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◇185 熱を奪う液体
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Nightと雷斬、それからベルの3人は次の熱線が来るタイミングを待っていた。
そのタイミングしかチャンスがない。
熱線が放たれた瞬間しか、胸板の部分が剥き出しにならず攻撃が通らないからだ。
結局この黒鉄の巨人は、核融合炉をモチーフにしたエネルギー機関を機能停止に追い込まなければ倒すことはできなかった。
「よし、作戦はシンプルに行くぞ」
「その方がわかりやすいから助かるわ」
「それで作戦と言うのはどのようなものでしょうか?」
大真面目に雷斬は尋ねた。
ベルは「おいおい」と訝しい表情になって眉根を寄せる。
どうやらNightのことがだんだんわかってきたらしい。
アキラはいつもこんな気持ちだったのかと、溜息が込み上げてきた。
「あんまり厳しいのは無しね」
「わかっている。アキラやフェルノじゃないんだ」
「なっ!? それって私たちを舐めてるの?」
「それは心外ですね。私たちの技術はお2人の感覚的なものとは違うかもしれませんが、私たちには洗練された武器があります」
「だろうな」
「「だろうな?」」
Night真顔だった。雷斬とベルは首を傾げる。
思ってもみなかった会話に一瞬戸惑ってしまったが、それはアキラのような反射的な切り返しがないことを表していた。
「とりあえずシンプルなことは嫌いじゃないだろ。私がこれをお前に貸す」
「私なの!」
「アキラみたいな盛大なツッコミは要らない」
「そう? じゃあこの液体をどうしたらいいの?」
「この布に浸して、熱戦が発射された後の隙を狙ってお前が射貫け。後はアイツらに任せる」
Nightはキーボードを叩き、アキラたちに指示を出す。
すると、アキラたちサイドも絶句してしまった。
「えーっと、これはどういうこと?」
「何があったの?」
「それがね、こんなメッセージが届いたんだけど……無茶ぶりがね」
『こっちで熱線はどうにかする。お前たちでバラせ』
「だってさ」
「無茶ぶりだね。でも熱線さえなくなれば余裕でしょー」
「それが難しんだよ。一体どうするつもりなんだろ」
アキラは不安で仕方ない。けれど今は分断されているので心配している時間の方がもったいなかった。
とにかく3人に託すことにして、アキラたちはいつでも出られるようにしていた。
アキラは【ユニゾンハート】を使う気満々だからだ。
「これで向こうに言いたいことは通じたはずだ」
「そんなので通じるのね。簡単なものよ」
「アイツらの理解力が早いだけだ。とにかく雷斬は胸の装甲にヒビを大きく入れて来い。私はサポートをする」
「わかりました。危険なことですが、私にしかできませんね」
「そうだ。そしてベルはとにかく射貫け。それだけだ」
「それだけって簡単に言ってくれるけどね」
「できないのか?」
「できるに決まっているでしょ? 風さえあれば余裕よ」
「そうか。よし、さっさと潰しに行くぞ」
Nightの指示を受けて、雷斬はスキルを使った。
【雷鳴】を纏うと、青白い光を全身に覆う。
するとバチバチの火花の散る音を立てながら、雷斬は迷うことなく走り出した。
「行きますね。付いて来てください」
「それは無理だが、何とかする」
「それでは……行きましょうか」
雷斬の姿が一瞬で消えた。
瞬く間に火花を散らしてその場からいなくなると、雷斬は黒鉄の巨人が胸部から発射した熱線をギリギリのところで回避した。
「私は雷ですよ。そのようなことで負けるはずがありませんよ」
雷斬は堂々と宣言する。
熱線をかわすと刀を抜刀して、黒鉄の巨人に襲い掛かった。
動かない膝の部分を利用して高く飛び上がると、刀の刃を胸に叩きつける。
熱線が急に軌道を変えて天井を貫いた。
ガタガタガタガタ——
「マズいな。先にセットしておいてよかった」
こうなることを予測していたNightはサポートと称して、天井部分に大量の網を張っていた。
そのおかげで落石などを回避すると、熱戦が無くなったタイミングで、ベルが弓矢を構える。微かな風が吹きながら、ベルは目を凝らして集中する。
「これでいいのよね。Night」
「ああ、十分だ」
天井が空いたことで古代遺跡を貫通した。
風が天井から空洞内に入って来ると、スキルを使わなくても《シルフィード》のベルには十分だった。
「射抜け、心の矢」
決めゼリフと共に弓から解き放たれた矢は黒鉄の巨人の胸の隙間にしっかりと食い込まれた。
すると黒鉄の巨人は一瞬にして挙動がおかしくなる。
全身の赤い線はたちまち点滅して電池切れの電球みたいになっている。
誰が見てもわかるだろう。敵のエネルギー供給機関を破壊した証だ。
しかしベルは首を傾げる。
「これは……何が起こったの?」
「簡単な話だ。あの液体は熱エネルギーを奪う。ものを動かすには熱が必要だ。ならばその液体で熱を失わせればいいだけの話だ」
「えっと、それって普通の話じゃないよね?」
「そうだな。だがこれでいい。後はアイツらの出番だな」
アキラたちに後は任せて警戒しているNightだった。
そのタイミングしかチャンスがない。
熱線が放たれた瞬間しか、胸板の部分が剥き出しにならず攻撃が通らないからだ。
結局この黒鉄の巨人は、核融合炉をモチーフにしたエネルギー機関を機能停止に追い込まなければ倒すことはできなかった。
「よし、作戦はシンプルに行くぞ」
「その方がわかりやすいから助かるわ」
「それで作戦と言うのはどのようなものでしょうか?」
大真面目に雷斬は尋ねた。
ベルは「おいおい」と訝しい表情になって眉根を寄せる。
どうやらNightのことがだんだんわかってきたらしい。
アキラはいつもこんな気持ちだったのかと、溜息が込み上げてきた。
「あんまり厳しいのは無しね」
「わかっている。アキラやフェルノじゃないんだ」
「なっ!? それって私たちを舐めてるの?」
「それは心外ですね。私たちの技術はお2人の感覚的なものとは違うかもしれませんが、私たちには洗練された武器があります」
「だろうな」
「「だろうな?」」
Night真顔だった。雷斬とベルは首を傾げる。
思ってもみなかった会話に一瞬戸惑ってしまったが、それはアキラのような反射的な切り返しがないことを表していた。
「とりあえずシンプルなことは嫌いじゃないだろ。私がこれをお前に貸す」
「私なの!」
「アキラみたいな盛大なツッコミは要らない」
「そう? じゃあこの液体をどうしたらいいの?」
「この布に浸して、熱戦が発射された後の隙を狙ってお前が射貫け。後はアイツらに任せる」
Nightはキーボードを叩き、アキラたちに指示を出す。
すると、アキラたちサイドも絶句してしまった。
「えーっと、これはどういうこと?」
「何があったの?」
「それがね、こんなメッセージが届いたんだけど……無茶ぶりがね」
『こっちで熱線はどうにかする。お前たちでバラせ』
「だってさ」
「無茶ぶりだね。でも熱線さえなくなれば余裕でしょー」
「それが難しんだよ。一体どうするつもりなんだろ」
アキラは不安で仕方ない。けれど今は分断されているので心配している時間の方がもったいなかった。
とにかく3人に託すことにして、アキラたちはいつでも出られるようにしていた。
アキラは【ユニゾンハート】を使う気満々だからだ。
「これで向こうに言いたいことは通じたはずだ」
「そんなので通じるのね。簡単なものよ」
「アイツらの理解力が早いだけだ。とにかく雷斬は胸の装甲にヒビを大きく入れて来い。私はサポートをする」
「わかりました。危険なことですが、私にしかできませんね」
「そうだ。そしてベルはとにかく射貫け。それだけだ」
「それだけって簡単に言ってくれるけどね」
「できないのか?」
「できるに決まっているでしょ? 風さえあれば余裕よ」
「そうか。よし、さっさと潰しに行くぞ」
Nightの指示を受けて、雷斬はスキルを使った。
【雷鳴】を纏うと、青白い光を全身に覆う。
するとバチバチの火花の散る音を立てながら、雷斬は迷うことなく走り出した。
「行きますね。付いて来てください」
「それは無理だが、何とかする」
「それでは……行きましょうか」
雷斬の姿が一瞬で消えた。
瞬く間に火花を散らしてその場からいなくなると、雷斬は黒鉄の巨人が胸部から発射した熱線をギリギリのところで回避した。
「私は雷ですよ。そのようなことで負けるはずがありませんよ」
雷斬は堂々と宣言する。
熱線をかわすと刀を抜刀して、黒鉄の巨人に襲い掛かった。
動かない膝の部分を利用して高く飛び上がると、刀の刃を胸に叩きつける。
熱線が急に軌道を変えて天井を貫いた。
ガタガタガタガタ——
「マズいな。先にセットしておいてよかった」
こうなることを予測していたNightはサポートと称して、天井部分に大量の網を張っていた。
そのおかげで落石などを回避すると、熱戦が無くなったタイミングで、ベルが弓矢を構える。微かな風が吹きながら、ベルは目を凝らして集中する。
「これでいいのよね。Night」
「ああ、十分だ」
天井が空いたことで古代遺跡を貫通した。
風が天井から空洞内に入って来ると、スキルを使わなくても《シルフィード》のベルには十分だった。
「射抜け、心の矢」
決めゼリフと共に弓から解き放たれた矢は黒鉄の巨人の胸の隙間にしっかりと食い込まれた。
すると黒鉄の巨人は一瞬にして挙動がおかしくなる。
全身の赤い線はたちまち点滅して電池切れの電球みたいになっている。
誰が見てもわかるだろう。敵のエネルギー供給機関を破壊した証だ。
しかしベルは首を傾げる。
「これは……何が起こったの?」
「簡単な話だ。あの液体は熱エネルギーを奪う。ものを動かすには熱が必要だ。ならばその液体で熱を失わせればいいだけの話だ」
「えっと、それって普通の話じゃないよね?」
「そうだな。だがこれでいい。後はアイツらの出番だな」
アキラたちに後は任せて警戒しているNightだった。
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