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◇181 スキルの応酬
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アキラたちは作戦何て全て無視することにした。
今するべきこと。それはスキルを使ってこの状況を切り抜けることだけで十分だった。
「とりあえず、まずは私が先陣を切るよ」
「お願いできる、フェルノ?」
「任せといて。私なら絶対捕まらないから」
そう言うと、ファイアー・ドレイクのスキル【吸炎竜化】と固有スキル【熱量吸動】を使い、爆発的に炎を高ぶらせた。
全身を炎で包み込むと、暑さ寒さも全く関係ないのか、超高温の弾丸が黒鉄の巨人を貫きにかかる。
「せーのっ!」
フェルノの強烈なパンチが凹んでいた装甲にひびを入れた。
さらに続けざまに動かない足下を狙って蹴りを叩き込む。
地面が削れ、細かい小石の破片が黒鉄の巨人を襲った。
あまりに軽快かつ迫力のある動きにきっと見惚れてしまうだろうが、それもこれもフェルノ自身の肺の力強さと普段から運動をやっているたまものだった。
GAME内のデバフもものともせず、次々に畳みかける。
「それじゃあ私も行くね。【キメラハント】:【甲蟲】+【灰爪】+【月跳】!」
アキラはいつもの【キメラハント】重ね掛けを使い機敏かつトリッキーな動きで応戦する。
黒鉄の巨人は、フェルノだけでも厄介な所にさらに厄介な相手を巻き込むことになってしまった。
けれど正面から叩き込むフェルノと背後に回っての連続キックで黒鉄の巨人の動きを的確に封じている。完全に防戦一方になったところで、巨人は反撃とばかりに上半身を回転させた。
半回転したところでアキラとフェルノは一旦距離を取るも、そのタイミングで2人が攻撃に転じる。
「ベル行きますね」
「わかっているわ。私も薙刀で行っちゃうわね!」
雷斬とベルはお互いにスキルを掛け合わせていた。
【雷鳴】を発動して青白い雷を纏う雷斬は黒鉄の巨人の懐に飛び込み、刀で配線を切り先に行った。
しかし黒鉄の巨人は雷斬が近づくや否や、すぐさま腕を振り下ろした。
「私は囮ですけどね」
雷斬はすぐさま方向転換のために一度スキルを解くと、刀の刃を使って進路を変えた。
腕が振り下ろされた僅かな空間。
そこを隙と見たもう1人が飛び込む。
「斬撃の刃! 【心射必中】!」
【風読み】で加速を付けて飛び込んだベルが豪快に薙刀を振り回す。
弓と薙刀を両立した武器だからこそできる芸当に、アキラは離れた位置から目を丸くした。
しかしそれだけではまだ足りず、雷斬が背後から忍び寄る。
自分の固有スキルは使わずに、剣技だけで相手をする。
「来て、【雷鳴】!」
眩い閃光が迸った。
それと同時に雷斬の振り下ろした刀が黒鉄の巨人の動きを鈍らせる。
どうやら片腕を破壊したらしい。ここまでの見事な連携を全て囮にして放った死角からの一撃は、フェルノの溶かした装甲を簡単に貫いてしまった。
「今だよ、Night!」
「わかってる」
Nightは十字架状の剣を突き立てて、黒鉄の巨人に対抗する。
しかしこれだけではダメだ。
それを一番理解しているのはNight自身。
「【ライフ・オブ・メイク】。お前の半身の機能、貰うぞ」
そう告げると同時に、大量の楔が出現した。
その端には小さな筒が付いている。中には火薬が入っていて、雷斬がこじ開けた胴体の配線に向かって一斉に投げつけた。
「フェルノ、点火だ!」
「オッケー。それじゃあ一気に燃やしちゃえ!」
フェルノは炎を使って楔に付けられた筒を燃やした。
ドカドカドカドカカァーン!——
凄まじい閃光と爆裂音が響き渡った。
耳をつんざく強烈な破裂音に対して、いち早く耳栓を付けていたアキラたちだったが、やはり貫通して耳が痛い。
「くっ、流石に堪えるな」
「そんなこと言わないでよ。これもNightがよくやる手法でしょ?」
アキラはNightに何げなく呟いたのだが、それが気に入らないのか、脇腹をつねられた。
普通に痛くて、アキラはNightから距離を取る。
「どうして脇腹をつねるの?」
「余計なことを言うからだ。とにかくまだ終わりじゃない。一旦次の策だ」
アキラたちは少しだけ疲れていた。
スキルの連続発動にこの空間と黒鉄の巨人の特性も合わさってか、まともに負荷がかかっていた。
黒鉄の巨人は度重なる攻撃の嵐に苦しめられて、しばらく動けそうにない。
この隙に回復をしようとした。
その時だった。黒鉄の巨人の瞳が赤く光り出し、残っている右拳が飛んできた。
超高速で拳が放たれて、アキラたちは巻き込まれそうになった。
「ちょっとそれは待ってよ!」
「くっ、掴まれアキラ!」
Nightはアキラの体を引き寄せると、残ったHPにかけて【ライフ・オブ・メイク】を発動した。
「とりあえず何でもいいからクッションになるやつを作るか」
Nightは短い時間で作りたいものを思い浮かべると、拳が着弾する前に地面を削った。そこにクッション性の膜を張ると、アキラとNightは直撃をかわすことができた。
しかし形成は完全に向こうに転がっている。
飛んできた拳は巨人の腕に戻っていたので、結局苦汁を舐める結果は変わらない。
今するべきこと。それはスキルを使ってこの状況を切り抜けることだけで十分だった。
「とりあえず、まずは私が先陣を切るよ」
「お願いできる、フェルノ?」
「任せといて。私なら絶対捕まらないから」
そう言うと、ファイアー・ドレイクのスキル【吸炎竜化】と固有スキル【熱量吸動】を使い、爆発的に炎を高ぶらせた。
全身を炎で包み込むと、暑さ寒さも全く関係ないのか、超高温の弾丸が黒鉄の巨人を貫きにかかる。
「せーのっ!」
フェルノの強烈なパンチが凹んでいた装甲にひびを入れた。
さらに続けざまに動かない足下を狙って蹴りを叩き込む。
地面が削れ、細かい小石の破片が黒鉄の巨人を襲った。
あまりに軽快かつ迫力のある動きにきっと見惚れてしまうだろうが、それもこれもフェルノ自身の肺の力強さと普段から運動をやっているたまものだった。
GAME内のデバフもものともせず、次々に畳みかける。
「それじゃあ私も行くね。【キメラハント】:【甲蟲】+【灰爪】+【月跳】!」
アキラはいつもの【キメラハント】重ね掛けを使い機敏かつトリッキーな動きで応戦する。
黒鉄の巨人は、フェルノだけでも厄介な所にさらに厄介な相手を巻き込むことになってしまった。
けれど正面から叩き込むフェルノと背後に回っての連続キックで黒鉄の巨人の動きを的確に封じている。完全に防戦一方になったところで、巨人は反撃とばかりに上半身を回転させた。
半回転したところでアキラとフェルノは一旦距離を取るも、そのタイミングで2人が攻撃に転じる。
「ベル行きますね」
「わかっているわ。私も薙刀で行っちゃうわね!」
雷斬とベルはお互いにスキルを掛け合わせていた。
【雷鳴】を発動して青白い雷を纏う雷斬は黒鉄の巨人の懐に飛び込み、刀で配線を切り先に行った。
しかし黒鉄の巨人は雷斬が近づくや否や、すぐさま腕を振り下ろした。
「私は囮ですけどね」
雷斬はすぐさま方向転換のために一度スキルを解くと、刀の刃を使って進路を変えた。
腕が振り下ろされた僅かな空間。
そこを隙と見たもう1人が飛び込む。
「斬撃の刃! 【心射必中】!」
【風読み】で加速を付けて飛び込んだベルが豪快に薙刀を振り回す。
弓と薙刀を両立した武器だからこそできる芸当に、アキラは離れた位置から目を丸くした。
しかしそれだけではまだ足りず、雷斬が背後から忍び寄る。
自分の固有スキルは使わずに、剣技だけで相手をする。
「来て、【雷鳴】!」
眩い閃光が迸った。
それと同時に雷斬の振り下ろした刀が黒鉄の巨人の動きを鈍らせる。
どうやら片腕を破壊したらしい。ここまでの見事な連携を全て囮にして放った死角からの一撃は、フェルノの溶かした装甲を簡単に貫いてしまった。
「今だよ、Night!」
「わかってる」
Nightは十字架状の剣を突き立てて、黒鉄の巨人に対抗する。
しかしこれだけではダメだ。
それを一番理解しているのはNight自身。
「【ライフ・オブ・メイク】。お前の半身の機能、貰うぞ」
そう告げると同時に、大量の楔が出現した。
その端には小さな筒が付いている。中には火薬が入っていて、雷斬がこじ開けた胴体の配線に向かって一斉に投げつけた。
「フェルノ、点火だ!」
「オッケー。それじゃあ一気に燃やしちゃえ!」
フェルノは炎を使って楔に付けられた筒を燃やした。
ドカドカドカドカカァーン!——
凄まじい閃光と爆裂音が響き渡った。
耳をつんざく強烈な破裂音に対して、いち早く耳栓を付けていたアキラたちだったが、やはり貫通して耳が痛い。
「くっ、流石に堪えるな」
「そんなこと言わないでよ。これもNightがよくやる手法でしょ?」
アキラはNightに何げなく呟いたのだが、それが気に入らないのか、脇腹をつねられた。
普通に痛くて、アキラはNightから距離を取る。
「どうして脇腹をつねるの?」
「余計なことを言うからだ。とにかくまだ終わりじゃない。一旦次の策だ」
アキラたちは少しだけ疲れていた。
スキルの連続発動にこの空間と黒鉄の巨人の特性も合わさってか、まともに負荷がかかっていた。
黒鉄の巨人は度重なる攻撃の嵐に苦しめられて、しばらく動けそうにない。
この隙に回復をしようとした。
その時だった。黒鉄の巨人の瞳が赤く光り出し、残っている右拳が飛んできた。
超高速で拳が放たれて、アキラたちは巻き込まれそうになった。
「ちょっとそれは待ってよ!」
「くっ、掴まれアキラ!」
Nightはアキラの体を引き寄せると、残ったHPにかけて【ライフ・オブ・メイク】を発動した。
「とりあえず何でもいいからクッションになるやつを作るか」
Nightは短い時間で作りたいものを思い浮かべると、拳が着弾する前に地面を削った。そこにクッション性の膜を張ると、アキラとNightは直撃をかわすことができた。
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