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◇166 ワイヤーの使い方
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アキラはNightがワイヤー銃を使って何をするのか楽しみにしていた。
しかしあまりに普通のことに驚いた。
「とりあえずこれを引っかける」
「引っかける?」
「そうだ。私おシューティングゲームの腕前を知っているだろ」
「そ、それはそうだけど」
でもあれはPCGAMEで、ここはほとんどリアルだ。
射撃の腕前が試される。
けれどNightはやってくれる子だ。アキラはそのことを知っていたので、特に追及もしなかった。
「本当にできるのよね? 私の【風読み】貸してあげようかしら?」
「それは絶対に要らない。風なんてあったらワイヤーが張らなくなるだろ」
Nightはベルの一言を一蹴した。
それからワイヤー銃の引き金を引き、ワイヤーが撃ちだされた。
先端の楔が放たれて、遠くのドクハナに絡みつく。
楔が刺さるわけではなく、Nightが腕を捻ったことでドクハナをがっちりと掴み取る。
「これで良しだな」
「凄い、ここから結構離れてるのによく命中したね!」
「当然だ。私を舐めるな」
「どれだけ自分のことを過信しているのかしらね。もしかしてNightって自信家? そrともナルシスト?」
「私はうぬぼれたりしないぞ。これは練習の成果だ」
「「練習! Nightがぁ!」
「当たり前だろ。天才だとか秀才だとかに甘えている奴だと思われたくない」
Nightはワイヤー銃を撃ちだした後も過信していなかった。
「それでこれからどうするのかしらね?」
「当然考えているんだよねっ!」
「同然だ。とりあえず……走るぞ」
「「ほえっ!?」」
Nightは急に森に向かって走り出した。
来た道を退き返しているので、底なし沼に落ちることもない。
アキラはベルと一緒の気持ちで、Nightがどうして戻るのか、最初は意味がわからなかった。
とは言え、一つ気になるのはワイヤーが全く引き千切れずワイヤー銃に戻りもしなかった。
「これってもしかして……」
「そうみたいね。でもこれって運営サイドにとってはかなりイレギュラーよね」
「うん。だってやってること……」
アキラとベルはNightの姿が見えなくなるまで話し込んでいた。
けれど完全に姿が見えなくなるとアキラたちも追いかける。
ワイヤーが張られているので、どれだけ離れていても簡単に追うことができた。
「はぁはぁはぁはぁ……」
Nightは膝を震わせて息を荒げていた。
疲れていた。当然のことだが、ワイヤー銃は意外に重い。
ワイヤーが常に出続ける特注仕様のワイヤー銃でもあるため、ワイヤーが出続ければ出続けるほどどんどん不可もかかっていく。
そういう仕様に【ライフ・オブ・メイク】で作っている。
「思った以上に走ってしまったな」
Nightが背後を振り返るとワイヤーがピンと張られていた。
これだけ離れれば安全だろう。ワイヤー銃を引っ張ると何かを掴んでいる感触がしっかりと指先に伝わってきた。
とりあえず第一段階は無事完了だ。
「後はアイツらだが……来たな」
Nightはアキラたちを待っていた。
するとワイヤーのすぐ隣を2つの影が走っている。
息の一つも上げずにNightのところまで戻ってきた。
「Night、どうして急に走ったの!」
「開口一発目にそれか……」
Nightは呆れてしまった。
けれどいつものアキラでホッと胸を撫で下ろすところもある。
「私が走った理由はワイヤーだ」
「やっぱり。ワイヤーを張ったままにして、遠くから回収するんだよね」
「わかっているじゃないか。その通りだ」
アキラはNightの作戦をズバリ当てて見せた。
ベルの考えた作戦にかなり似ているけど、圧倒的に違うのはNightにしかできないことだ。
離れれば離れるほど毒素に汚染される確率も減って安全になる上に主との戦闘を避けることができる。
ゲームとしてボスと戦わないのはつまらないかもしれないが、負けてやり直しよりはいい。
この世界は決してディスプレイの前で淡々と繰り返す死にゲーではない。
「いいか、死んでやり直し何て真似はごめんだ。だからまずは勝つための手段の前に負けない作戦を考える」
「でもそれって勝ちに繋がらないよね?」
「勝ちに繋げるために負けないを生み出す。負けないは時に勝ちよりも強い」
「勝ちだけに価値があるんだね」
シーン——
空気が一瞬で冷え込んでしまった。
ベタなツッコみは面白くないみたいで、アキラは必死に考える。
意識を切り替えてパチンと手を叩いた。
「はいはい、とりあえず切り替えていこうよ」
「切り替えるのはお前だ。とにかく作戦はこんな感じだ。もうわかったな」
「うん。とにかく離れて敵から攻撃されないようにするんだよね。敵のテリトリーで戦うのって危険だもんね」
「そうだ。私たちは経験したはずだ」
オロチコンダの時だ。それから砂漠の時。
どちらもとっても危険で死力を尽くした。
あんな危険な真似は極力したくない。脳内で自然とストッパーが掛かる音がした。慰安の意識が危険を察知してくれていた。
「よし、それじゃあ引くぞ」
Nightの指が引き金に掛けられる。
けれどこの危機察知は何だ。アキラは嫌な予感がしていた。
引き金を引く瞬間、それが一番強くなりNightを止めようとしたが、それは叶わなかった。
しかしあまりに普通のことに驚いた。
「とりあえずこれを引っかける」
「引っかける?」
「そうだ。私おシューティングゲームの腕前を知っているだろ」
「そ、それはそうだけど」
でもあれはPCGAMEで、ここはほとんどリアルだ。
射撃の腕前が試される。
けれどNightはやってくれる子だ。アキラはそのことを知っていたので、特に追及もしなかった。
「本当にできるのよね? 私の【風読み】貸してあげようかしら?」
「それは絶対に要らない。風なんてあったらワイヤーが張らなくなるだろ」
Nightはベルの一言を一蹴した。
それからワイヤー銃の引き金を引き、ワイヤーが撃ちだされた。
先端の楔が放たれて、遠くのドクハナに絡みつく。
楔が刺さるわけではなく、Nightが腕を捻ったことでドクハナをがっちりと掴み取る。
「これで良しだな」
「凄い、ここから結構離れてるのによく命中したね!」
「当然だ。私を舐めるな」
「どれだけ自分のことを過信しているのかしらね。もしかしてNightって自信家? そrともナルシスト?」
「私はうぬぼれたりしないぞ。これは練習の成果だ」
「「練習! Nightがぁ!」
「当たり前だろ。天才だとか秀才だとかに甘えている奴だと思われたくない」
Nightはワイヤー銃を撃ちだした後も過信していなかった。
「それでこれからどうするのかしらね?」
「当然考えているんだよねっ!」
「同然だ。とりあえず……走るぞ」
「「ほえっ!?」」
Nightは急に森に向かって走り出した。
来た道を退き返しているので、底なし沼に落ちることもない。
アキラはベルと一緒の気持ちで、Nightがどうして戻るのか、最初は意味がわからなかった。
とは言え、一つ気になるのはワイヤーが全く引き千切れずワイヤー銃に戻りもしなかった。
「これってもしかして……」
「そうみたいね。でもこれって運営サイドにとってはかなりイレギュラーよね」
「うん。だってやってること……」
アキラとベルはNightの姿が見えなくなるまで話し込んでいた。
けれど完全に姿が見えなくなるとアキラたちも追いかける。
ワイヤーが張られているので、どれだけ離れていても簡単に追うことができた。
「はぁはぁはぁはぁ……」
Nightは膝を震わせて息を荒げていた。
疲れていた。当然のことだが、ワイヤー銃は意外に重い。
ワイヤーが常に出続ける特注仕様のワイヤー銃でもあるため、ワイヤーが出続ければ出続けるほどどんどん不可もかかっていく。
そういう仕様に【ライフ・オブ・メイク】で作っている。
「思った以上に走ってしまったな」
Nightが背後を振り返るとワイヤーがピンと張られていた。
これだけ離れれば安全だろう。ワイヤー銃を引っ張ると何かを掴んでいる感触がしっかりと指先に伝わってきた。
とりあえず第一段階は無事完了だ。
「後はアイツらだが……来たな」
Nightはアキラたちを待っていた。
するとワイヤーのすぐ隣を2つの影が走っている。
息の一つも上げずにNightのところまで戻ってきた。
「Night、どうして急に走ったの!」
「開口一発目にそれか……」
Nightは呆れてしまった。
けれどいつものアキラでホッと胸を撫で下ろすところもある。
「私が走った理由はワイヤーだ」
「やっぱり。ワイヤーを張ったままにして、遠くから回収するんだよね」
「わかっているじゃないか。その通りだ」
アキラはNightの作戦をズバリ当てて見せた。
ベルの考えた作戦にかなり似ているけど、圧倒的に違うのはNightにしかできないことだ。
離れれば離れるほど毒素に汚染される確率も減って安全になる上に主との戦闘を避けることができる。
ゲームとしてボスと戦わないのはつまらないかもしれないが、負けてやり直しよりはいい。
この世界は決してディスプレイの前で淡々と繰り返す死にゲーではない。
「いいか、死んでやり直し何て真似はごめんだ。だからまずは勝つための手段の前に負けない作戦を考える」
「でもそれって勝ちに繋がらないよね?」
「勝ちに繋げるために負けないを生み出す。負けないは時に勝ちよりも強い」
「勝ちだけに価値があるんだね」
シーン——
空気が一瞬で冷え込んでしまった。
ベタなツッコみは面白くないみたいで、アキラは必死に考える。
意識を切り替えてパチンと手を叩いた。
「はいはい、とりあえず切り替えていこうよ」
「切り替えるのはお前だ。とにかく作戦はこんな感じだ。もうわかったな」
「うん。とにかく離れて敵から攻撃されないようにするんだよね。敵のテリトリーで戦うのって危険だもんね」
「そうだ。私たちは経験したはずだ」
オロチコンダの時だ。それから砂漠の時。
どちらもとっても危険で死力を尽くした。
あんな危険な真似は極力したくない。脳内で自然とストッパーが掛かる音がした。慰安の意識が危険を察知してくれていた。
「よし、それじゃあ引くぞ」
Nightの指が引き金に掛けられる。
けれどこの危機察知は何だ。アキラは嫌な予感がしていた。
引き金を引く瞬間、それが一番強くなりNightを止めようとしたが、それは叶わなかった。
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