱竜化】……こういう時は羨ましく思うな」
「いいでしょーいいでしょー」
「ねえNight。カイロとか出せないの?」
「出して如何するんだ」
「使うに決まっているでしょ? それ以外に使い道ないよ」
「馬鹿か。お前はカイロを知らなすぎる」

 何故か一蹴されてしまった。
 アキラは食い下がれないほど寒かったので、Nightに聞き返す。

「如何して使えないの?」
「カイロは寒すぎると発熱しないんだ。中の鉄が酸素と酸化しても熱を生み出し難い」

 そう言えば前にテレビでそんなこと言っていた気がする。
 Nightに言われて思い出してしまったが、これで寒すぎる現状を変えることができない。

「ううっ。寒い」
「だから寒い言うな」
「もう、暑くても寒くても人間って機嫌悪くなるよねー。えいっ!」

 フェルノがアキラとNightを抱き寄せた。
 手は手袋なども特に付けず、竜化している。
 分厚い皮膚に覆われていて、とてつもない熱を生み出していて、触れたアキラとNightは温かいを通り越して普通に熱かった。

「フェルノありがとう」
「どういたしましてー。それよりさー、目的地って何処なのー?」
「目的地は洞窟らしい。数日前に敗北したペアが居たそうだ」

 Nightは情報を集めていた。
 どうやらあのサーベルタイガーに挑んだ猛者がいたらしく、呆気なくやられたらしい。
 個の雪山をくまなく探して見つけた洞窟の中にひっそりと暮らしていたらしく、入るや否や圧倒的な力で叩きのめされて強モン認定されたのだ。
 あくまでもネット民の意見だけど、その情報が出回るとたくさんのプレイヤーが挑み敗北したので、倒せない認定も加わっている。

「えー! そんなモンスターと戦うの!」
「当たり前だ。私たち以外で倒せるやつがいるとは思えない」
「それは凄い自信だねー。でも燃えてきた」
「ああ。このサーベルタイガーの牙は使えるからな。是非とも欲しい」

 Nightが燃えている理由は副産物狙いだった。
 フェルノとアキラとの間に目的の違う温度差を感じたけれど、とにかく牙を折ることは最優先となった。

「止まれ。この辺りのはずだ」

 Nightが「止まれ」と指示したのはなだらかな斜面だった。
 真っ白な雪が降り積もっていて、これだけで絶景だった。

「確かこの辺りに洞窟が……ここだな」
「ここだなって見つけるの速すぎない? って、ここしかないね」

 あまりの速さにアキラはツッコミを入れたが、洞窟の場所はすぐにわかった。
 雪山の壁面に窪みがあり、入り口の天井には氷柱が幾つもできていた。

「危ないね。この氷柱が落ちてきたらきっとただじゃすまないよ」
「だろうな。だが、これだけ硬いんだ。そう簡単に落ちてはこない」
「よっと……本当だ。折ってみたけど、結構危ないよ」

 軽くジャンプしたフェルノが氷柱の一部を折ると、コンコンと指で弾いた。
 甲高い音が鳴る一方で鋭く尖っている。
 これからこの氷柱よりも鋭い牙を持つモンスターと戦うのかと思うと、アキラは心臓が痛くなった。貫かれないように注意しないといけないなと、自分を鼓舞して胸を叩いた。

「ぐはっ!」
「何馬鹿やっているんだ。とにかく行くぞ」

 思いっきり叩いたせいで普通に痛かった。
 Nightにツッコまれてしまい、何だか恥ずかしかった。
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