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◇209 森の中へ走り出す
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アキラは2人を連れて駆けだした。
Nightとフェルノは突然走り出したアキラに驚きつつも、窮地を脱することができて一安心といったところだ。
「何とか攻撃は掻い潜れたな」
「そうだねー。でも、アキラはどうして走り出したの?」
「おい、アキラ。フェルノが聞いているぞ?」
「……」
「「アキラ?」」
アキラの耳には2人の声が聞こえていた。
だけどアキラはそれ以上に考え事があった。
今の声、どうして私たちを導いてくれたんだろう? 声の通りに従ってしまったアキラだったが、窮地を脱し切ったのかはまだわからなかった。
「おい、アキラ。おい!」
Nightがアキラの手を引き離した。
突然軽くなったことで3人は立ち止まると、Nightの剣幕な表情がアキラを睨みつけた。
「いつも質問攻めにするお前が、如何して人の話を無視するんだ」
「ご、ごめん。でも確信がなかったから」
「えっ? 理由もなく走り出したの?」
「り、理由はあるよ。声が聞こえたでしょ?」
「声何て聞こえたかな?」
フェルノは首を捻った。
しかしNightは「そうだな」と頷く。
「確かに声が聞こえた。だが、お前がまんまと突っ走るとは思わなかったぞ」
「そ、そうかな?」
「警戒心が無さ過ぎる。お前は馬鹿なのか?」
「馬鹿じゃないよ。それに、おかげで何とかなったでしょ?」
「それはそうだが……」
Nightも怒るに怒れないので、いつものキレがない。
この悪い空気を変えようと、フェルノは顎に指を当て思っていたことを口にした。
「思ったんだけどさー。その声の人? 何処かにいるよね」
「そうなんだよね。だけど、ここまで全速力で走って逃げて来たけど……」
「誰にも出会わなかったな。まさかとは思うが……」
「モンスターだったりしてね」
アキラはNightの考えをすぐさま当てて見せた。
だけどNightもフェルノも腑に落ちないのか、珍しく2人して「うーん」と唸っていた。
これではまるでアキラだけが普通じゃないみたいに見えてしまい、ショックを受けてしまった。
「ちょっと待ってよ。でも、助かったんだよ!」
「そうとは限らないだろ。それより、この道に進んでしまった以上、私たちが取れるのは1つしかない」
「たった1つだけ……この道を進むってことだね」
アキラたちは目の前に続く一本道を見てしまった。
左右には椿の木が生えていて、モンスターの姿はない。
比較的安全な気がしたけれど、まだ侮ってはいけないと用心する。
「もしかして、誰か潜んでいるかもね」
「ちょっと怖いこと言わないでよ!」
「ごめんごめん」
フェルノが思っていたけれど誰も口にしなかった不安材料を吐き出した。
それに動揺するでもなく、普通に注意するアキラの姿をチラ見たNightだったが、“攻撃されている様子はない”ので、安全だと思うことにした。
「どうやら潜んではいないみたいだな」
「「そう?」」
「人の気配がしない。ましてやモンスターの狡猾な空気も感じない。それにこんな場所に立ち尽くしていても仕方ないからな。私たちは進むしかない」
Nightは珍しく先に進んでみることにした。
アキラとフェルノもNightに続き、椿の道を歩いて回った。
しかし一向にモンスターが現れることはない。ましてや何処に辿り着くでもなく、長々と続く道を歩いていた。もしかしたら、また迷ってしまったのかな? アキラは口にした。
「どうしよう、また迷ったのかな?」
「うーん。もしかして……かな?」
また迷ったのかとアキラたちは悩んだ。
しかし迷いは一瞬で吹き飛ばされた。
何処からともなく声が聞こえてきた。
「こっちです。この道は迷いやすいので、私が案内します」
その声は開けた道からではなく、椿が生えている森の方から聞こえてきた。
さっき聞こえた女性の声で、アキラたちは信じて進むことにした。
このまま立ち尽くしていても、また同じ道を辿るだけだからだ。
「よし、行くぞ」
「「うん、行ってみよう!」」
アキラたちは椿が生えた森に入った。
当然獣道なので、アキラたちは擦り傷を負う。
「何だかカサカサするね」
「気を付けろ。毒性ある植物が生えている可能性もあるからな」
「えいっ! そりゃぁ!」
フェルノはNightが用意した鉈を使って草木をかき分ける。
絡まった蔦は炎で焼き払って安全な道を確保すると、ようやく先が見えてきた。
薄っすらと太陽の陽射しが入っていて、明るくなっている。
「おっ、見えて来たよ!」
「結構歩いたね。でもようやく……」
「ちょっと待て。誰かいるぞ」
安堵したアキラとフェルノとは対照的に、Nightの目は睨みつけていた。
目の前には巨大な椿の樹が生えている。あまりに存在感があるから、木というよりも樹って感じだった。
しかしアキラたちも立ち止まってしまう。
巨大な椿の樹の真下に誰かいた。
背の高い女性が1人、椿の樹を茫然と見上げて立ち尽くしている姿は、何だか儚かない。
Nightとフェルノは突然走り出したアキラに驚きつつも、窮地を脱することができて一安心といったところだ。
「何とか攻撃は掻い潜れたな」
「そうだねー。でも、アキラはどうして走り出したの?」
「おい、アキラ。フェルノが聞いているぞ?」
「……」
「「アキラ?」」
アキラの耳には2人の声が聞こえていた。
だけどアキラはそれ以上に考え事があった。
今の声、どうして私たちを導いてくれたんだろう? 声の通りに従ってしまったアキラだったが、窮地を脱し切ったのかはまだわからなかった。
「おい、アキラ。おい!」
Nightがアキラの手を引き離した。
突然軽くなったことで3人は立ち止まると、Nightの剣幕な表情がアキラを睨みつけた。
「いつも質問攻めにするお前が、如何して人の話を無視するんだ」
「ご、ごめん。でも確信がなかったから」
「えっ? 理由もなく走り出したの?」
「り、理由はあるよ。声が聞こえたでしょ?」
「声何て聞こえたかな?」
フェルノは首を捻った。
しかしNightは「そうだな」と頷く。
「確かに声が聞こえた。だが、お前がまんまと突っ走るとは思わなかったぞ」
「そ、そうかな?」
「警戒心が無さ過ぎる。お前は馬鹿なのか?」
「馬鹿じゃないよ。それに、おかげで何とかなったでしょ?」
「それはそうだが……」
Nightも怒るに怒れないので、いつものキレがない。
この悪い空気を変えようと、フェルノは顎に指を当て思っていたことを口にした。
「思ったんだけどさー。その声の人? 何処かにいるよね」
「そうなんだよね。だけど、ここまで全速力で走って逃げて来たけど……」
「誰にも出会わなかったな。まさかとは思うが……」
「モンスターだったりしてね」
アキラはNightの考えをすぐさま当てて見せた。
だけどNightもフェルノも腑に落ちないのか、珍しく2人して「うーん」と唸っていた。
これではまるでアキラだけが普通じゃないみたいに見えてしまい、ショックを受けてしまった。
「ちょっと待ってよ。でも、助かったんだよ!」
「そうとは限らないだろ。それより、この道に進んでしまった以上、私たちが取れるのは1つしかない」
「たった1つだけ……この道を進むってことだね」
アキラたちは目の前に続く一本道を見てしまった。
左右には椿の木が生えていて、モンスターの姿はない。
比較的安全な気がしたけれど、まだ侮ってはいけないと用心する。
「もしかして、誰か潜んでいるかもね」
「ちょっと怖いこと言わないでよ!」
「ごめんごめん」
フェルノが思っていたけれど誰も口にしなかった不安材料を吐き出した。
それに動揺するでもなく、普通に注意するアキラの姿をチラ見たNightだったが、“攻撃されている様子はない”ので、安全だと思うことにした。
「どうやら潜んではいないみたいだな」
「「そう?」」
「人の気配がしない。ましてやモンスターの狡猾な空気も感じない。それにこんな場所に立ち尽くしていても仕方ないからな。私たちは進むしかない」
Nightは珍しく先に進んでみることにした。
アキラとフェルノもNightに続き、椿の道を歩いて回った。
しかし一向にモンスターが現れることはない。ましてや何処に辿り着くでもなく、長々と続く道を歩いていた。もしかしたら、また迷ってしまったのかな? アキラは口にした。
「どうしよう、また迷ったのかな?」
「うーん。もしかして……かな?」
また迷ったのかとアキラたちは悩んだ。
しかし迷いは一瞬で吹き飛ばされた。
何処からともなく声が聞こえてきた。
「こっちです。この道は迷いやすいので、私が案内します」
その声は開けた道からではなく、椿が生えている森の方から聞こえてきた。
さっき聞こえた女性の声で、アキラたちは信じて進むことにした。
このまま立ち尽くしていても、また同じ道を辿るだけだからだ。
「よし、行くぞ」
「「うん、行ってみよう!」」
アキラたちは椿が生えた森に入った。
当然獣道なので、アキラたちは擦り傷を負う。
「何だかカサカサするね」
「気を付けろ。毒性ある植物が生えている可能性もあるからな」
「えいっ! そりゃぁ!」
フェルノはNightが用意した鉈を使って草木をかき分ける。
絡まった蔦は炎で焼き払って安全な道を確保すると、ようやく先が見えてきた。
薄っすらと太陽の陽射しが入っていて、明るくなっている。
「おっ、見えて来たよ!」
「結構歩いたね。でもようやく……」
「ちょっと待て。誰かいるぞ」
安堵したアキラとフェルノとは対照的に、Nightの目は睨みつけていた。
目の前には巨大な椿の樹が生えている。あまりに存在感があるから、木というよりも樹って感じだった。
しかしアキラたちも立ち止まってしまう。
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