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◇169 動けるオールラウンダー
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“動けるオールラウンダー”——凄まじいパワーワードだった。
とは言えそれは対人戦限定の話。
アキラの戦い方はモンスターには通用しない。そこでアキラは考えた。
新しく意識を切り替える。
「動けるオールラウンダー……万能ってことはモンスターにも通用するはず……」
「どうしたアキラ?」
「こんな時に独り言って……余裕あるのね」
Nightとベルはアキラがぶつぶつ言い始めたので、様子を見ることにした。
しかし毒ナマズ、ポイズンシリュールは【泥腕】と長い髭を使って動かないアキラを襲う。
「気を付けろ、アキラ!」
「今は戦闘に集中。モンスターの動きは動物と同じ……だったら」
ズズズズズと地面の中から音がした。
アキラの真後ろにある断層の溝から泥が固まって襲い掛かる。
【泥腕】が出現し、アキラに襲い掛かる。
「あの馬鹿! こうなったら……」
「少し待って。アキラったら何か考えがあるみたいね」
「考えだと?」
「意識の切り替えは早いけど、そこから集中状態に入るまでの時間が少しかかるみたいね。でもそこからの立ち上がりは……」
アキラは【泥腕】が崩れて泥に飲まれてしまいそうになるが、スッと左に避けて【泥腕】をかわした。
けれどまだ足りない。半端な意識の変化だったが、そこから転じてアキラは襲い掛かる髭を【甲蟲】で掴み取った。
「捕まえたよ。後は、せーのっ、うわぁ!」
髭を掴んだアキラはそのまま引っ張ろうとした。
しかし体格差や思った以上の体重の違いに逆にバウンドしてしまう。
「あの馬鹿。本当に馬鹿なのか!」
「アキラ、少し待っててね」
ベルは弓矢を構えて、アキラを絡めた髭を射抜いた。
すると毒ナマズは驚いてアキラの体を放した。
髭から滑り落ちたアキラの体をNightが急遽用意したクッションを使って衝撃吸収する。
「痛たたたぁ……ありがとNight、ベル!」
「無茶しすぎだ。お前は1人で戦っているんじゃないんだぞ。私たちにもアシストさせろ」
「ごめんごめん、精神が研ぎ澄まされすぎちゃって……」
「超集中状態ってことか。お前スポーツ選手じゃないだろ」
「でも超集中することはあるでしょ?」
「それはまあな……私もゲームで全力集中したことはある」
「それと同じだよ。おっとっと……このクッション柔らかいね」
アキラは立ち上がった際にクッションに足をつまずく。
もつれた足を体感と筋肉の調整で支えると、アキラは気を取り直した。
【甲蟲】の拳をかち合わせると、もう一度集中する。
けれど今度は周りもちゃんと見えている。
(さてと、どうしようか……相手は私たちより大きいし、何か作戦があるって言ってたから大丈夫だよね!)
アキラはNightの表情をチラッと見た。
全く動じていない。むしろ勝つ気しか感じられない。
「何か作戦があるんだよね!」
「お前にはない。後はこっちの頑張り次第だ」
「どういうこと?」
アキラは首を傾げた。
するとまたしても溝のところから音が聞こえる。
今度は泥が詰まったような音に加えて、水が溢れる音が混ざった。
そのことに気が付いたNightは“ここだ!”と悟り、アキラを押した。
「作戦結構だ。全力で跳べ!」
「えっ、今このタイミングなの!」
「そうだ。今このタイミングしかない。とにかく気負うなよ。お前の役目は、ドクハナをもぎ取ることだけだ」
Nightは念押しをした。アキラは理解すると、音が近づいてきたタイミングで【月跳】を発動した。
両足が白いファーのようなウサギの毛に覆われ、全力で高く跳ぶ。
この一瞬で上空30メートルぐらいまでは余裕で跳ぶことができた。
「これで何をしろって……えっ?」
「頑張れよ」
Nightが嫌な笑みを浮かべていた。にやりと不敵に笑うと、真下の溝から紫色をした水が間欠泉のように噴き上がった。
しかも只の水ではなく、毒水が泥と混ざって【泥腕】を発動していた。
これは確実に飲まれる。そう思うのは一重に間違いではないが、アキラの思考はさらに先を行く。
「この【泥腕】を利用してさらに高く跳ぶ。そうすれば……」
アキラは変な笑みを浮かべる。Nightの笑みが移ってしまった。
50メートル何て容易に跳べるはずだ。
そう確信するとアキラは【泥腕】に乗っかり、高く跳んだ。
すると毒ナマズの頭がすぐそばに感じる。けれどさらに高く跳び、頭頂部に辿り着いた。
「後はあの花を採るだけ……」
紫色をした花が目に浮かんだ。
アキラは不安定な体勢で飛び込むと、紫色をした花を掴み取り引き千切った。
根っこごと奪い取り、毒ナマズは絶叫する。
耳元で聞こえたのでアキラは表情を顰めた。意識が飛びそうになる。
「頼むぞベル」
「任せて」
「アキラの方は私が回収する。気にせず射抜け」
「わかっているわよ」
ベルは矢を放った。
しかし鏃はなく、白い布で覆われていた。
そこにNightがマッチを使って点火する。炎の矢になったが、やけに燃えていた。
「狙いは泥だけ。水分を奪う!」
狙いを定め巨体を窺う。
威勢よく放たれた弓矢は燃えていた。
とは言えそれは対人戦限定の話。
アキラの戦い方はモンスターには通用しない。そこでアキラは考えた。
新しく意識を切り替える。
「動けるオールラウンダー……万能ってことはモンスターにも通用するはず……」
「どうしたアキラ?」
「こんな時に独り言って……余裕あるのね」
Nightとベルはアキラがぶつぶつ言い始めたので、様子を見ることにした。
しかし毒ナマズ、ポイズンシリュールは【泥腕】と長い髭を使って動かないアキラを襲う。
「気を付けろ、アキラ!」
「今は戦闘に集中。モンスターの動きは動物と同じ……だったら」
ズズズズズと地面の中から音がした。
アキラの真後ろにある断層の溝から泥が固まって襲い掛かる。
【泥腕】が出現し、アキラに襲い掛かる。
「あの馬鹿! こうなったら……」
「少し待って。アキラったら何か考えがあるみたいね」
「考えだと?」
「意識の切り替えは早いけど、そこから集中状態に入るまでの時間が少しかかるみたいね。でもそこからの立ち上がりは……」
アキラは【泥腕】が崩れて泥に飲まれてしまいそうになるが、スッと左に避けて【泥腕】をかわした。
けれどまだ足りない。半端な意識の変化だったが、そこから転じてアキラは襲い掛かる髭を【甲蟲】で掴み取った。
「捕まえたよ。後は、せーのっ、うわぁ!」
髭を掴んだアキラはそのまま引っ張ろうとした。
しかし体格差や思った以上の体重の違いに逆にバウンドしてしまう。
「あの馬鹿。本当に馬鹿なのか!」
「アキラ、少し待っててね」
ベルは弓矢を構えて、アキラを絡めた髭を射抜いた。
すると毒ナマズは驚いてアキラの体を放した。
髭から滑り落ちたアキラの体をNightが急遽用意したクッションを使って衝撃吸収する。
「痛たたたぁ……ありがとNight、ベル!」
「無茶しすぎだ。お前は1人で戦っているんじゃないんだぞ。私たちにもアシストさせろ」
「ごめんごめん、精神が研ぎ澄まされすぎちゃって……」
「超集中状態ってことか。お前スポーツ選手じゃないだろ」
「でも超集中することはあるでしょ?」
「それはまあな……私もゲームで全力集中したことはある」
「それと同じだよ。おっとっと……このクッション柔らかいね」
アキラは立ち上がった際にクッションに足をつまずく。
もつれた足を体感と筋肉の調整で支えると、アキラは気を取り直した。
【甲蟲】の拳をかち合わせると、もう一度集中する。
けれど今度は周りもちゃんと見えている。
(さてと、どうしようか……相手は私たちより大きいし、何か作戦があるって言ってたから大丈夫だよね!)
アキラはNightの表情をチラッと見た。
全く動じていない。むしろ勝つ気しか感じられない。
「何か作戦があるんだよね!」
「お前にはない。後はこっちの頑張り次第だ」
「どういうこと?」
アキラは首を傾げた。
するとまたしても溝のところから音が聞こえる。
今度は泥が詰まったような音に加えて、水が溢れる音が混ざった。
そのことに気が付いたNightは“ここだ!”と悟り、アキラを押した。
「作戦結構だ。全力で跳べ!」
「えっ、今このタイミングなの!」
「そうだ。今このタイミングしかない。とにかく気負うなよ。お前の役目は、ドクハナをもぎ取ることだけだ」
Nightは念押しをした。アキラは理解すると、音が近づいてきたタイミングで【月跳】を発動した。
両足が白いファーのようなウサギの毛に覆われ、全力で高く跳ぶ。
この一瞬で上空30メートルぐらいまでは余裕で跳ぶことができた。
「これで何をしろって……えっ?」
「頑張れよ」
Nightが嫌な笑みを浮かべていた。にやりと不敵に笑うと、真下の溝から紫色をした水が間欠泉のように噴き上がった。
しかも只の水ではなく、毒水が泥と混ざって【泥腕】を発動していた。
これは確実に飲まれる。そう思うのは一重に間違いではないが、アキラの思考はさらに先を行く。
「この【泥腕】を利用してさらに高く跳ぶ。そうすれば……」
アキラは変な笑みを浮かべる。Nightの笑みが移ってしまった。
50メートル何て容易に跳べるはずだ。
そう確信するとアキラは【泥腕】に乗っかり、高く跳んだ。
すると毒ナマズの頭がすぐそばに感じる。けれどさらに高く跳び、頭頂部に辿り着いた。
「後はあの花を採るだけ……」
紫色をした花が目に浮かんだ。
アキラは不安定な体勢で飛び込むと、紫色をした花を掴み取り引き千切った。
根っこごと奪い取り、毒ナマズは絶叫する。
耳元で聞こえたのでアキラは表情を顰めた。意識が飛びそうになる。
「頼むぞベル」
「任せて」
「アキラの方は私が回収する。気にせず射抜け」
「わかっているわよ」
ベルは矢を放った。
しかし鏃はなく、白い布で覆われていた。
そこにNightがマッチを使って点火する。炎の矢になったが、やけに燃えていた。
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