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◇196 湯の華の化け物

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 そうこうしていると、アキラたちは頂上に到達した。
 活火山だけあって、頂上に到達すると大きなカルデラが構えていた。

「うわぁ、落ちたらアウトだね」
「当たり前だ。例えファイアドレイクのお前でも耐えられないぞ」
「うっ。それは怖いなー」

 フェルノが冷や汗をかいて、カルデラを覗いていたのを止めた。
 上半身を引き戻し、アキラの隣にやって来る。

「やっぱり暑いね。流石火山」
「活火山って日本にもたくさんあるんだよね」
「そうだな。日本は火山大国だから、それだけ温泉も多い」

 確かに富士山とか桜島は有名な火山だ。
 アキラは何となく嫌な予感がしていた。
 すると雷斬が不穏なことを口にした。

「何だか嫌な空気ですね」
「嫌な空気って何よ? 硫黄のせいでしょ?」
「それは違います。硫黄のようなニオイで表せるようなものではなく、例えるならそうですね……酸味の効いたスパイスのような」
「香辛料のニオイがするの?」
「いえ、そうではありませんが……何でしょうか、このニオイは。嫌な予感がして仕方ありません」

 雷斬が不穏なことを言い出すので、アキラは怖くなった。
 もしかしたらまた強敵を相手にすることになるのかな。
 気を引き締め直して、アキラはスキルを使う準備をする。

「おっ、アキラもやる気だね」
「毎回私たちって先手取れないもんね」
「お前たち。最初から戦うことを前提に考えるな。念頭に置くならいいが……」

 Nightもいつでも戦える準備をしていた。
 背中の十字架状の剣が物語っている。

「とにかくもうすぐ湯口だ。おそらく間欠泉はそこにある」
「そもそもどうしてこの町の温泉が間欠泉だってわかったの?」
「それは簡単だ。この町のパンフレットを見てみろ」

 Nightはそう言うと、アキラたちはパンフレットを取り出す。
 すると小さな文字で間欠泉のことが書かれている。
 隅々まで読んでいなかったアキラたちが悪い。

「それじゃあ間欠泉が詰まっているから温泉が出なくなったわけですね」
「まあ間欠泉が塞がれば、他の所から出るのは必然だな」
「つまり最悪町中で温泉が出るってことだよね? それって危なくない」
「今回の大元はそこにある。とは言えソレを詰まらせているとすれば……」

 すると何か白いものが見えて来た。
 地面から明らかに生えていて、アキラたちは一瞬立ち止まった。

「な、何アレ!」
「どうやら原因のようだな。行ってみるぞ。慎重にな」

 ようやく目指していた湯口に辿り着けたと思い安堵していると、アキラたちが見つけたのは強大な白いキノコみたいな柱だった。

「何このキノコ」
「エノキがどうして生えているのかな?」

 確かに完全にエノキダケだった。
 とは言え一本の太いキノコのようで、見ようによってはエリンギのようにも見える。
 このキノコが間欠泉を塞いでいて、先の傘から湯気がもくもく出ていた。

「何だこのモンスター。私も知らないぞ」

 Nightも初見のモンスターらしい。
 ネットサーフィンで攻略情報を探っているNightが知らないとなると、無闇に近づいて良いのか迷ってしまう。
 するとベルが弓の狙いを定めて射貫いてみようとしたが、Nightがそれを制した。

「待てベル。このタイプは攻撃をしなければ襲っては来ない」
「だけど倒さないとダメでしょ? このまま間欠泉を塞がれたままだと危険じゃないの?」
「それはわかっている。とは言え、何か策を労する必要があるかもな」

 Nightは考えを巡らせると、何か思いついたのか、アキラたちを下がらせた。
 それからいつもの【ライフ・オブ・メイク】でアイテムを作っていた。
 これで打開できるアイテムが出てくればいいんだけど。アキラは楽しみだった。

「今日は何を作るの?」
「炎だ。とは言え現実にはないものだからな。よし、これでいいな」

 Nightが作ったのは黒い鉄球のようなものだった。
 とは言え中には液体が入っていて。丸い穴が空いている。

「フェルノ、火をくべろ」
「火をこの中に入れたらいいの? 上手く入るかな?」

 とは言いつつもフェルノは器用だから黒い鉄球の中に火を上手に入れた。
 って、火を入れるってなに! アキラは自分が思っていたことに1人でツッコミを入れた。

「Nightさん、それはなんですか?」
「また変なものなんでしょ? しかもこの形、手榴弾?」
「そんなわけがないだろ。これはな……投げればわかる」

 Nightは説明するよりも見せた方が早いと悟り、早速キノコの根元に向かって投げつけた。
 アキラたちはまた爆発すると思い、しゃがみ込んだ。
 しかしいつもと違う。爆発音が聞こえない。

「あ、あれ?」
「爆発しないね。もしかして手榴弾じゃなかったの?」
「当たり前だ。そう説明しただろ」

 いいやアキラたちは信用できなかった。
 いつものNightの戦法を考えて今回も同じようなものかと思ったんだ。
 しかし爆発はやはりしておらず、黒い鉄球の中から気体が噴き出た。色が付いていて、灰色がかっていたがNightはようやく説明してくれた。

「アレは加熱性の酸性の水だ。フェルノの火を使って発生させた。安心しろ人体に影響ない」

 アキラたちは呆気に取られる。
 普通に紛らわしいからやめて欲しいと思った。
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