184 / 555
◇183 赤い光が迸る
しおりを挟む
アキラたちが拳を飛ばさないように封じた手段は、実に簡単なものだった。
“鎖を使って鎖を使えなくする”
言ってしまえば、この一言に尽きる。
しかしそれに至るまでの布石は着実に踏んでいて、最後にNightの考えがまとまった末に生まれたものだった。
「あの強烈な拳を封じるなら、そもそも拳を使わせなければいい。拳を破壊するにはあの鎖は邪魔だ。壊すことは非常に困難になる」
「それじゃあどうするの?」
「簡単だ。拳と腕とを連結している内部の鎖を使えなくすればいい。それが一番手っ取り早い」
Nightの言い分はもっともだった。
しかしそれをやった身になって欲しいと、アキラはしみじみ思う。
雷斬が鎖に傷をつけ、雷の燃焼作用で細い糸口ができたに過ぎない。
Nightだってそのことは理解しているのか、あまり芳しくない結果になったことを見て正直に悔しい想いをしていた。
「でも、これで攻撃手段は全部奪ったね」
「ああ。ここからは決めに行くぞ」
Nightの掛け声で全員スキルを再使用する。
ここから攻撃の手段を失った黒鉄の巨人を叩きに行くのだ。
けれどアキラだけは何故か意識の中で、“危険”の文字が絶えず表れていた。
この感覚は何なのか。本当に突撃しても良いのか。真偽が試される。
「みんなちょっと待って!」
「ごめんアキラ。今しかないっぽいよ」
「今しかない?」
「うん。何か嫌な音しない?」
フェルノが不穏なことを言い始めた。
しかし雷斬もベルも、ましてやNightでさえ今のところ異変を察知していない。
Nightに関しては考えているのだろうが、アキラにはこの余裕が凄く歪でチクチクと突き刺さるみたいに感じた。
「今このタイミングを逃したら、多分勝ち目がなくなると思うんだ。だから一撃だけひびを入れて来るね」
「ちょっと待ってよフェルノ。もう、【灰爪】!」
アキラは先になって飛び出したフェルノを追って飛び出す。
その姿に雷斬たちは驚いていた。
「フェルノさん、アキラさん!」
「ちょっと、どうしてあの2人が飛び出すのよ」
「私たちも行きましょう。きっと何かお考えがあるんです」
「そうね。その可能性は高いと思うわ」
雷斬りとベルも飛び出そうとする。
しかしそれを止めたのはNightだった。
何か嫌な予感がする。アキラのらしくない突発的な衝動にNightも伝染していた。
「待て、アキラのあの動き。一撃離脱の構えだ」
「一撃離脱?」
「フェルノの性格でそれはないんじゃないのかな?」
「弓術フォームになって考えてみろ。もう少し視野を広げてみるんだ」
ベルはNightに煽られる。
少しムカッとしたがい、言われた通り冷静になって見てみると、確かに2人の足運びがいつもに比べてぎこちない。
まるで最初から逃げることを前提にしているようだった。
「本当だ。アキラとフェルノから全力で逃げるぞって意思が背中越しから伝わってくる」
「そうだろ。だからきっと大丈夫だ」
口ではそう言うが、Nightはこの状況を改めて理解する。
目で見るだけでも頭の中で考えるだけでもない。
何か腑に落ちない気がしてならない。そうだ。どうしてこの巨人は下半身がピクリとも動かないのか。
上半身が重いのだとすれば下半身が動かない理由にも繋がるが、下半身が潰れているわけでもない。
だとすれば何かある。思考回路が意識を巡らせる。
その間も、アキラたちは戦っていた。
「フェルノ、一撃離脱だよ」
「もちろんわかっているよ!」
アキラとフェルノはタイミングを計ると、動かない脚を利用してジャンプ台に使う。
膝の部分を使ってGAMEならではの脚力を活かして高く跳んだ。
すると、アキラの【灰爪】と竜化したフェルノの拳が黒鉄の巨人の胸部分を強く叩いた。
「そりゃぁ!」
「せーのっ」
お互の拳が黒鉄の巨人の胸板を貫く。
薄っすらとだがひびが入り、どうやらダメージはあったのだろう。
しかし最初からHPバーが表示されていないことに今更だが気が付き、これでもダメなのではと唇を噛み締める。
「はぁはぁ……ははは。これでもダメなんだ」
「フェルノ離脱するよ」
アキラとフェルノは急いでその場から離れることにした。
黒鉄の巨人の日々の入った胸板が赤く発光している
白い湯気のようなものを噴き出しながら、徐々に装甲が高温になっていた。
「熱い。これって、ヤバいよね!」
「だから早く逃げるよ。なんだか危惧していたことが起こっている気がする……」
アキラはフェルノの服の襟を掴んだ。
そのまま【月跳】を使って飛び出そうとしたが、黒鉄の巨人が高温のため足を付けることができない。
そこで毒ナマズから手に入れた【泥腕】で無理やり足場を作ると、【月跳】で一気に逃げ去る。
キュィィィィィィィィィィィィィィィン!
すると突然黒鉄の巨人が金切り音と熱を発し始めた。
目の部分や腕周りの線が急に赤く発光する。
明らかに危険だ。アキラとフェルノは全身を悪寒が駆け抜ける。
このままじゃマズい。そう思った時、急に黒鉄の巨人の胸部部から赤い熱線が放たれた。
“鎖を使って鎖を使えなくする”
言ってしまえば、この一言に尽きる。
しかしそれに至るまでの布石は着実に踏んでいて、最後にNightの考えがまとまった末に生まれたものだった。
「あの強烈な拳を封じるなら、そもそも拳を使わせなければいい。拳を破壊するにはあの鎖は邪魔だ。壊すことは非常に困難になる」
「それじゃあどうするの?」
「簡単だ。拳と腕とを連結している内部の鎖を使えなくすればいい。それが一番手っ取り早い」
Nightの言い分はもっともだった。
しかしそれをやった身になって欲しいと、アキラはしみじみ思う。
雷斬が鎖に傷をつけ、雷の燃焼作用で細い糸口ができたに過ぎない。
Nightだってそのことは理解しているのか、あまり芳しくない結果になったことを見て正直に悔しい想いをしていた。
「でも、これで攻撃手段は全部奪ったね」
「ああ。ここからは決めに行くぞ」
Nightの掛け声で全員スキルを再使用する。
ここから攻撃の手段を失った黒鉄の巨人を叩きに行くのだ。
けれどアキラだけは何故か意識の中で、“危険”の文字が絶えず表れていた。
この感覚は何なのか。本当に突撃しても良いのか。真偽が試される。
「みんなちょっと待って!」
「ごめんアキラ。今しかないっぽいよ」
「今しかない?」
「うん。何か嫌な音しない?」
フェルノが不穏なことを言い始めた。
しかし雷斬もベルも、ましてやNightでさえ今のところ異変を察知していない。
Nightに関しては考えているのだろうが、アキラにはこの余裕が凄く歪でチクチクと突き刺さるみたいに感じた。
「今このタイミングを逃したら、多分勝ち目がなくなると思うんだ。だから一撃だけひびを入れて来るね」
「ちょっと待ってよフェルノ。もう、【灰爪】!」
アキラは先になって飛び出したフェルノを追って飛び出す。
その姿に雷斬たちは驚いていた。
「フェルノさん、アキラさん!」
「ちょっと、どうしてあの2人が飛び出すのよ」
「私たちも行きましょう。きっと何かお考えがあるんです」
「そうね。その可能性は高いと思うわ」
雷斬りとベルも飛び出そうとする。
しかしそれを止めたのはNightだった。
何か嫌な予感がする。アキラのらしくない突発的な衝動にNightも伝染していた。
「待て、アキラのあの動き。一撃離脱の構えだ」
「一撃離脱?」
「フェルノの性格でそれはないんじゃないのかな?」
「弓術フォームになって考えてみろ。もう少し視野を広げてみるんだ」
ベルはNightに煽られる。
少しムカッとしたがい、言われた通り冷静になって見てみると、確かに2人の足運びがいつもに比べてぎこちない。
まるで最初から逃げることを前提にしているようだった。
「本当だ。アキラとフェルノから全力で逃げるぞって意思が背中越しから伝わってくる」
「そうだろ。だからきっと大丈夫だ」
口ではそう言うが、Nightはこの状況を改めて理解する。
目で見るだけでも頭の中で考えるだけでもない。
何か腑に落ちない気がしてならない。そうだ。どうしてこの巨人は下半身がピクリとも動かないのか。
上半身が重いのだとすれば下半身が動かない理由にも繋がるが、下半身が潰れているわけでもない。
だとすれば何かある。思考回路が意識を巡らせる。
その間も、アキラたちは戦っていた。
「フェルノ、一撃離脱だよ」
「もちろんわかっているよ!」
アキラとフェルノはタイミングを計ると、動かない脚を利用してジャンプ台に使う。
膝の部分を使ってGAMEならではの脚力を活かして高く跳んだ。
すると、アキラの【灰爪】と竜化したフェルノの拳が黒鉄の巨人の胸部分を強く叩いた。
「そりゃぁ!」
「せーのっ」
お互の拳が黒鉄の巨人の胸板を貫く。
薄っすらとだがひびが入り、どうやらダメージはあったのだろう。
しかし最初からHPバーが表示されていないことに今更だが気が付き、これでもダメなのではと唇を噛み締める。
「はぁはぁ……ははは。これでもダメなんだ」
「フェルノ離脱するよ」
アキラとフェルノは急いでその場から離れることにした。
黒鉄の巨人の日々の入った胸板が赤く発光している
白い湯気のようなものを噴き出しながら、徐々に装甲が高温になっていた。
「熱い。これって、ヤバいよね!」
「だから早く逃げるよ。なんだか危惧していたことが起こっている気がする……」
アキラはフェルノの服の襟を掴んだ。
そのまま【月跳】を使って飛び出そうとしたが、黒鉄の巨人が高温のため足を付けることができない。
そこで毒ナマズから手に入れた【泥腕】で無理やり足場を作ると、【月跳】で一気に逃げ去る。
キュィィィィィィィィィィィィィィィン!
すると突然黒鉄の巨人が金切り音と熱を発し始めた。
目の部分や腕周りの線が急に赤く発光する。
明らかに危険だ。アキラとフェルノは全身を悪寒が駆け抜ける。
このままじゃマズい。そう思った時、急に黒鉄の巨人の胸部部から赤い熱線が放たれた。
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
Beyond the soul 最強に挑む者たち
Keitetsu003
SF
西暦2016年。
アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。
ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。
アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。
『アルカナ・ボンヤード』。
ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。
アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。
しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。
アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。
その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。
ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。
各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。
『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』
あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。
*お話の都合上、会話が長文になることがあります。
その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。
投稿日は不定期です
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ
の内容を一部変更し修正加筆したものになります。
宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。
そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。
※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※
※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。
※男主人公バージョンはカクヨムにあります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる