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◇199 洗いっこ
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「「「うわぁぁぁぁぁ!」」」
アキラたちは盛り上がっていた。
目の前に広がる湯気を立たせる水。そう、温泉だ。
「やっと、やっと入れるね!」
「ああ、やっと乾いた」
1人だけ違う盛り上がりを見せるNightは置いておくとして、時間帯も夜になって雰囲気が良くなっていた。
アキラたちは裸になり、温泉の白い湯気に包まれる。
「いい湯加減です。しかもこの温泉の効能は疲労回復にも効くらしいですよ」
雷斬は先陣を切って湯加減を見ていた。
手を浸すと、これまでの疲れがあっという間に垢と一緒に流れていくのを感じた。
どうやら凄まじい効能があるのは間違いなさそうで、アキラたちもテンションが上がる。
「でもまさか、妖帖の雅の秘湯に真っ先に入れるなんてね」
「しかも他の温泉もお湯が出たみたいでよかったね」
「まさかあの炭化カルシウムの華が原因で源泉を塞ぎ、効能を丸ごと奪っていたなんてな」
「でも、今回はこれでいいだよね? 妖帖の雅の温泉に無料で入れるようになったし、他の温泉宿にも出入りする権利貰ったもんね!」
「ついに一見さんかー。なんかいいねいいねー!」
アキラとフェルノは温泉に入る前から盛り上がっていて、温泉の外で飛び跳ねていた。
その様子を見ていたベルが大人びた様子で、制止させる。
「もう、そんなにはしゃぐと転ぶわよ」
「そっか。ここ濡れているもんね」
「そんなことありませんよ。今日はまだ誰も立ち入っていないので、濡れていないはずです」
するとクロユリが現れた。
確かに温泉の祖とは一切濡れていない。湯気が立ち込めているが、さっき出たばかりなのでまだ水蒸気もほとんど発生していなかった。
「クロユリさん。本当にいいんですか?」
「そうだよー。ギルドの人たちよりも先に入るのはサー」
「大丈夫ですよ。それに皆様のおかげで秘湯が出るようになったんです。このくらいお安い御用ですよ」
「……しかし毎回タダで入らせてもらうのはな」
「心配いりませんよ。既に私たちは知り合いではないですか」
何だか嫌な余寒がした。
ソウラたちのギルドとの付き合いも長いが、また同じような依頼を頼まれても困る。
Nightは渋い顔をしていたが、アキラたちの耳には入ることなくお人好しが過ぎると思っていた。
「そんなことより皆さん入りましょう。せっかくの一番風呂ですよ」
「そうね。この際、面倒ごとは後回しだわ」
「その前に体を洗いたいんだが……」
「あっ、Night。私が背中洗ってあげるよ」
「助かる」
アキラとNightは体を洗いに向かい、雷斬たちは一番風呂を味わうことにした。
「それにしてもNight。秘湯って凄いね」
「ん? 確かに、日本にもたくさんの秘湯が存在しているが効能はいいと効くぞ」
「そうなんだ。よく書いてあるよね」
「そうだな。リウマチや疲労回復は有名だが、流石にファンタジーだな。傷まで癒えてしまうなんて」
「でもいいよね。温泉って」
アキラはNightの背中を洗ってあげていた。
石鹸で泡立てたタオルでゴシゴシと日焼けもしたことがないような、真っ白な体を洗う。
今はスキルを使っていないので、背中には黒い吸血鬼の羽根も生えていない。
これじゃあ普通の人間、《ヒューマン》と同じだ。
「Night、後で私の背中も洗ってね」
「わかっている。それはそうと、私たちのギルドホームにも温泉があればいいな」
「それわかる! でも、バグが多そうな島だけどあるかな?」
「あるだろ。あの山は今は活動していないが、火山のようだぞ」
「えっ!? そうなんだ」
どうやらNightはあの近くに古い火山灰が積もっていることを知っていたらしい。
だから山の方に近づいてみれば、もしかしたら火山があって川沿いには温泉が湧いている可能性があると考えていた。
「今度掘ってみるか?」
「掘るって。まさか人力で?」
それしかないだろ。そもそもここだって、ほとんど人力のはずだ」
それは流石にきついと思った。
だけとNightだって馬鹿じゃない。スキルを使えるからこそその発想があった。
「私の【ライフ・オブ・メイク】で道具を用意して、フェルノと雷斬のパワー&スピードで一気に掘り進めればいい」
「待ってよ。それじゃあ私とベルが余っているよ?」
「適材適所だ。継ぎ接ぎ全員が武器を持っているが、同時に武器を休ませるときも多い。その違いだ」
Nightだって何も考えずに話しているわけじゃない。
アキラは納得すると、桶を使って背中の接見を洗い落とした。
すると白い肌がさらに白くなり、綺麗に垢も落ちていた。
「よし、次はお前だな……おいアキラ。お前、かなり鍛えているんだな?」
「そうかな? 私体柔らかいよ?」
「筋肉が付いているのに、体が柔らかいのか。不思議だ」
「ちょっと、Night! くすぐったいからやめてよ!」
アキラはNightに背中を指でなぞられてくすぐったかった。
だけどNightはお構いなしで、アキラは笑ってしまう。
「うわぁ、今度はどこ触っているの!」
「それにしては胸はないんだな」
「余計なこと言うな!」
アキラは怒鳴っていた。
Nightも同じようなものなので、何だか両方傷付いた。
アキラたちは盛り上がっていた。
目の前に広がる湯気を立たせる水。そう、温泉だ。
「やっと、やっと入れるね!」
「ああ、やっと乾いた」
1人だけ違う盛り上がりを見せるNightは置いておくとして、時間帯も夜になって雰囲気が良くなっていた。
アキラたちは裸になり、温泉の白い湯気に包まれる。
「いい湯加減です。しかもこの温泉の効能は疲労回復にも効くらしいですよ」
雷斬は先陣を切って湯加減を見ていた。
手を浸すと、これまでの疲れがあっという間に垢と一緒に流れていくのを感じた。
どうやら凄まじい効能があるのは間違いなさそうで、アキラたちもテンションが上がる。
「でもまさか、妖帖の雅の秘湯に真っ先に入れるなんてね」
「しかも他の温泉もお湯が出たみたいでよかったね」
「まさかあの炭化カルシウムの華が原因で源泉を塞ぎ、効能を丸ごと奪っていたなんてな」
「でも、今回はこれでいいだよね? 妖帖の雅の温泉に無料で入れるようになったし、他の温泉宿にも出入りする権利貰ったもんね!」
「ついに一見さんかー。なんかいいねいいねー!」
アキラとフェルノは温泉に入る前から盛り上がっていて、温泉の外で飛び跳ねていた。
その様子を見ていたベルが大人びた様子で、制止させる。
「もう、そんなにはしゃぐと転ぶわよ」
「そっか。ここ濡れているもんね」
「そんなことありませんよ。今日はまだ誰も立ち入っていないので、濡れていないはずです」
するとクロユリが現れた。
確かに温泉の祖とは一切濡れていない。湯気が立ち込めているが、さっき出たばかりなのでまだ水蒸気もほとんど発生していなかった。
「クロユリさん。本当にいいんですか?」
「そうだよー。ギルドの人たちよりも先に入るのはサー」
「大丈夫ですよ。それに皆様のおかげで秘湯が出るようになったんです。このくらいお安い御用ですよ」
「……しかし毎回タダで入らせてもらうのはな」
「心配いりませんよ。既に私たちは知り合いではないですか」
何だか嫌な余寒がした。
ソウラたちのギルドとの付き合いも長いが、また同じような依頼を頼まれても困る。
Nightは渋い顔をしていたが、アキラたちの耳には入ることなくお人好しが過ぎると思っていた。
「そんなことより皆さん入りましょう。せっかくの一番風呂ですよ」
「そうね。この際、面倒ごとは後回しだわ」
「その前に体を洗いたいんだが……」
「あっ、Night。私が背中洗ってあげるよ」
「助かる」
アキラとNightは体を洗いに向かい、雷斬たちは一番風呂を味わうことにした。
「それにしてもNight。秘湯って凄いね」
「ん? 確かに、日本にもたくさんの秘湯が存在しているが効能はいいと効くぞ」
「そうなんだ。よく書いてあるよね」
「そうだな。リウマチや疲労回復は有名だが、流石にファンタジーだな。傷まで癒えてしまうなんて」
「でもいいよね。温泉って」
アキラはNightの背中を洗ってあげていた。
石鹸で泡立てたタオルでゴシゴシと日焼けもしたことがないような、真っ白な体を洗う。
今はスキルを使っていないので、背中には黒い吸血鬼の羽根も生えていない。
これじゃあ普通の人間、《ヒューマン》と同じだ。
「Night、後で私の背中も洗ってね」
「わかっている。それはそうと、私たちのギルドホームにも温泉があればいいな」
「それわかる! でも、バグが多そうな島だけどあるかな?」
「あるだろ。あの山は今は活動していないが、火山のようだぞ」
「えっ!? そうなんだ」
どうやらNightはあの近くに古い火山灰が積もっていることを知っていたらしい。
だから山の方に近づいてみれば、もしかしたら火山があって川沿いには温泉が湧いている可能性があると考えていた。
「今度掘ってみるか?」
「掘るって。まさか人力で?」
それしかないだろ。そもそもここだって、ほとんど人力のはずだ」
それは流石にきついと思った。
だけとNightだって馬鹿じゃない。スキルを使えるからこそその発想があった。
「私の【ライフ・オブ・メイク】で道具を用意して、フェルノと雷斬のパワー&スピードで一気に掘り進めればいい」
「待ってよ。それじゃあ私とベルが余っているよ?」
「適材適所だ。継ぎ接ぎ全員が武器を持っているが、同時に武器を休ませるときも多い。その違いだ」
Nightだって何も考えずに話しているわけじゃない。
アキラは納得すると、桶を使って背中の接見を洗い落とした。
すると白い肌がさらに白くなり、綺麗に垢も落ちていた。
「よし、次はお前だな……おいアキラ。お前、かなり鍛えているんだな?」
「そうかな? 私体柔らかいよ?」
「筋肉が付いているのに、体が柔らかいのか。不思議だ」
「ちょっと、Night! くすぐったいからやめてよ!」
アキラはNightに背中を指でなぞられてくすぐったかった。
だけどNightはお構いなしで、アキラは笑ってしまう。
「うわぁ、今度はどこ触っているの!」
「それにしては胸はないんだな」
「余計なこと言うな!」
アキラは怒鳴っていた。
Nightも同じようなものなので、何だか両方傷付いた。
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