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◇177 地下を進むとそこには

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 アキラたちは地下の空洞を進んでいた。
 ポタポタと水滴が天井の鍾乳石に集中して、どんどん降りしきっている。

「凄いね。こんなに水滴が落ちてるなんて」
「何が凄いんだ?」
「えっ、凄いでしょ。だってこんなに水滴が落ちて来るのって、とっても凄い時間が経過したからでしょ?」
「そこまでリアルを求めるのか。だとすればこの空洞は昔水が通っていた証で、浸食によってできた空洞、もしくは火山が存在して噴火活動によって生まれた。なんて考えもお前の頭の中にあるのか?」
「いいや、そこまで考えてなかったけど」
「考えてなかったのか!」

 Nightの声が反響していた。
 空洞内なので当然だったが、流石にうるさい。

「うるさいよー、Night」
「誰のせいだと思っているんだ」
「声は問題ありませんが、仮にこの空洞にモンスターが生息しているのだとすれば、今の声でおびき寄せてしまった可能性もありますね」
「それは困るねー」
「そうね。でも雰囲気的にモンスターが襲ってくる様子はないみたいだけど」

 ベルは冷静にモンスターが来ないことを感知していた。
 不意にアキラたちを柔らかい風が吹き抜ける、【風読み】でも使ったのだろう。

「私も変な感じしないよ?」
「私もです。敵意のようなものを感じませんね」

 アキラと雷斬も気配を察知しながら、空洞を注意深く歩いていた。
 すると先を行くNightが止まったので、アキラはNightの背中にぶつかってしまった。

「止まれ」
「ってうわぁ! 急に止まらないでよ!」
「止まれと言っただろ。それにもっと注意深く警戒しろ」

 アキラはNightに逆に怒られてしまった。
 注意を散漫にしていたわけではないので、アキラはややムカついていた。
 だけど怒るほどのことでもないので、ここはスルーする。
 それからNightが止まった原因を探ることにした。

「何か下にあるの? って、歯車だね」
「歯車? しかも大きいね」

 アキラとフェルノが覗き込むと、そこに転がるのは巨大な歯車。
 時計とかに組み込まれるような繊細で小さなものとは異なり、大きくて無骨な形をしている。
 所々が錆び付いており、金属が茶色になっていた。

「水の影響でしょうか?」
「おそらくな。これだけ湿気の多い場所だ。金属には最悪だろ」

 Nightの見解では水滴によって経年劣化したものだそうだ。
 けれど1つ気がかりが生まれる。それはどうしてこんなところに歯車があるのかだ。
 最初見た時は大きさに違和感があったが、いつの間にかすり替わっていた。
 それもそのはず、アキラたちが落ちてきた穴から大体200メートルぐらい離れている。

「おかしな話だ。見たところ長年川ができていた形跡はあるが、それも随分と前。にもかかわらず歯車がこんなところに落ちているとなると流れて来たのではなく、意図的に置かれている過去の先から転がってきたかの二通りしかないわけだ」
「それってかなり変だよね。だってこんな大きな歯車が1つだけ何て……」
「1つか? それはお前の目が節穴なだけだ」

 そう言って目の前を開けると、そこには大量の歯車を始めとした機械パーツが錆び付いて転がっていた。
 どれもこれもかなり古く、古代遺跡ができた頃から存在しているようだ。
 けれど歯車のパーツたちは錆さえ払えばまだ使える。これは一種の収穫だったが、何より不気味なので錆の付き方だ。

「錆の付き方が均一じゃない。しかおあくまでも一部分だけで、簡単に剥がせれることから付いたのはごく最近だろうか」
「それっておかしいわよね。錆ってなかなか取れないからみんな嫌いのよね」
「そうだな。錆は色もニオイも付けるから、アンティーク品で錆び付きが好きな奴以外はほとんどの場合で嫌悪する。だがここにある錆は確かに水滴によってできたものだろうが、この世界の設定からしてもここ2、3年の話だろ」

 アキラは凄いと思った。
 これだけの情報からこじつけに近くても情報をまとめ上げ、分析し、私たちに解りやすく自分の意見を伝える力。
 本当に高い分析能力と情報処理能力、さらにはプレゼン力を持っていた。

「とりあえずもう少し先だ。欠けていないことからこの先は平坦だろ」

 Nightの脳内は空間すら読み取っていた。
 いつも以上に冴え渡るのはNightが好奇心を目覚ましく発達させているからだ。
 それだけ楽しんでいると、いつもと変わらない乾いた表情からアキラは読み取っていた。

「でも歯車が落ちてただけじゃなくて、配線とかも落ちてたね」
「そうだな。とは言え、漏電したような形跡はなかった」
「じゃあ電気じゃないってことだよね? 動力は何なんだろ」
「それはそのうちわかるだろ。とにかく今は……空洞が広がった?」

 アキラたちは奥の空洞が広がっていることに気が付いた。
 先程までよりも明らかに広く通路でもない。
 しかもここまで来ると、急に重たい空気が重厚感を以ってアキラたちを襲う。

「何だこの空気は。最悪だな」
「満月山の時と似てるね。もしかしてここも……」
「おそらくな。目の前を見てみろ」
「目の前? な、何これ?」

 アキラが前を向くと、そこには巨大な鉄の塊が存在していた。
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