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◇167 毒ナマズ
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Nightは引き金を引いた。
その瞬間、アキラの中の何かが蠢き出した。
危険を知らせているのが体感でわかるが、時すでに遅い。
「ちょっとマズいよ!」
「マズい? 何がだ。どのみちこれしかないだろ」
キュルキュルと音を立て、ワイヤーが軋んだ。
ワイヤー銃に手繰り寄せられ、何かが引き寄せられている。
しかし異変がたちまち起きた。
ワイヤー銃で絡め取ったはずのものが一向に届かない。
「おかしいな。急に動かなくなったぞ?」
「もしかして外れちゃったのかな?」
「あるいわ、何か他の物を掴んだか千切れちゃったのかもね」
「その可能性は十分にある。ワイヤー銃でも切れる時は切れるからな」
「あ、意外に冷静なんだね」
Nightは顔色一つ変えていない。
案の定ワイヤー銃を引き戻してみると、ワイヤーの先端が千切れている。どうやら途中で切れてしまったみたいだ。
「仕方ないな。もう一回戻るぞ」
「えー、せっかくここまで走ってきたのにぃー」
「文句言うな。とにかく一回戻って……な、何だぁ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォッ!——
けたたましい音が鳴った。
地面も急に揺れ始めて、木々たちがバサバサと木の葉を落とす。
それだけじゃない。断層が余計引き裂かれそうになって、中から何かが噴き出る。
「うわぁ!」
「これはマズいな。アキラ、掴まれ」
Nightはアキラの腕を掴んだ。右腕を掴むと勢いよく自分のところまで引き寄せる。
腹筋に力を入れ、渾身の力でアキラを助けるも、2人してバランスを崩して倒れ込んでしまう。
Nightの上にアキラが倒れ込んでしまった。体中が泥だらけになる。
「痛たぁ……ありがとうNight。怪我とかしてない?」
「この状況を見てそう言えるのか?」
「いえないかなー。あはははは……ごめん」
「今はいい。緊急事態だった。怪我もしていないしな」
泥だらけになっただけで怪我はしていなかった。
木の下に溢れて積もった泥がクッションの役割をして、2人の体重や衝撃を完全に殺したのだろう。
その様子を脇で見ていたベルはあまりの臭いにガスマスク越しでも鼻を抑えていた。
「2人とも臭いわよ」
「それは言わないでよ。もう鼻も麻痺しちゃってわからないんだから。ねえ、Night」
「今のが効いたな。とりあえず嗅覚は死んだ」
Nightはガスマスクをいったん外して、中に張った泥を掻き出す。
すると急に息が苦しくなったのか、ゴホンゴホンと咳き込んだ。
「な、何だこの異臭は!」
「大丈夫Night! って、毒ダメージ受けてるよ!」
「何っ! 毒エフェクトが出ているだと。一体何故……」
今の泥の中に毒が含まれていたのか。
アキラは大量に持ち込んだポーションをNightに差し出すと、Nightはの蓋を開けてがぶ飲みを始めた。
ゴクゴクと喉を鳴らして飲み干すと、予備のガスマスクを取り出して被った。
「助かった。備えあれば憂いなしだな」
「どういたしまして。でも変だよね、最初来た時はこんなことなかったのに」
「そうよね。何かあったのかしら……えっ?」
ベルの視線が固定された。
瞬き一つせずに完全に固まってしまっていた。
「どうしたの?」と聞く前に、Nightはベルの視線の先を追った。
すると信じられないことが起きていて、アキラにも呼び掛ける。
「おいアキラ、後ろを見てみろ」
「後ろ? えっ!」
あまりに突然すぎて表情が固まった。
3人は首を傾けて空の方を見上げていた。泥が天高く地面から浮き上がっていた。
自然の作用か、超常現象を目の当たりにしたが、感動はしなかった。
高さは大体50メートル付近から噴水のように流れ落ちるヘドロ混じりの泥の中に、何か物体がいる。
長い髭のようなものが見え、ギョロッとした目が浮かんでいた。
「あれ、何?」
「ポイズンシリュール。毒ナマズだ」
アキラの困惑に合わせて、Nightが口にした。
毒ナマズ? 目の前のソレは全然ナマズ感がない。
紫色の毒泥を纏った巨大な2足歩行の化け物。完全に怪獣だった。
「いやいやいやいや、ないないないない。こんな大きなモンスターでしかもナマズはないよ!」
「いやあるだろ、特徴的な部位が1つ」
「髭だけだよね! 髭だけ。あの巨体はどうやって説明するの!」
「ここはファンタジー世界だぞ。これぐらいあって不思議でもないだろ」
「いや、こんな時だけファンタジー思考は何! この裏切り者」
「裏切り者?」
「科学武器ばっかりの人がそんなこと言わないでよ!」
「それは……悪かった」
Nightはシュンとしてしまう。
しかし落ち込んでいても始まらない。目の前のナマズ型巨大怪獣は、アキラ達を睨みつけている。
毒泥が大量に落ちてきて、真下の断層の溝からも異様な臭いのした毒素が噴き出ている。
「みんな避けるわよ」
「避けてどうなるの! Night、このガスマスクって……」
「安心しろ。毒は完全防備だ」
「そうじゃなくて泥は! ヘドロはどうなの!」
「それは……すまないな」
「「おい!」」
アキラとベルは2人してNightを怒鳴りつけていた。
怪獣はすぐそばまで来ているのに呑気な3人組だった。
その瞬間、アキラの中の何かが蠢き出した。
危険を知らせているのが体感でわかるが、時すでに遅い。
「ちょっとマズいよ!」
「マズい? 何がだ。どのみちこれしかないだろ」
キュルキュルと音を立て、ワイヤーが軋んだ。
ワイヤー銃に手繰り寄せられ、何かが引き寄せられている。
しかし異変がたちまち起きた。
ワイヤー銃で絡め取ったはずのものが一向に届かない。
「おかしいな。急に動かなくなったぞ?」
「もしかして外れちゃったのかな?」
「あるいわ、何か他の物を掴んだか千切れちゃったのかもね」
「その可能性は十分にある。ワイヤー銃でも切れる時は切れるからな」
「あ、意外に冷静なんだね」
Nightは顔色一つ変えていない。
案の定ワイヤー銃を引き戻してみると、ワイヤーの先端が千切れている。どうやら途中で切れてしまったみたいだ。
「仕方ないな。もう一回戻るぞ」
「えー、せっかくここまで走ってきたのにぃー」
「文句言うな。とにかく一回戻って……な、何だぁ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォッ!——
けたたましい音が鳴った。
地面も急に揺れ始めて、木々たちがバサバサと木の葉を落とす。
それだけじゃない。断層が余計引き裂かれそうになって、中から何かが噴き出る。
「うわぁ!」
「これはマズいな。アキラ、掴まれ」
Nightはアキラの腕を掴んだ。右腕を掴むと勢いよく自分のところまで引き寄せる。
腹筋に力を入れ、渾身の力でアキラを助けるも、2人してバランスを崩して倒れ込んでしまう。
Nightの上にアキラが倒れ込んでしまった。体中が泥だらけになる。
「痛たぁ……ありがとうNight。怪我とかしてない?」
「この状況を見てそう言えるのか?」
「いえないかなー。あはははは……ごめん」
「今はいい。緊急事態だった。怪我もしていないしな」
泥だらけになっただけで怪我はしていなかった。
木の下に溢れて積もった泥がクッションの役割をして、2人の体重や衝撃を完全に殺したのだろう。
その様子を脇で見ていたベルはあまりの臭いにガスマスク越しでも鼻を抑えていた。
「2人とも臭いわよ」
「それは言わないでよ。もう鼻も麻痺しちゃってわからないんだから。ねえ、Night」
「今のが効いたな。とりあえず嗅覚は死んだ」
Nightはガスマスクをいったん外して、中に張った泥を掻き出す。
すると急に息が苦しくなったのか、ゴホンゴホンと咳き込んだ。
「な、何だこの異臭は!」
「大丈夫Night! って、毒ダメージ受けてるよ!」
「何っ! 毒エフェクトが出ているだと。一体何故……」
今の泥の中に毒が含まれていたのか。
アキラは大量に持ち込んだポーションをNightに差し出すと、Nightはの蓋を開けてがぶ飲みを始めた。
ゴクゴクと喉を鳴らして飲み干すと、予備のガスマスクを取り出して被った。
「助かった。備えあれば憂いなしだな」
「どういたしまして。でも変だよね、最初来た時はこんなことなかったのに」
「そうよね。何かあったのかしら……えっ?」
ベルの視線が固定された。
瞬き一つせずに完全に固まってしまっていた。
「どうしたの?」と聞く前に、Nightはベルの視線の先を追った。
すると信じられないことが起きていて、アキラにも呼び掛ける。
「おいアキラ、後ろを見てみろ」
「後ろ? えっ!」
あまりに突然すぎて表情が固まった。
3人は首を傾けて空の方を見上げていた。泥が天高く地面から浮き上がっていた。
自然の作用か、超常現象を目の当たりにしたが、感動はしなかった。
高さは大体50メートル付近から噴水のように流れ落ちるヘドロ混じりの泥の中に、何か物体がいる。
長い髭のようなものが見え、ギョロッとした目が浮かんでいた。
「あれ、何?」
「ポイズンシリュール。毒ナマズだ」
アキラの困惑に合わせて、Nightが口にした。
毒ナマズ? 目の前のソレは全然ナマズ感がない。
紫色の毒泥を纏った巨大な2足歩行の化け物。完全に怪獣だった。
「いやいやいやいや、ないないないない。こんな大きなモンスターでしかもナマズはないよ!」
「いやあるだろ、特徴的な部位が1つ」
「髭だけだよね! 髭だけ。あの巨体はどうやって説明するの!」
「ここはファンタジー世界だぞ。これぐらいあって不思議でもないだろ」
「いや、こんな時だけファンタジー思考は何! この裏切り者」
「裏切り者?」
「科学武器ばっかりの人がそんなこと言わないでよ!」
「それは……悪かった」
Nightはシュンとしてしまう。
しかし落ち込んでいても始まらない。目の前のナマズ型巨大怪獣は、アキラ達を睨みつけている。
毒泥が大量に落ちてきて、真下の断層の溝からも異様な臭いのした毒素が噴き出ている。
「みんな避けるわよ」
「避けてどうなるの! Night、このガスマスクって……」
「安心しろ。毒は完全防備だ」
「そうじゃなくて泥は! ヘドロはどうなの!」
「それは……すまないな」
「「おい!」」
アキラとベルは2人してNightを怒鳴りつけていた。
怪獣はすぐそばまで来ているのに呑気な3人組だった。
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