VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇205 意思が共鳴する剣《マインド・レゾナンス》

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 樹の表面には亀裂が所々に入っていた。
 近づくとよくわかるが、内部にまで侵食しているようだった。

「何だか中に入れそう……」

 ポツリと思ったことを口にした。
 するとスライムは樹の亀裂の中に入って行く。

「えっ? そっちに行くの!」

 勝手に入ってもいいのかな? もしも何かのダンジョンならモンスターに襲われるんじゃないかと不安になった。
 アキラは一瞬迷ったが、どうせここまで来たのなら行くのも行かないのも同じだろうと思った。
 スライムが消えた亀裂からは中に入れるかもしれない。
 アキラも樹の内部に行ってみることにした。

「うわぁ、樹の中ってこうなってたんだ……幻想的」

 樹の内部に入ると、たくさんの草花が咲いていた。
 池のようなものもできて、ここだけでもモンスターが平穏に生活できそうだった。

「外は秋の寒々しさがするのに、ここだけ春みたいな陽気を感じる……ヒカリゴケの姓かな?」

 真上を見ると樹の内側にはたくさんのヒカリゴケが自生していた。
 そのおかげでまるで外にいるみたいに明るい。さらによく見れば、上の方は亀裂から外の光を取り入れている。
 そのおかげもあってか、中もぽかぽかで暖かい。

「何だろー。気持ちよくなっちゃうなー」
『ダメですよ。目的を見失っては』
「わかってるよー。目的?」

 急に声が聞こえた気がした。
 しかし何故か特に気になることもなく、それが当たり前のように感じてしまう。
 これは超リアルな夢を見ているのか。アキラは錯覚に陥っていたけれど、今の声ではっきりした。
 ここに来た目的……そんなものない。

「ここに何しに来たんだっけ?」

 そう言えばとキョロキョロ見回すと、スライムの姿が無くなっていた。
 捜しては見たものの、何処にも気配を感じない。

「変だなー。さっきまでいたはずなんだけど……」

 腕組をして突然いなくなった理由を考えてみた。
 その結果、バグなんじゃないかと落とし込むことにした。
 だけどせっかく意思疎通ができそうだったモンスターがいなくなるのは、ちょっぴり寂しい。ここまで真っ直ぐ来たから帰り道はわかるけど、帰りも案内してほしかったと後悔する。

「って、どうしよう。なにしたらいいんだろ?」

 ちょっと歩いてみる時になるものを見つけた。
 まるでおとぎ話の中みたいに、池の畔に剣が突き刺さている。
 別に女神さまが出て来るだとかではなく、普通に石に刺さっていた。
 まるで「はい、来た人抜いちゃって」と言っているみたいに、一種のアトラクションのようにそこに存在していた。

「どうしてこんなところに剣が……しかも剣じゃなくて、鞘の部分が突き刺さってるの?」

 今思えばどうしてこういう代物は鞘の部分が突き刺さるのか。
 本来なら高密度の金属であるはずの剣身が刺さるべきだろう。
 考える必要はないのだが、気になってしまう。

「何だろう、この剣。凄く引かれ合う」

 自然とアキラの足は剣に向かって歩いていた。
 自分の意思がそうさせるのか、それとも剣がそうさせているのか。
 アキラは考えつくこともなく、気が付けば剣の目の前に来ていた。

「この剣、とってもカッコいい」

 試しに柄を握ってみることにした。
 すると頭がズキッとした。不意に手を放して、頭を押さえるもすぐに収まって途切れてしまう。

「今のは一体……もう一回だ」

 アキラはもう一度剣の柄に触れた。
 すると今度ははっきりと頭の中にズキズキとする気配を感じる。
 けれど剣の柄を放しはしなかった。思いっきり体重を後ろに掛けて、剣を引き抜こうとして見る。

『そのまま』
「えっ!? うっ、そりゃぁ!」

 剣が抜けた。いや、鞘が石から弾き飛ばされたんだ。
 実は最初はびくともしなかった。だけど急に軽くなって、私が体重をかけたせいで派手に転んでしまった。

「ぐはぁっ、痛たたたぁ……まさか後ろ向きで転ぶなんて。でも、おかげで剣が手に入ったぞ!」

 別にどうしても欲しかったわけじゃない。
 だけどこうして手に入れてみると、さっきの感覚がなくなっていた。
 むしろ清々しい気分になる。

「もしかして、この樹はずっとこの剣を守っていたのかな? それが私なんかが抜いちゃったけど、良かったのかな?」

 不安に感じたのだが、剣が急に震えだした。
 まるで剣が応えてくれたみたいだ。

「あはは……えーっと、君の名前は……おっ! これだこれ」

 アキラは手にした武器の名前を調べた。
 
 意思が共鳴する剣マインド・レゾナンス レア度:?
『特殊な金属でできた剣。特定の意識体と共鳴することで所持者に真の力を与える。剣自体が所持者を選び、鞘から抜くには覚悟が必要である』

「何それ?」

 正直に読んだ感想は、よくわからないだった。
 確かに剣を鞘から抜こうとすると、何故か引っかかって抜くことができない。
 仕方がないのでインベントリに収納することにした。

「さてと、そろそろ帰ろうかなぁー。うっ」

 急に目眩がしてきた。もしかして時間切れかな?
 ドライブ自体がアキラの意識を起こそうとしているらしく、気が付けば気絶してしまっていた。
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