182 / 582
◇182 鎖には鎖を使え!
しおりを挟む
Nightがスキル【ライフ・オブ・メイク】で無理やり掘った穴の中に落ちたアキラとNightは、クッションに助けられ事なきを得ていた。
フェルノたちは持ち前の運動神経を活かして、何とか飛んできた拳の軌道から避けると、すぐさまアキラとNightの救助に向かった。
しかし黒鉄の巨人はモーニングスターのように右拳を振り回し、空洞内に叩きつける。
ドカッ! ズカカァーン!
たくさんの石の欠片が宙を舞う。
フェルノたちは自分を守ることに必死で、アキラたちを休場することができなかった。
「もう、この拳厄介だね!」
「拳と言うよりかは鎖の方が厄介よね」
「そうですね。まずはあの鎖を引き千切りましょうか!」
雷斬は防御を捨てて接近戦に出た。
【雷鳴】を呼び寄せると全身に纏い、圧倒的なスピードを活かして一気に攻めに転じる。
「あの鎖を引き千切れば攻撃の手段はもう残されていませんよね」
雷斬はフラグを立てながらも必死に身を削っていた。
本来連続発動は危険な《雷獣》の固有スキルだが、雷斬の期待上げた肉体と精神を持ってようやく真価を発揮している。
何よりも肺に負荷がかかっているはずだが、そんなものものともしない軽快な動きで石の欠片も破片も次々に最小の動きだけでかわしていた。
それから鎖に近づくと、刀を振り下ろして鎖を引き千切ろうとする。
けれど甲高い音を立てるだけで、鎖は引き千切れない。
思った以上に強度に雷斬は唇を噛んだ。
「なかなか断ち切れませんか。これは弱りましたね」
雷斬は苦汁を舐めると同時に【雷鳴】が解けてしまった。
無理やり接近戦に持ち込んだことで攻撃の範囲には入っていないが、それでも雷斬には圧倒的に不利だった。
インにいる状態だと、仲間の援護ができないからだ。
「皆さん、すみませんが少しだけそちらには行けません」
雷斬は非常に申し訳なさそうにしていた。
しかしフェルノはいつものあどけなさで雷斬の負担を減らすと、アキラはホッと胸を撫で下ろした。
今は一応攻撃の手がこちらには向いていない。今ならじっくり考えられる。まずはあの鎖をどうにかして止めないと、永遠にロケットパンチが飛んでくる。後ろに控えるNightに考えがまとまったのか、聞いてみることにした。
「それでNightはどんな感じ?」
「作戦についてか? 1つ考えはあるぞ」
「この状況でもあるんだ。それってどんな方法?」
「可能性は低い。が、上手く行けばあの右腕は封じることができる。もしくはなにも変わらずジ・エンドの道か。どっちがいい?」
「そんな2通りしかないんだ。じゃあやってみようよ。失敗したらそこから考えればいいんだから」
「お前は相変わらずだな。だが迷いがないのは良いことだ」
「もう決めていたんでしょ? Nightだってその手に持っているもの」
アキラはNightが握り込んでいる太くて黒い鎖が気になっていた。
先には楔が打ち込まれている。
どうやらこの鎖を使うみたいだが、長さが絶妙に短い。どう使うのか、正直わからなかった。
「それでNight、具体的にはこれをどうするの」
「決まっているだろ。お前がGOだ!」
「ん? 私がってどういうこと。よく聞き取れなかったんだけど……」
Nightの言葉をスルーしたかった。
しかしもう一度同じことを言われてしまったので、アキラは絶句しつつ飛び出させられた。
「もう、酷いこと言うよね。でもやるしかないんだったら、やろう。【月跳】」
アキラは【月跳】を使い脚力を強化した。
これでジャンプ力が高まる。その足で、フェルノたちに夢中になっている黒鉄の巨人に飛び込んだ。もちろん奇襲だ。
「せーのっ!」
勢いよく飛びかかると、アキラは黒鉄の巨人目掛けて一直線だった。
“高く跳べる”だけの【月跳】を移動手段に使ったのは、アキラなりの戦法だったが、黒鉄の巨人はその姿を一瞬捉えると、自分に近づこうとする邪魔者を排除しようと襲い掛かる。
「アキラ!」
「【半液状化】!」
咄嗟にフェルノが叫んだ。
しかしアキラは止まることなく、次のスキルを使う。【半液状化】によって体がスライム質になった。プルンプルンの弾む体は攻撃を一切通すことなく、つるんと腕に飛びつくと持っていた鎖を鎖に巻き付けた。ご丁寧に、雷斬が残してくれた切れ目に嚙合わせる。
「これでいいよね、Night!」
「上出来た。だがそこからが気を付けるポイントだぞ」
次にアキラはNightから託された鏃を鎖に叩きつける。
すると結合部が一瞬脆くなり、腕が引き戻された。
これはあくまでも誘導だ。
「よし、もういいぞ」
「って遅いよ。【幽体化】!」
今度は幽霊になることで肉体を失う。
短時間でしか使用できないが、ふわりと幽霊になって宙を舞うと引き戻された拳と鎖の狭間から抜け出した。危くスクラップになるところだったとひやひやした。
しかし最初からその心配はいらなかったらしい。
「あれ? 拳が戻らない」
「見てください。アキラさんが掛けた鎖が邪魔をして腕を戻せなくなっていますよ」
鎖が邪魔をして鎖を引き戻せなくなる。
これがNightの抱いた作戦。単純に鎖を封じたんだ。
フェルノたちは持ち前の運動神経を活かして、何とか飛んできた拳の軌道から避けると、すぐさまアキラとNightの救助に向かった。
しかし黒鉄の巨人はモーニングスターのように右拳を振り回し、空洞内に叩きつける。
ドカッ! ズカカァーン!
たくさんの石の欠片が宙を舞う。
フェルノたちは自分を守ることに必死で、アキラたちを休場することができなかった。
「もう、この拳厄介だね!」
「拳と言うよりかは鎖の方が厄介よね」
「そうですね。まずはあの鎖を引き千切りましょうか!」
雷斬は防御を捨てて接近戦に出た。
【雷鳴】を呼び寄せると全身に纏い、圧倒的なスピードを活かして一気に攻めに転じる。
「あの鎖を引き千切れば攻撃の手段はもう残されていませんよね」
雷斬はフラグを立てながらも必死に身を削っていた。
本来連続発動は危険な《雷獣》の固有スキルだが、雷斬の期待上げた肉体と精神を持ってようやく真価を発揮している。
何よりも肺に負荷がかかっているはずだが、そんなものものともしない軽快な動きで石の欠片も破片も次々に最小の動きだけでかわしていた。
それから鎖に近づくと、刀を振り下ろして鎖を引き千切ろうとする。
けれど甲高い音を立てるだけで、鎖は引き千切れない。
思った以上に強度に雷斬は唇を噛んだ。
「なかなか断ち切れませんか。これは弱りましたね」
雷斬は苦汁を舐めると同時に【雷鳴】が解けてしまった。
無理やり接近戦に持ち込んだことで攻撃の範囲には入っていないが、それでも雷斬には圧倒的に不利だった。
インにいる状態だと、仲間の援護ができないからだ。
「皆さん、すみませんが少しだけそちらには行けません」
雷斬は非常に申し訳なさそうにしていた。
しかしフェルノはいつものあどけなさで雷斬の負担を減らすと、アキラはホッと胸を撫で下ろした。
今は一応攻撃の手がこちらには向いていない。今ならじっくり考えられる。まずはあの鎖をどうにかして止めないと、永遠にロケットパンチが飛んでくる。後ろに控えるNightに考えがまとまったのか、聞いてみることにした。
「それでNightはどんな感じ?」
「作戦についてか? 1つ考えはあるぞ」
「この状況でもあるんだ。それってどんな方法?」
「可能性は低い。が、上手く行けばあの右腕は封じることができる。もしくはなにも変わらずジ・エンドの道か。どっちがいい?」
「そんな2通りしかないんだ。じゃあやってみようよ。失敗したらそこから考えればいいんだから」
「お前は相変わらずだな。だが迷いがないのは良いことだ」
「もう決めていたんでしょ? Nightだってその手に持っているもの」
アキラはNightが握り込んでいる太くて黒い鎖が気になっていた。
先には楔が打ち込まれている。
どうやらこの鎖を使うみたいだが、長さが絶妙に短い。どう使うのか、正直わからなかった。
「それでNight、具体的にはこれをどうするの」
「決まっているだろ。お前がGOだ!」
「ん? 私がってどういうこと。よく聞き取れなかったんだけど……」
Nightの言葉をスルーしたかった。
しかしもう一度同じことを言われてしまったので、アキラは絶句しつつ飛び出させられた。
「もう、酷いこと言うよね。でもやるしかないんだったら、やろう。【月跳】」
アキラは【月跳】を使い脚力を強化した。
これでジャンプ力が高まる。その足で、フェルノたちに夢中になっている黒鉄の巨人に飛び込んだ。もちろん奇襲だ。
「せーのっ!」
勢いよく飛びかかると、アキラは黒鉄の巨人目掛けて一直線だった。
“高く跳べる”だけの【月跳】を移動手段に使ったのは、アキラなりの戦法だったが、黒鉄の巨人はその姿を一瞬捉えると、自分に近づこうとする邪魔者を排除しようと襲い掛かる。
「アキラ!」
「【半液状化】!」
咄嗟にフェルノが叫んだ。
しかしアキラは止まることなく、次のスキルを使う。【半液状化】によって体がスライム質になった。プルンプルンの弾む体は攻撃を一切通すことなく、つるんと腕に飛びつくと持っていた鎖を鎖に巻き付けた。ご丁寧に、雷斬が残してくれた切れ目に嚙合わせる。
「これでいいよね、Night!」
「上出来た。だがそこからが気を付けるポイントだぞ」
次にアキラはNightから託された鏃を鎖に叩きつける。
すると結合部が一瞬脆くなり、腕が引き戻された。
これはあくまでも誘導だ。
「よし、もういいぞ」
「って遅いよ。【幽体化】!」
今度は幽霊になることで肉体を失う。
短時間でしか使用できないが、ふわりと幽霊になって宙を舞うと引き戻された拳と鎖の狭間から抜け出した。危くスクラップになるところだったとひやひやした。
しかし最初からその心配はいらなかったらしい。
「あれ? 拳が戻らない」
「見てください。アキラさんが掛けた鎖が邪魔をして腕を戻せなくなっていますよ」
鎖が邪魔をして鎖を引き戻せなくなる。
これがNightの抱いた作戦。単純に鎖を封じたんだ。
1
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』
倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
春空VRオンライン ~島から出ない採取生産職ののんびり体験記~
滝川 海老郎
SF
新作のフルダイブVRMMOが発売になる。 最初の舞台は「チュートリ島」という小島で正式リリースまではこの島で過ごすことになっていた。
島で釣りをしたり、スライム狩りをしたり、探険したり、干物のアルバイトをしたり、宝探しトレジャーハントをしたり、のんびり、のほほんと、過ごしていく。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?
水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語
チートなガチャ運でVRMMO無双する!?~没入型MMO「ラスト・オンライン」
なかの
ファンタジー
「いきなり神の剣が出たんですけど」
僕はチートなガチャ運でVRMMO無双する!?
330万PV(web累計)突破!
超大手ゲームメーカーの超美麗グラフィックな大型RPGの最新作「ラスト・オンライン」
このゲームは、新技術を使った没入型MMO、いわゆるVRMMOだった。
僕は、バイト代をなんとか稼いで、ログインした先でチートのようなガチャ運で無双する!!
著/イラスト なかの
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる