165 / 570
◇165 ドクハナを採取するには
しおりを挟む
アキラはラッキーだ。運を引き寄せるのは運命を変える力を持っているから。
自分の信じた道を貫きたい。そのために何をすればいいのか、知らず知らずのうちに答えを見つけ出していた。
それができるからこそ、アキラには強い力が宿っていた。
そして偶然を掴み取ったのだ。
「あっ、何か生えている」
毒沼の真ん中付近に何かある。紫色をした毒々しい花模様が窺えた。
ここからはよく見えない。
とりあえず報告しておこう。
「えーっと『なんか変な花を見つけたよ。場所は分かれた場所から西に300メートルぐらい』って、これでよし」
アキラは2人にメッセージを送った。
それからしばらく待っていると、ベルがやって来る。
ガスマスク越しだから一瞬ビックリしてしまった。
しかし体調もすっかり良くなったのか、アキラはホッと胸を撫で下ろした。
「アキラ、もう見つけたのね」
「うん。アレを見てよ」
「確かに何かあるわね。それにしても遠くない?」
ベルの言う通りかなり遠い。
ここから泳いで行ったとしても、ヘドロの沼のせいで多分主に襲われる。
アキラとベルはそれぞれスキルを使って取りに行くことも考えたが、そこにNightがやって来た。
「お前たち、何馬鹿なことをしようとしているんだ」
「「Night!」」
今度もガスマスクをした人がやって来た。
薄っすらと赤と青の瞳がマスク越しに見えている。
いつものマントがないのでただスタイルがいい人だ。
「あれがそうか……確かにドクハナだな」
Nightはそう双眼鏡片手に沼の奥にある花を観察した。
ガスマスク越しによく見える。
「何だ、そんなに変か?」
「変だよ。だって双眼鏡越しだよ!」
「仕方ないだろ。この場所には汚染する毒が発生している。どうやらこの沼を中心に、森全体に地面の断層を利用して臭いが撒かれているようだな」
「うわぁ、ヘドロ混じりの沼の水なんだ」
「かなり酷いわね。こんなの植物が可哀そうだわ」
「それは私たちの知ったことじゃない。人間がまだ足を踏み入れたことのない場所など、現実の世界にはいくらでもある。そんな世界で暮らしている動植物は、人間以上の能力を保有しているともされているな」
「最近未知の苔が発見されて、医療現場でも大活躍らしいよね」
「そうだな。ニュースでも言われているが……その臨床実験でどれだけの人間が犠牲になったのか……考えたくもないな」
普通に怖いことを言わないで欲しい。
一旦聞いていないふりをして、アキラはNightに尋ねた。
「これからどうするの?」
「どうするも何も取りに行くしかないだろ」
「そうだよね。じゃあ早速……」
「そうね。早速……」
アキラは【月跳】を使って跳ぶ準備をした。
ベルもワイヤーをくくり付けた矢を放とうとする。
「待て、そんな真似をするな」
「ええっ!?」
「ちょっと、何で止めるのよ」
ベルが少しイラっとしていた。
しかしNightには言いたいことがあるらしい。
「いいか、まずはアキラだ。【月跳】を使って跳んだところで、向こうまで届くのか?」
「高く跳べるんだからできるよ!」
「甘いな。高く跳ぶのと飛距離を稼ぐのは違うぞ。お前はもう少し練習しろ」
「ううっ……」
「これで黙るのか。もう少しましなアイデアを出してからやれ。お前の勘の鋭さは大したものだ。もちろん感情を読む力もな。だが考える力は私の方がある」
痛いところを突かれ過ぎて、アキラは何も言えなくなった。
次はベルに銃口が向く。
「ベルはワイヤーをくくった矢何か射って、まともに当たるのか?」
「心外ね。当たるわよ」
「なら聞くが風向きは、ヘドロ沼から発生される酸性系の毒素の可能性は、水の動きは底から発生される水蒸気による失速は……」
「ううっ……言い返せない」
「言い返す余地はあるだろ。まあいい」
「で、でも私なら……」
「【毒無効】に頼るのか。甘いな。だから甘い。残念だがヘドロの毒沼で毒は防げてもたどり着くまでに終わるぞ」
Nightが言いたいのは、ヘドロの重みのことだ。
完全にNightの手のひらの上で踊らされている。
迷宮のスパイラルの中に落ちた2人は成すすべがなく、Nightの優位に立たされた。
しかし何もしない訳ではない。アキラは反撃の一手に出た。
「そういうNightはどうなの!」
「そうよね。それだけ言うなら何か策があるのよね?」
「無論だ。私が無策でも飛び込みわけがないだろ」
「「本当だった……」」
2人は完全に坩堝に落ちた。
ちなみにNightの作戦は既に完成している。
【ライフ・オブ・メイク】の万能能力で、手の中には拳銃が収まっていた。小さいワイヤー銃だ。
「それは拳銃?」
「そうだ。この際、ファンタジーはもういいだろ」
「うわぁ、ツッコミを否定された。言い返せない……」
「先に返し手を潰さないでよね」
「それは普通のことだろ。今回は私のターンだ」
Nightは調子が上がっていた。
ワイヤー銃をどうやって使うのか。アキラたちは期待していたが、以外にも想像通りだった。
自分の信じた道を貫きたい。そのために何をすればいいのか、知らず知らずのうちに答えを見つけ出していた。
それができるからこそ、アキラには強い力が宿っていた。
そして偶然を掴み取ったのだ。
「あっ、何か生えている」
毒沼の真ん中付近に何かある。紫色をした毒々しい花模様が窺えた。
ここからはよく見えない。
とりあえず報告しておこう。
「えーっと『なんか変な花を見つけたよ。場所は分かれた場所から西に300メートルぐらい』って、これでよし」
アキラは2人にメッセージを送った。
それからしばらく待っていると、ベルがやって来る。
ガスマスク越しだから一瞬ビックリしてしまった。
しかし体調もすっかり良くなったのか、アキラはホッと胸を撫で下ろした。
「アキラ、もう見つけたのね」
「うん。アレを見てよ」
「確かに何かあるわね。それにしても遠くない?」
ベルの言う通りかなり遠い。
ここから泳いで行ったとしても、ヘドロの沼のせいで多分主に襲われる。
アキラとベルはそれぞれスキルを使って取りに行くことも考えたが、そこにNightがやって来た。
「お前たち、何馬鹿なことをしようとしているんだ」
「「Night!」」
今度もガスマスクをした人がやって来た。
薄っすらと赤と青の瞳がマスク越しに見えている。
いつものマントがないのでただスタイルがいい人だ。
「あれがそうか……確かにドクハナだな」
Nightはそう双眼鏡片手に沼の奥にある花を観察した。
ガスマスク越しによく見える。
「何だ、そんなに変か?」
「変だよ。だって双眼鏡越しだよ!」
「仕方ないだろ。この場所には汚染する毒が発生している。どうやらこの沼を中心に、森全体に地面の断層を利用して臭いが撒かれているようだな」
「うわぁ、ヘドロ混じりの沼の水なんだ」
「かなり酷いわね。こんなの植物が可哀そうだわ」
「それは私たちの知ったことじゃない。人間がまだ足を踏み入れたことのない場所など、現実の世界にはいくらでもある。そんな世界で暮らしている動植物は、人間以上の能力を保有しているともされているな」
「最近未知の苔が発見されて、医療現場でも大活躍らしいよね」
「そうだな。ニュースでも言われているが……その臨床実験でどれだけの人間が犠牲になったのか……考えたくもないな」
普通に怖いことを言わないで欲しい。
一旦聞いていないふりをして、アキラはNightに尋ねた。
「これからどうするの?」
「どうするも何も取りに行くしかないだろ」
「そうだよね。じゃあ早速……」
「そうね。早速……」
アキラは【月跳】を使って跳ぶ準備をした。
ベルもワイヤーをくくり付けた矢を放とうとする。
「待て、そんな真似をするな」
「ええっ!?」
「ちょっと、何で止めるのよ」
ベルが少しイラっとしていた。
しかしNightには言いたいことがあるらしい。
「いいか、まずはアキラだ。【月跳】を使って跳んだところで、向こうまで届くのか?」
「高く跳べるんだからできるよ!」
「甘いな。高く跳ぶのと飛距離を稼ぐのは違うぞ。お前はもう少し練習しろ」
「ううっ……」
「これで黙るのか。もう少しましなアイデアを出してからやれ。お前の勘の鋭さは大したものだ。もちろん感情を読む力もな。だが考える力は私の方がある」
痛いところを突かれ過ぎて、アキラは何も言えなくなった。
次はベルに銃口が向く。
「ベルはワイヤーをくくった矢何か射って、まともに当たるのか?」
「心外ね。当たるわよ」
「なら聞くが風向きは、ヘドロ沼から発生される酸性系の毒素の可能性は、水の動きは底から発生される水蒸気による失速は……」
「ううっ……言い返せない」
「言い返す余地はあるだろ。まあいい」
「で、でも私なら……」
「【毒無効】に頼るのか。甘いな。だから甘い。残念だがヘドロの毒沼で毒は防げてもたどり着くまでに終わるぞ」
Nightが言いたいのは、ヘドロの重みのことだ。
完全にNightの手のひらの上で踊らされている。
迷宮のスパイラルの中に落ちた2人は成すすべがなく、Nightの優位に立たされた。
しかし何もしない訳ではない。アキラは反撃の一手に出た。
「そういうNightはどうなの!」
「そうよね。それだけ言うなら何か策があるのよね?」
「無論だ。私が無策でも飛び込みわけがないだろ」
「「本当だった……」」
2人は完全に坩堝に落ちた。
ちなみにNightの作戦は既に完成している。
【ライフ・オブ・メイク】の万能能力で、手の中には拳銃が収まっていた。小さいワイヤー銃だ。
「それは拳銃?」
「そうだ。この際、ファンタジーはもういいだろ」
「うわぁ、ツッコミを否定された。言い返せない……」
「先に返し手を潰さないでよね」
「それは普通のことだろ。今回は私のターンだ」
Nightは調子が上がっていた。
ワイヤー銃をどうやって使うのか。アキラたちは期待していたが、以外にも想像通りだった。
1
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる