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◇164 毒沼
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アキラたちは気を取り直して毒沼を目指していた。
たった800メートルが異常に遠く感じるのは気のせいだろうか?
アキラはぬかるんだ地面を踏み荒らしながら、Night達も同じことを思っていた。
「なあアキラ。あまりに時間がかかりすぎじゃないか?」
「そうだよね。おかしいよね」
「そのメモが間違っている可能性はないのか?」
「そんなのわからないよ。私はこれを渡されただけなんだもん」
アキラは開き直っていた。
ソウラから渡された小さなメモには確かにびっしり書かれている。
とは言え、ミニマムな縮小系の地図を見比べながら何となくで進んでいたので、とにかく移動が遅かった。
「しかも地面に掘り込まれたこれはなんだ」
「地面に掘り込まれた?」
何を言っているんだ。アキラは首を傾げ、地面を見た。
ドロドロの地面を払うと、真っ直ぐ線みたいに地面が割れている。掘ってあるみたいな感じで、アキラたちの足元にも広がっていた。
「これは……断層かな?」
「どうだろうな。とにかく、敵は底なし沼だけじゃない。この先には毒沼もある。危険なのはここからだぞ」
「うっ……そう言われると、もう少しこのメモも詳しく書いてて欲しかったね」
「でもないよりはマシよね」
ベルの一言で流してしまった。
それからしばらく歩いていると、中央付近が開けていた。
木々の隙間を縫うように進んでいくと、鼻の奥をつんざくような臭いがしてきた。
「うっ!」
「何なの、この臭い!」
「止まるな。こんなところで止まっても何も見えてこないぞ」
そういうNightは完全防備だった。
顔には毒ガス防ぐ仕様のガスマスクを着用している。
顔が完全に見えないので、パッと見誰かわからない。
「ちょっと、Night! それズルいよ」
「そもそもいつの間に準備したのよ」
「くだらない質問をするな。とにかく行け!」
アキラはNightに後ろから蹴られてしまった。
よっぽど気が立っているのか、アキラは軽く避けると、湿地帯でもかかわらず飛び跳ねるように超えてしまった。
すると目の前に広がっていたのは、草木一本生えない大地に大きな沼だけだった。
アキラは目を丸くしていると、ベルが嗚咽を漏らした。
「おえっ……この臭いは」
「大丈夫ベル! 具合でも悪いの?」
ベルが体調不良を訴えていた。
流石は毒沼。ヘドロのような臭いが絶えず周囲を覆っていて、他の生き物の姿がない。
沼には白い骨の破片が浮いていて、アキラは絶句する。
そこにやって来たNightは沼の様子を見るや否や、声色を絞った。
「聞いていた通りだな」
Nightはガスマスク越しにこの場所が相当危険なことを悟る。
インベントリから自分が付けているガスマスクと同じものを2つ取り出し、アキラとベルに差し出した。
「2人とも早く付けろ。この場所にいると毒以上のダメージが来るぞ」
「う、うん。はい、ベル」
「ありがと。ふぅ、助かったわね」
「助かってはいない。とりあえず目的地には到着したが問題はここからだ」
今回の依頼はドクハナを手に入れることだ。
幸い毒沼を見つけることはできたけど、こんな広い毒の沼にいつまでも居ることはできない。
しかも肝心のドクハナもこの沼の主の頭頂部に生えている。
つまり、単純に主との戦闘は必須だ。
「主は中ボス並みの強さを持っていると考えていい。しかもほぼ間違いなく、限りなく100に近い確率で襲われるだろうな」
Nightの言うことには納得ができた。
だけどここから逃げることはできない。
来るだけでも1時間くらいかかったんだ。往復なんてとてもじゃないけどできやしない。
「とにかく作戦は至ってシンプルだ。先にドクハナを見つけるぞ」
「うん。でもどこに生えているのかな?」
「そうよね。見たところ、この沼は広くて深そうだもの」
ベルの見立ては間違っていない。アキラも同じ意見だった。
目の前の沼は毒々しい色をしているが、結局はヘドロのようになっている。
田んぼのそれとは比較にならないレベルで一度入ったら抜け出せそうになく、とにかく近づきたくなかった。
おまけに広さもある。ドクハナを見つけるのは苦労しそうだ。
「よし、幸いここには臭いのせいでモンスターが寄ってこない。こんな利用できそうな現象を見逃すわけにはいかないからな。三手に分かれて、ドクハナを探すぞ。とは言えおそらくは……」
Nightは何かぶつくさと言いだす。
ただよく聞き取れないのでここはスルーしたが、言いたいことをアキラは顔色を窺って何となく理解していた。
ベルにもアイコンタクトを送り、アキラたち3人はそれぞれ別方向に歩き出した。
この毒沼は森に囲まれている。広いとは言っても限度があるはずだ。
沼の広さはぐるっと回ると30分近くだろう。
Nightは既に計算を終えていて、沼の奥の方を睨んでいた。
きっとこの沼の中央にドクハナは生えている。そしてその下には主が眠っているはずだ。
「舐めるなよ」
意気揚々とプレイヤーを待ち受ける中ボスにも全く怯まないNightと風を読んで探るベル。けれどアキラはいつも通りだった。いつも通り、ラッキーを見せつけた。
たった800メートルが異常に遠く感じるのは気のせいだろうか?
アキラはぬかるんだ地面を踏み荒らしながら、Night達も同じことを思っていた。
「なあアキラ。あまりに時間がかかりすぎじゃないか?」
「そうだよね。おかしいよね」
「そのメモが間違っている可能性はないのか?」
「そんなのわからないよ。私はこれを渡されただけなんだもん」
アキラは開き直っていた。
ソウラから渡された小さなメモには確かにびっしり書かれている。
とは言え、ミニマムな縮小系の地図を見比べながら何となくで進んでいたので、とにかく移動が遅かった。
「しかも地面に掘り込まれたこれはなんだ」
「地面に掘り込まれた?」
何を言っているんだ。アキラは首を傾げ、地面を見た。
ドロドロの地面を払うと、真っ直ぐ線みたいに地面が割れている。掘ってあるみたいな感じで、アキラたちの足元にも広がっていた。
「これは……断層かな?」
「どうだろうな。とにかく、敵は底なし沼だけじゃない。この先には毒沼もある。危険なのはここからだぞ」
「うっ……そう言われると、もう少しこのメモも詳しく書いてて欲しかったね」
「でもないよりはマシよね」
ベルの一言で流してしまった。
それからしばらく歩いていると、中央付近が開けていた。
木々の隙間を縫うように進んでいくと、鼻の奥をつんざくような臭いがしてきた。
「うっ!」
「何なの、この臭い!」
「止まるな。こんなところで止まっても何も見えてこないぞ」
そういうNightは完全防備だった。
顔には毒ガス防ぐ仕様のガスマスクを着用している。
顔が完全に見えないので、パッと見誰かわからない。
「ちょっと、Night! それズルいよ」
「そもそもいつの間に準備したのよ」
「くだらない質問をするな。とにかく行け!」
アキラはNightに後ろから蹴られてしまった。
よっぽど気が立っているのか、アキラは軽く避けると、湿地帯でもかかわらず飛び跳ねるように超えてしまった。
すると目の前に広がっていたのは、草木一本生えない大地に大きな沼だけだった。
アキラは目を丸くしていると、ベルが嗚咽を漏らした。
「おえっ……この臭いは」
「大丈夫ベル! 具合でも悪いの?」
ベルが体調不良を訴えていた。
流石は毒沼。ヘドロのような臭いが絶えず周囲を覆っていて、他の生き物の姿がない。
沼には白い骨の破片が浮いていて、アキラは絶句する。
そこにやって来たNightは沼の様子を見るや否や、声色を絞った。
「聞いていた通りだな」
Nightはガスマスク越しにこの場所が相当危険なことを悟る。
インベントリから自分が付けているガスマスクと同じものを2つ取り出し、アキラとベルに差し出した。
「2人とも早く付けろ。この場所にいると毒以上のダメージが来るぞ」
「う、うん。はい、ベル」
「ありがと。ふぅ、助かったわね」
「助かってはいない。とりあえず目的地には到着したが問題はここからだ」
今回の依頼はドクハナを手に入れることだ。
幸い毒沼を見つけることはできたけど、こんな広い毒の沼にいつまでも居ることはできない。
しかも肝心のドクハナもこの沼の主の頭頂部に生えている。
つまり、単純に主との戦闘は必須だ。
「主は中ボス並みの強さを持っていると考えていい。しかもほぼ間違いなく、限りなく100に近い確率で襲われるだろうな」
Nightの言うことには納得ができた。
だけどここから逃げることはできない。
来るだけでも1時間くらいかかったんだ。往復なんてとてもじゃないけどできやしない。
「とにかく作戦は至ってシンプルだ。先にドクハナを見つけるぞ」
「うん。でもどこに生えているのかな?」
「そうよね。見たところ、この沼は広くて深そうだもの」
ベルの見立ては間違っていない。アキラも同じ意見だった。
目の前の沼は毒々しい色をしているが、結局はヘドロのようになっている。
田んぼのそれとは比較にならないレベルで一度入ったら抜け出せそうになく、とにかく近づきたくなかった。
おまけに広さもある。ドクハナを見つけるのは苦労しそうだ。
「よし、幸いここには臭いのせいでモンスターが寄ってこない。こんな利用できそうな現象を見逃すわけにはいかないからな。三手に分かれて、ドクハナを探すぞ。とは言えおそらくは……」
Nightは何かぶつくさと言いだす。
ただよく聞き取れないのでここはスルーしたが、言いたいことをアキラは顔色を窺って何となく理解していた。
ベルにもアイコンタクトを送り、アキラたち3人はそれぞれ別方向に歩き出した。
この毒沼は森に囲まれている。広いとは言っても限度があるはずだ。
沼の広さはぐるっと回ると30分近くだろう。
Nightは既に計算を終えていて、沼の奥の方を睨んでいた。
きっとこの沼の中央にドクハナは生えている。そしてその下には主が眠っているはずだ。
「舐めるなよ」
意気揚々とプレイヤーを待ち受ける中ボスにも全く怯まないNightと風を読んで探るベル。けれどアキラはいつも通りだった。いつも通り、ラッキーを見せつけた。
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