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◇207 椿の森
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椿の森はモミジヤに新しく現れたダンジョンの一つで、まだ攻略されていない鬱蒼とした森だった。
何でも立ち入った人を狂わせてしまうという噂も出ているが、アキラは全く信じていなかった。
「ここが椿の森。それにしても、椿が咲いていないね」
「そうだねー。確か椿って、赤くて大きな花だよね?」
「そうだな。アレだけ鮮血めいた赤なら、離れていても気が付くはずだが……本当にここが椿の森なのか?」
ここに来て誰も信じられなくなっていた。
それもそのはず、鬱蒼として森だけあって木々との間に間隔がほとんどなく、道に迷ってしまいそうなほどだ。
ましてや陽の光もほとんど入らないように木々の葉っぱで埋め尽くされている。
目印になるような椿の花は一輪も咲いておらず、完全に方向感覚を狂わせる。
「ちょっと困るよね。目印付けながらあるこっか」
「それが賢明な判断だな。こんなところにまで来て、探索不可は洒落にもならない」
Nightは何も書いていない紙を手に取り、鉛筆で簡単な地図を作る。マッピング担当を引き受けてくれたので、アキラとフェルノは来た道がわかるように木の幹に細かな彫を入れた。
「矢印の方向から来たってことにしておけば、絶対に道に迷わないよね」
「そうだねー。でもさ、この森迷うことを想定してるよねー?」
「どうしてそう思うの?」
「だってさー、オブジェクトが壊せるんだよ? そんなの道に迷ってくださいって言っているようなものでしょ?」
確かに前にアキラ1人で行った場所は、そもそも探索が全然進んでいないくらい迷いやすい森だった。
それもそのはず、木に目印を付けても時間経過で消えてしまって、オブジェクトへの情報介入ができなかった特殊な森だったからだ。
それに比べればこの森はまだ楽な方かも。なんて考えだしていたのだが、ここも大概迷いそうだ。
「とりあえず進んでみようよ。椿の森って言っているんだから、植物系のモンスターでも潜んでいるかもしれないよ」
「トレントのような気に擬態しているモンスターの可能性もある。十分注意して進めよ」
「「はーい!」」
「私は引率の教師か何かか」
アキラとフェルノが子供っぽい返事をしたので、Nightがツッコミを入れた。
だけど気分は遠足、もしくはフィールドワークに来た小学生だった。
「楽しみだね、フェルノ」
「そうだねー。まあ、万が一の時は燃やせばいいけど」
「はい、それは無しね」
フェルノの冗談にも、的確かつスピーディーなツッコミを入れるアキラだった。
「せーのっ!」
フェルノが竜化した腕を地面に叩きつけた。
轟々と炎が伝い、トカゲの姿をしたモンスター、透明トカゲを攻撃する。
しかし透明な体になり、風景に完全に溶け込むことのできる透明トカゲを仕留めることはできず、またしても姿を消されてしまった。
「もう、これで何回目!」
「3回目」
まだ3回しか同じ攻撃をしていない。
そもそも透明トカゲ相手に拳と炎だけで攻撃しようというのは間違いだと、Nightは気が付いていた。
そこで急遽【ライフ・オブ・メイク】でフェルノに突破口となるアイテムを差し出す。
「フェルノ、これでも使え」
Nightは今作ったばかりのアイテムをフェルノに投げ渡した。
体を捻って受け取ると、フェルノは首を捻る。
「鏡? こんなアイテムでどうやって戦えばいいのさー!」
「いいから使ってみろ。話はそれからだ」
Nightはフェルノならできると確信していた。
だからアキラも拳を作って「頑張って」と応援する。
とは言えパワープレイしかできないフェルノが冴えた頭を使うわけもなく投げつけるのかと一瞬想像が固まってしまったが、鏡の裏に紐が付いていたことに気が付いた。
「紐? ……あっ!」
フェルノは気が付いた。Nightは意図していたことを理解してもらい、に焼けた笑みを浮かべる。
すぐさま実行に移した。左腕に鏡を装着する。
「さあ、何処からでも来ていいよ。次は絶対に外さないからねー」
相当な自信だ。フェルノは野生の勘的に周囲一帯を探知すると、後ろで何かが動く物音を聞いた。
それがどれだけ小さいものかはわからない。
だけどフェルノの野生の勘に偽装は通用しない。確実に首を狙って来ているのを察知すると、素早く炎を出した。だけど攻撃にではない。鏡に反射させるようにだ。
「見えた!」
ボフッと音を立てて軽々に燃える炎の塊。
それが鬱蒼とした森の中で、ほぼ唯一のもの凄い明るさを放つ光源になると、鏡に反射して目の前で揺らめくものを陽炎のように映し出す。
Nightはこうなることがわかっていた。「流石だな」と素直に褒める姿をアキラは見逃さない。
「鏡の光が屈折するのを利用して透明な敵を見つけ出す。アニメとかでたまにある奴!」
フェルノ叫びながら拳を叩き込んだ。
光の粒子となり、透明トカゲの姿が無くなる。
そもそも透明になれるので倒せたかどうかはわからないけど、親指を立てるフェルノが満面の笑みだったのでアキラたちはホッとした。
何でも立ち入った人を狂わせてしまうという噂も出ているが、アキラは全く信じていなかった。
「ここが椿の森。それにしても、椿が咲いていないね」
「そうだねー。確か椿って、赤くて大きな花だよね?」
「そうだな。アレだけ鮮血めいた赤なら、離れていても気が付くはずだが……本当にここが椿の森なのか?」
ここに来て誰も信じられなくなっていた。
それもそのはず、鬱蒼として森だけあって木々との間に間隔がほとんどなく、道に迷ってしまいそうなほどだ。
ましてや陽の光もほとんど入らないように木々の葉っぱで埋め尽くされている。
目印になるような椿の花は一輪も咲いておらず、完全に方向感覚を狂わせる。
「ちょっと困るよね。目印付けながらあるこっか」
「それが賢明な判断だな。こんなところにまで来て、探索不可は洒落にもならない」
Nightは何も書いていない紙を手に取り、鉛筆で簡単な地図を作る。マッピング担当を引き受けてくれたので、アキラとフェルノは来た道がわかるように木の幹に細かな彫を入れた。
「矢印の方向から来たってことにしておけば、絶対に道に迷わないよね」
「そうだねー。でもさ、この森迷うことを想定してるよねー?」
「どうしてそう思うの?」
「だってさー、オブジェクトが壊せるんだよ? そんなの道に迷ってくださいって言っているようなものでしょ?」
確かに前にアキラ1人で行った場所は、そもそも探索が全然進んでいないくらい迷いやすい森だった。
それもそのはず、木に目印を付けても時間経過で消えてしまって、オブジェクトへの情報介入ができなかった特殊な森だったからだ。
それに比べればこの森はまだ楽な方かも。なんて考えだしていたのだが、ここも大概迷いそうだ。
「とりあえず進んでみようよ。椿の森って言っているんだから、植物系のモンスターでも潜んでいるかもしれないよ」
「トレントのような気に擬態しているモンスターの可能性もある。十分注意して進めよ」
「「はーい!」」
「私は引率の教師か何かか」
アキラとフェルノが子供っぽい返事をしたので、Nightがツッコミを入れた。
だけど気分は遠足、もしくはフィールドワークに来た小学生だった。
「楽しみだね、フェルノ」
「そうだねー。まあ、万が一の時は燃やせばいいけど」
「はい、それは無しね」
フェルノの冗談にも、的確かつスピーディーなツッコミを入れるアキラだった。
「せーのっ!」
フェルノが竜化した腕を地面に叩きつけた。
轟々と炎が伝い、トカゲの姿をしたモンスター、透明トカゲを攻撃する。
しかし透明な体になり、風景に完全に溶け込むことのできる透明トカゲを仕留めることはできず、またしても姿を消されてしまった。
「もう、これで何回目!」
「3回目」
まだ3回しか同じ攻撃をしていない。
そもそも透明トカゲ相手に拳と炎だけで攻撃しようというのは間違いだと、Nightは気が付いていた。
そこで急遽【ライフ・オブ・メイク】でフェルノに突破口となるアイテムを差し出す。
「フェルノ、これでも使え」
Nightは今作ったばかりのアイテムをフェルノに投げ渡した。
体を捻って受け取ると、フェルノは首を捻る。
「鏡? こんなアイテムでどうやって戦えばいいのさー!」
「いいから使ってみろ。話はそれからだ」
Nightはフェルノならできると確信していた。
だからアキラも拳を作って「頑張って」と応援する。
とは言えパワープレイしかできないフェルノが冴えた頭を使うわけもなく投げつけるのかと一瞬想像が固まってしまったが、鏡の裏に紐が付いていたことに気が付いた。
「紐? ……あっ!」
フェルノは気が付いた。Nightは意図していたことを理解してもらい、に焼けた笑みを浮かべる。
すぐさま実行に移した。左腕に鏡を装着する。
「さあ、何処からでも来ていいよ。次は絶対に外さないからねー」
相当な自信だ。フェルノは野生の勘的に周囲一帯を探知すると、後ろで何かが動く物音を聞いた。
それがどれだけ小さいものかはわからない。
だけどフェルノの野生の勘に偽装は通用しない。確実に首を狙って来ているのを察知すると、素早く炎を出した。だけど攻撃にではない。鏡に反射させるようにだ。
「見えた!」
ボフッと音を立てて軽々に燃える炎の塊。
それが鬱蒼とした森の中で、ほぼ唯一のもの凄い明るさを放つ光源になると、鏡に反射して目の前で揺らめくものを陽炎のように映し出す。
Nightはこうなることがわかっていた。「流石だな」と素直に褒める姿をアキラは見逃さない。
「鏡の光が屈折するのを利用して透明な敵を見つけ出す。アニメとかでたまにある奴!」
フェルノ叫びながら拳を叩き込んだ。
光の粒子となり、透明トカゲの姿が無くなる。
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