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◇184 ファンタジーとSFと現実の狭間で
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赤い熱線が黒鉄の巨人の胸部から発射された。
高温で出された熱線を直撃する前に、アキラとフェルノは何とか逃げだした。
「ほら、だから嫌な予感がしたんだよ!」
「いやいや、でも逃げ切れたでしょ?」
「良くないでしょ。って、どうしよう。みんなと分断されちゃったよ」
「うーん。でも、ここからなら後ろに回り込めるんじゃないかなー?」
「それもいいけど。みんなは大丈夫かな?」
アキラはとても心配していた。
不安そうな表情を見ていたフェルノはアキラの頬に人差し指を押し当てた。
ムグッ!
アキラは突然のことに驚いて、フェルノの顔を見る。
すると何故か笑みを浮かべていた。きっとこの最悪な状況を少しでも和ませようとしてくれているに違いない。
私はフェルノの気遣いを汲み取ると、緩く微笑んでみせる。
「そうだね。Night達がこんなことでやられるわけないよね」
「そうだよ。だから私たちは私たちができることをしよう」
「ってことはまずこの熱線の秘密を探らないと」
アキラはあまりの熱量を持った熱線を直視することができなかった。
そこで黒鉄の巨人の背後に回るよう、フェルノに伝えると、急にメッセージが届いた。
誰からと思い、表示してみると、どうやらNightは無事だったみたいだ。
『そっちは無事か。何があった?』
何があったって、熱線を吐かれたんだ。
アキラはフェルトともに背後に回り込みながらキーボードを打つ。
すると、すぐに変身が返ってきた。
『いいか、無意味に走り回るな。この熱線は危険だ』
『そんなのわかってるよ!』
『隙をみて背後に回るのも控えろ。この熱線はただの熱光線じゃない。おそらく核融合炉を基にしたエネルギー機関だ』
『核融合炉?』
私はふと足を止めてしまった。
それからNightは淡々とメッセージを送り続けるのだった。
Nightは隠れながらひたすらキーボードを叩いていた。
その姿を前にした雷斬とベルはNightにあの熱線について尋ねる。
「Nightさん、アキラさんたちは無事だったんですよね?」
「ああ。アイツら勝手に背後に回ろうとしていたらしい」
「どうしてダメなのよ? あの熱線以外に攻撃手段もないみたいよ」
「それはそうだな。これ以上はないだろう。おそらく、この熱線は最後の手段。そしてこれがこの古代遺跡の真のお宝だ」
「「真のお宝?」」
Nightの言葉に釣られて、雷斬とベルは首を捻る。
古代遺跡は昔のNPCの人達が自分たちの信仰する神様を模したものだと勝手に仮定していた。しかし公式は一応報酬を用意してくれていたらしい。
だが一体何の意味があるのだろうか? ただ熱いだけの熱エネルギーをお宝と勘違いしているのではないかと不安になる。
「Nightさん、本当にこの熱エネルギーがお宝なんですか?」
「正直ファンタジーではないな。どちらかと言うと、単なるSF。もしくは今の現代だ」
「今の現代ってどういうことよ?」
Nightは2人にはなかなか理解しにくいことを口にした。
しかしNightには既に答えが出ている。これ以上がないからだ。
「アレは核融合炉をモチーフにしている。おそらく放出しているのは分解に欠かせない熱エネルギーで、それを吐き出してるみたいだな」
「「融合炉?」」
急になにを言い出すのかと思えば、随分と抵触しそうな物騒な内容だった。
けれどNight曰く、今の時代比較的安全にエネルギーを得る手段として融合路は用いられているらしい。
もちろんこの数年で日本が豊かになったのは、地下深くに融合路を保有しエネルギー資源を得ているかららしく、衛星には年中太陽光を収拾しエネルギーを確保できるように改良を加えているみたいだ。
「つまり、アレはエネルギー保有機関であると言いたいんですか?」
「もちろんだ。もう少し深掘るならば、あの黒鉄の巨人の内部には相当なエネルギーを生み出し、そして熱分解で物質を加工できるものが収められているはずだ。とは言え、胸部を破壊して無理やり露出させるとは思わなかったがな」
「それはそうですね」
雷斬も納得したらしい。
しかしそれでは近づくことすら困難だ。この熱線を避けながらの移動なんて、まず不可能と言ってもいい。それにいざ倒すにしても、核となっているエネルギー機関を破壊するとなると色々な面で被害が出る。
ログインしているアキラたちにも負荷がかかるだろう。
Nightはその辺りを危惧して、アキラたちを止めたに過ぎない。だから勝ち筋を見出すために、既にスキルを行使して奥の手を用意した。
「Nightさん、そちらは?」
「これが今回の奥の手だ。コイツを使って、この熱線を消す」
「「熱線を消す?」」
雷斬とベルは首を捻った。
Nightの手の中には透明な液体の入った瓶を持っていた。
そんなものを何に使うのか。2人は少し心配だったが、Nightはキーボードを叩いた。
『アキラ、フェルノ。準備ができた。後はこっちに任せておけ』
メッセージを送ると、ベルNightに怒鳴りつけた。
「ちょっとNight! 今何って」
「後は私たちがやるぞ。心配ない。私の作ったアイテムは完璧だ」
全然信用ならないので、ベルは不安で仕方なかった。
高温で出された熱線を直撃する前に、アキラとフェルノは何とか逃げだした。
「ほら、だから嫌な予感がしたんだよ!」
「いやいや、でも逃げ切れたでしょ?」
「良くないでしょ。って、どうしよう。みんなと分断されちゃったよ」
「うーん。でも、ここからなら後ろに回り込めるんじゃないかなー?」
「それもいいけど。みんなは大丈夫かな?」
アキラはとても心配していた。
不安そうな表情を見ていたフェルノはアキラの頬に人差し指を押し当てた。
ムグッ!
アキラは突然のことに驚いて、フェルノの顔を見る。
すると何故か笑みを浮かべていた。きっとこの最悪な状況を少しでも和ませようとしてくれているに違いない。
私はフェルノの気遣いを汲み取ると、緩く微笑んでみせる。
「そうだね。Night達がこんなことでやられるわけないよね」
「そうだよ。だから私たちは私たちができることをしよう」
「ってことはまずこの熱線の秘密を探らないと」
アキラはあまりの熱量を持った熱線を直視することができなかった。
そこで黒鉄の巨人の背後に回るよう、フェルノに伝えると、急にメッセージが届いた。
誰からと思い、表示してみると、どうやらNightは無事だったみたいだ。
『そっちは無事か。何があった?』
何があったって、熱線を吐かれたんだ。
アキラはフェルトともに背後に回り込みながらキーボードを打つ。
すると、すぐに変身が返ってきた。
『いいか、無意味に走り回るな。この熱線は危険だ』
『そんなのわかってるよ!』
『隙をみて背後に回るのも控えろ。この熱線はただの熱光線じゃない。おそらく核融合炉を基にしたエネルギー機関だ』
『核融合炉?』
私はふと足を止めてしまった。
それからNightは淡々とメッセージを送り続けるのだった。
Nightは隠れながらひたすらキーボードを叩いていた。
その姿を前にした雷斬とベルはNightにあの熱線について尋ねる。
「Nightさん、アキラさんたちは無事だったんですよね?」
「ああ。アイツら勝手に背後に回ろうとしていたらしい」
「どうしてダメなのよ? あの熱線以外に攻撃手段もないみたいよ」
「それはそうだな。これ以上はないだろう。おそらく、この熱線は最後の手段。そしてこれがこの古代遺跡の真のお宝だ」
「「真のお宝?」」
Nightの言葉に釣られて、雷斬とベルは首を捻る。
古代遺跡は昔のNPCの人達が自分たちの信仰する神様を模したものだと勝手に仮定していた。しかし公式は一応報酬を用意してくれていたらしい。
だが一体何の意味があるのだろうか? ただ熱いだけの熱エネルギーをお宝と勘違いしているのではないかと不安になる。
「Nightさん、本当にこの熱エネルギーがお宝なんですか?」
「正直ファンタジーではないな。どちらかと言うと、単なるSF。もしくは今の現代だ」
「今の現代ってどういうことよ?」
Nightは2人にはなかなか理解しにくいことを口にした。
しかしNightには既に答えが出ている。これ以上がないからだ。
「アレは核融合炉をモチーフにしている。おそらく放出しているのは分解に欠かせない熱エネルギーで、それを吐き出してるみたいだな」
「「融合炉?」」
急になにを言い出すのかと思えば、随分と抵触しそうな物騒な内容だった。
けれどNight曰く、今の時代比較的安全にエネルギーを得る手段として融合路は用いられているらしい。
もちろんこの数年で日本が豊かになったのは、地下深くに融合路を保有しエネルギー資源を得ているかららしく、衛星には年中太陽光を収拾しエネルギーを確保できるように改良を加えているみたいだ。
「つまり、アレはエネルギー保有機関であると言いたいんですか?」
「もちろんだ。もう少し深掘るならば、あの黒鉄の巨人の内部には相当なエネルギーを生み出し、そして熱分解で物質を加工できるものが収められているはずだ。とは言え、胸部を破壊して無理やり露出させるとは思わなかったがな」
「それはそうですね」
雷斬も納得したらしい。
しかしそれでは近づくことすら困難だ。この熱線を避けながらの移動なんて、まず不可能と言ってもいい。それにいざ倒すにしても、核となっているエネルギー機関を破壊するとなると色々な面で被害が出る。
ログインしているアキラたちにも負荷がかかるだろう。
Nightはその辺りを危惧して、アキラたちを止めたに過ぎない。だから勝ち筋を見出すために、既にスキルを行使して奥の手を用意した。
「Nightさん、そちらは?」
「これが今回の奥の手だ。コイツを使って、この熱線を消す」
「「熱線を消す?」」
雷斬とベルは首を捻った。
Nightの手の中には透明な液体の入った瓶を持っていた。
そんなものを何に使うのか。2人は少し心配だったが、Nightはキーボードを叩いた。
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