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◇214 ソウラの仲間たち

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「って、ことがあったんです」

 アキラはカウンター越しにソウラと話し込んでいた。
 グラスを磨きながら、アキラの話を聞くソウラも笑みを浮かべる。

「そんなことがあったのね。それにしても、考えたこともなかったな」
「そうですよね。やっぱり考えすぎですよね」

 アキラは同意を求める。
 Nightは色々と細かく考えすぎている。
 GAMEは楽しく遊ぶもので、余計なことに神経を使っちゃダメだ。

「でも面白いと思うけどね。私は」
「そうですか? 少し神経質になり過ぎている気がして……」
「そんな神経質すぎるくらい慎重なのも悪いことじゃないでしょ?」
「Nightの持ち味ですもんね。でも、そんな変なことはあるんでしょうか?」

 アキラはふと尋ねてみる。
 しかしソウラにはわかるはずもなく、「さあ?」と首を捻る。

「でも新イベントね。私やピーコは参加しないけど、マンティは参加するみたいね」
「そうなんですか!? それは負けられませんね」

 Deep Skyの人たちがイベントに参加するなんて、初めて聞いた。
 だけどソウラとピーコが参加しないのなら、だれがマンティとペアを組むのか、アキラは非常に気になった。

 そこで何の気なしに尋ねると、ソウラはグラスを拭く手を早め笑みを浮かべる。

「ふふっ。そうね」
「あのソウラさん。なんで笑っているんですか? ちょっと怖いです」

 アキラは正直に答えた。
 機嫌を悪くするでもなく、むしろ聞いてくれるのを待っていたようで、まんまと話の罠に捕らえられてしまったらしい。

「ついにあの子が参加するのよ。今までまともに参加で来てなかったのに」
「えっと、そう言えば前にもう1人いるって言ってましたよね?」

 ふと初めてぐらいの時にこの店に来て聞かされた。
 確かにDeep Skyにはもう1人メンバーがいる。
 もちろん名前しか聞いたことはない人で、どんな人で性別も見た目もわからない。

「確かけみーさんでしたっけ?」
「そうよけみー。よく覚えていたわね、アキラ」
「ま、まあ名前だけですから、何となくレベルですけど……顔近い」

 ソウラの顔がぐっと近づいていた。
 アキラは顔を背けて距離を取ると、若干わからない興奮を抱いたソウラが楽しそうに話し出す。

「けみーはね、ずっと大学で作品作りをしていたのよ」
「作品ですか? もしかしてピーコさんと同じ……」
「ううん。けみーの得意分野がプログラミングなの。ほとんど独学でGAMEを作っていたからね。夜はバーでバイトもしてたみたいだから、やっとあの子の軽快な戦闘バトルが見られると思うと楽しみなのよね」

 どうして楽しみなのかは正直蚊帳の外で、アキラはky日を捻り頭にはてなを浮かべるだけだった。
 けれどここまでソウラが興奮しているということは、何でもできるオールラウンダーだと推測した。
 これは強力なライバルの登場だ。

「けみーさん。どんな人かはわかりませんけど、早く会ってみたいです」
「うーん。それじゃあ初日に会えると思うわ」
「えっ、初日に会えるんですか?」
「うん。今回は初日からギアを上げていくみたい。鈍ってた体を叩き起こすそうよ」

 その発想が出て来るのは男だけだ。
 アキラは話の口ぶりから察し、もしかしたらとソウラの顔を覗き込む。

 頬は別に赤くない。
 楽しみにしているとは言っても、カップルのような初々しさもない。
 会わない時間が2人を強くするみたいな展開もなさそうだった。

「あの、ケミーさんって男の人……」

 アキラが気になっていたので聞いてみようとした。
 その瞬間、余計なことを聞かせないようにお店の扉が開いた。
 ベルがカランコロンと鳴り、アキラの視線が移動する。

「やっほー、ソウラ。今日もいるーって、アキラ!」
「こんにちは、マンティさん」

 そこにいたのはマンティだった。
 子供のようにはしゃいで登場したマンティに目を奪われてしまう。

「やっほー、アキラ。元気してた?」
「はい、元気でしたよ。そう言えばマンティさん。今度のイベントに参加するって本当ですか?」
「モチのロンだよ。私も暴れまくりたいんだよねー」

 1人でシャドーボクシングを始めた。
 小さい体からは想像もできない体力が潜んでいて、アキラは手強そうだと思う。

「それじゃあペアの相手って……」
「そうそう、けみーだよ。アキラは会ったことある?」
「無いです。どんな人か、今から楽しみなんです」

 これは相棒からどんな人か直接聞けそうなので、参考にしようと思った。
 しかしマンティの説明はあまりにざっくりとしていてよくわからない。

「それじゃあ楽しみにしててよ。けみーって、凄い動けるんだよ」
「やっぱり動ける人なんだ」
「うん。ソウラも知っているよね?」
「もちろんよ。けみーの運動神経を舐めてたら痛い目を見るわ。これは忠告ね、アキラ」
「は、はい?」

 何故か忠告されてしまった。
 その瞬間、頭の中ではイメージが決まる。

 筋肉質の凄い男の人。
 何となくそんな気がして、全身が震えた。これが鳥肌なのかと、今から楽しみに思うよう、意識を切り替えるアキラだった。
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