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◇178 黒鉄の巨人

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 巨大な鉄の塊が聳え立っていた。
 四肢があるが全身は機械でできている。
 これはモンスターなのかそれともオブジェクトなのか、詳細は不明だが、アキラたちはそこにある巨大な黒鉄の巨人を、何となくこう見ていた。

「ロ、ロボット?」

 ここに来ての公式からのSF要素の提示にたじろいでしまった。
 けれど目も光っていないし、動く様子もない。
Nightが触ってみると、ひんやりしていたようだ。

「冷たいな。動いている様子はない」

 Nightは腕組をして考えてみた。

「どうやらこれがこの古代遺跡の存在意義だとみて間違いない」
「そうなの?」
「そうとしか考えられないだろ。周りの壁をよく見てみろ」

 Nightに促され、アキラたちはキョロキョロ周囲の壁を見て回す。
 するとフェルノが目を凝らしてみると、蝋燭の置ける燭台があった。

「たくさん蝋燭が置けそうだね」
「そうですね。まるでこの巨人を囲うように取り付けられています」
「だったらここが目指していたことよね。でもどうしてこんなものがあるのかしらね」
「それは知らん」

 Nightは容易く突っぱねる。
フェルノたちは置いてけぼりを食らっていたが、アキラだけはもう少し周りを見てみ回しつつ、他に何かないか探ってみる。

「うーん。おっ、何か落ちてるよ!」

 アキラは落ちていたものを拾い上げた。
 それは小さな歯車のようだが、錆び付いてはいない。
 ごく最近落ちて来たのか、周りには配線や金属の装甲が落ちている。

「なるほどねー。やっぱりこれがこの古代遺跡の守り神兼お宝だったんだー!」
「守り神案は採用だが、お宝とは言えないぞ」
「そうなのー? でも古代遺跡があるならお宝があってもいいよねー」
「あくまでそれは私たちの発想だ。これを作った公式の青写真に乗らないようにするなら、この世界の人間がかつて何かしらに意味を持ってこの巨人を作った。だからこの巨人は古代遺跡を作った人間たちの意志の結晶体と言ってもいいだろうな」
「……難しい設定だね」
「まあ考えるな。とにかくコレがこの遺跡の最深部に置き去りにされた何かだ」

 Nightは淡々と説明してくれた。
 それにしても可哀そうだ。こんなところで朽ちるまで放置されるなんて、もしもこの巨人に意思があるならきっと久々にやって来た人間に怒りを示すことだろう。
 アキラは嫌な予感を働かせながらも、ゆっくり装甲パーツに触ってみた。
 すると頭の中で何かが警告をした。

『アキラ、避けて』
「えっ!?」

 急に【ユニゾンハート】の能力の1つ、【ユニゾンコール】が反応した。
 咄嗟に半歩後ろに飛ぶと、先程触った腕が持ち上がりアキラを下から突き上げようとしていた。
 明らかに危険だと判断し、すぐさまNightたちの横に滑り込む。

「どうしたアキラ。急に……はっ!」
「みんな気を付けて。この巨人、動くよ」

 アキラがそう答えると、全身視線が釘付けになった。
 目の前には黒鉄の巨人がゆっくりとだが、アキラたちの前に拳を振り上げていた。

「全員避けろ!」
「そんなのわかってるってのー!」

 ドカァーン!

 フェルノは叫びながら、拳をかわした。
 しかしアキラたちが立っていた場所は、大きな窪みを作っている。
 動き自体はかなり鈍い。けれど一発で凄まじい破壊力だった。

「これって流石にヤバいよね?」
「そうだな。だが動きが鈍いのならまだ逃げる余地はある。幸い襲っては来ないようだからな」

 確かに動いているのは上半身だけだ。
 今なら逃げようと思えば逃げられたが、通路に出ようとすると、巨人は無理にでも体を動かして空洞を震撼させた。
 ガタガタガタガタと天井から石ころが降ってきて、完全に空洞を倒壊させようとしていた。

「クソッ、逃げようとすれば地下を倒壊させてもいいってことか」
「困ったね。どうしよう」
「こうなったらデスポするか、それともこいつをここで倒すしかないな」
「どっちかと言うと前者の方が可能性高いけど、勝ちに行くよね」
「当然だよー。それじゃあ一気に潰すよー!」

 フェルノは竜の腕を広げて、炎で纏った。
 コーティングすると同時に、黒鉄の巨人の腕と真っ向勝負をする。
 動き自体は呪いが最初のインパクトが強いのか、触れただけで軽く吹き飛ばされる。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「フェルノ吹き飛びすぎだよ!」
「ごめん、すぐに戻るから頑張って」
「そんな無茶な!」

 このパーティーで一番筋力のパラメータの高いフェルノがパワー負けする相手を私たちだけでどうにかできるのか? アキラは不安最中に、巨人の拳が飛んできたので、ギリギリのところでかわした。
 【月跳】で地面を蹴り上げると、伸ばした黒鉄の巨人の腕に乗り、一気に頭まで駆け上がろうとした。しかしよく回る腕に阻まれてしまい、簡単に落っこちてしまう。

「これって結構ヤバいよね」
「そうだな。空気も悪い。何とかして糸口を見出すしかないのか……」

 Nightは状況を見誤ったと苦汁を舐めるのだった。
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