上 下
225 / 555

◇224 VS氷牙の前の前座

しおりを挟む
 マズいことになった。ギルドホームでアキラたちは頭を抱える。
 しんみりとしたダークな空気が立ち込めている中、Nightは1人呑気にコーヒーを飲もうとしている。

「お前たち、そんな顔をして如何したんだ?」
「如何したもこうしたもないよ。せっかく頑張ったのに」

 珍しくアキラが落胆している。
 ここまで頑張ったのにしかも大量のポイントを逃すとは思わなかった。

「いいかアキラ。私たちは継ぎ接ぎだ。個々の力の強みを全体に活かす。この力は数が増えれば増えるほどバラバラの価値観を持つものの、それだけで強みになる。落ち込む必要はない。2人は戦闘スタイルが違うからな」
「そうは言っても……雷斬&ベルペアはかなり上位に入っているよ?」
「部活があって週4でしか参加できないのにね」

 フェルノが余計なことを口にする。
 クマデクマを倒したフェルノからしたら爽快感とは別に合わせられなかったアキラに批難するかもしれないが、フェルノはそんなことを気にしたりしない。
 むしろ真逆だった。それはいつものアキラに似ている。

「まあいいじゃんかー。気にしない気にしない。それにアレは仕方ないよ」
「でも、ごめん」
「アキラらしくないよ。それにアキラとNightのおかげで私の攻め手に繋がったんだよ? だから気にしても仕方ない。はいはい、終わり終わり」

 フェルノは無理やり話を終わらせた。
 空気を断ち切り、どんよりムードを払い除ける。

「そうだね。私らしくないね。切り替え切り替え」
「流石はアキラだな。すぐに切り替える」

 Nightはアキラの切り替えを褒めた。
 するとフェルノは空気が変わったことを完全に確認してから、バンとテーブルを叩いた。

「そんなことよりもさ、ここから逆転する方法ってないのかなー?」
「うーん。もしかして、またクマデクマを倒すとか?」
「それは無理だな。アイツはお前が倒したんだ。ポイントは空気になった」
「マジですか?」

 フェルノが表情を歪めた。
 けれどNightは新しいモンスターの情報を投げてくれる。

「まあ待て。明日は12月だ。時期的にも丁度いいだろう」
「「丁度いい?」」
「ああ。12月にはイベントが多いからな。運営サイドからもクリスマスイベント開催が決まっている。そこでだ。あるモンスターを倒すしか、逆転方法はない」
「つまり雪に関するモンスターってこと?」

 まさかクリスマスだからって、サンタさんのトナカイを倒せとかはないと思う。
 いや、そんな悍ましいことを運営さんはやって来ないよね?
 アキラはちょっぴり震えながらも、テーブルに置かれた紙切れを覗いた。

「もしかして、コレを倒すの?」
「絶対強いよ。このモンスター!」
「だろうな。今回最難関のラストバトルに用意されていると私は睨んでいる」

 紙切れに書いてあったのはほぼ間違いなくサーベルタイガーだった。
 けれど雪豹のように色は白く、何処か青い流線が体を張っている。
 解像度の高いイラストに驚きつつも、強さを遺憾なく感じていた。

「このイラストは運営がSNS上で公開した画像だ。まさかとは思っていたが、コイツを倒すしかないとはな」
「でも何処にいるかもわからないんだよ?」
「それなら問題ない。今回のイベントは範囲が決まっている。そこでだ。私はリサーチをして、範囲上で雪山らしき場所はここしかないと判断した」

 マップを起動させ、地図を拡大する。
 白い部分に合わせると立体的に映し出す。

「ここが雪山?」
「結構遠そうだけど、反対側から行けば余裕そうだね」
「そうだな。この辺りには前に来たことがある」

 満月山の少し先にあるようで、丁度裏手側の方だった。
 通常通りに進むと時間がかかりそうで、他のプレイヤーに先を越されかねない。
 しかし倒すにしても情報が無さ過ぎる。
 このまま無策に突っ込むのは流石に論外だった。

「というわけだ。私たちがこれからすることは決まった、イベント最終日にコイツを倒す」
「待ってよ。最終日でいいの?」
「問題ない。どうせ私たち意外に倒せるやつらもいないんだ。それまでにまずは準備をするぞ。ある程度の防寒具は私が用意してやるが、お前たちも準備しておけ」

 Nightはテキパキとアキラたちに指示を出す。
 けれどアキラとフェルノは如何して最終日なのか気になってしまった。

「ねえNight。如何して最終日なの?」
「そうだよ。先を越されちゃうかもよー」
「それはない。そもそもアキラ、お前は他のプレイヤーから何と呼ばれているか知っているか?」
「えっ、確か〈対プレイヤー最強〉とか〈キメラ〉とか呼ばれているんだっけ?」

 アキラは気恥ずかしい二つ名を貰っていた。
 けれどフェルノたちも本気になったアキラと渡り合えるとは思っていない。
 戦闘スタイルが如何とかではなく、アキラの精神力が高すぎるのだ。

「それともう一つ、継ぎ接ぎの絆はアキラの活躍もあってか、名前自体はそこまでだが一つ知られていることがある。何かわかるか?」
「わかんないよ。ヒントもないのに」
「答えは至極簡単だ。強敵に打ち勝つギルド・・・・・・・・・・だぞ」
「「あー」」

 2人も納得した。
 Nightは得意になっていて、よっぽど気に入っているのだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り

星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!? ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 注意事項 ※主人公リアルチート 暴力・流血表現 VRMMO 一応ファンタジー もふもふにご注意ください。

VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重
SF
 真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。 「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」  これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。 「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」 「彼、クリアしちゃったんですよね……」  あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。

モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件

こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。 だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。 好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。 これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。 ※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

運極ちゃんの珍道中!〜APの意味がわからなかったのでとりあえず運に極振りしました〜

斑鳩 鳰
ファンタジー
今話題のVRMMOゲーム"Another World Online"通称AWO。リアルをとことん追求した設計に、壮大なグラフィック。多種多様なスキルで戦闘方法は無限大。 ひょんなことからAWOの第二陣としてプレイすることになった女子高生天草大空は、チュートリアルの段階で、AP振り分けの意味が分からず困ってしまう。 「この中じゃあ、運が一番大切だよね。」 とりあえず運に極振りした大空は、既に有名人になってしまった双子の弟や幼馴染の誘いを断り、ソロプレーヤーとしてほのぼのAWOの世界を回ることにした。 それからレベルが上がってもAPを運に振り続ける大空のもとに個性の強い仲間ができて... どこか抜けている少女が道端で出会った仲間たちと旅をするほのぼの逆ハーコメディー 一次小説処女作です。ツッコミどころ満載のあまあま設定です。 作者はぐつぐつに煮たお豆腐よりもやわやわなメンタルなのでお手柔らかにお願いします。

テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ

雪月 夜狐
SF
「強くなくても楽しめる、のんびりスローライフ!」 フリーターの陽平が、VRMMO『エターナルガーデンオンライン』で目指すのは、テイマーとしてモンスターと共にスローライフを満喫すること。戦闘や冒険は他のプレイヤーにお任せ!彼がこだわるのは、癒し系モンスターのテイムと、美味しい料理を作ること。 ゲームを始めてすぐに出会った相棒は、かわいい青いスライム「ぷに」。畑仕事に付き合ったり、料理を手伝ったり、のんびりとした毎日が続く……はずだったけれど、テイムしたモンスターが思わぬ成長を見せたり、謎の大型イベントに巻き込まれたりと、少しずつ非日常もやってくる? モンスター牧場でスローライフ!料理とテイムを楽しみながら、異世界VRMMOでのんびり過ごすほのぼのストーリー。 スライムの「ぷに」と一緒に、あなただけのゆったり冒険、始めませんか? 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】 『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/270920526】

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!

しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。 βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。 そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。 そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する! ※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。 ※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください! ※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)

処理中です...